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軍事企業の株価 LMTやBE、NOCやRTNは2018年にどうなる

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トランプ大統領は12月12日に国防権限法案に署名し、2018会計年度(17年10月~18年9月)における国防予算が成立しました。

米国の2018年の軍事費は6920億ドル(約78兆5600億円)という、途方もない規模です。

その内訳は、兵器調達や米軍人件費等を含む基本予算が6260億ドル。イラクやシリア、アフガン等での対テロ作戦に660億ドルから成ります。

ここには、米軍将兵の昇給(2.4%増)、IS打倒や南アジア戦略、ミサイル防衛の強化、90機のステルス機F35の調達(101億ドル)、海軍増強予算262億ドル(バージニア級攻撃型原潜の調達などを含む)が含まれています。

しかし、ややこしいことに、基本予算には「予算管理法」(2011年成立)の制約がかかるので、歳出に上限がかけられます。

予算管理法は政府支出を強制的に削減する規定を設けているので、議会で歳出上限の引上げが認められなければ、米軍事費の基本予算は自動的に5490億ドルにまで引き下げられます。その差額は770億ドル(8兆7415億円)にものぼるので、今後の議会での攻防が注目されています(対テロ戦の予算は強制削減の適用範囲外とされている)。

(出所:産経ニュース〈【トランプ政権】トランプ大統領、2018会計年度の国防権限法に署名 米軍増強〉2017/12/13)

「2018国防権限法」署名にあたってのトランプ大統領の発言

トランプ大統領は法案署名に際して、まず「この歴史的な法律は、世界史における最大の戦闘力である米軍(男性と女性メンバー)に対する揺るぎないコミットメントを示しています」と述べました。

(出所:”Remarks by President Trump at Signing of H.R. 2810, National Defense Authorization Act for FY2018” 2017/12/12)

そして、最近に起きたニューヨークでの2回のテロを取り上げ、入国管理の厳格化と対テロ作戦の必要性を主張しました。

国防費に関する歳出上限について、以下のように批判しています。

  • 近年、わが軍は一連の予算削減によって即応体制(※非常時に対応する能力のこと)が脅かされ、能力が縮小され、戦闘員に多大な負担をかけている。しかし、彼らは偉大な戦士である。
  • 歴史は、米軍の防衛力を弱めることが、我が国への攻撃を招くことを教えてくれる。紛争やそれに似たあらゆる事態を防ぐ最良の方法は、(軍事的に)それに備えることだ。正しいものが強くある時だけ、平和が広められるのだ。
  • 今日、この国防権限法に署名し、我々は米国の軍事力を完全に回復させるプロセスを加速するのだ。
  • In recent years, our military has undergone a series of deep budget cuts that have severely impacted our readiness, shrunk our capabilities, and placed substantial burdens on our warfighters. And great warfighters they are.
  • History teaches us that when you weaken your defenses, you invite aggression. The best way to prevent conflict or be -- of any kind -- is to be prepared, and really be prepared. Only when the good are strong will peace prevail.
  • Today, with the signing of this defense bill, we accelerate the process of fully restoring America's military might.

トランプ大統領は、法案成立に尽力したマケイン上院議員に対して謝意を表明し、IS打倒作戦の重要性を訴えました。

  • ISISを消滅させる作戦継続のための資金提供を許可する。
  • ご存じのように、我々はイラクで勝ち、シリアでも勝った。
  • しかし、彼らは他の地域にも広がり、我が軍は彼らが広がるのと同じ早さで各地に展開している。
  • 我々は過去8ヶ月間で前政権が任期中に行ったことよりも、ISIS打倒作戦により多くの成功を収めている。
  • It authorizes funding for our continued campaign to obliterate ISIS.
  • As you know, we've won in Syria, we've won in Iraq.
  • But they spread to other areas and we're getting them as fast as they spread.
  • We've had more success with ISIS in the last eight months than the entire previous administration has had during its entire term.

そして、北朝鮮対策の必要性を力説しています。

  • 北朝鮮の独裁政権に最大限の圧力をかけながら、ミサイル防衛能力を承認する。
  • 戦車等をアップグレードし、新しい攻撃機(F35)を購入し、世界で最も優れたバージニア級の潜水艦を確保します。
  • It approves missile defense capabilities as we continue our campaign to create maximum pressure on the vile dictatorship in North Korea.
  • It upgrades our Ground Combat Vehicles, allows for the purchase of new Joint Strike Fighter aircraft, and paves the way for beautiful new Virginia-class submarines -- the finest in the world.

さらに、国防権限法が兵士への昇給を伴うことを指摘しました。

  • NDAAは、7年ぶりに米軍の規模を拡大し、兵員にここ8年間の中で最大の昇給をもたらす。
  • 今議会は、防衛費に関する上限措置を取り除き、適切な歳出法案を可決すべきだ。
  • 今回の立法のように、国家防衛は、常に超党派の問題であるべきだ。
  • 我々は、英雄的な軍人に何千倍もの装備、資源、支援を与えるべく、党派を越えて働かなければなりません。
  • 同時に、我々は同盟国と敵に明確なメッセージを送りました。アメリカは強く、誇り高く、決意し、(有事に)準備ができている。
  • わが国と、我々の家族、我々の自由を支える、我らの勇敢な戦士たちに感謝する。
  • 真新しい、美しい装備があなたがたの前にある。それはあなたがたが今までに持っていた中で最高のものだ。
  • 神はあなたがたを祝福し、神もまた、わが軍とアメリカを祝福している。
  •  The NDAA increases the size of the American Armed Forces for the first time in seven years, and it provides our military servicemembers with their largest pay increase in eight years.
  • Now Congress must finish the job by eliminating the defense sequester and passing a clean appropriations bill.
  • Protecting our country should always be a bipartisan issue, just like today's legislation.
  • We must work across party lines to give our heroic troops the equipment, resources, and support that they have earned a thousand times over.
  • Together, we will send a clear message to our allies and a firm warning to our enemies and adversaries: America is strong, proud, determined, and ready.
  • And thank you, most of all, to our brave warriors for standing watch over our country, our families, and our freedom.
  • Brand-new, beautiful equipment is on its way -- the best you've ever had by far. 
  • God bless you, God bless our military, and God bless America.

米軍事費6兆円増 活気づく軍事企業

トランプ大統領は2月下旬にトランプ大統領が軍事費を6兆円増やし、オバマケアや海外援助予算などを削減する方針を明かしました。

そのかわり、外交を担う国務省、地球温暖化対策を担当する米環境保護局(EPA)などの予算を540億ドルほど削るわけです。

当然ながら、国防予算が増えれば軍需産業は活気づきます。

トランプの最近の発言(核軍備増強等)を反映してか、現在、防衛系大手の株価は上昇傾向を見せています。

ロイター通信のHPで作成したチャートを見てみます。

【軍事企業株価チャート①】

★ロッキードマーティン(LMT):空軍系の最大手(F35製造の中心)

★ノースロップ・グラマン(NOC):空軍系大手でレーダーや情報分野に強みを持つ

★レイセオン(RTN):ミサイル(防衛用含む)製造の大手

★ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX) :軍用・民用の航空機エンジン、制御装置の大手

軍事企業株価チャート1

 

【軍事企業株価チャート②】

★ボーイング(BA):軍用・民用双方の航空大手

★ハンティントン・インガルス(HII):海軍艦艇の製造大手

★ゼネラル・ダイナミクス(GD):戦車等の陸軍系製造大手

★L3コミュニケーションズ・ホールディングス(LLL) :軍事用の電子機器メーカー

軍事企業株価チャート2

そもそも米予算はどうなっている・・・

日本メディアは過去の米予算の中身まで教えてくれないので、外務省HPで概要を見てみます。

2016年2月9日時点でオバマ大統領が出した2017年の予算教書では、どのようにお金が配分されていたのでしょうか(以下の図表とデータの出所:2017年度予算教書 | 外務省)。

★2017年度予算案(歳入):約3兆4770億ドル

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★2017年度予算案(歳出):約4兆890億ドル

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歳入から歳入を引くと、「2017年度の財政赤字は 5,030億ドル(対GDP2.6%。昨年度は3.3%)」。

軍事費の上限を抑制したはずのオバマ政権でも6050億ドルが軍事費に使われています。トランプ政権の6兆円増だと、8%増ぐらいに相当するのでしょうか。

冷戦期につくられた大陸間弾道ミサイルが老朽化しているので、アメリカはその更新費用を捻出しなければいけなくなっています。その予算は30年間で1兆ドルを要するとも言われているので、ロシアや中国に対峙し続ける上で、やはり、軍事費の増額は不可避だと言えます。

(※トランプ氏は2010年にオバマ政権がロシアと合意した「新戦略兵器削減条約(新START)」を見直す方針。「一方的な取引だ」と批判している)

トランプ氏は米海軍艦艇を276隻から350隻に増やすことを訴えてもいるので、こちらにも巨額の費用がかかります。

フォックスニュースの記事を見ると、トランプ氏と共和党の方針が説明されていました。

  •  議会の防衛タカ派はトランプの軍拡要望に関して、2018年の6030億ドルで足りるのかどうかを問うていた。
  • 「6030億ドルでは海軍を再建できない」と関係者は述べ、防衛費の増額が不十分であるとの懸念を表明している。

 (出典:Trump seeking $54B increase in defense spending, cuts elsewhere Published February 27, 2017 FoxNews.com)

軍事費の増額は「強制削減」(※オバマ政権の頃は軍事費が一定額、強制的に削減されていた)の壁を破れるかどうかが大きな課題です。

そのため、強制削減の壁を破れるかどうかの攻防戦が軍事系大手の株価の変動に大きな影響を与えることになるでしょう。

2017年国防予算の内訳(参考)

オバマ政権が2016年に議会への提出した時の国防予算(国外作戦を除いた金額)構想の内訳が、日本航空宇宙工学会のレターで公開されているので、それを見てみましょう。

  • 人件費:1352億ドル
  • 作戦行動費:2059億ドル
  • 装備品調達費:1026億ドル
  • 研究開発費:714億ドル
  • 建設費:61億ドル
  • 家族住宅:13億ドル
  • 回転資金:14億ドル
  • 総計:5239億ドル(国外作戦を除く)

人件費は、まさに軍の維持費そのものです。作戦行動日は毎年消化される活動費であり、装備品にもメンテナンス費がかかります。

前掲資料では、もろもろのお金を足した2017年度の主要装備品の調達費総額(研究開発費を含む)は1839億ドルとされていました。調達に回せる金額は3割以下であるわけです。

現実の軍事予算の世界では、信長の野望みたいに、お金を投下したら兵と装備がプッと出てきません。装備があっても訓練しないと使い物にならなかったり、メンテナンス費用がかかったりと、ややこしい問題の連続なのです。

今後も、複雑な障壁を乗り越えながら、トランプ政権は米軍再建に力を注いでいくはずですが、他の分野の予算削減などがどの程度、進められるのかが気になるところです。

イデオロギーで見ている人は「福祉を削って軍にお金を回すのは許せない」と言いますが、日本の防衛は「自衛隊が盾」「米軍が矛」という構造になっているので、トランプ軍拡は、日本にとって悪い話ではありません。

パワーポリティクスの国際政治は、基本的に「どこかが弱まればどこかが得をする」というゼロサムゲームです。

「米軍が弱体化すれば中国軍や北朝鮮軍が喜ぶ」という構図なので、得意分野に特化して全体の富の総量を増やせる(プラスサムが生まれる)経済の世界とは違います。

トランプ政権の軍事費増額は中国の軍拡や北朝鮮の核開発への対抗策なので、日米同盟にとってはプラスの効果があります。

日本からニュースを見るうえで、ここを見落としてはいけないでしょう。

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