正義の女神

トランプ政権 全記事一覧 米国の外交軍事

2018年の米露関係はどうなる 国益とロシア疑惑の間で

更新日:

10月24日には、ワシントンポスト紙の報道で、2016年の大統領選でヒラリー陣営と民主党全国委員会(DNC)がトランプ陣営とロシアの関係を調べるために調査会社に資金提供をしたことが明らかになりました。

しかし、11月に入ってもロシア疑惑は終わる気配はありません。

2016年4月に民主党側に協力したマーク・エリアス弁護士は調査会社のフュージョンGPSにトランプ陣営とロシアの関係を調査することを依頼し、投票日の直前まで民主党が支払いを続けました。

この会社は予備選中に共和党の別の候補者から類似の依頼を受けていたとも報じられています。

トランプ氏の政治、資金、性的な内容を含むロシア疑惑のネタ(ロシアで豪遊し、乱痴気騒ぎをした等)がねつ造である可能性が指摘され、10月29日には、米共和党のスーザン・コリンズ上院議員がCBSテレビにて、民主党に資金提供者を明かすべきだとも発言しました。

これに対する反撃なのか、今度はCNN(2017/11/24)がロシア疑惑に関して、「フリン前補佐官、トランプ氏弁護団との情報共有中止」と題したニュースを公開しています。

  • 「フリン前米大統領補佐官の弁護団がトランプ大統領などの法律チームに対し、これ以上情報を共有することはできないと伝えた」
  •  情報共有を中止したことについて、情報筋は「マラー特別検察官主導の捜査で有罪を認める用意がフリン氏の側にあることを示している可能性もあると指摘した」
  • CNNによれば、「マラー特別検察官の捜査で息子が法的に処分される可能性についてフリン氏が懸念している」という。

筆者は10月の報道でロシア疑惑が終わるのかと思いましたが、まだまだこの問題は続きそうなので、今回はこの経緯とロシア外交の展開を踏まえて、2018年の米露関係の行方について考えてみます。

ロシア疑惑の論点

ロシア疑惑では、幾つかの論点で真偽が問われています。

  • 大統領選中にトランプ陣営がロシアに「選挙干渉」を通して支援をもちかけ、その見返りに対露制裁緩和を裏で協議したのか。
  • ロシア関連で怪しいカネの流れがあったのか。
  • ロシアに機密情報を漏らしたのか。
  • 5月のFBI長官(コミー氏)解任は司法妨害ではないのか。

16年夏に民主党全国委員会へのサイバー攻撃で同委員会幹部らのメールが流出し、クリントン敗北後にオバマ氏がロシアはサイバー攻撃を行ったと断定しているので(根拠は情報機関の調査)、これは、ある意味では、選挙で敗れた民主党とマスコミの報復に近い様相を呈しています。

(「ロシアゲート」とも言われるのは、トランプ政権とロシアとの怪しい関係を1970年代にニクソン大統領が対立候補を盗聴して辞任した「ウォーターゲート事件」になぞらえるためです)。

トランプジュニアとクシュナー

7月頃には、大統領選の頃にトランプ・ジュニア氏がロシア政権の意向を受けた面々と接触し、選挙を歪める情報工作を行ったのではないか、という疑惑が浮上。

トランプ・ジュニア氏は7月11日に、クリントン元国務長官に不利な情報を提供すると称して接近してきたロシア人弁護士のナタリヤ・ベセルニツカヤ氏と16年6月に面会するまでの経緯を記したメールを公表しました。

そこでは、トランプ大統領の知人であるロブ・ゴールドストーン氏(音楽プロデューサー)がクリントン氏に不利な情報をロシア側が提供すると提案し、トランプジュニア氏が”I love it"と答えていました。

さらに、トランプタワー建設で提携しようとしたアラス・アガラロフ氏(ロシアの資産家)やその息子(エミン氏)もその試みに加わっていたのです。

この件は上院司法委員会にて非公開で委員会スタッフが質問する形で9月7日に取り上げられました。

ナタリヤ氏はロシア政府に近く、大統領選干渉において、ロシア政府とトランプ陣営との「共謀」があったかどうかが疑われていましたが、同氏はずっと潔白を主張していたため、トランプジュニア氏の取り調べで真相が判明するのではないかと「期待」されていたわけです。

しかし、トランプジュニア氏は、この事情聴取で「ロシアとの共謀を否定」(時事ドットコム 2017.9.8)します。

「大統領候補の適性、性格、資質に関してはできる限り情報を聴取すべきだと考えた」が、「私はいかなる外国政府とも共謀しておらず、共謀した人物も知らない」と答えています。

この件では、ナタリア弁護士ら3名と、トランプ・ジュニア氏とクシュナー氏(トランプ氏娘婿)が面会していたのですが、実業家のクシュナー氏は10分程度でそそくさと退席。

その後、クシュナー氏もロシア疑惑で糾弾され、弁明せざるをえなくなったのですが、即座に退席したのは「ドラ息子のバカ騒ぎには付き合いきれぬ」と判断したからなのかもしれません。

※クシュナー氏は7月24日に上院情報委員会で2時間半の証言を行い、前掲のナタリア氏の件で潔白を主張。2016年4月と11月の駐米ロシア大使(セルゲイ・キスリャク氏)との会合でも記憶がなく、電話記録もないこと、ロシア国営の開発対外経済銀行(VEB:米の対露制裁の対象)のトップ(セルゲイ・ゴルゴフ氏)との政策協議の存在を否定しました。

米大統領の司法妨害の有無

そのほか、ロシアゲートに関しては、モラー特別検察官が 、2017年5月にトランプ氏がロシア疑惑捜査を担当していたコミー前FBI長官を解任したことが疑惑捜査への「司法妨害」に当たるかに注目しています。

ロシア疑惑では、トランプ大統領がコミーFBI前長官に語ったとされる内容が問題視されているからです。

  • 1月27日:ディナーで大統領は「私には忠誠心が必要だ。忠誠心を期待している」と発言
  • 2月14日:オーバルオフィスミーティングでテロ対策のブリーフィング後に、大統領が「彼は良い男だ。多くの仕事をした」「見逃してやってくれ」等と発言。
  • 3月30日:電話で大統領はロシア疑惑が国のためのディール(取引)を妨害していることを強調。フリン氏が調査されないようにする手立てをコミー氏が見つけることを希望した。

(出所:Read: James Comey's prepared testimony before the Senate Intelligence Committee Thursday - Vox

ロシア疑惑でトランプ弾劾ができない理由

11月には、フリン氏の件が再浮上しました。

しかし、議会はトランプを弾劾することはできません。

なぜかというと、結局、トランプ氏を追い詰める決定的な材料が足りないからです。

ニクソン辞任の際には「録音テープ」という決定的な材料があったのですが、「ロシアゲート」ではそこまでの資料が出てきていません。

もろもろの話は「ロシア関係者と会った」「(うさんくさい話に)それは素晴らしいと言ってしまった」「圧力をかけられたと指摘する者がいる」等の確証のない話ばかりなので、共和党議員が民主党議員からの弾劾に同意することは考え難いとも言えます。

米議会での大統領弾劾の手続きは厳格です。

大統領や副大統領を含むすべての文官を弾劾する際には、下院と上院で出席議員の3分の2の賛成が必要となります。今の下院の定数は435。議員数は共和党が240名、民主党が193名、欠員が2名なので、トランプ氏を弾劾しても過半数を取るのは困難です。

また、上院の定数は100.共和党が52名、民主党が46名、無所属が2名なので、こちらは下院以上にハードルが高くなっています。

米国建国以来、弾劾裁判が始まっても、たいていは下院で終わっていますが、トランプ弾劾は、下院さえ通らない可能性が濃厚なのです。

過去、クリントン大統領、ジョンソン大統領、チュース最高裁判官は下院で弾劾されたものの、上院で有罪にはなりませんでした。弾劾裁判で大統領をクビにするのは、それだけ難しいわけです。

だからこそ、米マスコミも、安倍首相の粗探しに励む日本のマスコミのように、必死にトランプ政権の失点を捜して大騒ぎを続けているとも言えます。

米露関係の争点

ロシア疑惑は2018年予備選に向けた民主党支援のキャンペーンにも見えますが、その影響はトランプ政権の対露外交にも及んでいます。

これがある限り、トランプ政権はロシアに対して強硬路線を取らざるをえないからです。

2018年以降も続く米露関係の争点は以下の通りです。

北朝鮮制裁を巡ってロシアはどう動く

9月に国連での北朝鮮制裁にロシアと中国も賛成しました。

しかし、ロシアは基本的には、北朝鮮の崩壊を望まず、現状維持路線を取っています。

7月4日の中露首脳会談では、訪露した習近平主席とプーチン大統領が以下の合意を固め、基本的には、その路線が現在も続いています。

  • 米露両国が朝鮮半島情勢において連携。
  • 北朝鮮には核・ミサイル開発の凍結、米国と韓国に対しては、米韓軍事演習の停止を要求。
  •  北朝鮮のミサイル実験を国連安保理の制裁決議にも違反していると批判しながらも、武力による朝鮮半島問題の解決の可能性は除外されるべきだと主張
  • 「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備については「ロシア、中国を含む周辺国の戦略的安全保障上の利益に反する」と主張。

NATO対ロシア

トランプ大統領は3月の訪欧時に、以下のように主張しました。

  • NATO(北大西洋条約機構)防衛義務について「責任を持つ」
  • NATO加盟国にGDP比2%比の防衛費拠出を要求
  • シリアやウクライナの危機について「地域を不安定化させる行動を止めるようロシアに要求する」

ウクライナ問題に関して、日本では、基本的には「現状変革」を望むプーチンの侵略行為として報じられています。そして、この欧米対ロシアの闘争は終わりが見えません。

ただ、これに関しては、国際政治学者のミアシャイマー氏が欧米系メディアの多数説とは違った観点を提示していました。

同氏は、ロシアの高官たちはワシントンに何度も、ジョージア(グルジア)やウクライナを反ロシアの国にしたり、NATOを東方へと拡大させたりするのは受け入れらないと伝えたのに、欧米はウクライナをNATOに参加させた。そのため、プーチンが対抗してきたのだと述べています。

つまり、アメリカが、キューバにソ連と軍事同盟を結ぶ権利があるとは考えなかったように、現在のロシアも、ウクライナが欧米との同盟関係に参加する権利があるとは考えていないというのです。

日本人の多くは欧米寄りの報道ばかりを聞かされているので、意外に聞こえるかもしれません。

しかし、現実の力関係を重視するリアリストの国際政治学者であるミアシャイマー氏に言わせると、ウクライナはNATOに加盟せず、EUとロシアの間の中立的な緩衝地域に位置する国となるべきだという落ちになります(ミアシャイマー氏の所論は『フォーリン・アフェアーズ・リポート(日本語版)2014年9月号』に掲載)。

延々と欧米とロシアのつばぜり合いを続けていくと、結局は中露連携だけが深まっていきます。

2018年に何らかの解決策が出るのかどうかは米露関係のポイントの一つです。

ロシアの資源外交(石油・天然ガス)

トランプ大統領は6月6日にポーランドのワルシャワで「スリー・シーズ・イニシアチブ」(アドリア海とバルト海、黒海周辺12カ国が政治的・経済的に連携する会議)に参加しました。

そして、ガス供給停止で近隣諸国を威嚇してきたロシアを念頭に置き、「あなたがたの1人がエネルギーを必要とするなら、われわれに電話してほしい」「米国はエネルギーを利用してあなたの国を抑圧することは決してしない。他の諸国がそうすることも認めない」と述べています。

東欧諸国に対して、ロシアは約75%の燃料を供給しているとされますが、ポーランドは6月に米国産のLNGを初めて輸入したからです。

今後はエネルギーを巡ってロシアとアメリカの経済競争が進むことになりそうです。

シリア問題を巡る米露確執

2017年に米露関係に大きな影響を与えたのは、4月4日に行われたシリアへのミサイル攻撃です。

シリア政府が北西部にあるイドリブ県で反政府勢力に向けて空から化学兵器(サリン)が投下されたと判断した米軍は、シリア爆撃機が発進した空軍基地に向けて、米軍は東地中海洋上の駆逐艦2隻(「ポーター」と「ロス」)から飛行場やその格納庫、武器庫、レーダーや防空システム、レーダー等を狙い、59発の巡航ミサイル(トマホーク)を発射しました。

米国側の意図は、国務省HP(4/9)に掲示された、ABCテレビのキャスターであるジョージ・ステファノポロス氏(元広報担当大統領補佐官)が行ったティラーソン国務長官へのインタビューで明かされていました。

(出所:Interview With George Stephanopoulos of ABC This Week

その内容は主に、以下の3点です。

  1. 米国の最優先事項はIS打倒
  2. ミサイル攻撃は国際法違反への警告
  3. 同時に北朝鮮への重大な警告を行った

IS打倒がほぼ終わり、現在、その後の焦点はシリア問題に移っています。

前掲のインタビューの中で、米国務長官は「我々が対IS作戦を終わらせれば、我々はアサド政権とその対抗勢力の双方に対して、停戦に関心を向けさせることができる」「我々は、シリアにおいて地域の安定化に影響力を行使し、ジュネーブ条約による政治的な過程を生み出すために、ロシアとも共同できるという希望を持っている。その過程において、我々はシリア国民が最終的にアサドの運命を決めることができると信じている」とも述べています。

過去の発言から見ると、前掲のウクライナ問題やエネルギー貿易だけでなく、今回の米露首脳会談では対ISやシリア問題が大きな議題になりそうです。

ティラーソン氏は同時期にCBSからもインタビューを受け、「米国の政策の優先事項は彼(アサド)を権力の座から追放することなのか」と問われ、「我々のシリアでの優先事項は体制変革ではない。トランプ大統領の姿勢は明確だ。第一に、我々はISを打倒しなければならない」と答えていました。

(出所:Interview With John Dickerson of CBS Face the Nation

結局、これに関しては、5月2日には米露の電話首脳会談が行われました。

両者が停戦に向けて歩み寄ることで合意し、ホワイトハウスHPには以下のような文言が掲載されたのです。

「トランプ大統領とプーチン大統領は、シリアでの苦しみはあまりにも長く続いており、全ての当事者が暴力を終わらせるために最善を尽くすことで合意した」

「会談は非常によい結果に終わった。そこには、安全区域や人道的な目的のために永続的な平和を達成するための安全区域や(軍事的)エスカレーションを防ぐための区域設定の議論が含まれる」

「トランプ米大統領とプーチン露大統領との会談(2017.5.2)」 Readout of President Donald J. Trump’s Call with President Vladimir Putin of the Russian Federation、May 02, 2017)

しかし、その後、中東における米露関係で歩み寄りは見られず、冷淡な関係が続いています。

プーチンVSトランプはスパイマスターVSディールの達人の勝負

ロシアはトランプ政権の誕生により、米国からの経済制裁解除を期待しましたが、そうはいきませんでした。

世界銀行のデータで見ると、原油安や欧米からの経済制裁を受け、ロシアは名目GDPが2兆2306億ドル(2013年)から1兆3260億ドル(2015年)にまで激減しています。

これは石油や天然ガスなどの資源に依存しすぎた経済の弊害です。

ウクライナやシリア等では強気なロシアですが、経済面では青色吐息です。

ウクライナ危機以降のロシアは、政治面では影響力を増し、攻勢に出たものの、国内経済はひっ迫し、これも欧米が下りるか、ロシアが下りるかというチキンゲームが続いていました。

ロシア側にも、どこかの段階でゲームを「手打ち」にしなければいけない事情があるように見えます。

ただ、米国内に反露勢力は根強く、「ロシアゲート」を巡る大騒ぎが続いているので、そう簡単に米ロ和解ができるような情勢ではなさそうです。

プーチン氏はもともと、東欧における「元スパイマスター」であり、「人間関係の専門家」を自称しています。

(スパイマスターというのはスパイを各国に送る親分格のこと)。

これに対して、「ディールの達人」を自称するトランプ氏がどうバトルを挑むのか。

2018年も硬直状態が続きそうですが、その行方は、ロシア疑惑と国益のはざまで決まることになりそうです。

-トランプ政権, 全記事一覧, 米国の外交軍事

Copyright© トランプ政権と米国株投資 , 2017 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.