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ヨーロッパETFの価格は2017年の英仏独選挙でどう動いたか

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 2017年はヨーロッパでいろいろな選挙があった年でした。

 EUの存亡をかけて英仏独で総選挙が行われた1年なので、「群集心理が株価にどんな影響を与えるのか」という面から見ると、欧州の選挙と株価の動きから、わりと面白いデータが採れるのかもしれません。

 そこで、今回は、17年の振り返りとして、欧州選挙とヨーロッパETFの値動きの関係を見てみます。

ヨーロッパETFの価格変動と英仏独の総選挙

 まず、今回、値動きについて調べるETFを列挙してみます。

 欧州株を対照にしたETFはたくさんありますが、とりあえず、今回は以下の四つを比較対象にします。

(以下のETFの概要は『米国会社四季報2017秋冬号』を参照)

IEV、VGT、EUDG、EWGの値動きを追ってみる

★IEV(iシェアーズヨーロッパETF)

  • 365の欧州株から成るS&Pヨーロッパ350指数に連動
  • 国別比率は英国27%、フランス15%、ドイツ14%、スイス13%。この四カ国だけで約7割を占めています。
  • 経費率は0.6%。1単位あたりの分配金は0.228~0.904ドル

★VGK(バンガードFTSE ヨーロッパETF)

  • 欧州先進国株1268銘柄で構成されるが、上位5社で10%を占める。
  • 国別比率は英国29%、フランスとドイツが14%、スイスが13%
  • FTSE欧州先進国オールキャップ指数に連動
  • 経費率は0.1%。1単位あたりの分配金は0.226~0.777ドル

★EUDG(ウィズダムツリー 欧州株クオリティ配当成長ファンド)

  • 高成長+配当実施を条件にした欧州株300社で構成するウィズダムツリー欧州株クオリティ配当成長指数に連動
  • 消費財を中心に200銘柄を組み入れている。
  • 国別比率は英国24%、スイスが18%、ドイツが10%
  • 経費率は0.58%。1単位あたりの分配金は0.043~0.255ドル

★EWG(iシェアーズMSCIドイツETF)

  • 58銘柄を組み入れるが、上位4銘柄で3割を占める。
  • 一般消費財、金融、素材、資本財、ヘルスケアが10数%を占める。
  • MSCIドイツ指数に連動
  • 経費率は0.53%。1単位あたりの分配金は0~0.613ドル

仏大統領選、上下院選挙、英総選挙、独総選挙での欧州ETFの値動き 

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(ロイターHPのチャートから作成)

 2017年に欧州ETFは以下のように上昇しています。

  • IEV:38.9ドル(1/3)⇒47.05ドル(11/28)
  • VGK:48.1ドル(1/3)⇒58.46ドル(11/28)
  • EUDG:21.1ドル(1/3)⇒26.78ドル(11/28)
  • EWG:26.5ドル(1/3)⇒33.17ドル(11/28)

 ざっくり言えば、一番、ヨーロッパのETFの値動きが激しく出たのは4月~5月のフランス大統領選です。

 ここで、フランスがEU離脱とEU維持のどちらに回るか、共和党のマクロン候補と国民戦線のルペン候補のどちらが勝つかが注目されていました。

 第一回投票日(4/23)でマクロン勝利の趨勢が明らかになると、市場は好反応を示し、株価が上がっていきます。 

 フランス下院選では、ある程度、結果予測を織り込み済のせいか、マクロン率いる「前進」が勝ってもあまり市場の反応はありませんでした。

 むしろ、それ以前の6月8日のイギリス総選挙での保守党の過半数割れのほうが重く受け止められています。

 保守党敗北の可能性を伝える報道に市場は反応し、投票日前から株価が下がり始めています。

 9月24日のドイツ総選挙に関しては、欧州株全体を範囲にしているETFの値動きにはあまり影響がなく、ドイツ株のみを対象にしたEWG(シェアーズMSCI ドイツETF)だけが好反応を示しています。

 仏上院選はもともと注目度が低いので、マクロン率いる「前進」が勝てなくても市場の大勢に影響は与えませんでした。

2017年の欧州ETFの株価伸び率は高水準

 

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(ロイターHPのチャートから作成)

 黄色の線が米国株のS&P500指数に連動したバンガードS&P500(VOO)の株価推移です。

 2017年の欧州ETFは高水準で株価が動いているわけですが、5年間で見ると、バンガードS&P500のほうが上になります

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 率直に言えば、欧州は値動きがかなり激しいので、長期で持つETFというよりは短期~中期で稼ぐ投資対象なのかもしれません。

2017年の欧州選挙の概要

フランスの大統領選と上下議会選

 一応、過去の経緯を振り返ると、フランスでは以下の日程で大統領選と下院選、上院選が行われました。

  • 4月23日(日):仏大統領選・第一回投票
  • 5月7日(日):仏大統領選・第二回投票(マクロン氏が勝利)
  • 5月11日(木):第二回投票後の当選者発表
  • 6月11日(日):仏国民議会(下院)選挙(第一回投票)
  • 6月18日(日):仏国民議会(下院)選挙(第二回投票)
  • 9月24日(日):仏元老院(上院)議会選挙

 フランス大統領選では、5月7日にマクロン新大統領が当選しました。

 大統領選の仕組みは以下の通りです。

  • マスコミを通じて立候補の意志は前年からでも表明可能
  • しかし、実際の選挙運動期間は30日程度。
  • 推薦人500人の名簿が第1回投票の3週間前の金曜日までに官報で公表される。
  • 第1回投票の選挙活動期間(4/10~21)2週前の月曜日~投票日前日午前0時。
  • 第2回投票は1回目の上位2候補の発表日からに再開⇒5/6に終了。
  • 全候補者は平等な扱いを受ける(国が公約の送付、最小限のポスター掲示とメディア放送の機会確保を保障。
  • 選挙期間中は、ラジオ・テレビでの発言・放送時間も候補者にとって平等かつ公平かどうかが視聴覚高等評議会(CSA)で監視されている。
  • ただ、テレビ討論会は主要候補のみ出演している。
  • ネットでの発言は自由。
  • 選挙資金の個人献金には上限がある(4600ユーロまで)

  フランスではナチスのような過激勢力の台頭を警戒して政治制度がつくられているので、有権者に慎重な選択を期するために、二回投票制を設けています。

 国民議会選は小選挙区制になっており、選挙区では候補者が一人だけ勝ち残ります(任期5年。18歳以上が立候補可能)。フランスは下院(国民議員)と上院(元老院)の二院制を取っているので、第一回投票では有権者は多様な候補者の中から自分の意に沿った候補者に投票。二回目に上位名のいずれかに投票します。 

 候補者は7880人。そして、第1回投票で過半数を取った候補がいない場合、得票率12.5%以上の候補が集められ、18日に第2回投票が行われるのです。

 フランスの政治権力の配分は、軍事・外交面や行政、国民投票の実施の決定等の権限が大統領に属し、立法や予算承認、首相解任等の権限が議会に割り振られています。

 こちらも米国と同じく三権分立の枠組みなので、マクロン氏の権限がどこまで拡大するのかは、同氏が率いる「前進」がどこまで勝てるのかに左右されるわけです。 

 結局、定数577の下院の勢力図は以下の通りになりました。

  • 「共和国前進」:289議席
  • 中道政党を含めた前進陣営は361議席(約6割)
  • 保守系の共和党陣営が126議席
  • 社会党陣営が46議席
  • 共産党等の急進左派は26議席
  • 国民戦線が8議席(マリーヌ・ルペン党首初当選)  

  その後、9月24日のフランス上院選(定数348:任期6年で3年ごとに半数改選)について、ブルームバーグ(9/25)はその結果を以下のように報じていました。

  • 定数348のうち171議席を改選
  • 上院選は約7万6000人の地方議員らによる間接選挙であるため、2015年の地方議会選の結果が今回の投票に反映された。
  • 第1党の共和党は149議席(7議席増)
  • 第2党の社会党は68議席(18議席減)
  • 共和国前進は23議席(6議席減)
  • 通常法案は下院の議決が上院に優越するため、大統領が推進する大掛かりな税制・年金制度改革は頓挫しないと見られている。

 下院選ではマクロン氏が大勝しましたが、その後、支持率は一気に3割台にまで急落。マクロン氏は公約実現を目指しただけで支持率が下がるという憂き目にあい、フランスでも、多くの国民が政策を読まずに投票していることが明らかになりました(交付金削減などが嫌われたらしい)。

 日経電子版(9/25)によればルペン氏が率いる「国民戦線」は2議席で前回と同じでした。上院は過去の地方選の投票結果が反映されるため、なかなか変わりにくいようです。

 マクロン政権は議員定数削減や多選の制限を目指していますが、そのためには憲法改正が必要です。

 上下両院で計5分の3がないと改正できず、上院では160議席ほどが必要でしたが、必要数よりも下回ったので、今後は他党との関係が焦点となります。

英国の総選挙

  また6月8日には、EU離脱を推し進めるべく、イギリスのメイ首相が決断した下院選の投票が6月8日に行われました。

 与党の保守党はEU離脱交渉を有利に進めるために政権基盤の安定の必要性を訴え、当初は大勝が予想されていましたが、高齢者の在宅介護の自己負担額に上限を設ける等の政策が国民の不興を買い、思ったほど支持が伸びませんでした。そのほか、テロが相次ぎ、保守党政権が警察官を減らしていたこともやり玉にあがってもいます。

 野党の労働党は、保守党が訴えるEU単一市場からの撤退がもたらす経済への打撃の大きさを指摘し、支持を広げました。

 以下、選挙前⇒選挙後の議席数変動(定数650)。

  • 保守党:330⇒318
  • 労働党:229⇒262
  • 自由民主党:54⇒35
  • スコットランド民族党:9⇒12
  • その他:28⇒23

 326議席で過半数ですが、英議会では正副議長4名(与野党各2名)は投票権を持ちません。さらに、北アイルランドのシンフェイン党(7議席)は登院を拒む戦術をとっているので、 議決に参加しません。この分を計算に入れると、実質的な過半数は322議席。保守党は過半数には届きませんでした。

ドイツ総選挙

 9月24日にはドイツ総選挙(連邦議会選)が行われました。

 ドイツでは「小選挙区比例代表併用制」が取られており、有権者は小選挙区で立候補者に投じる票と、比例代表で各政党に投じる票の二票があり、以下の過程を経て議席が決まります。

  • まず、比例代表の得票に基づいて定数の598議席から各党の獲得議席を確定。
  • 各政党の獲得議席には小選挙区の勝者が割り振られる(獲得議席数に小選挙区の勝者数が足りない場合、比例名簿の上位者が議員となる)
  • 小選挙区での勝者数が比例代表での獲得議席数よりも多くなった場合は「超過議席」が認められ、定数以上の議席数となる(ドイツ議会の定数は598だが、この制度によって、現在の議席は630議席となっている)

 ドイツは二院制なので、連邦議員のほか、各州3~6名の代表が集う連邦参議院(定数69議席。いわゆる上院)がありますが、権限は連邦議会のほうが強くなっています。

 24日に投開票が行われたドイツ連邦議会選は、キリスト教民主・社会同盟が第1党の地位を確保し、メルケル氏は「強い欧州をつくる」と勝利宣言しました。

 獲得議席数/得票率は以下の通りです。

  • キリスト教民主・社会同盟:246議席/33%(8.5%減)
  • 社会民主党:153議席/20.5%(5.2%減)
  • ドイツのための選択肢(AfD):94議席/12.6%)
  • 自由民主党:80議席/10.7%
  • 左派党:69議席/9.2%
  • 90年連合と緑の党:67議席/8.9%

 現在のドイツ経済は調子がよく、7月の失業率は3.6%という90年代以降の最低水準をキープしているため、メルケル首相が四選となりました。

 メルケル率いるCDU・CSUは野党の政策をまね(同性婚賛成に転じるなど)、争点をつぶすことで勝利を目指しています。

 こうした背景から、代表的な四党の政策はよく似ており、それに飽き足らぬ人たちの中に、いわゆる「極右政党」に投票する人が出てきています。

 女性党首のフラウケ・ペトリ氏が率いる「ドイツのための選択肢」がメディアでは「極右政党」と書かれていますが、政策だけを見ると、よくある保守の枠内の政策が多いようです(イスラム排斥は過激ですが)。このあたりには、多少、メディアの誇張もあるような気がします。

 ドイツの既存政党四党の共通政策はEU統合の深化。警察の強化等(CDU・CSUとSPDは共に15000人の警察増員を掲げる)です。

 ドイツの各党は以下の政策を掲げています。

キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)

  • 200億ユーロ規模の大減税
  • 150万超の住宅を新規建設
  • 2025年までに失業率を3%以下に
  • フランスとの連携。ユーロ圏通貨基金を創設。
  • 難民に開かれたドイツを維持(難民数の枠は抑制)

ドイツ社会民主党(SPD)

  • 中低所得者への大型減税
  • 失業手当、年金支給、子供手当の強化
  • 教育無償化の推進
  • EU議会の権限強化
  • 不適格な難民を本国に送還

同盟90・緑の党

  • 脱原発の推進
  • 環境保護政策の強化
  • 失業手当、子供手当を拡充
  • ユーロ共同債の導入
  • 人道的な立場で難民受入れ支持

自由民主党

  • 300億規模の大型減税
  • 中小企業の助成
  • 子供手当を拡充
  • デジタル化のためのインフラ投資
  • 難民管理の厳格化

ドイツのための選択肢

  • 共通通貨ユーロの廃止/各国独自通貨の再導入
  • 欧州安定メカニズム(ESM)から各国への補助金貸付を停止を求める
  • EU共同市場は支持。EU圏内での豊かな国から貧しい国への富の移転に反対
  • 税金を原資にした再生可能エネルギー法(EEG)の廃止
  • 高度な技能や資産等を持つ移民のみを容認。未熟練労働者などの国内流入は認めない。
  • 政治的迫害者等の難民は認める。国内でのイスラム文化の普及(ヒジャブ着用等)を禁止。

 今後のドイツの課題はEUとの関係、難民問題、自動車産業の発展支援などです。

 2015年9月にメルケルが難民受け入れを宣言し、世の中に脚光を浴びたものの、16年に難民が100万人を突破すると、治安悪化の責任を問われるようになり、警察の強化を訴えました。

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