13道州

全記事一覧 日本政治

道州制のメリット・デメリット

更新日:

衆院選では、自民党、希望の党、維新の会などが「道州制」や「地域主権」などの政策を掲げています。

(アイキャッチ画像は13道州の区分地図)

政策の書き方は違いますが、おおむね、目指すところはよく似ています。

学者の多数は地方分権の延長と見なして道州制をよしとする方が多いのですが、保守系の識者には道州制は国家を分割し、滅ぼす試みでしかないと述べる方も少なくありません。

今回は、いまひとつ、わかりにくい道州制の是非について考えてみます。

道州制のメリット(推進論の根拠)

道州制がよしとされる理由で、よくあげられるのは「補完性の原理」といわれる考え方です。

今までは国⇒県⇒市町村に権限を分け与える仕組みになっていましたが、これだと「住民に身近なところに権限が集約されていない」ため、政治の効率が低くなったとみられるようになったのです。

そのため、「住民に身近なところ(市町村)に権限を集約することが基本」だと考え、「市町村での処理が困難な場合は都道府県や国が『補完』」すればよいのだという考え方が出てきます。

(出所:内閣府「『補完性の原理』の徹底を」)

これを「地域主権」等と呼び、行政を住民に近いところで行おうとするわけです。

道州制は全国を13程度の地域に分け、「東北州」「関西州」などの「広域自治体」をつくります。

1700程度の市町村合併をすすめ、将来は300ほどの「基礎自治体」へ再編する構想も出ています。

道州制にすれば無駄な公務員が削減され、行政の効率が上がり、地方が自由闊達に物事を決められるようになり、日本全体が発展する、というバラ色の構想を描く人も少なくありません。

また、道州制によって、地域で適切な役割分担がなされ、経営の効率化が進むとの意見もあります。

西川雅史氏(青山学院大教授)は、九州を例にして、経済の中心である福岡県と佐賀県を比較し、人口500万人でアジアからのアクセスがよく、国際的な知名度も高い「福岡に行政などの機能を集約し」、人口80万人の「佐賀はベッドタウンのような役割を果たす選択肢が考えられる」とも述べています(「合併は30年構想で」2017/11/14付日本経済新聞・朝刊)

各党の道州制/地域主権構想

各党の道州制/地域主権の構想をみてみます。自民党と希望の党は新聞等に書かれた今年の公約の要旨です。

自民党、希望の党、維新の会は道州制推進。これで地方が自主的に発展できるというわけですが、共産党は国の仕事が地方に押し付けられ、地方の財政力の差で住民へのサービスに大きな格差が生まれると批判しています。

自民党:道州制推進

  • 国民的合意を得ながら、道州制の導入を目指す
  • 道州制の導入までは、地域の自主自立を目指し、活力が発揮できるよう、地方公共団体の間での広域的な連携を進める(広域連合の活用、道州制特区法の活用などを想定)。

希望の党:道州制推進

  • 道州制を導入し、地域が自分で決めることでムダがなくなる。
  • 国に依存せず、道州制の導入をめざし、 国の権限と財源を移す。
  • 道州レベル、市町村間の競争を展開。
  • 既得権を守るのではなく、地域住民の直接提案を生かし、無駄をなくしていく

維新の会:道州制推進

(出所:維新の会「綱領・基本方針」)

  • 我が国は今、国際的な都市間競争の中、多くの分野で停滞あるいは弱体化している。
  • 国内的には地方分権、地域再生が叫ばれて久しいが、未だ地方は活力を取り戻せずにいる。
  • 人口減少と少子化、高齢化が同時に進行し、地方の住民は地方消滅の不安さえ抱いている。
  • この不安を解消し、国家を再生させるためには、首都圏一極集中から多極分散型(道州制)へ移行させ、地方を再生させることが不可欠である。

共産党:道州制反対(格差拡大のため)

(出所:しんぶん赤旗「主張/「道州制」法案/“国の姿”を壊す仕掛けづくり」)

  • (道州制を)自民党や経団連は「新しい国づくり」「究極の構造改革」と位置づけてきた。
  • これは国のやるべき仕事を外交・防衛など非常に狭い分野に限り、医療・介護・教育等を「権限移譲」の名目で道・州や基礎自治体に押し付ける“国家の大リストラ”だ。
  • この「権限移譲」は地方の財政力の違いで左右される福祉・教育の格差をもたらす。住民福祉の向上・増進に国が責任をもつことを定めた憲法25条などの理念を放棄するものだ。

道州制のデメリットとは

共産党がいう格差拡大が起きるかどうかは地方交付税交付金の仕組みの決め方次第なので、現時点では未知数の話ですが、財政赤字を理由にして減額される可能性もありそうです。

筆者は、道州制については、「いま一つ、信じきれない」という疑問を抱いています。

それは主に以下の二つです。

道州と国の権限が重複する可能性がある?

例えば、その有名な推進論者の江口克彦氏は「地域主権型道州制」を提言する際に、こんなことを言っています(『VOICE』2009年5月号)。

「道州制が実現すれば、九州がアジア各国と独自にFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を結ぶことも可能」

しかし、そもそも通商における交渉力は道州よりも国のほうが強いのに、なぜ各道州でシンガポールや韓国、インドネシアなどと交渉しなければならないのでしょうか。

アメリカを建国した時、連邦制導入を訴えた『ザ・フェデラリスト』では州が一つ一つ交渉するよりも、連邦をつくり、ひとまとまりになったほうが交渉力は強くなると述べていました。

道州制は統一国家を分ける発想ですが、連邦制はバラバラな州を一つの国にまとめようとしていたので、論理が真逆になっています。

また、江口氏は外交を国の機能としながらも、道州に国に通商交渉の権限を与えるべきだと考えています。

九州は「中国、台湾、韓国と自由貿易協定を推進」「沖縄はアジア諸国と直結」すべきだと述べていますが、これは「外交、通商、経済協力」という国の機能と重複します。両者が矛盾したらどうするかが見えない構想になっているのです。

福井県知事の西川一誠氏は「幻想としての道州制」(中央公論 2008年7月号)という論説で、以下のように述べています。

「中国やロシアに比べて構想力、交渉力に劣ると言われる日本が、仮に道州のような分立した国家体制を導入すれば、交渉力はさらに弱まり、他国の経済発展の踏み台になる」「貿易ルールや外国租税の調整、自国製品の競争力の維持、環境保護に関する産業の問題など、すべて国家の交渉力によって強力に保護されているのである。産業政策や通商政策を道州に委譲するというのは…グローバル経済における国家の役割を看過している」

(※西川氏は道州制に完全に反対しているわけではなく、懐疑的な立場です)

「道州制で行政効率改善」は幻想?

そして、西川氏は、道州制で行政サービスが上がるという見方にも懐疑的です。

「州都の道州首長が、何百キロメートルも離れた各地方の教育や福祉を、日頃の行政や選挙などを通じ、わがこととして理解するには大きな困難が伴う。このような組織を持った道州は、住民にとっても身近な自治体というよりほとんど国と同様な政体となる」

道州は国よりも市町村に近いため、国よりもよいサービスを地方に提供できるといわれますが、県知事の実務経験をふまえると、道州と市町村の距離が遠すぎるため、サービスのレベルがよくなるとは思えないと述べているのです。道州は県よりも市町村から遠くにあるため、住民にとって身近な自治体にはなるとは限りません。

道州制で公務員を減らせるとも言われますが、地方権限の強いアメリカやドイツは人口千人あたりの公務員比率が日本よりも高くなっています。

内閣人事院のブックレットによれば「人口千人あたり公務員比率」は日本が36.4人(2015年)、アメリカは64.1人(2013年)。ドイツが59.3人(2015年)です(『公務員制度と人事院』)

道州制にした場合、今まで国が一括してやっていたことを各道州が行うようになるので、道州の数だけ、同じ仕事が発生します。 国が行ってきた国道の整備、空港の管理、教育などを仮に10の道州が行っても、 道州から市町村までの距離が遠すぎるので、住民に身近になりにくい「お役所仕事」が10の道州で展開される可能性があります。

西川氏は道州制ができた時のことを、以下のように想定しています。

「福井県を含む関西州の場合人口約2200万人、市町村数は現段階で224、公務員の数は50万人を超える(国3万人、府県25万人、市町村26万人)ことになる」「このような広大なエリアと多数の人口の自治体においては、仕事を進めるには独立性の高い縦割の部局と地域ごとの出先機関を置かざるをえないだろう。その結果、国の縦割は道州の縦割に移し替えられ、これまでと同じ弊害が再生産される」

もろもろの疑問がわいてくるので、筆者は、なかなか道州制を賛美する気にはなれないのです。

-全記事一覧, 日本政治

Copyright© トランプ政権と米国株投資 , 2017 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.