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米韓同盟の攻撃計画が流出 今後の北朝鮮のシナリオとは

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まず、秋口の北朝鮮の動きを整理してみます。

  • 8月29日:北朝鮮が発射した中距離弾道ミサイル(火星12)が北海道襟裳岬の上空を通過。ミサイルが3つに分かれ、襟裳岬東方(約1180km)に落下
  • 9月3日:北朝鮮が6回目の核実験(2016年9月の実験の10倍以上の規模)。
  • 9月11日:国連安保理が北朝鮮への制裁決議を全会一致で採択
  • 9月15日:北朝鮮が中距離弾道ミサイル(火星12)を発射(飛翔距離3700km、最高高度は約800km)。北海道近辺を通り、太平洋上に落下。

そして、9月19日にトランプ大統領が国連一般総会演説で金正恩を「ロケットマン」と呼び、延々と口撃合戦のラリーが続いているわけです。

北朝鮮VS米国①:トランプ国連演説

その演説の要点を見てみましょう。

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数多くの正しい人間が少数の邪悪な人間と対決しなければ、悪が勝利してしまう。

If the righteous many do not confront the wicked few, then evil will triumph.

まともな人々や国々が歴史の傍観者になれば、(邪悪な者の)破壊力はいっそう強まるばかりだ。

When decent people and nations become bystanders to history, the forces of destruction only gather power and strength.

北朝鮮の腐敗政権ほど、他国や自国民の幸福をないがしろにした政権はない。

No one has shown more contempt for other nations and for the wellbeing of their own people than the depraved regime in North Korea.

それは、何百万人もの北朝鮮人の飢餓死、数知れない投獄、拷問、殺害、抑圧の責任を負っている。

It is responsible for the starvation deaths of millions of North Koreans, and for the imprisonment, torture, killing, and oppression of countless more.

米国には偉大なパワーと忍耐があるが、もし自国と同盟国を守らねばならぬ事態が発生すれば、我々は北朝鮮を完全に崩壊させるしかない。

The United States has great strength and patience, but if it is forced to defend itself or its allies, we will have no choice but to totally destroy North Korea.

ロケットマンは彼と自政権の自殺行為を継続中だ。

Rocket Man is on a suicide mission for himself and for his regime.

アメリカは(攻撃の)準備が整っている。意志も能力もあるが、その必要がなくなることを望む。

・・・

北朝鮮にとって、非核化がだだ一つの容認可能な未来だと認識すべき時が来た。

It is time for North Korea to realize that the denuclearization is its only acceptable future.

・・・(国連安保理の制裁決議採択に感謝の言葉が続く)

しかし、我々にはもっと多くのなすべき行為がある。

But we must do much more.

金政権を孤立させるには、全国家が協力すべきだ。それは、金政権が敵対行動を止める時までだ。

It is time for all nations to work together to isolate the Kim regime until it ceases its hostile behavior.

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北朝鮮VS米国②:太平洋上で水爆実験?

そして、この演説への北朝鮮のリアクションが「太平洋上で水爆実験をやるぞ」という威嚇です。

金正恩が「史上最高の超強硬対応措置」を実施すると宣言し、中身を問われた李容浩(リ・ヨンホ)北朝鮮外相は、過去最大の水爆実験を太平洋上で行う可能性を示唆しました。

産経ニュースによれば、金正恩は念入りに国家最高位の「国務委員長」という名義で声名を出しています。

  • 「トランプが世界の面前で私と国家の存在自体を否定して侮辱し、わが共和国(北朝鮮)をなくすという歴代で最も暴悪な宣戦布告をしてきた以上、われわれもそれに見合う史上最高の超強硬対応措置断行を慎重に考慮する」
  • 「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を代表する者として、わが国家と人民の尊厳と名誉、そして私自身の全てを懸け、わが共和国の絶滅をわめいた米国統帥権者(トランプ氏)の妄言に代価を支払わせる」
  • 「米国の老いぼれの狂人を必ず火で罰するであろう」

(金正恩氏が初の直々声明 「米国のおいぼれを必ず火で罰する」)

暴言の連続なので、こんな記事を引用していると、グーグルアドセンス規約に違反しないか不安ですが、「わが国家と人民の尊厳と名誉、そして私自身の全てを懸け」とまで宣言しているので、金正恩は「やる気満々」です。

「全体主義国の声名って、ブラフでしょ?」

そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、長らく北朝鮮を研究した武貞修士氏によれば、意外と声名は「本音」がそのまま出ていることがあるそうです。

昔から北朝鮮は「南北統一」を掲げていますが、これはブラフではなく、本当の国家目標そのものなので、そのために核開発を続けていることを忘れてはいけないと言われていました。

2000年代だと「北朝鮮軍による南北統一」というセリフはギャグの一種と間違えられがちでしたが、最近のように核兵器保有が確実視されると、次第に笑えなくなってきています。

筆者は、そのため、金正恩は本気で太平洋上の水爆実験を狙っていると考えています。彼らは日本の政治家とは思考形態が違うからです。

では、その実験はどのように行われるのでしょうか。

爆撃機や軍艦を用いた実験は、米軍が容易に阻止できるので、この実験の選択肢はミサイル一択です。事前予告すると撃墜されるので、事前通知なしのミサイル発射になると見られています。

「何で太平洋上?」という理由はまず、「広いから」というのが一つ。

もう一つの理由は、北朝鮮が自国は国連安保常任理事国並みだとPRしようとしていることがあげられます。

1950~60年代にはアメリカ、イギリス、フランスが太平洋上で核実験を行いましたので、それになぞらえているわけです。

北朝鮮VS米国③:被害拡大⇒米軍攻撃開始?

太平洋上での核実験は、多くの被害者を生む危険性を伴っています。

しかし、北朝鮮は、はるか上空で核爆発を起こし、被害者を出さない範囲でPRができれば、米軍の反撃を招かないと見ているのでしょう。

しかし、環太平洋諸国および、グアムやハワイ等にまで被害が拡大すると、話は変わってきます。電磁パルス(EMP)で民間航空機が落とされたり、船が昔の第五福竜丸事件のように汚染されたりする危険性もあるので、米国人に被害が及ぶ可能性はかなり高いのです。

そのため、米国人に被害が出れば、トランプ政権は反撃する可能性が高いと見られています。

産経ニュースは以下の三点から被害拡大の可能性に警鐘を鳴らしていました。

  • 太平洋上で150キロトン前後の威力の水爆を爆発させると、爆心地から半径約3・7キロ前後を航行中の船舶や航空機は熱線や爆風で消し飛ぶ。
  • 「死の灰」が周辺海域を汚染する。
  • 電磁パルス(EMP)により各国の社会インフラが打撃を受ける事態もありうる

(北の「水爆」発言 米、人的被害あれば報復軍事攻撃に傾斜へ 2017.9.22)

・・・

二つの車が衝突するように、止まれない二つの政権がクラッシュする瞬間が近づいているようです。

しかし、自動車と自転車ぐらいの差があるので、結果的に弾き飛ばされるのは北朝鮮のほうです。

北朝鮮対策のシナリオ①:軍事攻撃

10月以降は、以下のようなやりとりが続いています。

  • 1日:金正恩:北朝鮮制裁の米大統領令について「アメリカを丸ごと核の火の海にする自殺行為だ」と非難
  • 2日:トランプ:「国務長官に『リトルロケットマンと交渉しようとして時間をむだにしている』と伝えた」(ツィート)
  • 5日:トランプが軍幹部との会合で独裁政権が米国や同盟国に核威嚇することは許せないと述べ、目標は非核化だと述べた。軍幹部らとの記念撮影で「これが何かわかるかね、嵐の前の静けさかもしれない」と述べた。「嵐とは何か」と聞かれると「そのうちわかる」と答えた。
  • 7日:トランプ「歴代の大統領や政権は北朝鮮と25年間話し合い、合意したり多額の金が支払われたりしたが、効果はなかった。合意はインクが乾かないうちに破られ、米国の交渉担当者はバカにされた。効果があるのは、たった1つのことだけだ」(ツィート)
  • 8日:金正恩:朝鮮労働党会合で「核武力建設の歴史的な偉業を成し遂げる」と発言。
  • 9日:トランプ「米国は25年間、北朝鮮に数十億ドルを与えながら何も得られず、取り組みは失敗した。政策は機能しなかった」

トランプ大統領は軍事行動の可能性をにおわせ、また、ティラーソン国務長官の対話路線をいさめながら、北朝鮮を牽制しています。

今日は、北朝鮮のハッカーが米韓連合の攻撃計画の情報を入手したことが報じられていました。

CNNの報道(「北朝鮮ハッカー集団、米韓の戦時作戦計画を入手か 韓国議員」2017.10.11)によれば、韓国国防省のデータベースが「2016年9月に北朝鮮のハッカー集団に不正アクセスされ、機密情報を盗まれていたこと」を韓国議員が明かしました。その情報には「韓国と米国の戦時作戦や、北朝鮮の指導者を排除する計画について記した文書」が含まれていたのだそうです。

米国のマニング報道官はこの件については答えず、「作戦計画とは二国間計画のことであり、その情報を守り、北朝鮮の脅威に対して朝鮮半島の即応能力を保証する姿勢において、韓国と米国は依然として強固な同盟関係を維持している」と述べた模様です。

昨年にもその種のネットニュースが流れたことはありましたが、結局、それが裏付けられつつあります。そこで、改めて米国の攻撃計画の内容や「テーブルに乗っている」他の選択肢について整理してみます。

トランプ大統領は、9月22日にアラバマ州ハンツビルの集会で、北朝鮮に対して、「大量破壊兵器の太平洋上での爆発は大惨事を引き起こす」と警告しました。

これは北朝鮮の「次」のアクションを抑止するための発言です。「大惨事」という言葉には「戦争」という意味合いも含まれているので、米国が軍事行動を取る可能性があるぞ、と言っているわけです。

北朝鮮は南太平洋に向けた核ミサイル実験を示唆していますが、そのレベルの暴挙となれば、さすがにトランプ政権も最終決断を下す可能性が高まります。その場合、電磁パルス(EMP)で飛行機が墜落したり、放射能汚染に巻き込まれたりと、米国民まで巻き込むような大災害が発生する可能性があるからです。

産経WEST(2017.4.2)では、米国が攻撃を開始した時のシナリオが描かれていました(「北朝鮮をめぐる“危険” 米は武力行使まで言及も「日本も無傷では済まない」 内部崩壊の可能性も」)。

  • 米軍が北朝鮮の核兵器破壊や金正恩“除去”に踏み出すには絶対的な制空権が必要。
  • 空戦では米韓軍が圧倒的に優勢。
  • 核施設攻撃ではB2ステルス爆撃機から地下施設破壊用の「バンカーバスター」を投下。
  • ステルス機(F22戦闘機とF35戦闘攻撃機)で山岳地帯の移動式ミサイル発射台を狙う。
  • 護衛艦や潜水艦等から多数のトマホークミサイルが発射される。
  • ただ、移動式ミサイル発射台の全ては破壊し切れない。北朝鮮は残ったミサイルで反撃
  • ノドンやスカッド等の弾道ミサイルは北朝鮮全域で200発以上ある。
  • 開戦すれば北朝鮮はソウルを火砲で攻撃可能。
  • 38度線の非武装地帯(DMZ)近辺からソウルまでの距離は約50キロ。
  • 北朝鮮軍は山間部の横穴に隠したロケット砲を大量発射
  • 防空壕にソウル市民は退避するが、都市機能に大規模の被害が発生
  • 北朝鮮軍はDMZ地下の「南侵トンネル」を使って韓国に侵入。DMZ近辺が米韓軍の戦場となる。
  • 弾道ミサイルは日本にも発射され、我が国にも被害者は発生
  • ミサイルには化学兵器を搭載した弾頭が含まれる危険性がある

ここには書いてありませんが、北朝鮮には10数万人の特殊部隊があります。その人員は韓国にも日本にも多数潜伏しているので、有事となれば、北朝鮮工作員が日本や韓国でテロ活動を開始することにも注意しなければなりません。戦争自体は、米韓軍の勝利に終わるはずですが、問題は、その時に韓国と日本で発生する被害の規模です。

90年代に米軍が朝鮮半島で軍事行動を検討した際には、北朝鮮側の反撃で韓国に50万人~100万人の死傷者が出ると見積もられ、結局、その計画は中止されることになりました。ソウルが国境に近すぎるので、北朝鮮は旧型兵器でも韓国に大打撃を与えることが可能なのです(通常兵器による「相互確証破壊」)。

(そのほか、中国軍が北朝鮮になだれこみ、戦争が大規模化する危険性もある)

現在、世に知られている米韓軍の連合作戦の中で有名なのは、以下の作戦です。

作戦計画5027:全面戦争計画①

4月には米韓連合軍の「作戦計画5027」が北朝鮮のサイバー攻撃によって流出しました。

産経ニュース(2017/4/4)は、韓国KBSテレビが3日に朝鮮戦争が全面的に再開された場合の米韓軍の「作戦計画5027」が流出したと報じています。ハッキングは16年9月に行われ、12月に発覚したのですが、この作戦は「北朝鮮の朝鮮人民軍の南侵による朝鮮戦争再開を想定し、1970年代から改定が重ねられてきた」最高機密です。

詳細は不明ですが、韓国海軍で特殊部隊に在籍していたコウヨンチョル氏はこの計画について、米軍は「海軍・空軍戦力による爆撃を集中し」、「韓国軍は地上軍を投入して軍事分界線を越えて北朝鮮を攻め、北朝鮮を占領して統治する」と説明していました(『北朝鮮特殊部隊白頭山3号作戦』)

作戦計画5015:全面戦争計画②

これは、北朝鮮が核攻撃もしくは核威嚇を行うことが確実になった時に、米軍がそれを破壊する「予防攻撃」と、金正恩への直接攻撃(断首作戦)を含んだ全面戦争計画です(予防攻撃も断首作戦も全面戦争を招来するので、この二つだけが単独で作戦計画5015を構成しているとは考えにくい)。

この「5015」に関して、古森義久氏(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)は『月刊Hanada 2017年6月号』にて「米韓軍による北朝鮮の国家指導部への奇襲攻撃や通信ネットワークの破壊攻撃、さらには北朝鮮全土に点在する主要軍事拠点への攻撃をも含む」(P64)と説明していました。これは2015年に米韓連合軍に承認され、従来の「5027計画」に替わる有事の戦略方針として採用されたとも述べています。

こちらのほうが米軍の攻撃計画の中で「本命」にあたるのかもしれません。

作戦計画5026:限定攻撃計画

それ以外にも、限定的な攻撃計画として「5026計画」があるといわれています。

これは「寧辺核施設をはじめ弾道ミサイル基地および生物化学兵器施設をピンポイントで空爆する」計画です。「国家の指揮・通信施設や空軍基地や防空基地も集中爆撃して、全面戦争を回避する」ことを意図したものです。この中には北朝鮮の指導者の排除を狙ったピンポイント攻撃も含まれています(『北朝鮮特殊部隊白頭山3号作戦』)。

作戦計画5029:北朝鮮側の異変に対応

これに関しては、国家基本問題研究所が政策提言「北朝鮮に対する政策提言:新政権は北朝鮮急変事態に備えよ」(2009/9/11)の中で紹介していました。

その中身に関して、「北朝鮮における、①クーデター、住民暴動、金正日死去などで内戦が発生、②反乱軍が核、化学兵器など大量破壊兵器を奪取、③住民の大量脱出、④韓国人人質事件の発生、⑤大規模な自然災害の発生-とされている。作戦計画では兵力や装備の配備・運用まで具体的に定めている」と述べています。

これは状況の変化に対して、順次対応するための計画です。

北朝鮮の核弾頭は60発?

どれも恐るべきシナリオですが、現状では、それ以外に北朝鮮の核開発を止める有効な手段が存在していません。

戦争が起きなくても、金正恩政権が延命し、これからも核開発やミサイル実験を進めていくだけなので、未来に危機が先送りされる構図になります。

どちらも危機であるのは同じです。

7月28日時点で、米国防情報局(DIA)は北朝鮮が核弾頭の小型化に成功し、それを長距離弾道ミサイルに搭載できるようになったと分析していました(北朝鮮が保有する核爆弾の数も最大60発にまで上方修正)。

核兵器は小型化されて始めて、核弾頭としてミサイルに搭載できるようになります(小型化されなければ爆撃機でしか運べないので、脅威としては数段下がる)。

日本の防衛白書も、北朝鮮の核については「計画が相当に進み、小型化・弾頭化の実現に至っている可能性が考えられる」と述べています。従来よりも強く進展を懸念する書き方になったわけです。

トランプ大統領はこれに関して、8月8日に金正恩に警告しました(出所:「これ以上脅すと炎と怒りに直面」トランプ氏 : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE))。

「北朝鮮はこれ以上、米国を脅さない方がいい。彼らはこれまで世界が見たこともないような炎と怒りに直面することになるだろう。彼(金正恩)は通常にも増して非常に威嚇的に振る舞ってきた。すでに述べた通り、彼らはこの世界が一度も見たことのないような炎、怒り、そして率直に言えば、力に直面することになるだろう」

これが具体化するのか、単なる威嚇に終わるのかが注目されているわけです。

北朝鮮対策のシナリオ②:制裁と対話

しかし、トランプといえども、戦争は避けたいと考えているのも事実です。

そのため、9月には国連の制裁措置を固め、21日に日米韓首脳会談と日米首脳会談を行いました。

時事通信では、日米韓首脳会談について〔日米韓、圧力強化へ結束=北朝鮮制裁「完全履行を」〕と題した記事を公開しています。

そこでは、「核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対し、結束して圧力を強化する方針を確認。国連安全保障理事会で採択された制裁決議の完全履行を中国などに促していくことで一致した」と報じています。

各国首脳の発言は以下の通りです。

  • 安倍首相「トランプ氏が発表した北朝鮮との取引企業などを対象とした新たな制裁措置を支持する」「私たちの結束の強さを北朝鮮と世界に示す。北朝鮮の核の放棄に向けた戦略を議論し、次の行動につなげていきたい」
  • トランプ大統領「責任ある全ての国が完全に履行するよう呼び掛けたい」
  • 文在寅大統領「中国の行動が非常に重要だ」

これに関して、ホワイトハウスHPを見るとトランプ大統領の発言が以下のように掲載されています。

(「トランプ大統領、韓国大統領、三国首脳会議前の日本の安倍総理の発言」)

  • 今日、私が署名した新大統領令は、北朝鮮との貿易を資金援助しているとみなす個人、企業、金融機関の対象(制裁対象)を大幅に拡大する。
  • 国連総会演説で述べたように、北朝鮮の核兵器とミサイル開発は、世界の平和と安全に対する重大な脅威だ。他国がこの犯罪的な不正な政権を財政的に支えることは容認できない。
  • 残虐な北朝鮮政権は、自国の市民や他国の主権を尊重しない。
  • 新大統領令は、北朝鮮に対して、人類に知られている最も致命的な武器(※核兵器のこと)を開発するために資金を提供する収益源を遮断する。
  • この命令は、財務省の権限を強化し、北朝鮮との財貨、サービス、または技術貿易を行う個人や団体を対象とする。また、中国の中央銀行は、すぐに北朝鮮との取引をやめるべきだ。
  • 北朝鮮の貨物と貿易の重要なネットワークを混乱させる措置も含まれている。
  • 非常に長い間、北朝鮮は、核兵器やミサイル計画の資金調達のために国際金融システムを乱用することが許されてきた。
  • 米国は25年以上、この問題に取り組む担当者を抱えていたが、彼らは何もしなかった。
  • 今日、中国が大胆な動きをした(制裁に賛成)ことについて国家首席(習近平)に感謝する
  • 新大統領令は、強力な新しいツールを我々に提供するが、その対象が北朝鮮であることを明確にしたい

とりあえず、現時点は制裁強化の路線ですが、もう、これだけで北朝鮮を止めるのは難しい、という見方が強まってきています。

北朝鮮対策のシナリオ③:北朝鮮の核容認

一応、米国のシナリオ②は北朝鮮の核保有を認めない、ということが前提になっています。

ところが、米国内には、北朝鮮の核保有の核保有を認めてしまえ、という議論もよく出てきます。

その典型例となる人物はオバマ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めていたスーザン・ライス氏です。

読売新聞オンライン(2017/8/15)では、その発言(NYT紙)を紹介しています。

「歴史的に見て、我々は北朝鮮の核兵器に耐えることができる。冷戦期に数千に及ぶソ連の核兵器という、より大きな脅威に耐えたように」「米国や同盟国に対する核兵器の使用は、北朝鮮の崩壊につながると明確にしておくことにより、伝統的な抑止力をあてにすることができる」

こうした前提から、北朝鮮の核兵器保有を容認しても構わないと述べたわけです(北の核、米に容認論も…「抑止力で対応可能」)

また、現在のトランプ政権の立場とライス氏の立場の中間ぐらいの位置づけにあたる提言がゲーツ元国防長官からも出されていました(WSJインタビュー2017/7/11)。米国は以下の三点を実施する用意があると伝えるべきだというのです(「ゲーツ元国防長官に聞く北朝鮮問題の解決策」)

  1. 旧ソ連とキューバ危機を解決したときと同様に、北朝鮮の体制を承認。体制転換を狙う政策の破棄を約束する
  2. 北朝鮮と平和条約を締結する
  3. 韓国内に配備している軍事力の変更を検討

その見返りに、「米国は北朝鮮の核・ミサイル開発計画に対して強い制約、つまり基本的には現状での凍結を要求し、国際社会や中国自身が北朝鮮にこれを実施させることを求める」べきだとしています。

「北朝鮮に核兵器をあきらめさせることはできないと思う」「運搬手段(ミサイル)の射程をごく短距離にとどめさせることはできるかもしれない」(ゲーツ氏発言)

「北朝鮮はさらなる核兵器開発や発射能力の向上を目指していないことが分かるように立ち入り査察に合意しなければならない。その結果、北朝鮮が保有する核兵器は20数個程度に限定される可能性がある」

ゲーツ氏はこの要求を受け入れられなければ、北朝鮮が発射次第、ミサイルをすべて撃墜すべきだと述べているので、ライス氏よりは北朝鮮抑止の意志が明確です。

とはいえ、北朝鮮の核兵器とミサイル保有を認めることになるので、日本と韓国にとっては自国民を脅かす脅威が固定化されることになります。

査察等が実施されても、全地域を見れるとは限らないので、どの程度、核開発を止められるのかは未知数です。

ゲーツ氏の主張は、米国に届く大陸間弾道弾の開発を止めることに主眼が置かれており、日本と韓国にとって賛成しかねる内容だとも言えます。

しかし、もっと危険なのはスーザン・ライス氏の提言のほうです。

これが公になったことで、オバマ政権が訴えた「核なき世界」論の中身が明らかになりました。

要するに、それは、人気取りのために理想主義者のポーズを取り繕っていただけだ、ということです。

スーザン・ライス氏の言う通りにしたら、「同盟国の日本や韓国は核兵器を持ってはならないが、非人道的な独裁を続ける北朝鮮が核兵器を持つことを認める」という馬鹿げた外交政策が実現するのです。

同氏は人権の大切さを盛んに主張していましたが、この人の言うとおりにすると、「国民の人権侵害を続ける金正恩政権に核兵器を持たせ、その体制存続を容認する。そして、民主主義国の日本と韓国がその政権から守るために核兵器を持つことは認めない」という異様な未来図が展開してしまいます。

これが「核なき世界」を目指したオバマ政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)の政策です。

その実態は「正義なき世界」の実現でしかありませんでした。

北朝鮮対策のシナリオ④:日韓の核抑止力強化

こうしてみると、トランプ政権が強硬な措置に意欲を見せ続けている理由が分かります。

北朝鮮が核・ミサイル開発を進展させても、米国が何もできないのなら、米国の主張と同盟の信憑性が失われてしまうからです。

マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は、前掲のライス氏のように、すでに北朝鮮は米国の軍事力で「抑止されている」とは考えていません。

「大量破壊兵器で米国を攻撃すると脅す政権に伝統的な抑止政策が通じるのであろうか」と述べています。

そして、「米国に核の脅しは通用しない」「軍事的措置を含むあらゆる選択肢を用意している」という強硬姿勢を打ち出しました。

核保有容認と制裁以外の路線の選択肢は意外と少ないのが現実です。

その一つは、北朝鮮の核・ミサイル発射施設への攻撃。

もう一つは同盟国の抑止力強化です。

前者は大規模戦争と数十万単位の犠牲者発生のリスクを伴います。

後者は日本と韓国の防衛力を強化し、戦争の発生を止めるという選択肢です。

具体的には米国の核部隊の配備(日本は非核三原則「持ち込ませず」の廃止が必要)や同盟国の敵基地攻撃能力の強化(巡航ミサイルの保有や爆撃能力の強化等)を伴います。

トランプ氏は、大統領選の間に、日本や韓国に核兵器をもたせる可能性を示唆し、当選後に撤回しましたが、本年の動きを見ると、結局、強硬姿勢をちらつかせながらも、戦争は難しい、という落ちになってきています。

だとすれば、残された選択肢は、あきらめるか、核保有を認めない範囲で同盟国の抑止力を強化するために大統領選前の日韓核抑止力強化論に戻るかしかなくなります。

そのため、最近の北朝鮮の暴走を危険視し、在韓米軍に再び核兵器を配備すべきだ、という案も米政府内で浮上してきています。

元を辿れば、ソ連崩壊の後、90年代初めに米軍は朝鮮半島から核兵器を撤去しました。その後、北朝鮮が核開発とミサイル開発を本格化させ、結局、ゲームは振り出しに戻ってしまったのです。

冷戦時代を振り返れば、沖縄返還前には、沖縄の基地に米軍の核部隊が展開していました。日本は「核抜き」で沖縄返還をすると決め、非核三原則を定めたわけですが、もはや「持ち込ませず」の原則は時代に合わなくなってきたのかもしれません。

冷戦期は、結局、米ソ両国が核兵器でにらみ合うことで、両国が戦争できない状態を維持していました。西ヨーロッパや朝鮮半島などでは核兵器を配備し、抑止力強化を図っていたわけです。

冷戦期の戦略を用いるならば、結局、北朝鮮の核に対して、在韓米軍が核配備し、日本は在日米軍の「核持ち込み」を公認するしかなくなってきます。話し合いが利かない相手の場合、結局、「核には核で」という形で抑止力を強化し、暴走を止めるしかなくなるからです。

話し合いや交渉で北朝鮮の核兵器を放棄できなかったここ20数年を振返ると、結局、残された対策としては、日本の「敵基地攻撃能力の保有」(トマホークミサイルの配備等)や非核三原則の「持ち込ませず」の緩和(米軍の核兵器持ち込みによる抑止力強化)が有力候補として浮上してきます。

結局、話し合いで解決の道が見えないのならば、米軍も韓国も日本も、さらに高度な抑止力が必要になり、結局、今までの「タブー」を破らざるをえなくなります。

このうち、政府は「敵基地攻撃能力の保有」については議論を開始しましたが、その答えが出るのは18年夏で、これが認められれば、その内容が既存の18年以降の防衛大綱の中に盛り込まれる予定になっています。仮に保有が決められても、実施は2年以上先の話なので、北朝鮮危機の進展に比べると、日本政府は呑気な議論をしています。

本当は、そうした悠長な体質にこそ問題があるのかもしれません。

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