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国防総省アジア担当 ランドール・シュライバー次官補とは 

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 米国防総省のアジア・太平洋担当の次官補にランドール・シュライバーという人が任命されました(10/28)。

 次官補という役職は閣僚ほど高くはありませんが、アジア政策を巡る参謀兼実務担当者にあたるので、この人事は今後の対日外交にも影響が及びます。

 過去の対日外交で有名な米国側のスタッフはリチャード・アーミテージ氏ですが、この人もレーガン政権の頃は国防次官補でした(その後、ブッシュ政権では国務省副長官となり、対日外交に影響力を強めている)。

 シュライバー氏はアーミテージ氏が主宰するコンサル会社「アーミテージ・アソシエイツ」の共同設立者でもあるので、この人事は、今後のトランプ政権のアジア政策が、従来の日米同盟や韓米同盟を中心にした共和党路線で展開することを暗示しているのかもしれません。

 ところで、このシュライバー氏はどんな人なのでしょうか。

ランドール・シュライバー国防次官補とは

 まず、国防次官補という役職についてですが、国防総省の中では政治任用にあたるため、正式就任には上院の承認が必要です。

 具体的には、国防総省が扱うアジア・太平洋の懸案事項に対処することになります(以下、例)。

  • 北朝鮮の核・ミサイル対策
  • 韓米同盟の設計(今後、戦時作戦指揮権が韓国に返還される)
  • 対中軍事抑止
  • 南シナ海問題(航行の自由作戦等)
  • 米軍再編(普天間移設問題を含む)

 シュライバー氏は海軍士官として哨戒機や偵察機を運用していました。

 その後、国防総省中国部長を経て、2001年~03年にはアーミテージ国務次官補(当時)の政策顧問を務めていました。2003~05年には東アジア・太平洋担当の国務副次官補となり、ブッシュ(子)政権の頃に、中国、台湾、モンゴル、香港、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島の安保政策を担当していたのです。

 公職を離れてからはコンサルタントをしており、アジアの安全保障問題を研究する「プロジェクト2049」の会長を務めています。

  オレゴン州出身でハーバード大で公共政策の修士号を取得しました。

 特に台湾との関係が深いことが注目され、今回の人事には中国への牽制の意味合いが強いと言われています。

(詳細はアーミテージインターナショナルL.Cのランドール氏経歴に詳しい)

シュライバー氏は1月に蔡英文台湾総統と会談

 2017年1月に蔡台湾総統は中米を訪問し、経由地の米国で共和党のクルーズ上院議員やランドール・シュライバー氏、テキサス州のグレッグ・アボット知事と会談しています。

(当時、蔡氏は「短期間に企業を訪れ、米国の重要な人物とも会談した」と述べている。毎日電子版2017/1/15)

 当時、蔡総統は「我々は国力からいえば、小国ではないということを忘れてはならない」と述べ、以下の日程で各国を訪問しました。

 7日にテキサス州のヒューストンに到着し、中央アメリカにあるホンジュラス、ニカラグア、グアテマラ、エルサルバドルを歴訪し、13日にカリフォルニア州サンフランシスコに立ち寄りました(台湾には15日に帰国)。

  当時はまだ、トランプ氏が「一つの中国」を認める前だったので、この訪問は中国への大きな牽制球となりました。

 そして、蔡総統が10月28日にオセアニア3カ国への歴訪に出発するのに合わせてシュライバー氏がアジア外交の責任者に任命されています。

(※蔡総統は11月4日まで。マーシャル諸島、ツバル、ソロモン諸島を訪れ、往路に米国ハワイ、復路にグアムを経由する。この間に米国の親台勢力とのコンタクトが図られる)

 人事も併せてみると、トランプ大統領の中国訪問に合わせて牽制球が用意されていることが分かります。

ランドール・シュライバー氏の中国観

 ランドール・シュライバー氏は、毛沢東以来の中国の歴史を詳しく理解しています。

 これに関しては、遠藤誉氏(東京福祉大学国際交流センター長)がニューズウィーク日本語版で取り上げたことがあります(「ワシントンで「毛沢東」国際シンポジウム――日本軍と共謀した事実を追って」2016年9月5日)。

 シュライバー氏が2015年に外交専門誌「THE DEPLOMAT」(8月31日号)で、" China Has Its Own Problems With History(中国は自分自身の歴史問題を抱えている)"と題した論文を公開し、15年9月3日の軍事パレードで「中国共産党こそが日中戦争時代に日本軍と勇敢に戦った」と称した”神話”がねつ造されたことを批判したのです。

(※中国共産党は第二次世界大戦では逃げ回っており、国民党軍が日本軍と戦い、疲弊した後に漁夫の利で勝った)

 シュライバー氏は同じことを日本で指摘した遠藤誉氏を評価し、ワシントンのシンポジウムに招待したらしいのですが、中国の実態を理解している米高官がいるのは、日本にとってはありがたいことです。

 いわゆる中国の反日プロパガンダに対して予防線が張られたことを意味するからです。

 前掲の論文では「歴史のねつ造、書き直し等を行い政治目的で歴史を無効にする最悪の犯罪者は、中国自身だ」と厳しい批判が書かれていました。

(”the worst offenders in distorting, re-writing, or in many cases nullifying history for political purposes are the Chinese themselves.”)

 そして、「クローゼット内にある中国の骸骨」(China’s own skeletons in the closet)と題した節では中国共産党が文化大革命と天安門事件だけでなく、他にも多くの死者を生んだことを批判していました。

「中国共産党の時代の悲劇的な現実の1つは、太平洋戦争中の外国の支配よりも多くの中国人が中国共産党(CCP)の専制的支配によって不必要な死をとげたことだ」

(”one of the tragic realities of the CCP era is that more Chinese people died unnecessary deaths from CCP authoritarian rule than at the hands of foreign occupiers during the war in the Pacific.”)

 (※出所:THE DEPLOMAT「China Has Its Own Problems With History」)

  こうした中国観をもった人材が対中政策の形成に関わることには、日本にとってプラスの効果が大きいでしょう。

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