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過去のオリンピック競技費一覧 小池知事は何億円で開催したいのか? 

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小池都知事就任以降の五輪経費を巡る議論がどうなったのかを振り返ってみます。

2017年12月末に組織委が新しい収支内訳を公開したので、その情報を踏まえて情報を整理します。

東京オリンピック費用一覧(組織委+都+国)

まず、大会組織委員会のHP記事(「組織委員会およびその他の経費」2017/12/22)にて現状の収支情報を確認してみます。

【会場関係費/大会関係費で見た支出内訳】(組織委+東京都+国)

項目 組織委
恒久施設 2250 1200 3450
仮設等 950 2100 200 4650
エネルギーインフラ 150 250    
テクノロジー 700 300    
会場関係小計 1800 4900 1400 8100
パラリンピック経費 (400) (200) (200) (800)
輸送 250 250 100 5400
セキュリティ 200 750    
オペレーション 1000 100    
管理・広報 600      
マーケティング 1250      
その他 900      
大会関係小計 4200 1100 100 5400
パラリンピック経費 (200) (100) (100) (400)
オリンピック経費累計 6000 6000 1500 13500
パラリンピック経費累計 (600) (300) (300) (1200)

※1兆3500億円に1000~3000億円の予備費が加算されるため、総額は1.45~1.65兆円になります。

東京五輪の総費用をリオ、ソチ、ロンドン、北京の五輪と比較

2016年秋の段階では東京五輪とパラリンピックの総費用は3兆円を超える可能性があると指摘されました。

この3兆円というのは、リオ五輪の2倍以上の金額です。

過去の五輪の総費用は以下の通りです(ドル円換算はニュースメディアの試算)。

3兆円だと、他国と比べてもかなり高コストになります。

ネットだと過去の開催費用のデータが意外と分かりにくいので、今回は、五輪開催の経費についてのデータを集めてみます。

東京五輪VSリオ五輪 費用内訳

16年10月頃の新聞報道等では、東京五輪の費用3兆円の中で、ハードにあたる競技施設に関する費用が7600億円、ソフトにあたる運営費、セキュリティー費、選手輸送費などで1兆6000億円がかかるという憶測が流れていました。

しかし、その後、小池都知事と大会組織委が議論し、16年12月頃には1.6~1.8兆円という数字が出されています。過去の五輪と比べると、「そんなに安く済むのだろうか」という疑問が湧いてきますが、一応、その数字をもとに、リオ五輪とロンドン五輪のケースとで比較してみたいと思います。

東京五輪の費用内訳

東京五輪の費用に関しては「組織委の試算では、経費の内訳は運営費8200億円、施設整備費6800億円、資材や人件費の高騰などに備えた予備費が1100億~3400億円。恒久施設の整備を含めると、組織委以外の負担は1兆1100億~1兆3400億円となる」と報じられています(東京五輪:経費1.6兆~1.8兆円提示 組織委 - 毎日新聞 12/20)

つまり、ソフト費用が8200億円。ハード費用が6800億円。予備費が1100~3400億円です。

リオ五輪の費用内訳

直近のリオ五輪の費用を前掲のAFP記事「リオ五輪開催費用の内訳」で見ると、総額が約120億ドル(約1兆3000億円)で、その内訳は、競技費が41億ドル(約4300億円:インフラ整備は2100億円ほど)、運輸部門のプロジェクトで75億ドル(約7900億円)です。

リオではコストカットが計られましたが、研究者からは、実際は5割ほど予算超過したとも指摘されているので、東京五輪の費用が3兆円と見こまれても、実際にやった時に、追加費用等が発生するのかもしれません。

歴代オリンピック比較:スポーツ行事関連費

意外と五輪+パラリンピックの総費用が一覧できる研究者のレポートなどは見つけにくいのですが、イギリスのオックスフォード大で三人の研究者が出した”The Oxford Olympics Study 2016: Cost and Cost Overrun at the Games"という論文(2016年7月発表)では、過去のオリンピックの試合にかかった費用(※施設設備費等は入らず)が掲載されていました(8枚目のPDFデータに書かれた図を見ると、ここ20数年の夏季・冬季五輪でかかったスポーツ行事関連の費用を一覧可能)。

この論文では金額がドルですが、それだけだと分かりにくいので、下記の一覧では92年から16年までの間の為替の数字を入れて円換算に挑戦してみました。

総額ではありませんが、このデータで見ると、リオ五輪の場合は総額120億ドルの38%ほどがスポーツ行事関連の費用(45.57億ドル)に当たることが分かります。

ソチ五輪(500億ドル=5兆2300億円)の場合は43.8%(218.9億ドル)がスポーツ行事関連の費用で使われているので、総額の四割程度がスポーツ行事の運営のために用いられるケースが多いのかもしれません。

前掲論文の数値を基に、以下、過去のオリンピックでのスポーツ行事にかかった費用を一覧化してみましょう。

【夏季オリンピック平均:52.13億ドル】

 為替のデータは日本銀行の「時系列統計データ検索サイト」で「為替」を選択し「暦年」と「平均」を入力して出した各年のドル円の平均値を用いています(※なぜかこのページはURLリンクが貼れない)。

  • リオ(16年)45.57億ドル4951億円 (1ドル=108.65円計算)
  • ロンドン(12年)149.57億ドル1兆1934億円 (1ドル=79.79円計算)
  • 北京(08年)68.1億ドル ⇒  7037億円 (1ドル=103.33円計算)
  • アテネ(04年)2942億ドル ⇒ 3182億円 (1ドル=108.16円計算)
  • シドニー(00年)50.26億ドル5415億円 (1ドル=107.74円計算)
  • アトランタ(96年)41.43億ドル4506億円 (1ドル=108.77円計算)
  • バルセロナ(92年)96.87億ドル4兆2270億円 (1ドル=126.67円計算)

【冬季オリンピック平均:31.12億ドル】

  • ソチ(14年)218.9億ドル2兆3167億円 (1ドル=105.86円計算)
  • バンクーバー(10年)25.4億ドル2229億円 (1ドル=87.77円計算)
  • トリノ(06年)43.66億ドル5077億円 (1ドル=116.28円計算)
  • ソルトレイクシティ(02年)25.2億ドル1兆3157億円 (1ドル=108.65円計算)
  • 長野(98年)22.27億ドル2915億円 (1ドル=130.88円計算)
  • リレハンメル(94年)22.28億ドル2278億円 (1ドル=102.22円計算)
  • アルベールビル(92年)19.97億ドル2530億円 (1ドル=126.67円計算)

これはあくまでもスポーツ行事だけにかかった費用なので、施設整備費など、他の費用がもっとかかります。

総額の分かりやすい一覧が無いのが残念ですが、それでも今までのオリンピックの予算額の傾向は分かります。

2020年の東京オリンピック費用確定を巡るバトル

 

2016年のリオ五輪を振り返ると、リオ市だけでは賄い切れず、国の支援をもらわざるをえませんでした。

日本でも五輪経費を巡る様々なバトルが繰り広げられました。

その結果、2016年12月17日時点では、大会組織委員会が1.6兆~1.8兆円程度で開催する試算をまとめています。

産経1面(12/18)ではそこに至るまでの経緯が出ています(以下、文言が長いので筆者が適宜要約しています)。

  • 13年1月:東京招致委員会がIOCに立候補ファイルを提出時の試算は7300億円
  • 13年9月:IOC総会で東京開催が決定
  • 14年12月:IOCが「五輪アジェンダ2020」で開催都市の負担軽減策を盛り込む
  • 15年7月:大会組織委の森喜朗会長が予算2兆円超の可能性を示唆
  • 15年10月:舛添都知事が3兆円は必要と発言
  • 16年9月:小池都知事のチームが費用3兆円超の可能性を指摘
  • 16年11月:組織委が2兆円を切るとの見通しを表明。IOCから削減要求
  • 16年12月:組織委が1.6~1.8兆円の試算をまとめる

この費用試算の経緯は日本国民(あるいは東京都民)には不可解な話ばかりです。

なぜ、7300億円が3兆円にまで増えるのか。

3兆円要ると言っていたものがどうして1.6~1.8兆円で開催できるのか。

筆者も不可解なままですが、大会組織委によれば、現在は、1兆4500億円~1兆6500億円の規模とされています。

大会組織委員会のHP記事(「組織委員会およびその他の経費」2017/12/22)によれば、収入は国内スポンサー収入増等の理由でV1よりも1000億円ほど増え、ハードとソフト面での経費削減がなされたそうです。

五輪の経済効果は?

特需が期待される企業の例

費用だけでなく、その経済効果についても考えてみます。

東京都の試算によれば、2013年から2030年までの経済効果は全国で32兆円、雇用創出効果は194万人。

2018年版の『四季報業界地図』は、五輪特需が期待できる企業として以下の各社を挙げています。

  • 建設/建設素材:大成建設、大林組、清水建設、鹿島、竹中工務店、太平洋セメント、住友大阪セメント、新日鐵住金、JFEHD
  • 放送/広告:電通、日本テレビHD、スカパーJSATHD、WOWOW
  • 宿泊/観光/交通:ホテルオークラ、西武ホールディングス、東武鉄道、オリエンタルランド、日本空港ビルディング
  • 設備/設営:ヒビノ、セレスポ、スペース、乃村工藝社、丹青社
  • 警備:アルゾック、セコム、CSP、TOA、能美防災
  • スポーツ用品:アシックス、ミズノ、デサント、ヨネックス、コナミHD

また、2018年版の『日経業界地図』では関連企業として以下の各社を紹介しています。

  • 会場建設・運営:電通、鹿島、清水建設、大成建設、三井不動産、三菱地所、JR東日本、東京急行電鉄
  • 在日外国人関連:帝国ホテル、ホテルオークラ、三越伊勢丹ホールディングス、Jフロントリテイング、ヤマダ電機、エディオン、アシックス、ミズノ

主なスポンサーとしては以下の企業が名をつらねています。

(ブリヂストン、パナソニック、トヨタ、NTT、アサヒビール、キャノン、NEC、富士通、東京海上日動火災保険、日本生命保険、野村ホールディングス、アシックス、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三井不動産、明治、LIXIL)

日経業界地図が関連企業やスポンサーとして挙げた企業と四季報が特需を期待する企業は重なっています。果たしてこの企業に五輪特需は及ぶのでしょうか。

五輪に合わせて都心で超高層マンション建設が続く

2018年版の『日経業界地図』が注目しているのは、都心での超高層マンションの建設です。都心でのホテルの開業時期が紹介されています。

  • 2013年12月:東京マリオットホテル
  • 2014年6月:アンダーズ東京/アマン東京
  • 2016年7月:ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町(建て替え)/星のや東京
  • 2018年:ハイアットセントリック銀座東京
  • 2019年:ホテルオークラ東京本館(建て替え)

ややこしい費用負担の調整をめぐる問題と政治的バトルが一体化してきていますが、国民の利益や東京五輪に対する世界の人びとの期待を忘れないでほしいものです。

追記:24年はパリ、28年はロサンゼルスで五輪開催

国際オリンピック委員会(IOC)は9月13日にオリンピックの開催地を正式発表しました。

2024年の五輪はパリ、2028年の五輪はロサンゼルスで開催されます。

これは、7月31日時点で合意がなされていた話ですが、二つの都市はペルーのリマで開催されたIOC総会でプレゼンし、総会での投票で開催が正式に承認されました。

パリは100年ぶり、ロサンゼルスは44年ぶりの開催になります。

アメリカでの五輪開催は1996年のアトランタ大会以来でもあります。

今回の選考では、当初、招致を目指していた都市がコストを理由に相次いで撤回。

この二都市が最後まで残りました(どちらの都市も大会開催に必要な施設の9割が整備されているので、他の都市よりも負担はかかりません)。

ところで、この2市の世界都市ランキングでの順位づけは、どうなっているのでしょうか。

まず、この二都市を比較してみます(人口は2016年の国連データ)

市を中心とした経済圏の規模で見るとロサンゼルス都市圏の人口は1232万人。その「域内総生産」は2015年時点で8605億ドル)。略称はLAであり、最近のヒット映画の「ラ・ラ・ランド」の「ラ」はLAを意味しています。ハリウッドはロサンゼルス市にあり、アメリカのエンターテイメント産業の中心地になっています。

一方、パリ都市圏の人口は1093万人。域内総生産で見ると2015年時点で8221億ドル。いわずと知れたフランスの首都で、その都は最も古い地域を中心にエスカルゴのように新地域が付け加えられています。

パリはフランス文化を象徴し、ハリウッドはアメリカ文化を象徴する都市なので、ロサンゼルスVSパリの五輪招致競争は、米国と欧州の文化のバトルだったのかもしれません。

世界都市ランキングで東京とパリ、ロサンゼルスを比較してみる

前掲の国連資料で2016年の人口と2030年の人口予測を見てみます

(出所:The World’s Cities 2016 ※2016年人口⇒2030年人口予測)

  • 1位:東京(日本)3814万⇒3719万
  • 2位:デリー(インド)2645万⇒3606万
  • 3位:上海(中国)2448万⇒3075万
  • 4位:ムンバイ(インド)2136万⇒2780万
  • 5位:サンパウロ(ブラジル)2130万⇒2344万
  • 6位:北京(中国)2124万⇒2771万
  • 7位:メキシコシティ(メキシコ)2116万⇒2387万/li>
  • 8位:大阪(日本)2034万⇒1998万
  • 9位:カイロ(エジプト)1913万⇒2450万
  • 10位:ニューヨーク(米国)1860万⇒1989万
  • 11位:ダッカ(バングラデシュ)1824万⇒2738万
  • 12位:カラチ(パキスタン)1712万⇒2484万
  • 13位:ブエノスアイレス(アルゼンチン)1533万⇒1696万
  • 14位:コルカタ(インド)1498万⇒1909万
  • 15位:イスタンブール(トルコ)1437万⇒1669万
  • 16位:重慶(中国)1374万⇒1738万
  • 17位:ラゴス(ナイジェリア)1366万⇒2424万
  • 18位:マニラ(フィリピン)1313万⇒1676万
  • 19位:広州(中国)1307万⇒1757万
  • 20位:リオジャデネイロ(ブラジル)1298万⇒1417万
  • 21位:ロサンゼルス(米国)1232万⇒1326万
  • 22位:モスクワ(ロシア)1226万⇒1220万
  • 23位:キンシャサ(コンゴ)1207万⇒2000万
  • 24位:天津(中国)1156万⇒1466万
  • 25位:パリ(フランス)1093万⇒1180万

人口で見たランキングで比較すると、デリーやムンバイ、コルカタといったインド都市や、上海や北京、重慶や広州といった中国都市が目立ちます。中でもデリー市は2030年までに960万人の人口増が予測されていました。

そのほか、ダッカやキンシャサでも急激な人口増が見込まれています。

また、東京都市圏が2030年に世界ナンバーワンの人口を保つと予測されているのも印象的です。

世界都市ランキング:グローバル都市指標/展望

経営コンサル企業の「A.T. カーニー」は2017年の5月末に「Global Cities 2017」(世界都市指標2017)を発表しました。

この企業は「2050年には世界人口の3分の2が都市部に住む」という予測に基づき、都市の発展状況をつかむために毎年、ランキングを作成しています。

この都市ランキングは128都市を対象にした2つのランキングからなります。

その一つは、「ビジネス活動」 (30%)、「人的資源」 (30%)、「情報交換」 (15%)、「文化的経験」 (15%)、「政治的関与」 (10%)の五指標で見る「グローバル都市指標」(Global Cities Index)。

もう一つは「個人の幸福度」 (25%)、「経済」 (25%)、「イノベーション」 (25%)、「ガバナンス」 (25%)の四指標で見る「グローバル都市展望」(Global Cities Outlook」)です。

その両者の順位はここ3年間で以下のように推移しました。

(順位変動は2015⇒2016⇒2017。出所は「2016グローバル都市調査」と「2017グローバル都市調査」)

【グローバル都市指標】

  • ニューヨーク:1位⇒2位⇒1位
  • ロンドン:2位⇒1位⇒2位
  • パリ:3位⇒3位⇒3位
  • 東京:4位⇒4位⇒4位
  • 香港:5位⇒5位⇒5位
  • シンガポール:8位⇒8位⇒6位
  • シカゴ:7位⇒7位⇒7位
  • ロサンゼルス:6位⇒6位⇒8位
  • 北京:9位⇒9位⇒9位
  • ワシントンD.C:10位⇒10位⇒10位

【グローバル都市展望】

  • サンフランシスコ:1位⇒1位⇒1位
  • ニューヨーク:4位⇒2位⇒2位
  • パリ:19位⇒13位⇒3位
  • ロンドン:2位⇒4位⇒4位
  • ボストン:3位⇒3位⇒5位
  • メルボルン:15位⇒15位⇒6位
  • ミュンヘン:7位⇒9位⇒7位
  • ヒューストン:6位⇒5位⇒8位
  • ストックホルム:8位⇒7位⇒9位
  • モスクワ:?⇒35位⇒10位

全体的にはグローバル都市展望のほうが順位変動が激しく、パリやメルボルン、モスクワが急上昇しています。

東京は2016年に19位でしたが、2017年には23位へと順位を下げています。モスクワは35位から突然に10位にまで躍進しました。

さすがに五輪を招致するだけはあって、パリやロサンゼルス、東京はこの二つのランキングの中に名前をつらねています。

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