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トランプのNAFTA再交渉 米国VSカナダ、メキシコの行方

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NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉は、米国とメキシコ、カナダの間で、2017年には5回にわたって行われました。

この交渉の行方が各国から注目されています。

一応、この概略を振り返ると、1994年に発効したNAFTAは米国、カナダ、メキシコの3国(域内人口は4.8億人、域内のGDPは約20兆ドル)が相互に関税を撤廃し、市場を開放する自由貿易協定です。

NAFTAによって、人件費が安く、規制が緩いメキシコへの産業移転が進みましたが、トランプ政権は、これが米国内での製造業衰退をもたらしたと見て、再交渉を進めています。

本記事では、再交渉の争点と2017年から後の会合の経緯を整理してみます。

長らく論争が続いた後、再交渉は、27日に米国ーメキシコ間では「予備的合意」に達しましたが、残りのカナダも含めて、再交渉は2018年内に決着するのでしょうか。

米ーメキシコが「予備的合意」(2018年8月)

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8月27日、トランプ大統領はNAFTA再交渉に関して、米国とメキシコが2国間協議で合意に達したことを発表。メキシコのペニャニエト大統領とともにカナダとの再協議を開始する方針を明かしました。

メキシコのビデガライ外相はカナダと米国が合意できない場合でも、以下のメキシコー米国の合意は有効としているので、メキシコ側が後戻りすることはないと見られています。

  • 自動車の原産地規則に関して現地調達率を現行の62.5%から75%に引上げる(米ーメキシコ双方に適用。自動車部品の生産の一部が中国からメキシコにシフトすることが期待されている)。
  • 米ーメキシコは完成車の40~45%の部品を時間当たり賃金が最低16ドルの工場で生産する(メキシコから米国への生産回帰やメキシコの賃金上昇が期待されている)。
  • 米側が要求した「サンセット条項」(一定期間で協定が自動的に廃止になる条項)は合意には盛り込まれず、NAFTAには16年の期限が設けられ、見直しを経て次期16年の延長が可能になる。
  • メキシコはダンピングを巡る一部の紛争解決パネルの廃止に合意。

トランプ氏は、カナダとの間で合意が得られなかった場合に、カナダから輸入する車に関税をかける可能性があるとも述べましたが、カナダのフリーランド外相は8月28日に訪米し、協議に臨みます。

米側はカナダが31日までに合意することを望み、新貿易協定を90日以内に締結することを米議会に正式通知したいと考えています。

新NAFTAが成立(2018年9月30日)

その後、9月30日にはカナダが協定に合意し、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA:United States-Mexico-Canada Agreement)」に関して合意が成立しました。

ロイター通信(2018/10/2)によれば新協定の主な内容は以下の通りです。

★小売業の免税限度額

  • カナダ:関税が150カナダドル/国内売上税が40カナダドル
  • メキシコ:関税・国内売上税が100ドル

★医薬品

  • バイオ医薬品の特許保護期間は10年(アッヴィ社が販売する関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」などの類似品の国内販売が遅れるため、米ヘルスケア業界にはプラス)

★小麦

  • カナダー米国間で小麦の類似品を同じ格付けにする(米国側は米小麦の格付けが低いと苦情を述べていた)

★乳製品

  • カナダは国内乳製品市場の3.5%相当(160億ドル前後)について米酪農業者にアクセスを与える。この規模はTPPの時よりも大きい。

★畜産

  • 鶏肉:協定発効後の6年間に5.7万トンの無関税輸出枠を獲得(7~16年後には枠を1%上積み)
  • 卵・卵同等製品:米国が初年に12000個の無関税輸出枠を獲得(2~11年後には枠を1%上積み)

★著作権

  • カナダと米国の著作権の保護期間はともに著作者の死後70年間となる。米国ではディズニー社等のコンテンツ産業が恩恵を受ける。

★紛争処理制度

  • NAFTA19条の枠組が存続。カナダは米国の反ダンピング関税から国内の木材産業を守ろうとしている。

★自動車

  • 米国は自動車に25%の追加関税を課せるが、カナダとメキシコからの乗用車、小型トラック、自動車部品は適用除外。米通商拡大法232条発動時もメキシコとカナダは年260万台の枠内であれば関税免除。
  • 小型トラックは関税免除。自動車部品の対米無税輸出枠はメキシコが年/1080億ドル、カナダが年/324億ドル。

★自動車の原産地規則

  • 今後5年で域内の部品調達率を62.5%から75%に引き上げ。
  • 部品の40%は時給16ドル以上の地域で生産しなければならない。
  • 自動車メーカーは鉄鋼とアルミに関して最低70%を米国、カナダ、メキシコの3カ国で調達。

★エネルギー

  • メキシコに同国の地下炭化水素資源の所有権を保障されることが明記された。

NAFTA再交渉の課題とは

ややこしい専門用語が連発されているので、その交渉の争点を整理してみます。

この交渉では「原産地規則」が最大の懸案事項になっています。

原産地規則は一定の基準を超えた割合で、米国、カナダ、メキシコのいずれかでつくられた部品を使っていれば、北米産の製品と見なして関税をゼロとするルールです。

この規則が変われば、もっと多くの部品を域内(米国、メキシコ、カナダ)で調達することが要求されます。

例えば、自動車の場合、部品の62.5%以上をNAFTA域内で調達することが関税撤廃の条件とされているので、日本企業は、この基準が変わるかどうかに注目しているのです。

NAFTAはEUを超える巨大なGDPの規模を持ち、日本の自動車企業の多くがメキシコに進出しているので、その影響力は甚大です(2016年の日本メーカーの生産台数は139万台。メキシコに進出する日本企業は2016年10月時点で1046社に上る)。

それ以外にも多くの課題があり、WSJ日本語版(2017/8/15)では、「NAFTA再交渉、立ちはだかる8つの難題 農業、貿易、移民制度が主なテーマ」と題した記事を公開していました。

この記事では、原産地規則のほか、7つのテーマが挙げられています。

  • タイミング:2018年には米中間選挙とメキシコ大統領選が控えているため、トランプ大統領は来年早々にも再交渉を終わらせたい。
  • 貿易赤字減少:米国からメキシコへの製造業流出を食い止められるかどうか。
  • 紛争仲裁条項:その一つはISDS条項(NAFTA加盟国で権利が侵害されたと域内の投資家が判断した場合、賠償金を求めて国際仲裁裁判所に申し立てできる制度)。また、もう一つは、ダンピングや補助金措置の疑いに対して相殺関税が課せられた際、相手国に抗議できる制度(NAFTA19章内の項目)。米政府当局者は19章の廃止を提案。カナダは現状維持を要望。
  • 労働と環境保全:トランプ政権当局者は、3カ国がメキシコの環境保全や労働に関する規則を厳密化することに同意。メキシコ政府も労働改革を押し進めている(これはコスト増につながる)
  • 農業と林業:米国の主要農業部門は今のNAFTAの枠組みに満足し、輸出品の免税措置やメキシコとカナダ市場に制限なく参入できる現状を維持したがっている。しかし、これは製造業とは立場を異にする。また、カナダから輸出される材木への関税や上限設定も交渉対象となる。
  • 為替操作:米議員や一部輸出業者は、貿易協定の中に為替操作への罰則を求めているが、その規則が国の金融政策の選択肢を制限する可能性があると危惧されている。
  • 移民制度:トランプは不法移民を中心にしてメキシコ移民の数を減らそうと試みている。

これに原産地規制を加えた8つが交渉の課題とされているわけです。

WSJ紙(2017/7/18)はそれ以前にも再交渉の課題を指摘していました(「米NAFTA再交渉、気になる7つのこと ロードマップ発表、衝突不可避の提案も」)。

  • TPPで交渉済みの項目(国営企業やEコマース、そして金融サービス業に関する規則など)に関しては、比較的、容易に話が進む
  • 米政府は環境や労働に関して紛争が生じた場合、仲裁委員会に解決を委ねる制度を導入する意向。この場合、違反行為と認定されれば懲罰的な関税が課される可能性がある⇒3カ国のいずれの経済界も反対
  • 米政府はNAFTAを「為替操作」の有無を監視できる米国初の貿易協定にしたい
  • カナダやメキシコによる貿易制裁の回避を容易にする19章(参加国間の紛争解決メカニズムを定めている)の廃止を求める
  • 投資家が「反ビジネス」とみなす国の政策について仲裁委員会に訴えることを可能にする条項の扱い ⇒見通しは不透明。
  • トランプ政権は、特に「農家や牧場主」が「切望していた市場へのアクセス」を勝ち取れたとしている。成果を生んでいる条項に手を加えるべきではないと訴えた共和党議員らの主張を尊重した。
  • 一方、製造業のアウトソーシングによる工場閉鎖など、米国労働者に”不利な内容”は見直しを求めている

WSJ紙は当時、国家経済会議委員長をしていたゲーリー・コーン氏の影響でトランプ政権の強硬路線が薄められることを見込みましたが、同氏は2018年3月に辞任。

同政権は、保護主義の色彩を強めています。

メキシコとカナダが取りうる対抗措置とは

NHKニュースWEB(8/16)では、メキシコとカナダの動向が紹介されていました(「NAFTA再交渉開始へ 日本の自動車産業も注目」)。

メキシコ

  • メキシコ政府は自由貿易に逆行する関税や貿易障壁の設置に反対
  • NAFTA再交渉に応じるが「貿易赤字の削減」や「原産地規則」については言及せず、米国にだけ有利になる仕組みには反対。
  • ビデガライ外相は自由貿易を守るとして、「3か国にとって利するものにすべきだ。なぜメキシコにとって不利なものに参加しなければならないのか」と発言。結果次第ではNAFTA離脱も辞さないと述べた。
  • 米国が関税引き上げ等を打ち出した場合、メキシコが農業分野で対抗措置を講じ、関税合戦が始まる可能性がある。

カナダ

  • カナダは米国最大の輸出先。16年には米国の輸出全体の約18%を占めた。
  • 米国はカナダから木材や乳製品を輸入しており、対カナダの米貿易赤字は16年に162億ドル(対メキシコは705億ドル)。
  • 米国は4月、カナダからの輸入木材について不公正な取引だとして制裁関税を適用する方針を発表。
  • トランプは「カナダのせいでアメリカの酪農家がひどい目に遭っている」とツィート。NAFTA再交渉を前にカナダ政府は懸念を強めた。
  • 米国は反ダンピング関税などの発動が妥当かどうかを審査する紛争解決制度の撤廃を求めたが、これにカナダの産業界は反発。
  • トルドー首相は「カナダにとって紛争解決制度は不可欠だ」と述べている。

米USTR代表の立場とは

ロイター記事(2017/8/16)では、USTR代表の発言が掲載されています(「NAFTA再交渉、最初から「野心的」に進める=米USTR高官」)。

USTR高官は15日に「我々は第1回目の協議でかなり野心的になるだろう」と述べ、米国の目標は「米国民の高賃金の雇用を支え、米国経済を成長させる、よりバランスの取れた互恵的な通商合意」を得ることだと説明しました。そのほか、関税ゼロの恩恵が加盟国に及ぶよう原産地規則を見直すことは再交渉の主な目的だと指摘しています。

しかし、これに対して、WSJ日本語版(2017/4/28)は「メキシコの米国製品への関税はほぼゼロ、米大統領は知っているのか?」と問いかけています(「【社説】NAFTAとトランプ氏の空想世界」)。

米国の農産物に対するメキシコの輸入関税はゼロに近く、他の大半の製品についても同様だ。米国の農業の3大輸出市場は中国、カナダ、メキシコだ。NAFTAのパートナー国に輸出する米国の他の業界も同様に、極めて低い関税の恩恵を受けている。だからこそ全米肉牛生産者協会(NCBA)は26日、NAFTAの撤廃は「わが国にとって現時点で最も危険な動きの一つだ」と述べたのだ。

米通商代表部(USTR)は「米国の恒常的な貿易不均衡に対処する。貿易障壁を打ち破り、米国人に輸出を伸ばす新たな機会を与える」とNAFTA再交渉の目的を7月17日に議会に通知しました。

これはプロパガンダの一種でもあるのでしょう。

雇用を得られなければNAFTA終了?

2017年にトランプ大統領は7月7日の演説で「雇用を得られなければNAFTAは終了」とも述べています。

(出所:”President Donald J. Trump’s Weekly Address” July 07, 2017)

  • ここホワイトハウスでは、7月を我らが愛する3つの言葉に捧げた。それは、MADE IN AMERICAだ。
  • 2世紀以上にわたり、この3つの美しい言葉は、品質、職人技、卓越性の世界標準となっている。
  • 大統領である私の最優先事項の1つは米製造業を立て直すことだ。
  • 何十年もの間、我々のコミュニティから雇用が切り取られ、産業や町が剥奪された。コミュニティが根絶やしにされ、放置されました。外国の米国の負担で豊かになり、大規模な米国の富の盗難によって利益を得た者がいる。
  • 我々の政府は就任宣誓以来、新たな哲学を採用している。アメリカファースト。経済的降伏の時代は終わった。新しい国の誇りが我々の土地を席巻している。あなたも、私も、我々も、それを見るのだ。
  • 産業の信頼は今までの最高水準まで上昇した。
  • 私の最初の行為の1つは、全ての連邦政府機関に2つの単純なルールを命じることだった。アメリカの商品を買い、アメリカ人を雇えということだ。我々は、アメリカの労働者とともに、アメリカの鉄やアルミニウム、スチールをつくりたい。
  • 我々は国内経済のあらゆる可能性を切り開き、経済の完全な力を発揮したい。アメリカ人はついに我々の足の真下にあり、海岸の下にある膨大なエネルギーの富を利用できるようになるのだ。
  • 我々はまた、他の国々が我々をもう一度利用することを許さない、という明確なメッセージを世界に送ってきた。
  • だからこそ私はパリ気候協定から脱退した。私を信じてほしい。それは一方的な内容で、我が国に有利ではなかったからだ。そして、雇用を殺すTPPからも離脱した。これはNAFTAの全面的な再交渉を追求している理由でもある。我々が雇用を得られないのなら、それを終わりにする。NAFTAは永遠に終了するのだ。
  • 地球上の他のすべての国家は、自国の利益を保護している。アメリカも同じようにしているのだ。

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  NAFTA再交渉の過程

最後に、各国の立場と争点を踏まえた上で、17年~18年の再交渉会合のポイントを整理してみます。

第一回会合の結果:総論賛成、各論反対

第一回の会合は8月16日~20日にワシントンで行われました。

この会合では、ライトハイザーUSTR代表が以下のような主張を並べました。

  • NAFTAは多くの米国人を根本的に失望させてきた。
  • 現協定の微修正やいくつかの規定の現代化では不十分であり、大きな改善が必要になる。
  • 現代化の対象は、デジタル貿易、サービス貿易、電子商取引、通関手続、知的財産権保護、エネルギー、透明性確保、農業貿易など。
  • 米国農家(畜産・酪農含む)にとってメキシコとカナダは最大の輸出先だが、巨大な貿易赤字や製造業雇用の喪失、企業閉鎖・移転を無視できない
  • 自動車(部品含む)に関しては、、もっと多くのNAFTA産と相当の量の米国産が含まれなければならない(これは米国産限定の原産地規則の導入を意図したものだが、メキシコ、カナダは否定的な反応)。
  • 実効的な為替操作条項を導入すべきだ。
  • アンチダンピングや補助金相殺関税措置に関する紛争解決制度(NAFTA19章)の撤廃を念頭に置き、主権と民主制度を尊重した紛争解決手続きの構築を挙げた。

厳しい交渉を経て、20日に発表した共同声明では、20項目以上で専門的な協議に着手したことや、包括的な再交渉のプロセスを進めることで合意したことに言及されています。

しかし、各論の交渉結果は不明なので、第一回会合では、米国の主張はカナダやメキシコに受け入れられなかったようです。

第二回会合の結果:わずかながら前進。原産地規則は変わらず

第二回会合は9月1~5日にメキシコシティで行われました。

非公開で、原産地規則や電子商取引、中小企業対策、汚職防止、投資などの25項目が協議されています。

しかし、電子商取引の推進や中小企業対策などの7項目では協議が進みましたが、重要項目の原産地規則では具体的な進展がありませんでした。

為替条項や貿易の紛争解決条項でも協議は進まず、メキシコの賃金の安さが米国からの工場移転をもたらすと米国側が主張するなど、新しい衝突の火種も発生しています(当然、メキシコ側は賃金水準の決定は企業に委ねる意向)。

終了後の共同声明にて、三か国の代表は2017年内の協議終了を目指す意向を明かしました。

第三回会合の結果:中小企業の活用促進の交渉で合意

第三回会合は9月23日から27日にカナダのオタワで開催されました。

そこでは、中小企業の活用促進に関する交渉がまとまり、競争政策に関する条項も議論が進展し、幾つかの分野で「重要な進展」がみられたという共同声明が出されました。

米国が自国の政府調達市場へのメキシコとカナダの参入規模を、両国が米国に開放する政府調達市場と同レベルに限定することを要求。そのほか、紛争解決制度やセーフガード措置発動に係る加盟国の適用除外規定の撤廃、繊維製品への原産地規則の例外措置などの廃止を提案しましたが、協議は難航。

米国とカナダの労組は、メキシコが低賃金で企業を誘致し、不当に安い生産コストで輸出していることを批判しましたが、このテーマに関する交渉結果は不明のままでした。

第四回会合の結果:米国の強硬要求にメキシコとカナダは反発

その後、10月13日にトランプ政権はNAFTA再交渉にあたり、自動車の関税撤廃の条件として米国製の部材を50%以上使う条項の挿入を提案しました。

米国、カナダ、メキシコ産製品を用いる原産地規則を62.5%から85%に引き上げる提案も出しています(こちらは中国部材排除が狙い)。

これは自動車で米国への輸入時に関税をゼロとする条件ですが、ここに「米国産部材を50%以上使用する」という条件を提案したので、カナダとメキシコは難色を示しています。

原産地規則を強化し、鉄鋼やアルミなどの原材料まで、生産地を厳しく確認する仕組みも提案したことも注目されました。

NAFTA再交渉の第四回会合は10月11~17日に開催されていましたが、前掲の主張は通らず、3カ国は2017年内の妥結を断念しました。

決着は18年1~3月に先送りされ、会合後にUSTR(米通商代表部)のライトハイザー代表は「失望した」と述べています。

カナダもメキシコも米国の巨額の貿易赤字削減に協力する姿勢が見られなかったからです。

第五回会合の結果:メキシコが米国案の代案を考え始める

その後、NAFTA再交渉の第5回会合がメキシコにて11月17~21日に行われました。

メキシコ側は「様々な章で進展があった」としていますが、米国のライトハイザーUSTR代表はメキシコもカナダも「公平な協定にするために真剣な姿勢がみられない」と批判。

メキシコのグアハルド経済相は再交渉は貿易拡大が目的であり、制限が目的ではないと反発。

結局、交渉はなかなか進展していません。

JETROの記事は、この第五回交渉の後、グアハルド経済相が訪米し、ウィルバー・ロス商務長官らと会談した内容を紹介しています。

メキシコ側の見解は以下の通り。

★5年ごとに協定の継続を判断する「サンセット条項」の導入

⇒5年ごとの見直しには賛成するが、長期的な投資が不可能になるので、自動失効を可能にする条項には反対

★投資家対国家の紛争解決手段手続き(ISDS)に係る選択制の導入

⇒EUカナダ包括的経済貿易協定で採用された投資裁判所制度の導入を提案。3カ国から独立した裁判所を設けることで、裁判に透明性を持たせる

★政府調達市場の開放基準の変更

⇒開放の水準は、それにより政府調達が効果的になるかどうかで決められるべき

★域内原産割合85%以上、そのうち米国産比率50%以上という米国の自動車原産地規則の厳格化

⇒要求の詳細や85%と50%という数字の根拠について米国側からの説明があり次第、代替案を検討する

結局、難航が続き、第六回会合に議論は持ち越されました。

米通商代表部はカナダにも農産品への関税撤廃を要求し、補助金の支給や価格操作等の「不公正な政策」の廃止を要請しており、12月20日には、米商務省がカナダの輸送機器メーカーであるボンバルディアの新型旅客機に約292%の関税を課すことを決めました。

これは「不当に安い価格で受注した」という米ボーイングの不服を申立てを受けての決定です。

(米国際貿易委員会が国内産業への被害を認めれば、2018年2月に関税が実際に課される)

日経電子版(2017/11/23)では「域内の部材調達比率を定めた「原産地規則」の厳格化など、重要項目では新たな対案や妥協はほとんどなく議論は平行線が続いた。米国の姿勢にメキシコとカナダから反発の声も聞かれ、2018年3月の妥結目標には危うさも漂う」とも報じられていました(「NAFTA再交渉、原産地規則進展なく 第5回終了、米は強硬姿勢崩さず」)

前掲の「サンセット条項」に関してはメキシコが5年ごとの評価制度の導入を提案したが、3カ国で合意には至りませんでした。

メキシコとカナダの交渉関係者は米国の強硬姿勢に不満を強めているようです。

第六回会合の結果:原産地規制を巡る対立は解消せず

2018年1月29日にカナダ・モントリオールで会合を終えた後、ライトハイザーUSTR代表は交渉に進展があったとし、カナダのフリーランド外相やメキシコのグアハルド経済相も合意に向けて進んでいると評価しました。

しかし、実際のところ、自動車貿易の「原産地規則」めぐる対立は解決していません。

第四回で話題にのぼった部品の62.5%以上を域内生産するルールに関して、トランプ政権は85%以上に引き上げ、米国製50%以上の条件を加えることを要望しているのですが、カナダとメキシコはこれに納得していません。

第七回会合の結果:自動車の原産地規則などで難航

2018年の2月25日から3月5日まで行われた第七回会合は、結局、自動車の原産地規則で三国の折り合いがつかず、終了後の記者会見でライトハイザーUSTR代表は「2カ国協議に移行する準備がある」と凄みました。

カナダ外相は今回の会談は着実に前進したと述べましたが、今後、協議が進まなければ3カ国交渉が打ち切られる可能性があります。

7月にはメキシコ大統領選があり、11月には米国も中間選挙が行われるので、両者が「政治的な理由」で強硬路線を取らざるをえなくなります。

その後、トランプ大統領は、3月8日に鉄鋼に対し25%、アルミに対し10%の関税を発動する文書に署名しましたが、カナダとメキシコは一時的に適用除外となりました。

トランプ大統領は、NAFTAがまとまれば、カナダやメキシコには関税を賦課しない方針ですが、3カ国が合意できなければ「NAFTA破棄」も辞さずと息巻いています。

その後、交渉に進展があったとも報じられましたが、6月15日にトランプ政権はカナダ・メキシコに対しても、鉄鋼とアルミ関税の賦課を決断。

※関連記事:米国が鉄鋼とアルミニウムに輸入関税をかけた理由

すでにカナダとメキシコは米国への対抗関税の中身を決めています。

  • カナダ:7月1日から米製品に約130億ドル規模の関税を導入(鉄鋼25%/ヨーグルトやウィスキー、コーヒー等は10%)。WTOに異議を申立てる。
  • メキシコ:豚肉、リンゴ、ブドウ、ブルーベリーなどの果実類、チーズなどに関税を導入。

7月にメキシコ大統領選ではオブラドール氏が勝利し、12月1日に就任することも決まりました。

8月27日には米ーメキシコ間で合意が成立しましたが、これからはカナダとの交渉が控えています。

トランプ政権は、ベニヤエト氏が大統領である間に再交渉の終結を急いでいますが、12月のメキシコ新大統領がちゃぶ台返しをしかけた場合は、また未来は不透明になってきます。

NAFTA再交渉に関しては、成立の見通しが経ちましたが、メキシコ新政権を担うオブラドール氏の動向に注視が必要でしょう。

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