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自動運転車 17年に実用化? トヨタ、日産、グーグル、アウディの思惑    

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 2017年を迎え、本年の経済予測が各誌をにぎわせていますが、「自動運転車」も重要トピックの一つになっています(※本記事は2016年10月14日に公開後、随時、加筆修正しています)

 『週刊東洋経済12/31-1/7』でも解説記事が組まれ、冒頭に「2035年には新車販売台数のうち自動運転車の割合は25%、同年時点の市場規模は770億ドルに達する」という予測(ボストンコンサルティンググループ)が紹介されています(P104)。

 同誌は自動運転の狙いとして、事故削減、渋滞緩和、環境負荷の低減の三種を挙げていますが、今回はいまさら聞けない自動運転の要点を整理してみます。

 17年以降の経済を考える上で自動車メーカーだけでなく、IT系大手が自動運転車の実用化に関してどんなプランを持っているのかは、非常に大事な問題だからです。 

2017年、アウディ社が運転者の監視不要の「自動運転車」を販売?

 10月14日付の日経ビジネスの記事(ネット版)では「アウディ、世界初の『自動運転車』を2017年投入」と題して、独自動車大手の来年の計画を紹介しています。

 この記事では、運転手の操縦なしで安全に走行する「自動運転車」を17年に市場で販売するアウディ社の計画について、運転士システムの開発責任者であるトーマス・ミュラー氏にインタビューしています。

「えっ。じゃあ、今まで『自動運転車』といわれていた車は何だったの?」

 そんな疑問も湧いてきますが、自動運転技術にもレベル差があり、16年時点で「自動運転車」と呼ばれている車は、みな、ドライバーの監視が要るシステムで動いています。これは状況に応じて手動に戻ったり自動になったりする仕組みなので、本当の意味での自動運転技術が完成していたわけではありません。

 前掲記事では、その種の自動運転は、米自動車技術協会の定義によるとレベル2の「運転支援システム」にすぎず、アウディ社が目指すのは、原則、運転者の監視が要らないレベル3の「自動運転」の実現なのだとミュラー氏が力説しています。

 何だかRPGみたいですが、豊富な情報で経験値を蓄えた自動運転車は、レベル3になると危険な時に勝手に止まってくれたり、進路を変えたりしてくれるわけです(素早さが上がって敵の攻撃をかわしてくれるようなものか?)。

 ざっくり言えば、レベル3は「運転手の監視が要らない」レベルで、「レベル4」は「運転手そのものが要らない」ぐらいの技術水準だといえます。

 他の解説を見ると『週刊ダイヤモンド』(「勝者のIT戦略」2016.8.27:P32)では以下の分類になっていました。

  • レベル1:加速、ブレーキ、ハンドルなどの操作の中の一つを自動化する
  • レベル2:複数の操作をシステムで行う(運転手の関与が必要)
  • レベル3:全自動運転。運転手の関与は緊急時などの条件付きで必要
  • レベル4:運転手は全く関与しなくてよいレベル。

 16年5月に事故を起こしたテスラカーはレベル2(運転支援システム)の技術だったので、この場合は、自動運転と称しても、ドライバーに責任が問われてしまうわけです。

アウディ社が完全な自動運転車を実用化するまでの道筋

 筆者の文系頭脳によってミュラー氏の高度な解説がレベルダウンしそうですが、その要点は以下の四つです。

  1. アウディの試作車「ジャック」は高速道路でMAX時速130kmでシステムが運転でき、ドライバーに監視義務がなくなるレベルを目指している。17年販売の新型「A8」では、まだ時速60km以下ぐらいの技術と見られている。
  2. システム運転なので市販には「99.9999%以上」の安全が求められる。想定環境のうち20%ほど解決困難なケースが残っている。
  3. 欧州法や米国法等の壁はあるが、欧米政府はレベル3の自動運転車の実用化を進める方針。
  4. PCのように自動運転車も基本ソフト(OS)が標準化される可能性があるが、自動運転でOSが止まると人が死ぬので技術の要求水準はPCよりも厳しい。

 17年に販売されるアウディの「A8」はレベル3の初期段階なので、今後はこれを高度化し、高速で自動運転できるようにするはずです。

 アウディはその後、2017年にスペイン・バルセロナで開催した「アウディ・サミット」(7/11)で新型の「A8」を初披露しました。「A8」はレベル3技術のうち「トラフィック・ジャム・パイロット(渋滞した高速道路での自動運転)」を搭載。さらに、ドライバーが車外にいる時にステアリングを切って自動的に車庫入れができる「リポートパーキングパイロット」等の技術を搭載しています。

 前掲の「レベル3」技術に関しては、お堅い日本がどれぐらい関連法を改正し、技術革新に対応できるのかが見所です(現状では国家戦略特区の一部で実験している程度)。

 また、「レベル4」技術に関しては、どこが自動運転のOSを制覇するのかが見所になるでしょう。マイクロソフトのようにOSを制する企業が出たら、PCとは比較にならない利益が出るので、その会社の株価上昇はうなぎのぼりになるかもしれません。

自動運転を巡るメーカーとIT大手の合従連衡

 アウディ社はドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループ内の企業です。

 こうした自動車大手とIT大手の合従連衡に関して、16年6月25日発売の『週刊東洋経済』の図表(P95「特集/自動車風雲急」)では「トヨタ+マイクロソフト」、「フォード+アマゾン」、「フィアットクライスラーオートモービルズ(FCA)+グーグル」、「GMによるクルーズ(IT系企業)買収」等と紹介しています。

 この「独自路線で行くか、IT系と組むか」という問題には、前節であげた「自動運転のOS市場をどこが制覇するか」という企業戦略が関わっているので、各社の未来を考える上では、非常に大事なところです。

 自動車メーカーとIT企業は「ライドシェア」(車の相乗りサービス)を巡っても連携しています(ライドシェアは、オンラインで企業に登録したドライバーが自家用車で乗客をタクシーのように運ぶサービスのこと)。

 前掲記事によれば、これで大儲けしたウーバー社はトヨタやFCA、アマゾン等と手を組み、GMはライドシェア系のサイドカー社を買収。リフト社と提携しました。フォルクスワーゲンはイスラエルのゲット社(ライドシェア企業)と手を組むようです。

 こうして見ると、ライドシェア系の企業が育っていない日本は、この分野ではアメリカよりも何段か遅れてしまったのかもしれません。

 政府も日本の立ち遅れを気にしたのか、17年2月に入り、規制改革会議がライドシェア解禁の検討を始めたことが報じられています。

 ウーバー社のような形態は禁止されている「白タク」に該当するので、日本でライドシェアを解禁するためには道路運送法を改正や規制緩和等の措置が必要になってきます。そして、事故時の責任の取り方やドライバーに求められる要件などのルール決めが課題になるでしょう。16年時点では国家戦略特区において、交通手段の少ない過疎地限定で解禁されているので、現時点では「タクシーやバス等の主要市場を荒らさない範囲でやってくれ」という扱いに止まっています(タクシー業界の反対が根強い)。

 しかし、ライドシェアは欧米や中国で広範に普及してきました。

「米KPCBによればライドシェアの利用回数は16年1~3月で63億回に上り、そのうち中国が3分の2を占め」「最大手の滴滴出行が16年8月に米国最大手のウーバー・テクノロジーズの中国事業を買収した」ことが注目されているのです(『週刊東洋経済12/31-1/7』P105)。

 ただ、ウーバー社は2016年12月14日にサンフランシスコで半自動運転車の配車を始めたものの、カリフォルニア州当局から「許可を出していない」という差し止めを食らう等の抵抗に直面しました。運転手の雇用の喪失、自動運転車へのサイバー攻撃等の懸念事項も懸念されています(産経8面:2016/12/23)。

 さらに、ウーバー社は経営面に問題があり、CEOの交代も起きました(当ブログ関連記事「ウーバー・テクノロジーズ社の問題点は何だろう」)。自動運転の高度化は多くの人間の仕事を不要化するので、「雇用」にこだわるトランプ政権の動向も気になるところです。

BMW、ダイムラー、トヨタ、日産、ホンダ、グーグル等の取組とは?

 2016年9月5日発売の『日経ビジネス』(「ここまで来た自動運転」)ではBMW社が「PT1」というレベル3の自動運転車の実用化を目指していることが紹介されています。試乗した記者は「PT1」もアウディの「A8」も高速道路を20kmきちんと走れたと書いているので、完全自動運転の車の販売は近づいているのかもしれません。

アウディ、BMW、フォルクスワーゲン、ダイムラー

 2017年に入り、全米民生技術協会(CTA™)が開催する主要テクノロジー企業の展示会である「CES 2017」(CES® 2017)が1月5~8日までアメリカのネバダ州、ラスベガスにて開催されました。

 そこでドイツ勢が米NVIDIA社と連携することが明かされました。(「自動運転で大手半導体メーカーが火花、「NVIDIA陣営」に独Audi、独ZF、独Boschが参加」2017/1/6、中田 敦)

米NVIDIAのJen-Hsun Huang創業者兼CEO(最高経営責任者)は2017年1月4日(米国時間)、「CES 2017」の基調講演を行い(写真1)、同社の自動運転用AI(人工知能)プラットフォーム「NVIDIA DRIVE PX 2」を自動車メーカーの独Audi、自動車部品メーカー大手の独ZFと独Boschが採用すると発表した。AudiとNVIDIAは2020年までに「レベル4」の自動運転を実現するとした。

 NVIDIAの車載コンピュータDRIVE PX 2は16年までにスウェーデンのVolvo Cars、米Tesla Motors、中国Baiduniに採用されることが決まっていました。これにZFとBosch(ともに自動車部品メーカー)が加わります。

(※NVIDIAは自社の「BB8」のほか、アウディ社と共同開発したAudiQ7の自動運転をCES2017で公開)

 そして、インテル社が開発した自動運転プラットフォームを「Intel Go」に関しても、同記事は「独BMW GroupとイスラエルMobileyeの3社で自動運転車の公道テストを2017年後半に開始」すると報じています。

 自動運転のプラットフォームをどこがつくるのかは大事な問題ですが、ここで大手半導体メーカーが自動車(部品含む)メーカーを主導しようと試みているわけです。

 そのほか、フォルクスワーゲン(VW)社がアマゾンの音声認識プラットフォーム「アレクサ」を活用することも明かされました。

(日経テクノロジー「音声認識は自動車のUIの要、VWがAmazonとタッグ  クルマのパーソナライズ化も加速」根津 禎 2017/1/6)

(フォルクスワーゲン社は)次世代UIの運転席として、3次元ディスプレーとヘッドアップディスプレー(HUD)、視線追跡機能を搭載したものを出展。例えば、運転者の視線に応じて、車載ディスプレーに表示する映像を切り替えることを想定する。プレスカンファレンスでは、音声認識を将来のUIの要と位置付け、米Amazon.com社と提携し、同社の音声認識プラットフォーム「Alexa」を活用していくことを明らかにした。

 さらに、2017年3月には、ダイムラーのツェッチェ会長はIT業界関係者のイベント「SXSX」において、新たな見通しを明かしています(『Wedge 2017年7月号』P27)

  • 部分運転車も自動運転車も数年以内に実用化され、人は車の中で仕事も運動も可能になる
  • 自動運転はクラウドソーシングでつくられる三次元地図を必要とする。
  • 自動運転にAI(人工知能)は必須
  • 今後、車は販売後もPCのようにソフトウェアがアップデートされる
  • グーグル、アップル、テスラ等が既存の自動車業界よりも技術で先行している。彼らとの比較の中でBMWは優位に立つことを目指さなければいけない。
  • 生き残るために既存の組織や働き方を変える必要がある。

トヨタ(+マイクロソフト)

 では、日本企業はどのような対策を講じているのでしょうか。

 トヨタ自動車は2016年1月に人工知能の研究開発のため、シリコンバレーに「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE,INC.」(TRI)を設立し、5年で10億ドルの投資を行うことを表明しました。

 その後、トヨタは同年4月に車から集めるビッグデータ分析のための会社をマイクロソフトとともに設立しています。画像処理半導体で高い市場占有率を占める米エヌビディアとも提携しました。

 2017年3月、トヨタはNTTと自動車の超高速無線通信の技術で提携し、現代の4G通信の10倍の速度を持つ5Gの技術を活かしてコネクテッドカーを共同開発することを決めました。NTTは5Gの開発で先行していたからです。

 さらに、日経朝刊(2017/7/25:1面)では、トヨタは「2020年ごろに高速道路での車線変更などに対応した『レベル3』の市販車の発売を目指す」(2020年前半に)「交差点などがあり複雑な判断が求められる市街地に対応する『レベル4』の技術を実現させる」とも報じられています。

 トヨタがこのロードマップを明かしたのは「欧州自動車アセスメント(ユーロNCAP)のロードマップで2018年から求められる「歩行者に対する夜間での衝突回避」と、国連・欧州経済委員会・自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で2018年に発効する改正「時速10キロメートル以上で、ハンドルを握った状態での自動操舵による自動車線変更」への対応」が必要だったからだとも言われています(ダイヤモンドオンライン7/31「トヨタが「2020年代前半に一般道自動運転」を明言した裏事情」桃田健史)。 

日産・ルノーはDeNA、マイクロソフトと連携

 日産は「セレナ」にレベル2の技術を搭載して大衆への認知度を高め、完全自動運転車を商業ベースで実用化するためにDeNA社と組んで実証実験に着手する方針です(2017年1月5日発表)。DeNAがITシステム構築を行い、2020年までに首都圏で走行試験を行うことを計画しています。

 日産の目玉は「Seamless Autonomous Mobility(SAM)」という仕組みです。日産は、17年1月のCESでこの構想を公にしていました(日経ITpro「日産の自動運転では人間のオペレーターがAIを遠隔サポート、ゴーンCEOの基調講演」2017/1/6、中田 敦)。 

 自動運転技術というと、AIが人間をサポートするイメージがある。しかしSAMでは逆に、日産のオペレーションセンターに勤務する人間が、不測の事態に直面して判断不能に陥った自動運転車のAIを手助けする。

 日産は2020年までに、高速道路だけでなく市街地でも利用できる自動運転技術を市場に投入する計画で、将来は無人運転も実現するとしている。しかしどれだけ自動運転のAIが進化しても、事故現場や工事現場など、AIが判断に迷う突発的な事態に遭遇する恐れがある。SAMはそのような場合に、人間のオペレーターがネットワーク経由でAIをサポートし、AIに対して代替のルートなどを教授する。

  このSAMには日産と提携したNASAの惑星探索ロボット等の遠隔操作技術が活かされる予定です。

 SAMでは人間のオペレーターがAIに指示した問題解決策が日産のクラウドに蓄積されます。そして、その情報が同じ地域を走るほかの自動運転車にも伝えられるため、人間のオペレーターがそれぞれの自動運転車に対して指示を出す必要はないとされています。

 アメリカが総がかりで開発したNASAのシステムが活かされるのだそうです。

 そのほか、インターネットに接続するコネクテッドカーについては、車載端末にマイクロソフト社の「Cortana」(音声通話システム)が採用されます。これは声でカーナビの行先などを変える仕組みです。

グーグル(ウェイモ)

 グーグルはレベル4の技術開発に特化し、公道での自動運転の実証実験などを行っています。高速で安全な完全な自動操縦の実現を目指し、特許を増やしているわけです。グーグル社は研究開発においてカネに糸目をかけない企業です。

 グーグル社は2009年から自動運転車の開発を進め、親会社であるアルファベット社は自動運転開発のためにウェイモ社を設立しています。

 これに対して、従来、自動車大手は警戒をしてきました。

「自動運転のシステムは、『走る、曲がる、止まる』といった走行制御など、車の中核技術と密接に結びついている。中核技術をグーグルに握られれば、自動車メーカーは車体の製造だけを担う『下請け』になってしまうのではないか」と懸念していたからです(朝日朝刊4面:2016/5/5)。

 しかし、最近はグーグル社との協力事例も増えてきました。

 ウェイモ社はホンダの研究開発子会社(「株式会社本田技術研究所」)と共同研究を行い、公道での走行実験等を行います。その後、アリゾナ州フェニックスで新たな実証実験が始まり、サインアップした者はウェイモの自動運転ミニバンに乗れるようになりました。

 ASIMOロボットの技術力を誇るホンダも研究重視の社風なので、この二社はウマが合うのかもしれません。

 ウェイモ社は2015年10月にテキサス州オースティンの公道で完全自動運転の試験走行を実現しており、近年はホンダやフィアットクライスラーモービルズ(FCA)等、連携先を広げてきています。

 最近では、ウェイモ社は2017年7月12日に自動運転車が緊急車両の接近とその音を認識するために走行テストを行ったことを発表しています。アリゾナ州チャンドラー市当局に協力してもらい、パトカーや白バイ、消防車等と共に自動運転車が走行テストを行いました。緊急車両のサイレンが聞こえる方角等を判別したのです。

ホンダ「NeuV」構想

 2017年1月に開催されたCESにて、ホンダはソフトバンクと共同研究中のAIを備えた自動運転の電気自動車NeuV(ニューヴィー)を公開しました。このAIは「感情エンジン」と呼ばれ、運転手の顔色・表情・声色等からストレスの有無・軽重を知り、安全運転を目指すように設計されたものです。

 注目すべき点は、空き時間に無人タクシーとしてお客を乗せ、電気代が高くなる時期に蓄電池に充電した電気を売るなどして無人自動運転車が勝手にお金を稼いでくるという使い方を想定していることです。

 つまり、無人自動運転が完全実用化すれば、オーナーが出勤して仕事をしている間に、その車が勝手にどこかでタクシーをして、何万円かを稼いでくれる時代が来る可能性があるわけです。

 このホンダのNeuV(ニューヴィー)の構想が日経テクノロジー(「自動運転とAIが進化したとき、これがホンダの提案」清水 直茂 2017/1/6)で紹介されていました。

(NeuVが)朝、所有者を職場に自動運転で運ぶ。このとき所有者が緊張していると推定できれば、カフェに寄り道することを提案し、コーヒーを買う。コーヒーの種類などは自動で店に予約しておき、代金もクルマが自動で支払う。所有者はコーヒーを受け取るだけだ。職場に送った後は、午後7時に迎えに行く。その間はクルマを使わないため、カーシェアやライドシェアによるサービスでクルマを他人と共有する。NeuVは電気自動車(EV)なので、車両の共有相手がいなければ電力を売電することもできる――。

 本当に実用化に成功したら、自動車の概念そのものが変わる可能性があります。

 自動運転車が副業してくれるようになれば、自動車価格が上がっても、何年かしたら、ニューヴィーが自ら稼いだお金(累計額)で購入代金と同程度のお金を稼いでくれるかもしれないのです。そうなれば、この車は”金のなる木”でもあるので、自動運転車が不動産のような投資対象になる可能性が出てきます。

 あと何年かしたら、「グーグルタクシー」と称したサービスが出てきても不思議ではなさそうです。

FCAのコンセプトカー

 日経テクノロジーのCES2017速報(「完全自動運転車への更新機能、FCAが提案」清水直茂 2017/1/4)ではフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のコンセプトカーが紹介されています。

(コンセプト車は)「レベル3相当の自動運転機能を実現する。運転者が車両を監視することが前提で、高速道路などで運転を車両に任せられる」

「周囲を認識するセンサーや、アルゴリズムを演算処理するプロセッサーなどの主なハードウエアは、完全自動運転車を想定した高性能品を用意した。カメラは短距離と長距離の2種類あり、車両の前と横、後ろに、ミリ波レーダーは車両の前後などに搭載する。赤外線レーザースキャナー(LIDAR)を用意し、車両の前方を認識する。さらに超音波センサーを車両の前と後ろのバンパーに備えた」

「カメラは車内にもある。運転者が監視していることを認識するために、車内カメラなどを使う。なお、同カメラは音声認識と組み合わせて運転者の確認にも使っている。事前に登録した人であれば、音声で解錠したり施錠したりできる」

  ユーザーが望めばレベル4の完全自動運転にまで移行できるようにデータをダウンロードする仕組みも用意しています。

フォード、アマゾン

 そのほか、フォードとアマゾンの連携が2016年のCESで発表されています。

 ここではフォードの音声操作システム「SYNC」とアマゾンのアレクサが連携するのです。

 フォードは2月10日にグーグルとウーバーの技術者2名が設立した米自動運転ベンチャーの「アルゴAI」に5年間で10億ドル(約1130億円)の投資を行うことも発表しています。

 2016年8月にはフォードは2021年にレベル4の自動運転を量産し、ライドシェア事業に投入する方針を明かしました。

 そして、2017年1月4日には、フォードとアマゾンの連携計画を公表。これが実現すれば、フォード車のオーナーは、車内からアマゾンの「アレクサ」を用いて家電を操り、自宅からでも車を制御できるようになるのです。

 第一段階の「Alexa at home」は2017年1月中に開始(電気自動車「Focus Electric」、プラグインハイブリッド車「Fusion Energi」と「C-Max Energi」が対象)。自宅でもエンジンのオンとオフ、ドア操作、燃料およびバッテリー残量と走行可能距離の確認が可能になります(アレクサに聞くと答えてくれる)。

 第2段階は2017年夏に開始予定。「Alexa on the go」では目的地の探索とルート表示、ニュースや音楽の再生、アマゾンのカート利用、スマート家電、照明点灯やガレージドアの開閉等が可能になります。

 フォード社は2021年までに完全自動運転の実現を目指しています(レスポンス「フォード、次世代自動運転車の開発車両を初公開」1/7)。

フォードモーターは、ステアリングホイール、アクセル、ブレーキなどの操作を完全に自動化する「レベル4」と呼ばれる完全自動運転車を、2021年までに実用化する計画を掲げている。現在、フォードブランドの主力中型セダン、『フュージョン』ベースの開発車両を使用し、米国の公道などにおいて、自動運転車の走行テストに取り組んでいる。CES17で初公開されるのが、次世代の自動運転車の開発車両。最新のフォード『フュージョン ハイブリッド』をベースにした開発車両となる。

自動運転は怖い? しかし、時代の流れは実用化に向かう

 自動運転の実現に向けて世の中は動き続けています。

 しかし、少なからぬ一般ユーザーは自動運転の普及を手放しで喜んでいません。

「そんなの、事故ったら誰が責任を取るんだよ」

「自動運転ってやっぱ、やばいんじゃね?」

 こうした不安とはうらはらに技術が実用化に向かっています。そのうち、人工知能のほうが人間に勝る運転能力を獲得する可能性もあるのです。

 実際、米軍では、F15戦闘機の模擬戦でベテランパイロットが人工知能に敗れるというショッキングな出来事がありました。近未来に車の操縦でも同じようなことが起きる可能性は高いのです。

 そして、自動運転の事故率が人間の事故率を大幅に下回った場合には、社会の中で下手なドライバーを見る眼が厳しくなっていきます。「人工知能には事故の責任が取れない」と言っていたら、いつのまにか「あんたの運転は人工知能以下や。あんたが運転するくらいなら、自動運転のほうがましだわ」と言われかねないのです。

 筆者も車が大好きな知人に聞いてみたのですが、その方は「ドライバーの運転水準はまちまちなので、人工知能の自動運転が普及したら事故率が下がるケースもあるのではないか」という意見でした。

「成熟した車社会の愛知ではドライバーのレベルが高く、千葉県だと乱暴な運転をする人が多くて困る」(ホントかよ・・・)と自分の出身地を持ち上げながらも、その方は「自動運転では誰が責任を取るのか等と批判する前に、自動運転に負けない運転技術を持てるよう努力すべきだ」と述べていたのです。

 人工知能はドッグイヤーで進化していきますから、自動運転がメジャーになると「下手なドライバー」が車道から退場勧告をくらう可能性が出てきます。日本の自動運転開発の大きな眼目は事故死者の減少だからです(15年は4117人だったが、日本政府は2020年までに2500人以下にすることを目指している)。

「ありえない運転」の例として「逆走車」がありますが、その件数は、2011年が203件、12年が202件、13年が136件、14年が224件もあり、意外と無視できない数に達しています(『週刊現代2015/3/28)。逆走しそうになった時、自動運転でアラートが鳴るか、軌道修正がなされるようになれば、この種の悲劇の件数は減るかもしれません。

 また、今後、退職する団塊の世代が高齢化していった時、高齢化社会で車の安全が保たれるかどうか、という大問題もあります。その際に、自動運転が事故回避の力強いサポートシステムとなることが期待されているわけです。

2020年には「自動ブレーキ」がほぼ全車種に普及?

 高齢化に伴い、身体機能の衰えたドライバーが増えるので、前節の話は他人事ではありません。高齢者の事故対策の一環として、国土交通省は自動ブレーキの普及を目指しています。

 読売朝刊(2017/3/14:11面)では「2020年には国内で生産されるほぼ全ての乗用車に自動ブレーキ機能が搭載される見通しだ」とも報じていました(例:マツダは17年度中に国内で売られるほぼ全車種に自動ブレーキを標準装備する)。自動ブレーキの普及率は1%未満(2010年)⇒約4割(15年)⇒ほぼ100%(20年)へと上がると予測されているのです。

 自動ブレーキは前方の車や障害物などを探知するだけでなく、近年は歩行者も認識できるようになってきました。同紙によれば、トヨタは、この種の自動ブレーキを高級車種だけでなく、小型スポーツ用多目的車「C-HR」にも装備させる方針のようです。

 これは高機能化を意味しますが、その分、自動車の値段は上がるので、消費者は慎重に財布の中身と相談しながら買い物をしなければいけなくなります。

 現在、自動ブレーキの搭載は各社の任意なので、統一された安全基準はなく、「同じ条件で歩行者に対する停止実験をした場合、人形の前で止まる車と、止まれずに人形をはねてしまうものがある」と言われています。各社の技術にはばらつきがあるわけです。

 しかし、75歳以上の交通死亡事故の原因として、自動車の「操作の誤り」が29%(2015年)を占めているため、高齢運転に伴う事故対策の一環として、国交省は自動ブレーキを新車販売の条件とし、全社への搭載を義務づけるべく法改正をしようと考えています。この改正は、国連で国際基準ができ次第、行われる見通しです(朝日夕刊1面:2017/2/3)。

 そのほか、国土交通省は「自動ハンドル」に関しても、2017年内に「15秒放置で警告表示」等の性能基準を設け、メーカーに達成を義務づける方針を決めました(朝日朝刊1面:2017/8/13)

自動運転実用化を進める世界連合が発足

 日経記事(2016/12/19:朝刊1面)は、世界経済フォーラム(WEF)が自動運転の世界連合を発足させ、自動車やIT大手、保険等の分野の大手企業が参加することになったと報じています。

 27社が実証実験に参加し、安全規格や運転ルールづくりを話し合うのですが、参加する企業を分野別でみると、自動車関連はトヨタ、日産、GM、フォルクスワーゲン、BMW、ボルボなど。保険ではSOMPOホールディングス、米リバティ・ミューチュアル・グループなど。ITではエリクソン、クアルコム。配車サービスのウーバーテクノロジー、物流の米UPS等も参加。

 なお、自動運転のルールづくりは4段階のレベルに合わせて進められており、レベル2に関しては日欧が自動ハンドルの基準を策定し、レベル3以降の安全化のために日米欧がサイバー対策(乗っ取りを防ぐ)の指針づくりを進めています(日経朝刊1面:2016/11/5)。

 しかし、日本の国交省や経産省が出した「自動走行の実現に向けた取り組み方針」には幾つかの問題点があるようです。『Wedge 2017年7月号』(P29)では、それを四点に集約しています。

  • 自動運転に必要な人工知能についての記載がない
  • 欧米は人工知能とIoTを重視しているのに「欧州勢はインフラを活用し、米国勢は車両技術を優先した特定エリアでの早期実現」と書かれている
  • 日本が高性能な三次元地図開発が遅れていることを認識していない
  • AIのディープラーニングのためのソフトウェア人材が必要という認識がない

 今後、世界基準での自動運転と日本政府の規制下にある自動運転との格差が広がらないかどうかを注視していかなければなりません。

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