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トランプ政権閣僚一覧 経歴、素顔、政策 ~どんな顔ぶれ?~ ※随時更新

トランプ政権の閣僚の顔触れが揃いました。

公職未経験の経営者や軍人らの閣僚入りし、人材の入替えが行われました(本記事は12/13に公開後、随時更新)。

この政権の陣容に関して、川上高司氏(拓殖大大学院教授)は以下のようにグループ分けしています(『トランプ後の世界秩序』P25~33)

  • インナーサークル(トランプ側近と身内):ペンス副大統領やクシュナー上級顧問等
  • 軍人・強硬派:マクマスター補佐官、マティス国防長官、ケリー国土安全保障長官、セッションズ司法長官等
  • 実業家:ムニューチン財務長官、ロス商務長官、コーン国家経済会議委員長等
  • 論功行賞と女性:カーソン住宅都市開発長官、ヘイリー国連大使、デボス教育長官等

トランプ氏の意図が見える人事としては、通商強硬路線のライトハイザーUSTR長官やCO2規制に反対するプルイット環境保護局長官、イラン核合意に反対するポンペオCIA長官等の人事が挙げられます。

大使人事では、親イスラエル派のフリードマン氏(弁護士)や知日派のウィリアム・ハガティ氏(民間コンサル会社在籍時に3年間東京に在住)、習主席の「長年の友人」であるテリー・ブランスタッド氏(元アイオワ州知事)等、駐在国寄りの人材が指名されました(テリー氏は緩衝役とみられる)。

そして、政権発足後、2017年には辞任劇が相次ぎました。

  • 2月13日:マイケル・フリン大統領補佐官(ロシア疑惑で辞任)⇒マクマスター元陸軍中将が後任
  • 7月21日:スパイサー大統領報道官(兼広報部長代行)辞任
  • 7月27日:プリーバス首席補佐官が辞任(政権の内部情報をリークしたとされた)⇒ケリー国土安全保障長官が後任
  • 7月31日:アンソニー・スカラムチ広報部長(52歳、投資会社創業者)が辞任⇒後任はサラ・ハッカビー・サンダース氏。

さらに、8月18日には、選挙期間中からトランプ氏の有力な側近だったスティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問が辞任しました

「反移民」「保護貿易」「米国優先」等の主唱者が北朝鮮政策に関して「軍事的解決策はない」と発言したことで退任となり、その後はケリー首席補佐官を軸に路線転換が進みました。(関連記事:スティーブン・バノン氏来日講演と『炎と怒り』の要旨

その後、ケリー氏を中心にした新体制が発足し、ケリー、マクマスター、マティスの三氏には、北朝鮮問題などで揺れるトランプ政権の重石となる役割が期待されています。

秋に入ると、9月29日にはプライス米厚生長官が辞任

その原因はプライス氏がプライベートジェット機を国内出張のためにチャーターし、多額の公費を使ったためです。5月以降、26回の国内出張を行い、40万ドル(4500万円程度)を用いただけでなく、外国への出張に軍用機を用いて多額の交通費を用いたことが問題視され、事実上の解任に至りました。

秋口頃からティラーソン国務長官退任の可能性が報じられましたが、2018年に入り、同氏は年初に続投の意向を強調しています。

2018年の米国政治を動かす閣僚の顔ぶれを見ていきましょう。

Contents

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副大統領:マイク・ペンス氏:(元インディアナ州知事)

本名はマイケル・R・ペンス(Michael R. Pence)。マイクは略称です。

ペンス氏はインディアナ州のコロンバス市に生まれました(1959年1月7日、59歳)。

副大統領指名を受ける際に「自分はまずキリスト教徒であり、次に保守主義者であり、共和党員である」と述べたように、ホワイトハウスHPの経歴でも、冒頭に宗教的な価値観の話が紹介されています。

移民の子であるペンス氏の両親はインディアナの町でコンビニ経営に成功し、同氏はそこで勤勉さと信仰、家族の大切さを学びました。

ペンス氏はハノーバー大で歴史を学び、1981年に卒業。大学時代に信仰心の意義をつかみ、インディアナ大学のロースクールで弁護士資格を取ました。この頃に生涯の妻となるカレン夫人と出会っています。

1988年と90年の下院選に立候補するも落選。その後、ペンス氏は地元のラジオ番組等でパーソナリティを務め、地道に実績と知名度を高めました。

2000年の選挙で初当選し、インディアナ州選出の下院議員を6期連続で務めました(2001年~2013年)。連邦下院予算委員長等を歴任し、小さくて効率的な政府、浪費の削減、経済発展、教育の機会均等を擁護しています。

そして、ペンス氏は2013年以降、インディアナ州知事に転じました。ここでも「小さな政府」と低税率を訴え、同州の歴史で最も大きな所得税と法人税の減税を実現。州の競争力を高め、新しい投資と高収入の雇用を創造しました。

政策として「小さな政府」を掲げているペンス氏は保守派草の根運動のティーパーティー運動にも参加しています。

また、ペンス氏は保守的な価値観を強く持つ政治家です。

同氏が知事時代のインディアナ州では、15年3月に州内の個人や企業が宗教的な理由で同性愛者やトランスジェンダー等へのサービスを拒否できる法律(「宗教の自由回復法」)が発効しました(この賛否が全国の注目を集めた。なお、ペンス氏の宗派はキリスト教福音派)。

ペンス氏が副大統領に指名された際に「普通の人」であることを訴えたのは有権者を安心させるためでした。これは共和党主流派からの信任を活かしてトランプ氏とのつなぎ役を務めるのが狙いでもあります。

ペンス氏が地盤とするインディアナ州は中西部から北東部に到るラストベルト(さびついた工業地帯)にあるので、この副大統領指名には、労働者票の取り込む意図が含まれていました。

トランプ氏当選後はペンス氏が政権移行チームを率い、1月20日に正式に副大統領に就任しました。

ペンス氏は議会対策や内政に尽力していますが、2月中旬には訪欧、4月下旬には日本や韓国、インドネシアを歴訪。外交面でも力を発揮しています。

2017年の「日米経済対話」では麻生副総理のカウンターパートとして交渉を行っています。

地元のインディアナ州には日本企業が多いので、我が国のよき理解者となることが期待されています。

大統領首席補佐官:ジョン・ケリー氏(元海兵隊大将・前国土安全保障省長官)

ジョン・F・ケリー氏(John Francis Kelly、67歳、1950年5月11日生)は米南方軍司令官(中南米から西インド諸島の防衛を担当)を務めていました。

ケリー氏はメキシコ国境の警備の脆弱さを問題視しており、不法移民阻止の強硬派ですが、軍人時代の実績は高い評価を得ています。

(当時、国土安全保障省HPには「彼とその家族は人生を通じて国に奉仕したーー彼以上にこの国に奉仕した人物を知らない」と記載されていた)

そのため、閣僚の中では上院でいち早く人事(国土安全保障長官)を承認されました。

国土安全保障省長官はアメリカで三番目に大きな省です。

この省は運輸保安、関税、国境防衛、税関、米市民権と移民受入れに関わる業務、緊急事態管理、沿岸警備、大統領警護を含む22の部局を持ち、229000人のスタッフを擁しています。

新政権発足から半年ほど、ケリー氏はこの省の長官として国境警備やテロ対策、メキシコ国境の壁建設、麻薬売人の入国規制、イスラム教徒の入国(禁止?)関連の仕事に携わりました。

ケリー氏の経歴は以下の通りです。

マサチュセッツ州のボストンに生まれ、1970年に海兵隊に入隊。1972年には軍曹となりました。ノースカロライナ州のキャンプ・レジュで第二海兵師団の歩兵を務めています。

その後、1976年にマサチュセッツ大を卒業し、海兵隊士官になりました。

海上任務や偵察大隊の指揮(空母フォレスタルで勤務)、軍の教育任務、議会への連絡、欧州での連合軍最高司令官の補佐業務等を幅広くこなし、2001年に本国に帰ります。

2002年には准将に昇格し、第一海兵師団で師団長を補佐しました。イラクでの戦闘任務にも従事しています。

04~07年までは海兵隊本部に帰り、キャンプ・ペンドルトンを拠点として第一海兵遠征軍を指揮しました。

08年ではイラクのアル・アンバール州で多国籍軍を指揮。その後、本国に配属され、中将として09年3月以降、複数の本国の海兵師団を指揮。

12年10月から16年1月までの間、アメリカの南方軍を指揮し、FBIやDEA(麻薬取締局)と連携して麻薬の流入、テロの脅威をもたらす人々の流入、南方から米国への犯罪組織の侵入を阻止する任務に携わります。

8月18日にスティーブン・バノン氏が辞任して以降、ケリー氏が大統領府に「規律」をもたらすことが期待されています。

大統領上級顧問:ジャレッド・クシュナー(実業家、トランプ氏娘婿)

クシュナー氏(36歳、1981年1月10日生)はニュージャージー州で敬虔なユダヤ教徒の不動産実業家の長男として生まれ、2003年にハーバード大を卒業、07年にニューヨーク大学ビジネス・スクール・ロー・スクールにてMBAと法務博士号を取得しています。

同氏は、04年に脱税や違法献金等で実刑判決を受けた父親から事業を継承。06年に弱冠25歳で若き日のトランプ氏と同じく巨額の買収を手掛けました。週刊誌「ニューヨーク・オブザーバー」(1000万ドル)や41階建てのマンハッタン5番街の高層ビル(41億ドル)等を購入し、09年にトランプ氏の娘イヴァンカと結婚しています。

ユダヤ教徒であり、ユダヤ人コミュニティーとのつながりを持つクシュナー氏の影響はトランプ氏のイスラエル寄りの中東政策にも反映されていると見るべきでしょう。

クシュナー氏は15年にもワン・タイムズスクエアの株式の過半数(50.1%)を買収するなど、やり手のビジネスマンとして活躍し、トランプ氏の大統領選では人事、戦略、演説、資金集め等に関わり、勝利に大きく貢献しました。

上級顧問は上院の承認が要りませんが、米国では大統領の親族を政府機関で雇用することを禁じているので(反縁故法)、クシュナー氏は無報酬です(雇用」ではないという理屈を通すため)。

クシュナー氏は事業で大成功を収め、イヴァンカ氏と結婚したわけですが、義父のトランプ氏は「不動産よりも政治の方が好きなのではないか」と述べ、今後のクシュナー氏の活躍に大いに期待しています。

トランプ政権は米中首脳会談以降、中国との貿易交渉を行い、北朝鮮問題への対処を期待したことにはクシュナー氏の意向が働いていましたが、北朝鮮は7月と8月に長距離弾道ミサイルを発射し、9月には核実験を行いました。

トランプ政権はこの路線がうまくいかないことを見てとり、秋口以降は中国への制裁を少しずつ実施しています。

そのほか、クシュナー氏は、ロシア疑惑に関して、トランプジュニア氏と共にロシア人弁護士と会ったことへの釈明に追われるなどの難題も抱えています。

関連記事:2018年の米露関係とロシア疑惑

国家安全保障担当大統領補佐官:ハーバード・マクマスター氏(元陸軍中将)

(※前任者のマイケル・フリン氏〔元陸軍中将、元国防情報局長〕は政権発足前にロシア当局者と対露制裁について協議した疑惑が原因で辞任。就任前のフリン氏は「民間人」なので、ロシアと外交協議を行うと民間人の外交への関与を禁じる法律に抵触してしまう)

国家安全保障担当大統領補佐官はNSC(アメリカ合衆国国家安全保障会議)を司り、大統領に安全保障問題について献策する大統領の指南役です(キッシンジャー氏やコンドリーザ・ライス氏などが務めていた閣僚級ポスト)。

トランプ氏は指名に際して、マクマスター中将の30年にわたる献身と「とほうもない経験」を評価し、「中将は、アメリカ本国と海外での国益を守るために知識と先見力をもって私に助言可能だ」とも述べていました(ホワイトハウスHP)。

ロイター通信では、マクマスター氏の戦略は「過激派と地元の大多数の住民を分離する」ことに依拠する慎重策だと紹介しています。マクマスター氏がイラク戦争の頃、「アラブ系米国人を募って地元民に扮する役割を演じさせた」り、「壁に掛けられた絵を見てその世帯がスンニ派かシーア派かを区別する方法を部隊に伝えるなど、実にきめ細かい準備作業を行った」ことを紹介しているのです。「トランプ氏の新補佐官、安全保障上の意見に食い違い」2017/2/22)。

今後、活躍が期待される同氏の経歴を見てみます。

マクマスター氏(ペンシルヴァニア州出身。1962年7月24日生:55歳)は1984年にウェストポイントの陸軍士官学校を卒業。91年の湾岸戦争では機甲騎兵中隊(戦車+装甲車の部隊編成)を指揮し、イラク軍の戦車隊を撃破(銀星章を受章)。イラク戦争では北部で治安維持を強化し、テロ活動の鎮圧に努めました。その作戦は07年にイラク統治策に採用されています。中東の活動で非常に大きな功績をあげた軍人です。

その後、イラク派遣軍長官の特別補佐官、アフガン派遣軍では合同調整機動部隊司令官を歴任。本国で米軍高等機動作戦センター司令長官(2012年~)、陸軍能力統合センター長(2014年~)を務めました。

マクマスター氏はトランプ氏とは違い、ロシアを危険視しているので、今後、見解の相違が表面化する可能性もあります(対露強硬派の共和党のマケイン上院議員は同氏の就任に賛同)。

4月にトランプ政権はシリアへのトマホークミサイル攻撃を決断しましたが、その背景には、中東の専門家であるマクマスター氏とマティス氏の意図が働いていたとも見られています。

北朝鮮問題のみならず、軍事・外交全般にわたるキーマンであるマクマスター氏の言動には、今後も注意が必要です。

行政管理予算局:ミック・マルバニー氏(元共和党下院議員)

行政管理予算局は、大統領府にて予算編成の見積もりや、予算教書の作成等を担う機関です(米国では予算編成権は議会にある)。

同局長官(閣僚級)の経歴は以下の通り。

1967年7月21日(現50歳)にバージニア州アレクサンドリアに生まれ、ノースカロライナ州で育ちました。

シャーロットカトリック高等学校⇒ジョージタウン大⇒ノースカロライナ大(1992年に法務博士号を取得)へと進学し、その後は法律事務所で勤務。2007年から09年までサウスカロライナ州上院議員を務め、2010年中間選挙で「ティーパーティー」運動の支持を得て下院議員に当選します(サウスカロライナ州選出)。2012年と14年に再選を重ね、歳出削減を主張する強硬派議員として知られました。

トランプ氏はマルバニー氏の指名に際して「米国は20兆ドル近い債務を抱えるが、マルバニー氏は責任をもって財政を管理し、国を借金漬けから救ってくれると確信している」と期待の意を表明。

その後、マルバニー氏はトランプ氏の意向を受け、軍事費を増やし、他の省庁の多くを軒並み削減する大胆な予算教書を作成しました。

関連記事:2018ー2019年米予算

大統領補佐官兼国家経済会議議長:ゲーリー・コーン氏(元ゴールドマンサックス社長兼COO)

米国家経済会議(NEC)は経済政策の司令塔です。

経済政策の策定や調整全般に関わるため、ここにゴールドマンサックスの次期会長兼CEOと目されたコーン氏(57歳)が入ったことには大きな意味があります。

大統領選で訴えたアンチウォール街の主張はどこへやらで、経済面ではウォール街出身者が大きな影響力を発揮しているわけです。

ゴールドマンサックス社HP記事を見ると、コーン氏はまずコモディティ業務の責任者(1996~1999年)となり、99年以降に債券・為替・コモディティ部門の業務を統括。2002年には債券・為替・コモディティ部門共同COO(同年3月~9月)に就任、9月以降は同部門共同責任者、03年からは株式部門の共同責任者、04年からはグローバル・セキュリティーズ・サービス部門の共同責任者となっています。

業務を一つずつ広げ、2006年6月から社長兼COOとなりました。

他の肩書を見ると、全米証券業者・金融市場団体の国債発行諮問委員会委員を務めるだけでなく、非営利団体においても教育分野などで幅広く理事等の要職を務めています。

トランプ氏とのつながりではクシュナー氏と懇意であることが注目されていました。

トランプ氏が金融規制を見直す大統領令に署名した後、コーン氏はWSJ紙のインタビューに応え、この改革で毎年数千億ドルにわたる銀行の規制コストが軽減され、消費者のために銀行が効率的・効果的な価格設定を行えるようになると述べました。金融安定監視評議会や大手金融機関への監視のあり方を変える可能性についても示唆しています(WSJ日本語版「トランプ氏、ドッド・フランク法撤回の大統領令に署名へ」2017/2/3)。

コーン氏は優れた調整力や実務能力を発揮し、ドッド・フランク法の改革や税制改革の法案を進めています。

関連記事:ドッドフランク法改正

通商政策では、コーン氏やクシュナー氏らが対中強硬派(バノン氏やナヴァロ氏など)との争いに勝利し、強硬策を緩和したとも言われています。

次期FRB議長就任の有望株と見なされていましたが、8月のトランプ氏の人種問題に関する発言に反発して以降は、その可能性が大きく下がり、結局、パウエル理事がイエレン氏の後任となりました。

米通商代表部(USTR)代表:ロバート・ライトハイザー氏(元USTR次席代表)

ライトハイザー氏(1947年10月11日生:69歳)はレーガン政権時代(1980年代)にUSTR次席代表を務め、対日鉄鋼協議で日本に輸出の自主規制を認めさせたタフ・ネゴシエイターです。

その後、米鉄鋼業界等に関わる弁護士に転じました。長年、中国が不公正な貿易やWTO違反を行っていると批判しています。

ブルームバーグ記事(「米通商代表にライトハイザー氏起用、対中強硬派の元次席代表」1/3)ではトランプ氏のコメントが紹介されています。

「ライトハイザー氏は米経済の最も重要なセクターの幾つかを保護する合意を取りまとめた幅広い経験を有している。多くの米国民から富を奪い取った誤った通商政策の転換に素晴らしい貢献をしてくれるだろう」

また、中国グローバル化研究センター(CCG)副主任の何偉文氏は「レーガン政権2期目に政権の通商チームは二国間交渉で日本に強い圧力をかけた。ライトハイザー氏が選ばれるのなら、対中強硬姿勢が見込まれ得る」と見込みました。

ライトハイザー氏は14日の上院公聴会にて、農産物の市場開放では「日本が第一の標的だ」とも述べていました。

TPP離脱後、トランプ政権はTPP以上に有利な協定の妥結を目指すわけです。

ライトハイザー氏は豊富な貿易交渉の実務経験を持っているので、同氏の正式就任に伴い、NAFTA再交渉など、各国との通商条約の見直しが本格化してきています。

関連記事:NAFTA再交渉の行方

通商製造政策局長:ピーター・ナバロ氏(元カリフォルニア大教授)

ピーター・ナヴァロ氏(Peter Navarro、68歳:1949年7月15日生)は経済学者・公共政策学者です。

カリフォルニア大学アーヴァイン校の教授で、CNBC経済番組でレギュラー出演者として出演したり、ビジネスウィーク誌やNYT、WSJ等に寄稿たりと幅広く活躍しています。

2000年代から中国の軍拡に警鐘を鳴らし、12冊の著書を刊行し、近年には『米中もし戦わば』(赤根洋子訳)が注目されました。この人は「力による平和」を論じ、「抑止力なくして平和はない」というリアリズム的な世界観を元に外交政策を考えています。

この人は対中強硬派で、『Death By China』を執筆し、自ら監督・脚本を務めてもいました

選挙期間中からトランプ氏の経済政策の顧問をしており、12月21日に政権以降チームが通商政策の具体化を計って「国家通商会議(NTC)」を新設することを発表した際に、その責任者に指名されました。

NTCは国家安全保障会議(NSC)と連携し、経済と安全保障の双方から国家戦略をつくる機関となると見られていましたが、17年春頃からは対中外交が硬軟併用の路線に変わっています。

トランプ氏は4月末の大統領令で通商や産業政策を助言する「通商製造政策局」を設けました。そのトップにNTC委員長のナバロ氏を置いたものの、この局は通商交渉の実務そのものを担当しません。商務省との調整役等でしかないので、ナヴァロ氏の権限は縮小しています。

国務長官:レックス・ティラーソン氏(元エクソンモービル会長兼CEO)

レックス・ティラーソン氏(Rex Tillerson:65歳、1952年3月23日生)は、2006~16年まで世界の200か国以上で石油・ガス事業を展開するエクソン・モービル社の会長兼CEOを務めていました。

『石油の帝国』(スティーブ・コール著、板野和彦訳)によれば、その経歴は以下の通りです。

ティラーソン氏は北テキサスのウィスタ・フォール出身。復員兵のために建てられた労働者階級の家で育ち、父がボーイスカウトの地区代表補佐になった影響を受け、若いころはボーイスカウトに尽力。最高位のイーグル・スカウトとなりました。テキサス大で土木工学を学んだ後、同氏は1975年にエクソンに入社。採掘・探鉱などを担う上流部門に関わり、各国首脳と契約交渉を行います。CEO就任後はボーイスカウトの表彰システムに似た制度をエクソンモービルに導入しました。ティラーソン氏は1990年代にサハリンの天然ガス開発に関わり、北極海大陸棚のカラ海で露ロスネフチとの合弁で海底油田開発に合意。大統領令ではなく、恒久的な法による承認を求め、一時はプーチン氏の不興を買いましたが、結局は理にかなった主張だと評価され、プーチン氏から2013年に友好勲章をもらいました。

ウクライナ問題を巡るロシア制裁で事業は中止されたため、同氏はCEO時代に制裁を批判していたのです。

この人は親露派なので、14年のクリミア併合を巡ってオバマ政権が対露制裁を発動した時には反対しましたが、上院公聴会以降、従来の親露路線を弱めています。

ただ。ティラーソン氏もトランプ氏と同じくビジネスからは手を引かざるをえないでしょう。そうしないと、外交担当者が自企業優遇の判断をすることが懸念され、共和党、民主党の双方からの攻撃材料に利用されるからです。トランプ陣営はヒラリー氏が外交担当者なのに私腹を肥やしたと批判してきたので、そうしないと筋が通りません。

この人は2013年にプーチン氏から「ロシア友好勲章」をもらっているので、外交・安保に影響力を持つマケイン上院議員からは「プーチン氏と個人的に関係が近いことは懸念」すべきだと批判されています(日経電子版「トランプ氏、米外交刷新 国務長官に親ロ派ティラーソン氏」2016/12/14)。

「外交経験がない」とよく批判されていますが、筆者には、石油メジャーで巨大プロジェクトをまとめた手腕は外交官に劣るものではない、というトランプ氏の意見が間違っているとは思えません。石油ビジネスは経済にとどまらず、国際政治や地政学、金融など、総合力が求められる業種ですし、ブルームバーグのJoe Carroll氏によれば、ティラーソン氏はエクソン社の「情報活動チームから定期ブリーフィングを受けてきた」とも言われています。

「エクソンの戦略立案部門が収集した経済情勢やトレンドの確かなデータ、学術誌や政府声明などオープンソース情報、海外外交関係者との情報交換、在外勤務のエクソン幹部からの機密リポートなど」に触れ、外交官並みの情勢分析を行っていたわけです(「ティラーソン氏の外交感覚、エクソンの情報活動部門が育む-関係者」16/12/16) 。

エクソンぐらいの規模であれば、中小国並みの情報力があってもおかしくありません。同氏を素人と批判する人もいますが、ティラーソン氏の指名をトランプ氏に薦めたのはロバート・ゲイツ元国防長官です。同氏には元国防長官の目に適うだけの人材だったわけです。

ティラーソン国務長官は3月に訪日し、北朝鮮問題における米国の忍耐の時代が終わったことを指摘しました。そして、トランプ氏と同じく、尖閣諸島を日米同盟の対象と見なすことを確認しています。

同氏は安倍首相訪米前にトランプ氏に「一つの中国」に関して米国の従来路線に戻すことを進言。そして、4月の米中首脳会談を実現させるために尽力しました。

北朝鮮問題では基本的に穏健派的な発言を続け、外交的な解決を目指しています。

国防長官:ジェームズ・マティス氏(元中央軍司令官)

ジェームズ・マティス氏(James.Mattis:67歳、1950年9月8日生)は海兵隊軍人からアメリカ軍の最高の要職にまで昇り詰めた人物です。

マティス氏の経歴を見ると、1950年にワシントン州に生まれた後、セントラル・ワシントン大学と国防大学を卒業。

1969年に海兵隊に入隊しているので、軍人時代に大学に通ったものと思われます(22歳で海兵隊少尉)。

軍歴はライフル歩兵小隊の指揮に始まり、小隊指揮官から中隊指揮官に昇進。

1990年の湾岸戦争「砂漠の盾」作戦で歩兵大隊を指揮し、9.11以降の2001年のアフガン戦争では「不朽の自由作戦」では遠征旅団司令官を務めました。

2003年のイラク戦争では第一海兵師団司令官としてファルージャ総攻撃で活躍し、戦後に中将となります。

07~09年にはアメリカ統合戦力軍とNATO変革連合軍の司令官を兼務しました。

その後、2010年以降、オバマ政権時代の中央軍司令官人事が混乱し、マティス氏もその渦中に入り、中央軍司令官に就任します。

2010年6月にマクリスタル氏がローリングストーン紙でオバマ政権批判を繰り広げたことで辞任。後任は対反乱作戦(COIN)を主導したディビッド・ペトレイアス氏(国務長官候補で名前が上がった人)で、この人は7月にアフガン駐留軍を率いることになりました(治安維持で成果を上げた後、CIA長官に就任)。

そして、2010年7月にマティス氏が中央軍司令官に就任したのですが、2013年にオバマ政権がイラン核合意に向けて動き出した時、強硬に反対して解任されてしまいます(政権交代に伴い、民主党政権の思惑に翻弄され、苦戦を続けた大将にスポットライトが当たった)

国家安全保障法によれば、退役してから七年以上経たないと元軍人は国防総省の要職には就けないので、13年退役のマティス氏はこの法律に抵触しましたが、上院は超党派で特別法を可決し、1月に国防長官に就任しました。

マティス氏は「狂犬」(マッドドッグ)と呼ばれていますが、トランプ氏に対してテロリストへの水責め拷問に反対するなど、実際は、良識的な判断力を持った軍人です(綽名の由来は、女性にヴェールを着ることを強制し、それを拒んだ者を殴りつけたイスラム教徒を殺すのが楽しいと発言した際のマスコミ報道)。

「狂犬」「戦う修道士」(独身でひたすら軍のために働いていた)等、印象的なあだ名が目につきますが、米軍の中心を担った実績を持ち、尊敬を集めている人物なので、これだけで同氏にレッテル張りをするのは賢明ではありません。

上院公聴会の発言等は非常に知性的・理性的ですし、反トランプ政権路線のニューズウィーク(日本語版2016.12.13 /トーマス・リックス氏)でもマティス氏の起用に関しては肯定的です。

(マティスは)「孤立主義には反対し、『アメリカは今後も世界に関わっていくべき』で『歩み寄り』は民主主義政府の根幹をなすもの』とも考えている」(彼は)「財政面でも保守派的で、そういう人物が国防総省のトップにいるのは悪くない」

マティスは兵士に非常に人気がある。彼の起用は、トランプ政権下では働きたくないという国防総省のキャリア組を慰留する効果も期待できる」

マティス氏は陸軍砲兵大隊指揮官が尋問中にイラク人抑留者の耳元で発砲したのを批判するなど、現実の行動に関しては熟慮を求めるタイプです。

発言が過激でも現実の判断は冷静だったので、アフガンとイラクの治安維持作戦をつくる上では、この人とペトレイアス氏の二人が大きく貢献しています(マティス氏は軍事戦略の著書を執筆する理論家でもある)。

現在はトランプ大統領も一目置く軍のプロとしての重責を果たしています。

筆者は、元自衛官の方が「元海兵隊の将軍が政権要職に入るのは日本にとってプラスではないか」と言っているのを聞いたことがあります。

海兵隊は日本との接点が多いので、欧州との接点が多い陸軍出身者よりも望ましいという見方もあるわけです(日系人のハリス氏が太平洋軍司令官をしているのも、日本の国防上は重要な意味がある)。

マティス氏は1月に上院の承認を得、2月上旬に訪日し、トランプ氏の代理として日米同盟維持・強化の路線を確認しました。

その後、韓国やヨーロッパを訪問し、米韓同盟やNATOの支持を確認。トランプ氏の信任が厚いので、今後、マティス氏は同政権の外交・安保政策に影響力を発揮しています。

関連記事:マティス国防長官のアジア政策

北朝鮮問題では軍事作戦を政権幹部につまびらかに説明し、最終的には軍事的選択肢がありうることを主張。

12月に発表された国家安全保障政策では、マティス氏やケリー氏、マクマスター氏らの同盟重視の考え方が濃厚に反映されています。

退役軍人省長官:デビッド・シュルキン氏(元退役軍人省・保健衛生担当次官)

第9次退役軍人省長官に任命されたデビッド・J・シュルキン氏は、2017年2月に米国上院で承認されました。

シュルキン氏はオバマ政権で米国退役軍人省の保健衛生担当次官(退役軍人省の保健長官)として2015年7月〜2017年2月までその任にあたりました。

米国最大規模の統合保健医療システムを率い、1700以上のケアサイトで約900万人の退役軍人にサービスを提供しています。

退役軍人省で仕事をする前に、シュルキン氏はモリスタウン医療センターとアトランティック・ヘルス・システム・アカウンタブル・ケア・オーガニゼーションなどでCEOを務めています。ニューヨーク市のベスイスラ医療センターでも社長兼CEOを務めました。

シュルキン博士は、ペンシルベニア州保健システムのチーフ・メディカル・オフィサー、テンプル大学病院、ペンシルベニア病院医学部などで医師を指導し、ドレクセル大学医学部医学部長、副学部長などの資格を得ています。

シュルキン博士は、医療の品質と安全に関する消費者向け情報ソースとなったドクタークオリティの会長兼CEOも務めていました。

シュルキン博士はペンシルベニア州立大学医学部にて医学学位を取得。エール大学医学部でインターンシップを修了。ペンシルバニア大学の臨床奨学生として医療と経済学についても学んでいます。

シュルキン氏は「全米における50人の最も影響力のある医師幹部」「米国医療における最も影響力のある人100人」にも選ばれています。

(出所:Dr. Shulkin is the Ninth Secretary of the US Department of Veteran Affairs, He was nominated)

中央情報局(CIA)長官:マイク・ポンペオ氏(元共和党下院議員)

マイク・ポンペオ氏は1963年12月30日(現64歳)に生まれ、ハーバード大学法科大学院を卒業し、陸軍士官学校に入ります。

その後、陸軍士官として冷戦時代にベルリンの壁を警備していました。

退役後には航空機部品を扱う企業をつくり、経営者となります。

2010年に保守派のティーパーティー運動の支持を受け、カンザス州で下院議員に当選。下院情報委員会に所属しました。

イラン核合意の反対を主導し、ヒラリー国務長官(当時)が無策だったベンガジ(リビア東部)での米領事館襲撃事件に関する特別委員会に名を連ねています。

2017年秋ごろからティラーソン国務長官の辞任が噂され、その後任候補として、ポンペオ氏の名前が挙げられています。

ポンペオ氏に関しては、リベラル系のメディアが酷評しています(トランプ人事はこの種の人物ばかり)。

しかし、筆者はハンフィントンポストの批判記事を見た時、記者の意図に反して、ポンペオ氏の主張の背景が分かってしまいました。

ハフポス記事(「次期CIA長官、マイク・ポンペオ氏の人物像とは?拷問の実行を擁護したことも」Christina Wilkie、2016/11/28)は、CIAによる「強化尋問」(拷問のこと)擁護に関して、ポンペオ氏の二つの発言を批判しています。

「強化尋問によって我々が得た情報は貴重なものだ。オサマ・ビンラディン容疑者確保の直接的な要因になったからだ」「(ビンラディンが殺害された)あの晩のシチュエーションルームの写真を、オバマ大統領が公開したのは素晴らしいことだ。しかし、彼は実際に作戦を実行した兵士たちに背を向け、擁護しなかった」

これはボンベオ氏を非人道的だと批判する記事です。

しかし、ポンペオ氏は戦争の現実を直視すべきだと言いたかったのではないでしょうか。

ボンベオ氏は、オバマ大統領はビンラディン殺害で米国で喝采を浴びながら、そのための汚れ仕事をした現場兵士に対して、何ら報いもしなかったと批判しています。

結局、拷問で手にした情報でビンラディンを殺したなら、オバマ氏も一蓮托生なのに、自分だけ喝采を浴びるのはおかしいと言っているわけです。

ハフポス紙は、そのほかにもアメリカ国家安全保障局(NSA)が行った違法な情報収集(スノーデン氏に暴露された話です)をボンベオ氏が擁護したことを批判(ポンペオ氏は「戦時だから仕方ない」という論理)。

トランプ政権では、シビアな現実主義者が評価される傾向があるようです。

国家情報長官:ダン・コーツ氏(前上院議員)

ダン・コーツ氏(1943年5月16日生、74歳)は20年以上のキャリアを持つベテラン議員です。

ダン氏はミシガン州出身で、1971年にインディアナ大学のロースクールを卒業して弁護士となり、共和党の下院議員(1981~89年)、上院議員 (1989~99年/2011~17、インディアナ州選出)を歴任しました。上院では情報特別委員会や経済関連の委員会で仕事をしており、ブッシュ前政権の時代には駐ドイツ大使も務めています。

16の情報機関を統括する国家情報長官の指名に関して、トランプ氏は『ダンは、米国の情報機関を率いるのに必要な深い専門知識と健全な判断力を明確に示してきた』『国家情報長官として承認されれば、彼(コーツ氏)は米国の全情報機関から尊敬され得るリーダーシップを発揮し、米国に危害を加えようと試みる者たちを絶えず警戒する私の政権で陣頭指揮を執ってくれるだろう』と述べました(AFP通信「トランプ氏、米国家情報長官にダン・コーツ前上院議員を指名」2017/1/8)。

前掲記事は、コーツ氏がロシアのクリミア併合時に米国が行った制裁を主導し、ロシアからブラックリストに載せられ、同氏が光栄だと述べたことも紹介しています。

ダン氏の対露外交の方針はティラーソン国務長官の志向と矛盾しますが、これは共和党の対露強硬派を配慮した人事とも見られています。

司法長官:ジェフ・セッションズ氏(元共和党上院議員)

2月8日に上院で承認されたセッションズ司法長官の本名は「ジェファーソン・ビューレガード・セッションズ3世」(Jefferson Beauregard Sessions III:71歳、1946年12月24日生。ジェフは通称)。

トランプ氏とほぼ同年代で、アラバマ州選出の上院議員でした。

アラバマ州出身のセッションズ氏はハンティントン大学に進学。アラバマ大学で学位を取って弁護士になりました。

共和党員のセッションズ氏は陸軍に入隊し1973年~77年まで予備役を務めています。

その後、1975年~77年まではアラバマ州南部の連邦地区検事補佐、81年~93年までは同州の検事。94年に同州の司法長官となり、97年に上院議員に当選。2008年まで三選を続けました。

ブッシュ政権時代には、イラク戦争やブッシュ減税に賛成。不法移民の合法化を目指す法案否決運動を主導。

セッションズ氏にもハンフィントンポストは批判記事を書いていますが、この人は相当、過激です。そこでは(「ジェフ・セッションズ氏とは何者か? トランプ氏が司法長官に起用、「KKKに共感する」との発言も」Jack Sommers、11月22日)、八つほど懸念事項が並んでいます。

  1. 黒人公民権運動家を訴追し、人種差別だと批判を受けた。
  2. 「KKKに共感する」と発言、冗談だったと釈明
  3. アメリカ在住者の不法な市民権取得に反対
  4. セッションズ氏の強硬な主張をまとめた冊子「入国ハンドブック」は、外国人嫌悪の烙印を押された
  5. 合法移民の削減も提唱
  6. トランプ氏が公約に掲げた「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国禁止」を賞賛
  7. 「メキシコとの国境に巨大な壁を作る」という公約も支持
  8. トランプ氏の女性侮辱発言を擁護

これだけを並べると危険人物に見えてきますが、この人の影響でトランプ氏が選挙中に日本叩きをやめたとも見られています。

ニューヨーク在住のジャーナリストである肥田美佐子氏はフォーブス電子版記事(トランプ外交ブレーンが語る日米関係、「日本たたき」をやめた真相 2016/9/30)で、その経緯を書いています。

トランプが日本叩きをやめたのは日本の外交当局がセッションズ上院議員らに接触して同盟国日本を標的にするのはおかしいと訴えたためだと書かれた日経記事(9月1日付)を見て、その真偽を本人に聞いたところ、コンタクトしてきた日本人外交官の発言を教えてくれたそうです。

「『He(彼)』は、日米が良好な同盟国であると強調していた」

「彼が言うには、米国が、中国との間で抱えている不和や困難と同じものをあたかも日本との間でも抱えているかのようにトランプが話すのは正しくない、と。日米関係は、米国と中国との関係よりはるかに良好だ、とね。彼(日本人外交官)の主張は正しい」

メキシコにとって、セッションズ氏の閣僚入りは恐ろしい話ですが、日米同盟には肯定的なので、日本にとっては悪い話ではなさそうです。

トランプ氏はセッションズ司法長官がロシア疑惑を巡る捜査から外れたことに失望し、「就任後すぐに捜査から外れるべきではなかった。そうするなら私に伝えるべきだ。その場合は他の誰かを選んだ」等と批判を繰り返していました。

しかし、セッションズ氏は、結局、司法長官の職にとどまっています。

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財務長官:スティーブン・ムニューチン氏(元デューン・キャピタルCEO)

トランプ氏は選挙中に財務責任者として資金調達を担ったムニューチン氏(Steven Mnuchin:55歳、1962年12月21日生。ムニューシンとも表記される)を財務長官に指名しました。

トランプ氏は選挙中に大手銀行やヘッジファンド批判を行い、税金の抜け穴をふさぐことを公約していましたが、なぜか、元ゴールドマンサックス幹部のムニーチュン氏が財務長官になります。

これはウォール街のパワーがよくわかる事例です。

ニューヨーク出身のムニューチンは銀行家の父ロバートの息子として生まれ、イェール大を卒業し、父と同じくゴールドマン・サックス(GS)に就職しました。17年間で推計4000万ドルの純資産を稼いだとも言われています(父もGS幹部だった)。

ムニューチン氏はGSの共同経営者を17年間務め、退社後はヘッジファンドを設立。

2000年代に一時期、ジョージ・ソロス氏のもとで働いたり、アメリカの西海岸で金融業を行ったり、破綻したカリフォルニアの銀行(インディマック)買収し、ワンウェストとして再出発させたりしています。

さらには映画事業に手を伸ばし、ラットパック=デューン・エンターテインメント社を設立。ここはアバターやX-MEN等を作ったところです。20世紀フォックスと組んだ「アバター」、ワーナー・ブラザーズと組んだ「ゼロ・グラビティ」を大ヒットさせたりもしました。

私生活面をみると、2回離婚し、現在は美人妻をつれて3人の子供を育てています。

こうしたユニークな経歴を持ち、1億1800~3億9200万ドルもの資産を持つ富豪が財務長官になりました。

(※ムニューチン氏は1月に財務長官との利益背反という批判を回避するために、9400万ドル以上の財産を売却することを明らかにした)

ムニューチン氏とコーン氏が政権入りしたせいか、新政権発足後はアンチウォール街的な政策はトーンダウンしています。

なお、90年代のクリントン政権ではロバート・ルービン会長、2000年代のブッシュ政権ではポールソン氏が閣僚入りしましたが、ゴールドマンサックスが歴代政権に元CEO等を送り込んでいる理由に関して、田村秀男氏(産経新聞特別記者)は、米国は最大の債務国であり、世界中から資金を集めるウォール街と政治の中心であるワシントンが運命共同体だからだとも指摘しています(川上高司ほか『トランプ後の世界秩序』P77)

ムニューチン氏は国際会議で米国の通商政策を説明したり、国内の税制改革(減税政策)について、トランプ政権の立場を明かすなど、経済面での要職を担っています。

上院財政委員会での公聴会では、規制緩和や減税政策(労働者や企業向け)による米国経済の活性化、ドル高の容認、アメリカの労働者を第一とする通商政策(貿易不均衡の是正)等を訴えました。

ABCニュース記事(2017/1/19)ではその発言が紹介されています(”Steve Mnuchin Failed to Reveal $100 Million in Assets, Links to Tax Haven Company By LAUREN PEARLE)(※日本語は筆者訳)。

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  • ムニューチンは国税法の改革を支持し、それらは「より簡素で有効に」すべきだとした。
  • 私の第一の優先事項は経済成長だ。中でも税制改革が最も重要である」「過剰な規制が経済成長を損なっている」
  • 同氏は「100%」モスクワへの制裁強化に賛同すると述べた。「法の中で最大限の制裁を行う」と誓った。
  • 同氏は現在のロシアへの制裁解除に反対したが、追加制裁を勧める質問に対しては答えることを拒んだ。
  • 同氏は必要ならば米国の財政破綻を回避するために債務上限の引き上げに支持することも示した。
  • 「トランプは経済成長志向の減税政策を持っており、我々はその計画の費用に対しては敏感だ」
  • 同氏はNAFTAは再交渉されるべきだと繰返し、我々はメキシコに対する再交渉に有利な立場を利用できるという楽観的な見通しを示した

ーーーーーー

減税関連記事:米国の法人税が21%、日本が30%の時代が来る

なお、公共投資に関しては、必ずしもトランプ氏と同意見ではありません。

大統領選の頃のトランプ氏はクリントン氏のインフラ銀行創設計画を「政治家と官僚に牛耳られる」と批判していました。そして、税優遇を用いて民間投資を勧めることを提言しましたが、ムニューチン氏は11月中旬に新政権はインフラ銀行の創設を検討することを示唆したのです。

トランプ氏は巨額の税控除というインセンティブを与えて民間企業に投資してもらうことを考えていましたが、ムニューチン氏の案は、それだけだと儲からない地域への公共投資が手薄になる、という面を考慮したプランです。

(※民間企業は儲からない投資はしないので、公的機関としてインフラ銀行を立ち上げ、全国へのインフラ補修投資などを展開しようとする考え)

トランプ氏の1兆ドルのインフラ投資の具体策が見えないので、今後、ムニューチン氏がこの面でどう動くのかも注目を集めています。

商務長官:ウィルバー・ロス氏(元「WLロス&カンパニー」会長)

ウィルバー・ロス氏(Wilbur Ross:60歳、1937年11月28日生)は、59年にイェール大を卒業し、61年にハーバード大でMBAを取得。64年から66年までは研究員としてウッド・ストラウザーズ・ウィンスロップ社等で勤務。長く務めたのはフォールクナー・ドーキンス・サリバン証券で、64年~76年まで経営を担っています。

76年には米投資会社NMロスチャイド&サンズに入社し、2000年まで専務取締役を勤めました。その後、2000年に投資ファンド会社の「WLロス&カンパニー」を設立し、2016年まで経営を続けました。

ロス氏は繊維や電気、鉄鋼、石炭、鉄鋼等、多様な業種で会社を再建して財をなしたので、「再建王」とも呼ばれています(※産経記事〔12/11:1面〕によれば推定保有資産は25億ドル)。

有名なのは2000年に破綻した鉄鋼会社LTVを2002年に買収し、その後に買収した競合企業を合わせてインターナショナル・スチール・グループを設立した再編事業です。

ロス氏は1999年に幸福銀行(現関西アーバン銀行)の買収に関わり、日米交流団体「ジャパン・ソサエティ」会長をも務めた知日派です。

ロス氏はTPPに肯定的だったこともありますが、トランプ政権を支える側に回ってからは、米国の自動車産業等に不利だとして、TPP脱退を支持しました。

大統領選の頃、カリフォルニア大のピーター・ナバロ教授とウィルバー・ロス氏は減税による税収減対策として、連名で「向こう10年でトランプ氏の経済計画が見込む歳入増加分約2兆4000億ドル(242兆1000億円)のうち、貿易政策の強硬化だけで4分の3ほどを創出できる」とも主張していました(WSJ日本語版「トランプ陣営顧問、貿易政策で大幅歳入増見込む」2016/9/26)。

※関連記事:トランプ政権のインフラ政策

上院公聴会では、23か国で実際に企業経営を行ってきた経験を踏まえ、「私は反貿易主義者ではない。貿易を支持している。しかし、私が支持するのは良識ある貿易だ。米国の労働者や製造業拠点に不利な貿易は支持できない」と述べました。

ダボス会議での中国側の主張に対しては「中国は、世界の大国の中で最も保護主義的な国だ。彼らの商業に対する関税障壁と非関税障壁は非常に高い。彼らは自分たちが主張している自由貿易を実践できていない。我々はその現実をそのレトリックに近づけていきたい」と反論しています。

そのほか、ロス氏とトランプ氏との出会いに関しては興味深い逸話があります。

両氏の出会いは、カジノ事業「トランプ・タージマハル」の再建業務がきっかけでした(フォーブス「トランプを借金地獄から救った男、ウィルバー・ロス次期商務長官の人生」2016/12/10)。

「数ヶ月ほどで経営は行き詰まり、トランプは巨額の支払いに追われることになった。その時、破産アドバイザーチームの債権者代表を務めていたのがロスだった。ロスはカジノを強制破産させ、トランプを債務から救い出そうと動いた。ロスはその頃、トランプが乗ったリムジンめがけ、群衆が押し寄せる様子を目撃し、トランプの人気ぶりに驚いたという」

「トランプはタージマハルの持ち株の50%を手放し、それと引き換えに支払い条件の緩和を受け、カジノの経営は継続する。トランプはその後も同種の取引を続けた結果、借金地獄から抜け出し、長者リスト『フォーブス400』に返り咲いた」

トランプ氏も「再建王」のお世話になりましたが、ロス氏の側もトランプ氏の人気を見て「ただ者ではない。有望株だ」と目をつけています。

借金の海に沈んでいた経営者が、その後、大統領にまで出世したわけですから、同氏には先見の明がありました。この時にトランプ氏が大統領になるとまで予見できたのかどうかを誰かに聞いてみてほしいものです。

ロス氏は商務大臣就任後、貿易交渉に盛んに顔を出し、「公正な貿易」の実現に向けて力を発揮しています。

国連大使ニッキー・ヘイリー氏(元サウスカロライナ州知事)

ニッキー・ヘイリー氏(Nikki Haley:45歳、1972年1月20日生)はインド系アメリカ人です。

共和党州下院議員(04年当選)を経て2010年からサウスカロライナ州知事(全米最年少)を務め、14年に再選されました。

ヘイリー氏の両親がサウスカロライナ州に移住後、ヘイリー氏は生まれ、生まれながらにアメリカ市民権を取得。

10代には家族の洋服店を手伝い、クレムソン大学で会計学を専攻しました。

両親はインドのパンジャーブ州出身のシク教徒ですが、ヘイリー氏はキリスト教のメソジストに改宗しています(メソジストはサッチャー氏も入っていた新教の一派)。96年に結婚した夫の名に改名しました。

ヘイリー氏はサウスカロライナ初の女性知事、全米50州の最年少知事でもありました。

マイノリティ系に人気があり、共和党のホープとも見られていたためか、トランプ氏は「ヘイリー氏には、背景や党派に関係なく人々をまとめて重要政策を推進してきた実績がある」と高く評価し、国連大使に指名しました。

(※ヘイリー氏は保守派から副大統領候補として期待されているため、この指名は将来の布石として外交経験を踏ませる人事だといわれている)

この人事には女性層やマイノリティーへの配慮も含まれていますし、インドへの配慮もあるのかもしれません。

ヘイリー氏は2017年に北朝鮮への制裁強化に尽力。秋口の国連総会では、制裁案成立の立役者となり、政権内での評価が上がりました。

また、国連において、トランプ政権のイスラエル外交の方針を訴えてもいます。

関連記事:トランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都と認定

今後、活躍が注目される女性閣僚の一人です。

運輸長官:イレイン・チャオ氏(元労働長官)

チャオ氏はトランプの重要政策であるインフラ整備を担います。

トランプ政権はインフラ投資でPPP(官民パートナーシップ)を推進することを公約しています。

PPPというのは(Public Private Partnership)の略語なので、日本語で言えば「官民連携」という言葉に相当します。民間資金やノウハウを公共施設の整備や効率化、サービスの改善等に活かす方法のことです。

トランプ氏は、選挙期間中から、アメリカでも道路や橋、トンネル等の老朽化が深刻化しているので、10年間で1兆ドルのインフラ投資計画を立ち上げることを公約しました。投資減税等のインセンティブを用いて、官民パートナーシップを推進することを主張していたのです

チャオ氏は指名承認の議会公聴会で「エクイティ会社や年金基金、寄付基金が(インフラに)投資できる推定数兆の資本を最大限に利用する」ためには、「大胆な新しいビジョン」が必要だと述べています。

この人の人生を見てみます。

趙小蘭氏は英語では「イレーン・ラン・チャオ」(Elaine Lan Chao:54歳、1953年3月26日生)と呼ばれています。

ニッキー氏がマイノリティ系知事として注目されるのと並んで、チャオ氏はブッシュ政権の頃、2001年にアジア系アメリカ人の女性で初の閣僚入り(労働長官)を果たした人物です。

チャオ氏は台北市で上海出身の商船船長(趙錫成氏)の家庭で生まれました。

趙家は8歳の頃に米国に移住し、ニューヨークのロングアイランドに居住しています。

チャオ氏は1975年にマウントホーリオーク大学で経済学を学んだ後に父の船会社で2年間勤務します。

79年にハーバード大でMBAを取得。

シティバンクニューヨーク支店勤務、ホワイトハウス実習生(83年)、バンク・オブ・アメリカ副社長等の経歴を経て、86年に連邦政府入りしました。

86年に運輸省海事管理局次長、88年に連邦海事委員会議長、89年にブッシュ父政権にて運輸副長官を務めます。

(そのほか、募金仲介団体のユナイテッド・ウェイでCEOを務めたり、ヘリテージ財団で特別研究員となったり、ウェルズ・ファーゴ等の企業取締役会に参加したりと幅広く活躍)

93年にケンタッキー州選出の共和党上院議員(ミッチ・マコーネル氏)と結婚。

チャオ氏の父は江沢民氏と大学時代と同級生で、夫は共和党主流派の有力議員なので、チャオ氏は中国と米国に幅広い人脈を持っています。

2001年にはブッシュ(子)政権にて労働長官に就任し、その後、保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」の特別研究員等を歴任しました。

トランプ氏は2017年の電話会談で蔡総統をプレジデントと呼び、一国の代表並みに扱っただけでなく、「一つの中国」見直しを示唆したこともあります(その後、「一つの中国」を認める路線に転換)。

チャオ氏の閣僚入りには「台湾を重視する」というトランプ政権のメッセージが含まれていると見るべきなのではないでしょうか。

内務長官:ライアン・ジンキ(元共和党下院議員)

ライアン・ジンキ氏(Ryan Zinke:56歳、1961年11月1日生)はモンタナ州出身。オレゴン大学を卒業。

もともと地質学を学んでいたので、鉱物に詳しい政治家です。

外観は強面で、米海軍では1986年から2008年まで特殊部隊(シールズ)で働いていました(中佐で退官)。

カリフォルニアのナショナル・ユニバーシティでMBAを取得するなど、軍事以外にも見識の幅を広げています。

2008年にモンタナ州上院議員として当選。共和党上院議員として2011年まで在籍。

2014年には下院議員として当選。2016年に再選されています。

内務省には連邦政府所管の土地開発の権限があるので、トランプ政権は、石油・天然ガス開発の積極策を提唱するジンキ氏を長官にあてることで、資源開発の規制緩和を進めようとしています(同氏は、CO2が気候変動の原因だとする説の懐疑論者でもある)。

関連記事:トランプ政権の資源政策

環境保護局長官:スコット・プルイット氏(元オクラホマ州司法長官)

スコット・プルイット氏(1968年5月9日、49歳)はオバマ政権が企てた火力発電所のCO2排出規制に反発し、無効訴訟を起した人物です。

石油と天然ガスの産地であるオクラホマ州から起きた訴訟は全米の過半数の州が参加したため、オバマ氏は在任中に規制を導入できなくなりました。

そのほか、過去に水圧破砕法によるシェール採掘の規制への異議申し立てを行っています。

トランプ氏はこの指名について「EPAはあまりにも長い間、制御の利かない反エネルギー政策に税金を注ぎ込み、何百万という職が失われ、またわが国の優れた農業、その他の多くの事業や産業を、至る所でむしばんできた」(プルイット氏は)「この流れを逆転させ、わが国の空気と水をきれいで安全に保つというEPAの最重要使命を取り戻してくれるはずだ」と述べています(AFP通信「環境長官に温暖化懐疑派、トランプ氏人事に怒りの声」2016/12/9) 。

ブルイット氏はトランプ氏と同じく、地球温暖化の原因がCO2排出だとする説には懐疑的です。

この人事はオバマ政権とは真逆路線になるので、エネルギー政策に重大な影響を及ぼすでしょう。

エネルギー長官:リック・ペリー氏(元テキサス州知事)

リックは略称。本名はジェームズ・リチャード・ペリー(67歳、1950年3月4日生)

西テキサス出身。1968年にテキサスA&M大学(※AはAgriculture、MはMechanicaを意味する)に進学。卒業後は空軍に入隊。1972~77年まで、アメリカやヨーロッパ、中東でC-130輸送機のパイロットを務めました(大尉で退官)。

政治キャリアは民主党州下院議員から始まります(1984年当選)。

1988年の大統領選ではアル・ゴアを支持。1989年に共和党に所属を変更。1990年に州農政監察官に当選。同州下院議員となり、1998年の中間選挙でテキサス州副知事に当選しました。

その後、2000年にジョージ・W・ブッシュが大統領となり州知事辞任をしたため、テキサス州知事となります。2002年以降、連続当選を続け、2015年には大統領選に挑戦し、途中で辞退しました。

エネルギー産業が盛んなテキサス州出身のためか、エネルギー規制には否定的で、地球温暖化の原因をCO2とする説にも懐疑的です。

ペリー氏は2012年の共和党予備選では「三つの省庁を廃止する」と宣言したのですが、その時に「エネルギー省」という名前を思い出せずに恥をかきました。

そのペリー氏がエネルギー省長官となるのは異例の人事です。

トランプ氏はペリー氏が「何百万人もの雇用を生み、エネルギー価格の低下に貢献した(←民衆の生活コストを下げたことを評価)」と評価しています。

住宅都市開発長官:ベン・カーソン氏(元神経外科医)

ベンは愛称。本名は「ベンジャミン・ソロモン・カーソン・シニア(Benjamin  Solomon Carson, Sr.:66歳、1951年9月18日生)。

この人も医師です。ベン氏はミシガン州のデトロイト出身、幼少時に両親が離婚し、陸軍士官学校卒業後、イェール大学を卒業。この時は心理学専攻。ベン氏もミシガン大学で医師の資格を得ました。

「ジョン・ホプキンス小児センター」で小児神経外科部長となります。

カーソン氏はベトちゃんとドクちゃんの分離手術(シャム双生児分離手術)を成功させた医師です。

医師としてはトップレベルの評価を得、2013年に引退。

その後、共和党の大統領選候補者として名乗りを上げ、撤退しました。

途中からトランプ氏を支持し、選挙の功労人事で今回の任命に至っています。

住宅都市開発長官に指名されたのは、候補者に名乗りを上げた際に、都心近接地域の環境改善という住宅問題の政策を掲げていたためだとも言われています。

中小企業庁長官:リンダ・マクマホン氏(プロレス団体WWE創設者)

リンダ・マクマホン(69歳、1948年10月4日生)は全米最大のプロレス団体WWEの元CEOです。

1980年代からWWFの運営に関わり、90年代末からテレビ番組に登場(プロレスラーではなく、当然、一出演者として)。

09年にCEOを辞職し、2010年11月にはコネチカット州の上院選に出馬。共和党候補となりましたが、民主党候補のリチャード・ブルーメンタル州司法長官に敗北しています。

2012年上院選でも共和党候補者になり、民主党候補のクリス・マーフィー下院議員と戦っています(落選)。

共和党の支援者でもあり、このたびの大統領選挙では番組で接点のあったドナルド・トランプを支持しました。

トランプ氏はマクマホン氏を「彼女は従業員13人だったWWEを800人以上の世界的団体に育てた」「彼女は米国の起業家精神を国中に解き放つだろう」と評価しています。

労働長官:アレクサンダー・アコスタ氏(元フロリダ国際大学法科大学院長)

昨年に労働長官に指名されたアンドリュー・パズダー氏(CKEレストランツ・ホールディングスCEO)は不法移民を働かせていた問題が発覚し、店舗従業員から不祥事(低賃金で働く従業員への賃金引上げ拒否が原因)で訴えられ、スキャンダルにより上院での承認の見通しが立たなくなりました。

トランプ氏は、労働省から「監督される」側にいたファストフードチェーン経営者を労働長官に据えることで行政を変えようとしたすが、パズダー氏は指名を辞退。その後、フロリダ国際大学法科大学院長のアレキサンダー・アコスタ氏を指名しました。

ホワイトハウスHPの記事によれば、アコスタ氏の経歴は以下の通りです。

「彼は三代にわたって大統領から指名され、上院の承認を得てきた。その地位の中には全米労働委員会委員も含まれている(※これはブッシュ政権時代)。アコスタ氏はヒスパニックで初めて司法次官補となり、フロリダの南部で合衆国地方検事として働いた。13年以来、アコスタ氏は、フロリダのヒスパニックコミュニティで最も大きな地方銀行であるUSセンチュリーバンクの議長を務めてもいる」

トランプ氏は、同氏を「米国人の機会均等を熱心に訴えた」人物として推し、同氏の長官就任は「米国労働者を支援するために労働省を率いる自信を与えてくれる」とも述べていました。

米国経済、製造業、労働力を再活性させるわが政権の目標を達成するためのキーパーソンになる(原文はキーパーツだが、人間なので、キーパーソンと意訳)」と評価し、期待を寄せているようです。

(出所:President Donald J. Trump Nominates R. Alexander Acosta to be Secretary of Labor | whitehouse.gov 2/16)

トランプ氏のコメントはかなり力が入っています。もともと白人労働者票を得て当選したので、労働長官人事は同政権にとって非常に重要な位置づけにあります。ヒスパニック系の取り込みも図っていることも見落とせない重要なポイントです。

教育長官:ベッツィ・デボス氏(慈善活動家/米児童連盟委員長)

ベッツィ・デボス氏(60歳、1958年1月8日生/カルビン大卒)は夫婦で投資会社を設立し、会長を務めていました。

義父は米直販大手のアムウェイの共同創業者です。

産経記事(12/11:1面)によれば推定保有資産は51億ドル!。

共和党への大口献金を行う富豪で、ブッシュ(子)大統領が再選された2004年大統領選では資金集めに大きく貢献しました。

1996年~2000年、2003~2005年に共和党のミシガン州委員長を務めています。

16年の大統領選ではジェブ・ブッシュ元氏(フロリダ州知事)等を支援しましたが、党内融和の一環として閣僚入りしています。

デボス氏は全国児童連盟会長を歴任し、学校選択の自由やチャータースクール(民間運営校)普及、バウチャー制度の実現等を訴え続けてきました。

しかし、教育や行政の経験はないので、上院での指名は難航しました(その後、承認)。

トランプ氏はデボス氏を「優秀で情熱的な教育家だ」と評価し、学校選択の自由の実現と教育行政における官僚主義を打破を期待しています。

農務長官:ソニー・パーデュー氏(元ジョージア州知事)

パーデュー氏(71歳:1946年12月20日生)はジョージア州ペリー出身で、出身校もジョージア大です。

2003年から11年までジョージア州知事を務めており、大統領選ではトランプ氏に農業政策をアドバイスしていました。

ブルームバーグ記事(「トランプ氏が米農務長官にソニー・パーデュー氏指名へ-関係者 (1)」1/19)では「トランプ氏の大統領選勝利は、景気回復を望む農村部の有権者から強い支持を得たことが一因」だとも報じています。

「トランプ氏が公約通り中国などとの通商関係の刷新を進めれば、商品の流れに混乱が生じる恐れがある。こうした変化は世界の商品価格にも影響し得る。さらに、米国の移民法が一段と厳格に運用された場合、農業事業者は労働力不足に陥る恐れもある。不法滞在の労働者は米国の農業労働力で大きな割合を占める」(前掲記事)

3月14日には、ライトハイザーUSTR代表が上院の公聴会で農業分野の市場拡大に関して「日本が第一の標的になる」とも述べていますが、パーデュー氏の就任が固まれば、農政についてもっと多くの話題が報じられることになりそうです。

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