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日本に移民政策は必要か 人口統計や世論調査を見て考える

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日本に移民受け入れに戦略はあるのか。

これは大きな問題ですが、現在、日本政府は公式に「移民政策」を実施していません。

安倍首相は2016年の10月18日に、日本維新の会の小沢鋭仁氏にTPPに関して質問され、「移民は全く念頭にない」と述べています。

ただし、「高度外国人人材の受け入れ促進に加え、建設分野などで外国人材の受け入れを進めている」とも述べていました(これは建前と本音の使い分け)。

この時、石原伸晃経済再生担当相(当時)は「日本は必ずしも海外から来て仕事をしやすい国とは思われていない。TPP発効後は、規制緩和などを通じ、もっと働きやすい場所になると信じている」とも述べていました。

(出所:【衆院TPP特別委】安倍晋三首相「移民政策は毛頭考えていない」 - 産経ニュース

こうしたやりとりを見ると「それって移民と何が違うの?」という疑問が湧いてきます。

今回は、政府の公式な立場と現状がずれている、「移民」をめぐる議論について考えてみます。

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移民政策についての各党の政策比較

そこで、まず、この問題(外国人労働者受入れを含む)についての各党の立場を比較してみます。

自民党

  • 少子高齢化と国際化を踏まえ、日本人だけでは労働力が足りず、社会に深刻な悪影響が生じる分野で外国人労働者が適切に働ける制度を整備。
  • 優秀な外国人材が、日本への帰化を希望する場合には、その許否について速やかに判断を行う取組を推進

公明党

  • 留学生の受け入れ拡大。
  • 大学で外国人研究者を活用できる体制づくり。
  • 難民認定制度の適正化・日本語対応

立憲民主党

  • 不明(公約に記述なし)

希望の党

  • 不明(公約に記述なし)

維新の会

  • 不明(公約に記述なし)

共産党

  • 外国人技能実習制度の安易な受入れ拡大に反対。制度廃止を含めた抜本的見直し
  • 永住外国人に地方参政権の付与
  • 難民問題に日本が先進国として積極的な役割を果たす

「移民政策」について竹森俊平氏が提言

この問題に関して、竹森俊平氏(慶応大教授)が日本が採るべき具体策を論じていました(読売朝刊:2017/8/4付)

竹森氏は移民が必要となる理由として日本の潜在成長率の鈍化を挙げています。

(潜在成長率というのは、モノやサービスを生産するために必要な資本〔企業の設備等〕、労働力、ノウハウ等を活かしてGDPをどれだけ高められるかを計る指標のこと)

日本経済の潜在成長率が06年以降の5年間でわずか0.4%と評価されており、そのうち「労働力」が-0.3%を占めていることを問題視していました(米国1.9%、ドイツ1.1%)。

日本は2025年に団塊の世代がみな、後期高齢者となり、15年~25年に要介護者が100万人以上増えることから、人手不足になるとも指摘しています。

しかし、日本は現在、外国人に永住してもらう「移民政策」をとってはいません(移民とは、定住する国を変え、その国に一定期間、暮らしている人を指す)。

竹森氏は参考事例として、ドイツが1961年にトルコ政府と「雇用協定」を結んで以来、トルコ人労働者が増えた例をあげています。当時、すでにトルコ人労働者の流入が長期化していたのですが、彼らを長期で受け入れる枠組みがなく、戦力になった労働者をトルコに帰らせ、また、ゼロから新しい労働者を教育するーーといったサイクルが繰り返されていました。これに対する解決策として「移民政策」が持ち出されたわけです。

竹森氏は財政面を配慮し、招来の政府への税金(や社会保険料)等の支払いが見込める25歳~30歳の高所得が見込める外国人を移民として受け入れることを薦めたのです。

竹森氏の提言は、移民審査で職業や能力を考慮して高い技能を持つ移民を優先的に受け入れる「メリット・ベース」の移民制度とよく似た考え方です。

トランプ氏も「メリット・ベース」の移民制度に変えたいと言っていましたが、そうしないと、単に社会保障だけをもらいたがるような外国人がたくさん入ってくることがあるからです(米国ではフード・スタンプ〔貧困層に渡す食糧給付のクーポン券〕で暮らす移民の増加が問題になっている)

日本に来た「移民」の現状:人数はどのくらい?

竹森氏の提言の少し前には、日本がいつのまにか移民国家になったというレポートがみずほ総合研究所から出されたことが時事通信等で報じられました(時事通信「日本は既に移民国家」=受け入れ拡大、人口対策のカギに-みずほ総研 2017/7/21)。

なぜそう言えるのかというと、日本人人口が減り続けるなかで、外国人人口が増え続けているからです。

(※総人口は、2018年4月時点の概算値で1億2653万人と見積もられています)

今回は、人口統計やみずほ総合研究所のレポートを踏まえ、「もはや移民国家」ともいわれる日本の現状を見ていきたいと思います。

まず、総務省が発表した人口推計(平成29年10月1日)の要点を見てみます。

  • 総人口:1億2670万6千人(前年比-22万7000人〔0.18%減〕)
  • 日本人人口:1億2464万8千人(前年比-37万2000人〔0.3%〕)
  • 総人口と日本人人口は7年連続で減少
  • 外国人人口:215万8000人(5年連続で増加)
  • 自然増減(出生児数-死亡者数):96万5000人(前年比-3万9000人)
  • 死亡者数:134万3000人(前年比+4万3000人)
  • 出生児数が死亡者数を37万7000人下回り、11年連続の自然減少となった
  • 社会増減(入国者数-出国者数):15万1000人 ※5年連続増加
  • 入国者数:361万5000人(前年比+25万4000人)
  • 出国者数:346万4000人(前年比+23万7000人)
  • 日本人は4000人の社会増加,外国人は14万7000人の社会増加

※そのほか、2017年11月1日に高齢化の現状が試算された。

  • 15歳未満人口:1557万5000人(前年同月比-18万5000人 〔-1.17%〕)
  • 15~64歳人口:7594万9000人(前年同月比-59万6000人〔-0.78%〕)
  • 65歳以上人口:3519万人(前年同月比+55万8000人〔1.61%〕)

(人口統計の推移。出所は総務省HP)

それ以外には、みずほ総合研究所が人口統計をもとに、日本人と外国人の人口増の推移を試算しています。

(出所:「東京の外国人住民比率約4%、日本は既に移民国家」)

現在の外国人人口は230万人なので、日本人の総人口の約3%。

変動数は以下の通りとなりました。

日本人変動数(増減率)

  • 2014年:-24万4014人(-0.19%)
  • 2015年:-27万1058人(-0.21%)
  • 2016年:-27万1834人(-0.22%)
  • 2017年:-30万8084人(-0.24%)

外国人変動数(増減率)

  • 2014年:-2352人(-0.12%)
  • 2015年:+5万9528人(+2.97%)
  • 2016年:+11万1562人(+5.41%)
  • 2017年:+14万8958人(+6.85%)

そして、特に外国人住民の多い都道府県として以下の地域を挙げました。

  1. 東京都:3.59%
  2. 愛知県:2.88%
  3. 群馬県:2.428%
  4. 大阪府:2.427%
  5. 三重県:2.36%

大都市や製造業の盛んな地域がランクインしています。

みずほ総合研究所は、日本の製造業はすでに働き手を外国人労働者に依存していることや、人口を増やすためには、日本人を増やすよりは外国人の流入速度を速めたほうがよいこと等を指摘しています。

このレポートでは、日本は「既に移民国家」と言える状況にあり、「移民受け入れ拡大が長期的な人口対策の鍵である」と指摘しているのです。

「移民政策」に賛否は相半ば

しかし、日本ではなかなか移民への抵抗は根強いようです。

そのため、公式には移民政策が採られないまま、外国人労働者が増えてきています。

こうした状況については、公に移民受け入れを認めるべきとする意見と、治安の悪化等を理由に反対する意見が相半ばしています。

移民を巡る世論調査:若年層が6割賛成

日経電子版(2017/3/21)の世論調査(2/24~26)では、賛成と反対がそれぞれ42%でした(「世論調査、賛否42%で真っ二つ 若年層は6割が賛成」)。そして、年齢別の賛否にかなりの違いがあるようです。

  • 18~29歳の若年層では賛成が約6割で反対の約3割を大きく上回った。70歳以上は反対45%、賛成31%で対照的な結果となった。
  • 政府関係者は年齢による違いを「将来の人口減少に対する危機意識の違いではないか」とみる。30~60歳代は賛否が拮抗した。

この電子版記事に反対の理由は特に書かれていません。

(※よくあげられる反対の理由は、治安悪化や雇用減少、文化的伝統の危機などです)

ただ、移民に関しては質問の仕方でずいぶんと答えの比率が変わるようです。

2016年2月22日の【産経・FNN世論調査】では「日本が移民や難民を大規模に受け入れること」についての回答の比率が出ています。

  • 賛成:20.2%
  • 反対:68.9%
  • 他:10.9%

そりゃ、そんな質問したら、みんな「嫌だ」って答えるでしょ・・・。

「大規模に」ってついてたら「怖い」と思うじゃないですか。(*_*;

この世論調査は産経カラーが出すぎているようです。

 「移民」がいないと、もう現場は回らない?

そもそも、今の日本は外国人労働者なしにやっていけるのでしょうか。

例えば、池上彰氏はコンビニや物流センター、農漁村の技能研修性等の例を挙げ、「日本では公式には移民政策をとっていない」のに、外国人労働者がいないと、「日本の『現場』は人手不足で立ち行かなくなってしまう」ことを指摘していました。

(出所:日本にも「移民局」が必要だ:日経ビジネスオンライン

 日本のずるい建前と本音の使い分けが透けて見える。人手不足だから外国人に頼るしかない。でも、本当は入れたくない。だから、建前としては認めていないけど、移民という名目じゃないかたちで、入ってきてもらおう、と。

個人的な意見を言えば、私は日本も移民局をつくるべきだと思います。今は、入国管理局が難民の審査をしていますが、彼らの仕事は「不正に入ってこようとする人を入れない」というのが基本スタンスです。つまり、入れることが前提ではなく、入れないことが前提となっている。当然、入国審査は厳しくなる。日本の現実と未来を見据えたら、海外からの移民を受け入れることを前提とした役所をつくるべきでしょう。

筆者は東京に在住していますが、コンビニやスーパーに行くと、バイトの店員の半分以上が外国人です。

店員の名札を見る限りでは、中国人や韓国人だけでなく、ベトナムやミャンマーあたりとみられるメコン川近辺の国々の出身者が増えています。

牛丼屋などでもアジア系の皆様のサービスを受けています。

何となく感じるのは、日本人のほうがルールに細かいが間違いが少なく、アジア系の人たちは「ざっくりしているが、気のいい人が多い」ということです。

当ブログは中国の軍拡や韓国の反日思想に批判的ですが、筆者は個人的には中国人や韓国人が嫌いではありません。

20代にバイト生活をしていたころは、工場等の勤務先でよく中国人や韓国人の方々とも一緒に働いていました。

筆者が会った外国人労働者の方々は、豊かで自由な生活を求める普通の市民ばかりで、反日的な人はあまりいませんでした。

諸々の反対意見はありますが、「外国人労働者がいないと現場が回らない」という現実に関しては、定量的データ(前掲の人口統計等)から見ても否定しがたく、池上氏等が挙げる生活者の実感も、大筋では当たっているのではないでしょうか。

わが国では少子高齢化が深刻化しているので、外国人に働いてもらうのは、決して悪い話ではありません。

外国人労働者たちと共生していくための制度を考えなければいけない時期が来たとも言えます。

追記:二重国籍問題について

移民には参政権の問題が付随します。

普通に日本国籍を取って帰化していただければありがたいのですが、蓮舫氏のように二重国籍問題が起きてしまうこともあります。

世の中には二重国籍でも問題ないと言う方もいますが、「政治家」になった場合は、やはり、問題が出てくるでしょう。

議員は日本国民の利益を代表し、議決を通して政治的な案件の是非を判断しますが、国会議員になると、その案件の中に、他国と利害関係が衝突するものが混じってきます。

例えば、北方領土返還交渉をし、安倍首相とプーチン大統領が条約にサインした後、国会で条約の是非を議決した時、アメリカと日本の二重国籍の議員がいた場合、この議員の賛否の判断は、アメリカ国民の利益を代表してなされたのか、日本国民の利益を代表してなされたのか、よく分からなくなります。

選挙では日本国民に尽くすために国会に行くと言いながら、この二重国籍の議員がアメリカのために議決の賛否を決めたりしたら、日本国民に対する背信になってしまいます。TPP等の通商・貿易問題や外交や防衛に関しては、他国と利害が一致しない案件が多いので、日本国民の利益を代表する国会議員が二重国籍ではよくないでしょう。

法務省のパンフレットを見ると、平成18年に生まれた子どもの100人に1人以上は重国籍者だと書かれています。109万2622人という同年の出生数から考えると、だいたい、年に1万人ぐらい重国籍者が誕生しているのです。

政府は22歳までにどちらかの国籍を選ぶことを奨励していますが、別に国籍を一つに決めなくても罰則はないので、日本で働く日系人の中には、「そのほうが便利だから」という理由で、二重国籍を解消しない方も多いようです。

そういう話を聞くと「けしからん」と顔をしかめる方もいます。ただ、世界では二重国籍を容認している国も多いので、なじんだ文化に基づく価値観の相違を埋めるのは、そう簡単ではありません。筆者も、結局、そのハーフの成人男性に国籍選択をする意義を理解させることはできませんでした。

しかし、二重国籍を解消する人もいます。

生まれた時から「日本人」でいると、「国籍」の重要性を意識することもないのですが、自分の意思で「どの国の国民になるべきか」を選ぶ方は、まじめに「日本」という国を選ぶケースが多いようです

ただ、帰化する人は真剣なのに、手続きは役所で書類を書くだけなので、非常に味気がありません。

中国から日本に来て、日本国籍を取得された石平氏は、法務局に帰化申請に行った時、担当者から質問されたのは、「在日年数がどれくらいか、安定した収入があるのか、そして犯罪歴などの『前科』がないのか」という三点だけだったと述べています(5年以上在日が帰化の要件)。伊勢神宮に参拝してから帰化された石平氏は、「お前はどうして日本人になりたいのか」「お前は日本が好きなのか」「お前は日本の皇室や伝統文化をどう思うか」というアイデンティティに関わる内面的な質問はなかったと残念がられているわけです(「月刊日本」2008年2月後号)

そうなるのはなぜかと言うと、日本国憲法上、思想・信条の自由に関わる問題に政府は干渉しないことになっているからです。国家権力で「〇〇と△△という思想を持つ者は日本国民と認めない」「XXという思想に賛同できなければ日本国民と認めない」というような要件は、今の日本では法律で決められていません。

日本において、「国民の要件」が厳格ではないのは、昔のナチスのような国家至上主義にならないようにしているからです。しかし、石平氏が言われるように、帰化する人の日本に対する好感度や文化への理解などが全く問われないのも、味気ない話です。

日本の帰化制度は事務手続きに近いので、思想的には真逆に位置する、石平氏も蓮舫氏も、等しく日本人に帰化できています。アメリカでは、合衆国に対して忠誠を誓うことが要求されますが、日本では、この種の要件がないからです。

こうしてみると、蓮舫氏の二重国籍問題は「そもそも、日本国民とは何か」を、考え直させる重要な一例だとも言えます。

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