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【LMT】ロッキードマーチンのF35とTHAADがアジアを守る?

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  以前、「トランプ氏が共和党候補になってからロッキードマーティン社の株価が下がり続けている」という推測を書きましたが、同社の決算日(25日)が近いので、改めてこの話の詳細を書いてみます。

 ロッキードマーティン社(LMT)はアメリカ随一の防衛(軍需)大手企業で、ステルス戦闘攻撃機F35の主要な製造元となっていますが、この戦闘機はNATO諸国や日本などと国際共同開発が進められてきました。

 そのため、「同盟を見直せ」と叫ぶトランプ氏の当選は同社の経営にも大きな影響を与えます。無論、LMTはF35以外にも多くの仕事がありますが、F35は年100億ドル以上のビッグビジネス(米防衛予算)です。

 F35の受注の中核を担うのはLMTで、この戦闘機の売上は同社の売上の約二割を占めています(予定購入機数は2443機。費用は約3790億ドル)。

 トランプ氏の同盟見直し政策がF35の国際共同体制をぐらつかせた場合は、マイナスの影響が出てくる可能性が高いわけです。

 今回はそもそも、アメリカの防衛産業やLMT社、F35の国際共同開発と同盟政策との関係などを取り上げてみます。

そもそもLMTって何? 軍需企業ってヤバくないの?

 初めからマニアックな話になっているので、一般目線で、そもそもの説明から始めます。防衛産業やロッキード・マーティン社、F35等についてネットで説明は出ていますが、何となくわかりにくいものが多いからです。

疑問①:軍需企業は良いのか悪いのか?

 ロッキードと聞くと、歴史の教科書で見た収賄事件(ロッキード事件:田中角栄逮捕)を思い出す方もいるかもしれません。

 こうした防衛産業は軍産複合体批判などもあって、日本ではよくないイメージが先行しています。アニメでもよく悪役にされていますが(例:ガンダムユニコーン等)、実際のところ、日本を守っているのは、米国の防衛産業が生んだ高性能な装備です。

 例えば、F15戦闘機はボーイング社からのライセンス生産、ミサイル防衛システムはレイセオン社、F16戦闘機はロッキード・マーティン社がつくっています(自衛隊のF2戦闘機はF16の日本向けバージョン)。

 実際は、日本国民1億2千万人は米国の防衛産業の恩恵にあずかっており、80年代以降の日本の平和はF15とF16の大量導入で守られたという説もあるのです。日本ではアメリカの防衛大手企業について、あまりよく言う人はいませんが、彼らがつくった装備がなければ、日本人は今頃、中国語や朝鮮語、ロシア語を話さなければいけなくなっていたのかもしれません。

 むろん、軍需系企業には、戦争で利益を増やす危険な面もありますが、日本やNATO、オーストラリアなどの「同盟国の防衛」に関しては、アメリカ軍需大手は最高度の技術で多大な貢献を果たしてきました。

 実際に、本年9月にも、自衛隊が用いるF35Aのお披露目の式典では、防衛省や自衛隊の代表も交えて「この戦闘機は今後の日米同盟の象徴だ」というPRがなされています(LMT社HP)。同盟と言っても、それを支える装備がなければお題目になってしまうので「F35は日米同盟の象徴である」という点で、LMT社と日本政府側の双方が同じ見解を共有しているわけです。

 F4戦闘機の役割終了に伴い、日本ではF35AをLMT社から購入することにしたのですが、こうした経緯を考えると、この問題に関しては、軍隊と装備には「国民を守る」という肯定的な面と、「侵略に悪用される危険性がある」という怖い面があることを、功罪を踏まえて冷静に見直すことが大事です。

疑問②:ロッキード・マーティン社(LMT)はどんな企業?

 LMT社はアメリカの最大手の防衛系企業です。

「あれっ。ボーイングじゃないの?」と思われた方もいるかもしれませんが、ボーイングの場合、約7割が民間向けの売上なので、軍事系の装備生産だけを見たら、LMTのほうが大きいのです。15年末の数字で見ると、ボーイング社の売上は961億ドル。そのうち軍需部門は31.4%(約300億ドル)ですが、LMTの売上高は461億ドル(『2016夏号 米国株速報』)。

 要するに、LMTの売上の約8割は軍需部門なので、こちらのほうが軍需主体の企業なのです。LMTはアメリカナンバーワンの防衛産業と言っても過言ではなく、ここで生み出される装備が世界の安全保障と平和、戦争に非常に大きな影響を与えています。

 そして、2017年以降、LMT社が中心になって各国に送るF35戦闘機が、NATOと日本、韓国、オーストラリア等の平和を守ることが期待されているのです。

疑問③:LMTと同ジャンルの有名企業は何?

 LMTがつくる装備は空軍と宇宙に関わるものが多いので「軍需主体の航空機メーカー」(『米国株速報』)という説明がピッタリ当てはまります。ジャンルが近いメーカーはノースロップ・グラマン社(NOC)とレイセオン社(RTN)ですが、売上高の規模にはかなりの差があります。

【売上高】(単位はドル。端数切捨て。13年=13年12月)

  • LMT:453億(13年)⇒456億(14年)⇒461億(15年) 
  • NOC:246億(13年)⇒239億(14年)⇒235億(15年)
  • RTN:237億(13年)⇒228億(14年)⇒232億(15年)

(※LMTとRTNの出所は『米国株速報』、NOCのみ同社HP。以下同)

 ざっくり言うと、LMT社の規模はノースロップ・グラマン社(NOC)とレイセオン社(LTN)を足したぐらいの大きさです。この三社の純利益を比べてみましょう。

【純利益】(単位はドル。13年=13年12月)

  • LMT:29.81億(13年)⇒36.14億(14年)⇒36.05億(15年) 
  • NOC:19.52億(13年)⇒20.69億(14年)⇒19.9億(15年)
  • RTN:20.74億(13年)⇒22.44億(14年)⇒20.74億(15年)

 こうして見ると、グラマンやレイセオンは規模でこそLMTより小さいものの、純利益の比率が高いことが分かります。では、一株当たり利益(EPS)はどうでしょうか。(※EPS=当期純利益/発行済株式総数。増資による株式数増を考慮した「希薄化後EPS」で比較)

【一株当たり利益】(希薄化後EPSでの比較。単位はドル。13年=13年12月)

  • LMT:9.13(13年)⇒11.21(14年)⇒11.46(15年) 
  • NOC:9.35(13年)⇒9.75(14年)⇒10.39(15年)
  • RTN:6.16(13年)⇒7.18(14年)⇒6.8(15年)

 LMTが一番ですが、グラマンのEPSもなかなか高水準です。

 そして、15年末の株価で1株当たり利益に対して株価が何倍まで買われているのかをNasdaq.comで見てみると、その指標であるPERは以下の値でした。

  • LMT:20.11(15年)⇒19.87(16年予測) 
  • NOC:23.6(15年)⇒19.62(16年予測)
  • RTN:19.62(15年)⇒20.05(16年予測)

 PERは20倍前後と見られていますが、この三社は防衛予算で受注する安定企業なので、高めの数字になるのでしょう。現在、日本企業のトヨタでも12.3倍程度(ロイター)なので高く見えますが、産業特性から考えれば、アメリカの防衛産業は、もともと高めにPERが出る業界なのではないかと思います。

F35は、結局、どこが「売り」なのか?

 企業を比較しているうちに、だんだん株の用語が増えてきたので、もとの一般目線での書き方に戻しますが、そもそも、このF35戦闘機というのは、どういう戦闘機なのでしょうか。

疑問①:F22もF35もステルス機だが、いったい、何が違うんだ?

 レーダーに映らないステルス技術は湾岸戦争の時に爆撃機に採用され、その後、戦闘機にも活かされるようになりました。

 その結果、誕生した世界最強の戦闘機がF22ラプターです。アメリカでは、このラプターを海外に売るか売らまいかという議論が繰り広げられ、最後は「アメリカが最強国の地位を維持するためには、売らないほうがよい」という落ちになります。

 しかし、同盟国にもステルス機のニーズがあるので、何か対策が必要でした(欧州のユーロタイフーンという高性能戦闘機でも完全なステルス性を確保できていない)。

 こうしてステルス機の新バージョンの開発が始まりました。

 そして、「新しい戦闘機をつくるなら、新しい実験をしなければ」という話になり、F35ライトニングにはF22とは違うコンセプトとミッションが定められます。

 ざっくり言えば、F22戦闘機は制空権を確保するための最強の戦闘機です。

 そして、F35は空中戦をしながらも、高性能のレーダーや情報ネットワークを生かして対地、対艦への攻撃をこなす多用途の戦闘攻撃機です(空中戦能力はF22に劣る)。

「それって、要するに何でも屋ってこと?」と思われた方もいるかもしれません。

 制空権確保の空中戦能力はF22が最強ですが、F35はどちらかと言えば、空中戦の後、地上や海上の目標を攻撃することに力点が置かれているので、それは間違いではありません(「多用途戦闘機=マルチロールファイター」なので、言葉の意味合い的には、”何でも屋の戦闘機”ということになります)。

 要するに、アメリカとしては、空中戦で最強の能力を持つ機体(F22)は同盟国にも売れない。しかし、空中戦能力はそこそこで、対地・対艦攻撃に強みのある機体を同盟国とシェアすることにしました。そして、これを国際共同開発で完成させようとしたのです。

疑問②:F35って結局、強いのか? 弱いのか?

「ふーん、じゃあ、さほど強くないってわけ?」という声もあろうかと思いますが、この機体の戦闘能力には、恐らく、従来の戦闘機では太刀打ちできないでしょう。

 LMT社やNOC社の動画を見ると、このF35ライトニングの恐るべきコンセプトが鮮やかに描かれていました。その内容をざっとまとめると、以下の通りです。

  • 敵のレーダー網をかいくぐって気づかれぬ間に敵基地上空に侵入可能。
  • ステルス機の特性を生かし、気付かれる前に敵機を先制攻撃で撃墜。
  • 高性能のレーダーを持つ数機のF35が四方八方に電波を飛ばし、空中から地上までの敵を全て把握。敵機の情報をA機、B機、C機も共有し、攻撃することが可能なので、撃ち漏らしが出にくい。
  • 高速移動しながらも各機が発見した敵・味方の識別情報を共有し、同じ情報を基に戦っているので、間違えて味方にミサイルを発射する可能性は低い。
  • 敵はF35を発見できないまま撃墜され、やっと発見した敵機が後ろから攻撃をしかけても、F35は前方に向けて発射したミサイルをUターンさせて敵機を逆に撃墜

 (※参照動画は以下の二つ)

  1.  https://www.youtube.com/watch?v=Q7ufjQ6Eyj8
  2.  https://www.youtube.com/watch?v=e1NrFZddihQ

 このコンセプトが実現したら、ステルス能力のない戦闘機の群れがF35の編隊に対抗するのは、かなり難しいでしょう。見えないところから、高性能ミサイルの第一波攻撃を必ず受けてからの不利な戦いを強いられるからです。

 F35は空中戦もできますが、360度を見渡せる高性能の遠距離レーダーで敵機を発見し、気づかれる前に先制攻撃をしかけてくるので、空中戦以前に敵機に対して「お前はすでに死んでいる」という北斗の拳のような状態を作り出してしまうわけです。 

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(THAADの発射軌道。実に美しい・・・。出所はWIKI画像) 

追記:LMTはTHAADミサイルの製造元

 2017年に入り、米朝対立が本格化しました。

 7月28日の北朝鮮のミサイル発射に対抗し、米軍が30日に「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を使った弾道ミサイル迎撃実験を行い、28日には、米韓両軍は北朝鮮への攻撃を想定したミサイル実験も行っています。

 米国防総省は28日に米韓同盟の合同訓練の内容を公にしています(出所:U.S.-South Korea Conduct Training in Response to North Korean Missile Launch)。

  • 北朝鮮の大陸間弾道ミサイル発射を踏まえ、米第8陸軍と南朝鮮陸軍が2度目の合同訓練を実施した。
  • この訓練では、米陸軍の戦術ミサイルシステム(ATACMS)と韓国の「玄武(ヒョンム)2」ミサイルが用いられた。
  • ATACMS(Army Tactical Missile System)は迅速に導入され、敵地深くへの精密打撃能力を提供し、米韓同盟がいかなる天候下でも時宜にかなった目標の攻撃を可能にする。

 ATACMSは、ロッキード・マーティン社がつくった短距離の地対地ミサイルで米陸軍と韓国軍の双方が用いています。射程は約128kmなので、国境近辺にある北朝鮮の重要目標を攻撃するために用いられます。

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(ATACMS:WIKI画像。筆者トリミング)

 また、「玄武2(ヒョンム)」は韓国がつくった短距離弾道ミサイルです。射程300kmの「玄武2A」は軍事境界線(38度線)付近にあるサイロから発射され、飛行場を含む北朝鮮の主要拠点を攻撃します。

 そして、国防総省のミサイル防衛局は、30日にTHAADの迎撃実験が成功したと発表しています(出所:Ballistic Missile Defense System Test Successful)。THAADの製造元もロッキードマーティンです。

  • 米ミサイル防衛局とテキサス州フォートブリス配属の米軍第11防衛砲兵旅団がミサイル防衛実験を実施。
  • 中距離弾道ミサイルを模して、太平洋上の空軍C-17輸送機から発射された標的をアラスカ州のコディアク島に配備されたTHAADシステムが迎撃。標的を検出、追跡、傍受することに成功した。
  • この実験で収集されたデータによってTHAADの性能が上がるとミサイル防衛庁長官は述べた。
  • 第11防衛砲兵旅団の兵士には、あらかじめミサイル発射の時刻は伝えていない。実際の戦闘と同じようにレーダー操作やミサイル発射を行った。
  • THAADシステムのテストは15回行われ、15回目とも迎撃に成功。

  米軍は5月には地上配備型迎撃ミサイル(GBI)を使い、ICBMを想定した迎撃実験にも成功。様々なフェーズでミサイルを迎撃する態勢を固めています。

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(THAAD画像。出所はWIKI画像)

THAADの役割:米国の迎撃ミサイル群の中での位置づけ

 中国がTHAADミサイルの配備に反対していることもよく報道されますが、そもそも、このミサイルには、どんな機能があるのでしょうか。

 弾道ミサイルは宇宙ロケットと同じ推進方式で、放物線を描いて飛びます。

 その放物線の中で、加速しながら上昇する過程を「ブースト段階」、最高高度を描く頂点付近の過程を「ミッドコース段階」、重力の加速を受けて陸地に迫る過程を「ターミナル段階」と呼んでいます。

 これに対して、米軍は何段階もの迎撃ミサイルを用意しており、THAADミサイルは「ターミナル段階」のミサイルを高高度で迎撃する装備として位置づけられています。

 すでに、日本に配備されている迎撃ミサイルを例に挙げると、イージス艦のSM3ミサイル(射程500km)は「ミッドコース段階」での迎撃、陸上車両から発射されるPAC3ミサイル(射程20km)は「ターミナル段階」の最後の迎撃を担います。多くの段階を持つ米国のミサイル網のうち、2つだけが今の日本に配備されているわけです。

 米国の迎撃ミサイルを段階別に見ると、以下の通りになります。

  • ブースト段階:SM3-ブロック1A(射程1200km)※今の主力
  • ブースト段階:SM3-ブロック2A(射程2000km)※開発中
  • ミッドコース段階:SM3(射程500km)※イージス艦等から発射
  • ミッドコース段階:GBIミサイル(射程2000~5000km)※大気圏外迎撃用
  • ターミナル段階:THAADミサイル(射程250km)
  • ターミナル段階:PAC3ミサイル(射程20km)※いわゆるペトリオットミサイル

 GBIミサイルの飛距離の長さが目を引きますが、このミサイルは大陸間弾道弾を迎撃するためのものです。これは大気圏外にまで出て迎撃するために、異様に長い射程距離が必要になっています。

 日本を狙うのは射程千数百kmである中国の東風21号や北朝鮮のノドンミサイルなので、従来、GBIはスペックオーバーだったと言えるのかもしれません。

 同じミッドコースと言っても、日本のイージス艦から撃つSM3は大陸間弾道弾ではなく、前掲の東風21号やノドンミサイルなので、GBIほどの高度が要らないわけです。

 このブースト、ミッドコース、ターミナルの区分は、対象とするミサイルによって区分けがずれることもあります。米国の場合は迎撃対象が大陸間弾道弾になるため、SM3はターミナル段階に分類されるようです。

 そして、問題のTHAADを見ると、ちょうど、SM3とPAC3までの間の空白地帯を守るミサイルだということが分かります。

THAADかイージス・アショアか?

 軍事評論家の野口裕之は米軍関係者から「文大統領は、最新鋭のTHAAD(サード=高高度防衛ミサイル)システムをいらないというつもりだろうか? 彼は正気だと思うか?」と聞かれ、「韓国がいらないのなら、日本に持っていく』と、トランプ米政権が文政権に伝えればいい」と答えたと最近の産経記事(2017.5.15)に書いています。

(「 文在寅大統領がミサイル迎撃システムを拒否するなら『日本移転』しかない! そうなった時、韓国は」)

 この記事では、予算が足りないので、結論としてはイージス艦に搭載されている防空システムの陸上バージョンである「イージス・アショア」の配備を薦めているのですが、日本にTHAADが入ったら、日本に負けたくない韓国も必死に配備したがるだろう、というわけです。

 日本にTHAADが配備されれば、韓国はさぞ慌てるだろう。しかし、防衛予算がいくらあっても足りぬ現下の危機的情勢では、フトコロ具合と相談し《イージス・アショア》の導入を優先させたい。もちろん、同時に手に入れられる財源が確保できれば、そちらがベストではあるが…。 

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(Aegis Ashore deckhouse:出所はWIKI画像)

 THAADの難点としては「とにかく高い」という問題があります。

 10億ドルなので、今の為替で言えば、だいたい1100億円~1200億円ぐらいの間になります。護衛艦「こんごう」の建造費は1223億円ともいわれるので、THAADミサイルだけで艦艇1隻分のお金がかかるわけです。

 我が国の予算制約からいえば、これはかなり厳しいと言わざるを得ないでしょう。

THAADの目玉は、高性能レーダー

 では、THAADは、どのように運用されるのでしょうか。

 よくある方式は、8輪駆動の重トラックに8連装ランチャーを乗せ、そこに24発の迎撃ミサイルを積み込みます。6両を一組にし、射撃管制通信所とXバンドレーザー部隊と連携しながら、目標となるミサイル迎撃を行うのです。

 THAADミサイルは射程250km、迎撃高度は150kmともいわれています。

 まずは前掲のXバンドレーダーで誘導し、次に弾頭に付随する赤外線シーカーを用いて「飛翔体」を把握し、小型のスラスターからの噴射で軌道を変えた弾頭が「飛翔体」への体当たりを行うのです。

 このミサイルの肝は、Xバンドレーダーにあるわけですが、この正式名称はAN/TPY2。

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(AN/TPY-2レーダー:出所はWIKI画像)

 THAADで用いるAN/TPY2レーダーの捜索距離は1000km。韓国に配備すると、北朝鮮を通り抜けて中国の東北地方までが捜索されてしまうので、中国側が嫌がっているわけです。

 AN/TPY2レーダーには、ターミナルモード(捜索距離1000kmだが、高角度なので、広い扇型の範囲を捜索可能)と、フォワード・ベースド・モード(前方配備型:捜索距離1400km以上。ターミナルモードより見れる角度は狭い)の二種類があり、THAADは前者のターミナルモードを採用しています。実際は、在日米軍は後者のフォワード・ベースド・モードのXバンドレーダーを京都府経ガ岬と青森県車力に配備しており、その距離は何と2000kmにも及ぶようです(『軍事研究』2017年6月号 P123~127 河津幸英氏)。

 こうしてみると、すでに高性能レーダーが置かれている我が国は、前掲の野口氏が指摘したように、THAADよりも、イージス・アショアを優先させたほうがよさそうです。

 なぜかというと、日本のSM3は護衛艦搭載の48発程度の数量なので、百発単位でのミサイルが迫った場合、対応しきれなくなってしまうため、防衛は穴だらけなのが現状だからです。

 かといって、ミサイル防衛システムにだけお金を使えるわけでもないので、イージス・アショアで可能な限り、「穴埋め」をすべきなのでしょう。

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