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自民党公約・政策一覧 「人づくり革命」って何だ?

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  自民党の公約・政策を今回は点検してみます。

この国を守り抜く」と題した政策パンフレットを中心に見ていきますが、「政策BANK」を含めた「政権公約2017」も随時、チェックしていきます。

外交・安保政策

「この国を、守り抜く。」と題した以上、これがメインのはずですが、そのわりには、中身はスカスカな公約になっています。

 とにかく、経済政策に比べると分量が少ないのです。

 まずはトランプ大統領と握手する大きな写真。

 次に「世界の中心で、動かす外交。」というフレーズと英・印・独・露との首脳会談時の写真が並んでいます。

 肝心の公約の量が少ないので、写真で紙面を稼いでいるように見えます。政策集というよりはメモリアルフォトのような感じでした。

★北朝鮮に対する国際社会による圧力強化を主導し、完全で検証可能かつ不可逆的な方法ですべての核・弾道ミサイル計画を放棄させることを目指すとともに、拉致問題の解決に全力を尽くします。

★日米同盟をより一層強固にすることで、わが国の抑止力を高めます。
ミサイル対処能力の強化をはじめ、国民保護を最優先に対応し、国民の生命と財産を守り抜きます。

★北朝鮮の脅威から、国民を守り抜きます。

★わが国の上空を飛び越える弾道ミサイルの相次ぐ発射、核実験の強行など、北朝鮮による挑発行為はエスカレートし、重大かつ差し迫った脅威となっています。

 聞き飽きた台詞が並んでいるので新味がありません。

 また、総論ばかりで各論や具体策が不明になっています。

 パンフレット内の記述を見ても「政権公約2017」にある「政策BANK」を見ても、「重大かつさしせまった脅威」に何をするのかが不明です。

 「政策BANK」では、外交・安保はいちばん後ろに近いページにのっており、経済政策の一分野と同じぐらいの分量(見開き2ページ)しかありません。

  • 日米同盟を基軸に、豪州、インド、ASEAN、欧州などと連携し、地球儀を俯瞰する外交を進める
  • 北朝鮮への制裁措置の厳格な実施、国際社会と連携し、核・ミサイル開発の完全な放棄を迫る
  • 拉致被害者全員の即時帰国を実現
  • 歴史認識等を巡るいわれなき非難には断固反論する
  • 安保理常任理事国入りの実現に向けた取り組みを強化
  • ODAと民間の投資を有機的に結合し、日本経済の海外進出を一層強固にする
  • 経済連携交渉、投資協定・租税条約の締結を推進して諸外国の活力をわが国の成長に取りこむ
  • 外交実施体制を欧米主要国並みに整備する
  • 「不戦の誓い」を堅持しつつ、国民の命や平和な暮らし、領土・領海・領空を断固守り抜く

 総論が多く、何をするのかが見えにくい文章です。

 具体的な話が出てくるのは後半のあたりです(始めに言ってくれ)。

  • イージスアショア等の導入
  • わが国の弾道ミサイル対処能力の向上
  • 南西地域への部隊配置等による島嶼防衛の強化
  • 実践的な住民避難訓練の実施
  • 沖縄等の基地負担軽減の実現(普天間飛行場の辺野古移設や在日米軍再編)
  • 宇宙利用やサイバーセキュリティー対策を促進

 とはいえ、新しい項目はイージスアショア(陸上版イージスシステム)ぐらいしかありません。重要項目の南西諸島の防衛はやる気を見せただけで、具体的な中身がわかりません。

 そのほか、安保法制の運用、日米連携、新中期防で自衛隊の強化、防衛装備移転、海保の強化についての記述があります。

 こちらも総論で、大事な項目だと思うのですが、その中身が不明です。

★平和安全法制により、あらゆる事態への切れ目のない対応や邦人救出等の新任務が可能となったことを受け、態勢構築や能力向上を加速するとともに、日米同盟や友好国との協力を不断に強化し、わが国の抑止力の向上を図ります。

★周辺情勢の激変を受け、自衛隊の人員・装備の増強など防衛力の質と量を抜本的に拡充・強化するため、新中期防の策定と現行大綱の見直しを行います。

★防衛装備庁や防衛装備移転三原則のもと、戦略的に研究開発や友好国との防衛装備・技術協力を推進し、国内の技術的優越を確保しつつ防衛生産・技術基盤を維持・強化します。 

★わが国の領土・領海の堅守に万全を期し、国民が安全・安心に暮らすことができる平和で豊かな海を守り抜くため、海上保安庁の海上法執行能力、海洋監視能力、海洋調査能力の強化を図ります。

 こんな曖昧な書き方でよいのでしょうか。

 選挙中にあげ足を取られたくないので、「安保は総論だけ並べておけ」というオチになった可能性があります。

アベノミクスの成果を宣伝

 こちらは分量が多く、一生懸命にアベノミクスの成果を並べています。

「アベノミクスの加速で、景気回復・デフレ脱却を実現します」

 何となく「自画自賛」感がありますが・・・。

● 名目GDP
493兆円(2012年10-12月期) ➡ 543兆円(2017年4-6月期)
● 企業収益
48.5兆円(2012年度) ➡ 75.0兆円(2016年度)
● 就業者数

6,271万人(2012年) ➡ 6,456万人(2016年)
● 家計の可処分所得 
292兆円(2012年) ➡ 295兆円(2015年)
● 外国人旅行者数 
870万8千人(2012年度) ➡ 2,482万4千人(2016年度)
● 正社員有効求人倍率
0.5倍(2012年2月) ➡ 1.01倍(2017年7月)
● 若者の就職内定率 
大学生93.9%(2013年4月)➡ 97.6%(2017年4月) 

 数字をずらっと並べただけで有権者の心がつかめるのでしょうか。

 ここ数年で、勤め先の企業がアベノミクスの恩恵を受けた方は票を入れてくれるかもしれません。

 しかし、そうでない方は、自分の財布の中身を見て判断するのではないでしょうか。

 「アベノミクスでもたいして変わらん」と思った方には、この数字はあまり印象に残らないでしょう。

 ところで、このGDP統計は、2017年の基準変更がかなりものを言っています。

 内閣府経済社会研究所の資料によれば、名目GDPの推移(単位は兆円)は以下の通りです。

年度

2013

2014

2015

新基準

507.4

517.9

532.2

旧基準

482.4

489.6

500.6

新-旧

25

28.3

31.6

 2000年代は「新基準ー旧基準」の差額が16兆円から20兆円程度でしたが、13年~15年の差額は25兆円から31.6兆円に大きく上振れしています。

 何が加算されたのかというと、R&D等です。

 しかし、研究開発を「投資」とカウントしても、研究開発が実際に付加価値を生むものに転化するにはタイムラグが大きいので、これだと生活者の実感とのずれが大きくなる可能性があります。

 世界基準ではR&Dを入れることになったので、日本も便乗したのですが・・・。

中身が見えにくい「生産性革命」

 経済政策では「生産性革命」と「人づくり革命」を掲げましたが、「生産性革命」の中身が特にわかりにくいです。

劇的な生産性の向上で、国民の所得を増やします。

ロボット・I oT・人工知能(AI)といった、生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーションを起こし、「生産性革命」を実現します。民間主導のイノベーションによる「生産性革命」を通じて、働く皆さんの所得を大きく増やします。

 生産性革命でうたっているのは、「民間主導」でやる話が目立ちます。

 本当は、この分野で「政府がやること」はあまり多くないのかもしれません。

 ここで大事なのは「余計なことをしない」「企業の邪魔をしない」ということなのではないでしょうか。

(例:ケータイへの介入行政をやめてほしい・・・)

 規制緩和の具体的な中身をあげないと、説得力がない分野だとも言えます。

「政策バンク」を見ると、こんな項目も見つかりました。

 AI・IoTをはじめとした技術革新を生産性向上と社会課題解決につなげるため、「官民データ活用推進基本法」に基づき、自動運転やスマート農業等の身近な場面で、ビッグデータを使える環境を整備していきます。

 ビッグデータ活用の体制と自動運転、AIは一応、対処する方針のようです。

 しかし、パンフレットに戻ると、やはり、書かれているのは総論です。

2020年までの3年間を生産性革命の「集中投資期間」として、中小企業・小規模事業者も含め、大胆な税制、予算、規制改革などあらゆる施策を総動員して、企業の収益を設備投資や人材投資へ振り向けていきます。

 具体策が分かりにくいのですが、「中長期の成長資金の供給拡大などの取り組みを加速」とあるので、結局、何らかの融資を進めるということなのでしょう。

 しかし、政府にそんな目利きがいるんでしょうか。

企業経営に関わる政策

「中小企業・小規模事業者の円滑な世代交代・事業承継に資するよう、税制を含めた徹底した支援を講じます」

 これは事業承継者への相続税の緩和措置を指しているのでしょう(8割の雇用維持を続けるという条件で、現状でも相続税を緩和する仕組みがある)。

「働き方改革」を実行します。 

  いったい、これは何をするんでしょうか。

 政策バンクには「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金」「最低賃金1,000円を目指します」と書かれていました。

 しかし、そこまで行かないと具体策が見えないのは、公約の作り方として良心的ではありません。

 自民党の「働き方」を改革してほしいものです。

インフラ関連(新幹線や空港、水道etc)

 「政権公約」の後ろに置かれた「政策バンク」に、それとなく大事なことを入れていることに要注意です。

★整備新幹線の新函館北斗―札幌間、金沢―敦賀間、武雄温泉―長崎間は、政府・与党申合せ等に基づき、開業効果をできる限り早期に発揮できるよう取り組みます。

★また、与党でルートを決定した敦賀-大阪間について財源を確保しつつ早期着工を目指すとともに、リニア中央新幹線の東京―大阪間の早期全線開通を目指します。

★さらに、新幹線の基本計画路線をはじめとして、地方創生に役立つ幹線鉄道ネットワークの構築に向けて取り組みます。

 これは莫大なお金が動く話ですが、政策バンクにしか書かれていません。

 もし田中角栄が首相だったら、いちばん前に書きそうな項目(新幹線)が角に追いやられています。 

 また、以下の二つも大きな政策なのに、一般向けパンフでは無視されています。

★航空自由化(オープンスカイ)の戦略的な推進や諸外国とのイコールフッティングを踏まえた空港使用に係るコストの見直し等を通じ、国際競争力の強化を図ります。

★空港、水道、下水道、道路のコンセッション事業等、PPP/PFIの積極的な推進を図り、地域の活性化を進めます。

 国造りに関わる大きな項目を公約パンフから抜くのは問題があります。

 国民の目からスルーしてしまうからです。

人づくり革命(教育無償化と全世代社会保障)

★2020年度までに、3歳から5歳までのすべての子供たちの幼稚園・保育園の費用を無償化します。0歳から2歳児についても、所得の低い世帯に対して無償化します。

★待機児童解消を達成するため、「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度までに、32万人分の保育の受け皿整備を進めます。

★真に支援が必要な所得の低い家庭の子供たちに限って、高等教育の無償化を図ります。

★必要な生活費をまかなう給付型奨学金や授業料減免措置を大幅に増やします。

★介護人材の確保に向けて、介護職員のさらなる処遇改善を進めます。

★消費税10%時の増収分について、社会保障の充実と財政健全化とのバランスを取りつつ、子育て世代への投資を集中することで、「全世代型社会保障」へと大きく舵を切ります。

★本年末までに、「人づくり革命」に関する2兆円規模の新たな政策パッケージを取りまとめます。

  ここだけは「具体的な数字」入りで詳細に書かれています。

 外交・安保のテキトーさに比べると、こちらに力点が入っていることがよくわかります。

 解散の大義名分は、北朝鮮問題と生産性革命、アベノミクス推進と人づくり革命でしたが、結局、力点を入れているのは後ろの二つで、前の二つはつけたしなのでしょう

 なぜかと言えば、前の二つは「具体的な数字」が出てこないからです。

 本来、マニフェストは具体的な計画を数字入りで訴えるものですが、民主党政権の成立以降、劣化が進み、自公政権の公約も責任を問われにくい総論ばかりになりました。

 公約には、具体策や数字入りの計画が入っている項目を捜すと、政党の本音がわかりやすい、という特徴があります。

中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けて、きめ細かなあらゆる政策を総動員して支援します。 若者や意欲のある農林漁業者が夢や希望を持てる「農政新時代」を切り拓きます。

  総論すぎて、もはや中身が分かりません。こんな公約パンフでいいんでしょうか。

外国人旅行者 4,000 万人を目指し、地域の特色を活かした観光資源を磨き上げるとともに、受け入れ体制を強化します。

 こちらは目標が出ていますが、「何をするのか」は不明のままです。

 そのほか、震災復興の話が続きますが、驚くべきことに、「原発再稼働」をどうするのか、という話は政策パンフレットからは姿を消しています。

 「票が減る」と見なされたのかもしれません。

憲法改正

「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を維持し、以下の項目に取り組むと述べています。

  • 自衛隊の明記
  • 教育の無償化・充実強化
  • 緊急事態対応
  • 参議院の合区解消

 自衛隊だけを一個かかげると目立ちすぎるから残りの3つを足して薄めたのでしょう。

 北朝鮮対策の国難突破解散なら、解散すべきなのは九条であるはずですが。

 ・・・

 全体的に見ると、過去の政策よりも中身が薄い、という印象を受けました。

 希望の党のように矛盾だらけの政策ではない点は、与党の矜持を見せているのですが、筆者には、この公約集そのものが「急ぎで解散にあわせてこしらえました」と言っているように思えてなりません。

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