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観光促進税 謎の新税現る 出国したら千円だって?

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  「観光促進税」という新税がつくられる方針が自民党の観光立国調査会で決まりました。

 これが成立すれば、観光分野の政策の予算確保のために、外国人でも日本人でも、飛行機や船で日本を出る時には、1人あたり1000円の税金がかかるようになります。

 2020年の東京オリンピックとパラリンピックに向けて、2019年1月頃に導入するよう、観光庁や自民党は動いているようです。

 今までは、出国税や観光振興税などの呼び名も検討されていましたが、「観光促進税」とされています。

 平成4年の「地価税」以来の新税の中身はどんなものなのでしょうか。

観光促進税の概要

 産経ニュース(2017/11/16)によれば、その概要は以下の通り(「新税「観光促進税」に 出国時に千円徴収、27年ぶり新税 自民党が決議」)

  • 新税の導入時期は「可能な限り早期」。
  • 2019年度の導入を目指す。
  • 2020年までに訪日外国人旅行者を4000万人に増やすために、観光政策に使う新財源として創設される。
  • 22日以降の与党の税制調査会で議論して、12月14日の2018年度税制改正大綱に盛り込む。
  • 昨年の訪日客と日本人出国者は約4000万人。1人千円の税金を取ると観光庁予算(29年度で210億円)の約2倍の400億円が確保可能。
  • 用途は「高次元の観光施策の実施」とされる。欧米等での観光PRのほか、観光案内や標識の多言語対応などに充てられる

 NHKニュースウェブの報道(2017/11/16)によれば、観光庁検討会は、これを財源に出入国審査のスピードアップや地方の観光資源の整備等を進めるべきだとの提言をまとめているそうです(〔自民 「観光促進税」創設求める決議 出国時に1000円徴収〕)

 この記事によれば、この税金は、航空料金等に1000円を上乗せする形で徴収されるようです。

 航空チケットの料金に運賃のほか、空港利用料(2090円)や保安検査料金(520円)、燃料サーチャージ(4600円)が上乗せされるのと同じような形式です。

 要するに、間接税の一種として、チケットの料金に上乗せされるわけです。

観光促進税 選挙公約に書かれていたのか?

 衆院選が終わってからまだ1か月も経っていないので、そんなことが公約されていたのかどうかが気になります。

 公約には、以下のような記述はありますが、全体の片隅に小さな文字で書かれているだけなので、そんなものが国民の目に届くとは思えません。

観光庁や日本政府観光局の組織体制の拡充、受益者負担 の考えに基づき、高次元で観光施策を実行するために必要 となる追加的な観光財源の確保に取り組み、観光立国実現 に向けた観光基盤の拡充・強化を図ります

 財源確保としか記述がないので、それが税金なのか、国債なのかも不明。

 安倍首相が公の場でこのプランをきちんと説明したわけでもないので、自民党が「選挙中に公約に書いた」と主張しても、いま一つ説得力がありません。

 産経デジタルの「主張」(11/11)でも、「肝心の新税の使途が明確ではない。提言は旅行環境や観光資源の整備などを例示するが、他省庁も同じような名目で予算を計上しており、新税導入の効果が見極めにくい」と指摘されていました。

 「あと出しジャンケンだ」といわれてもしかたがないでしょう。

観光促進税に正当性はあるのか

 課税の基本三原則としては「公平性」「中立性」「簡素性」の三点がよくあげられます。

  1. 公平性:国民に税負担に対する不公平感を与えない制度設計。
  2. 中立性:企業の経済活動や個人消費に悪影響を与えないこと
  3. 簡素性:徴税と使途が明確で納税額の計算がシンプルであること。

 恐らく、税金の取り方はシンプルなので、簡素性は満たされそうですが、お金を取られる制度なので、【2】に関してはマイナスの影響が出ます(小規模ですが)。

 公平かどうかは負担者が適切かどうかという問題です。

 日本人にはこれ以上、税金をかけにくいので、主に日本から出ていく外国人に焦点をあてたわけです。

 ただ、出国する日本人は別に日本国内で観光しないので、受益と負担がマッチしません。

 海外旅行するお金があるのなら、税金を払ってくれ、と言っているように見えます。

 前述の産経デジタルの「主張」では、以下のように結ばれていました。

  • 外国に出かける日本人に負担を求めることも首をかしげる。
  • 観光庁は「訪日客にだけ課税するのは、内外無差別の国際ルールに反する」とするが、米国では日本などビザ免除国からの入国者から手数料を徴収している。工夫の余地はまだまだあろう。

 説明も趣旨も用途も、現状では不明確なまま、新税創設の議論が進んでいます。

 観光庁のほかにも観光政策を行っている機関があるので、なぜ新税が必要なのかも今一つはっきりしません。

 これは特定の使い道に充てる税なので、「特定財源」に分類されますが、過去、この種の財源が無駄遣いされたこともあるので、マスコミは警戒を強めています。

観光促進税 そもそも必要なのか

 ところで、観光の促進というのは、そもそも政府の仕事なのでしょうか。

 政府の最低限の仕事は、防衛や治安、消防、大規模な公共投資等、民間では難しい仕事をすることです(フリーライダーの出現を排除できない「公共財」を提供することだともいわれます)。

 しかし、観光促進は民間でもできます。

 そのため、この新税は、「なぜ、それを政府がやらなければならないのか」という疑問には答えにくい税金です。

 観光促進税は、政府がそれをやらなければいけない理由をはっきりさせず、「東京五輪のために必要だ」という前提がつくられたまま話が進行しているようです。

 こういう根拠不明確な新税ができると、次から次へと新しい謎の税制が出現しかねないので、筆者は、この自民党案には納得がいきません。

 安倍首相は2014年も2017年も、総選挙で「税金は民主主義の根本だ」と言っていました。

 しかし、結局、選挙後に公約の片隅に書かれただけのプランで増税を目指しています。行きつく先は性急な増税プランです。

 こうした根拠不明確な新税を先例にして、似たような増税プランが次から次へと出てこないかどうかが、非常に心配です。

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