北京

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米中関係 2017~

この記事では、トランプ政権ができてからの米中関係を振り返ってみます。

主に北朝鮮問題と米中貿易交渉を中心に整理します。

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トランプ当選から米中首脳会談まで

トランプ氏は2016年の大統領選では中国批判を繰り返していました。

  • 米国から雇用を奪い、知的財産権を奪っている
  • 大統領就任初日に中国を為替操作国に指定する
  • 中国からの輸入品に45%の関税をかける

当選後には、12月2日に台湾の蔡英文総統を「プレジデント」と呼び、電話会談を行いました。

「台湾総統が私に当選勝利のお祝い電話をかけてくれた。ありがとう!」「米国は台湾に10億ドルもの軍の装備を売っているのに、私が当選祝いの電話を受けてはいけないとしたら、それは、とても興味深いことだ」(12/3ツィート)

さらに、トランプ氏は12月11日に「なぜ、我々が『一つの中国』原則に縛られなければならないのか」と発言(FOXテレビ)。中国を揺さぶるための手段として対中・対台湾外交転換の可能性を示唆しました。

その後、軟化したことから考えると、これは経済交渉で中国から都合のよい条件を引き出すための布石だったのかもしれません。

中国側は南シナ海での爆撃機飛行、米軍の無人水中探査機奪取などで対抗。

17年2月の日米首脳会談の直前には、トランプ氏はティラーソン国務長官の意見を容れ、「一つの中国」を認める既存の外交路線に戻ることを表明。3月には国務長官が訪中しました(※習氏の同窓生を中国大使に指名するなど、中国側への配慮を見せた)。

貿易面では、1月の米国不在のダボス会議では習主席氏が保護主義を批判していました。

「各国に発展する権利はあるが、他国の利益を損なうことは許されない」「貿易紛争では両者が傷を負う」等と発言し、米国が中国製品に高関税をかけないように牽制したわけです。

米通商法によれば、米大統領には議会の承認なしで外国製品に関税をかけたり、制裁措置を講じたりできる権利があります

近年、経済成長が下降気味の中国にとって高関税の賦課は大きなダメージになりますが、その場合、中国側はボーイング社やアップル社等の製品に対抗関税をかけるので、両国の貿易の総額が減ります。

中国製品への高関税賦課をほのめかしながらも、トランプ政権が実行に踏み切っていないのは、それを行えばアメリカにも実害が出るからです。

そのため、トランプ政権といえども「話し合い」で貿易の条件が改善されるなら、それにこしたことはありません。こうした背景から、結局、米中首脳会談を開催し、貿易交渉を行うことになりました。

米中首脳会談から100日間交渉まで

その後、4月6日に習近平は訪米し、7日まで米国南部フロリダ州にあるトランプ氏の別荘「マララーゴ」で会談。

北朝鮮問題や貿易等について会談しました。

米中会談中にシリアをミサイル攻撃

しかし、トランプ大統領は会談中にシリアへの巡航ミサイル攻撃を決断。その事実が記者会見で明かされました。

防衛省の発表によれば北朝鮮が6時42分頃に新浦(シンポ)付近から北東に発射した1発の弾道ミサイルは約60㎞先に落下しました。

これは北朝鮮の核開発とミサイル発射実験への対策を協議する米中首脳会談への威嚇です。

このアクションに対して、トランプ大統領は米中首脳会談が行われている6日夜(米国時間。日本時間では7日午前)に記者会見を行い、シリア空軍基地(シャイラート飛行場)にミサイル攻撃を行ったことを明かしました。

4月4日には、シリア政府が北西部にあるイドリブ県で反政府勢力に向けて化学兵器(サリン)を用いた爆撃の存在が疑われていました。

シリア爆撃機が発進した空軍基地に、米軍は東地中海洋上の駆逐艦2隻(「ポーター」と「ロス」)から59発の巡航ミサイル(トマホーク)を発射し、飛行場やその格納庫、武器庫、レーダーや防空システム等を攻撃したのです。

BBCニュースの日本語版(4/7)は、イドリブでは「子供を含む多数の市民が死傷。呼吸困難や瞳孔の縮小、口から泡を吹くなど、化学兵器攻撃を疑わせる症状を見せていたと現地目撃者は話している」とも報じました。トランプ大統領は記者会見で「私は今晩、シリアの殺戮と流血を終わらせ、あらゆる種類とあらゆるタイプのテロリズムを終わらせるため、我々と協力するようすべての文明国に呼びかける」と述べています。

その後、米中首脳会談が7日(米国時間)に終わり、トランプ大統領と習近平主席が「外交・安全保障」「経済」「法執行とサイバー対策」「社会・文化」の四領域で閣僚級会合を儲けることで合意しました。

そして、米国側は貿易赤字の削減に関する取組みが「100日間」という期限つきで始まると発表し、中国側は「一つの中国」の原則の重要性を強調しました。

会談後の米閣僚の記者会見を見ると、抽象的な言葉がずらりと並んでいたので、具体的な施策で合意できることは少なかったのでしょう。

米国の貿易赤字の規模とは

日経電子版(2017/2/8)は米商務省を出典として2016年の貿易統計の概要を報じています(「米貿易赤字、16年は日本が2位 中国に次ぐ7.7兆円」。

  • モノ+サービスの貿易赤字:5023億ドル
  • モノの貿易赤字:7343億ドル
  • サービス収支:2478億ドル

そして、モノの貿易赤字を各国別にみると、そのうち中国が47%(3470億ドル)を占めています。2位の日本は9%(689億ドル=7.7兆円)なので、赤字の規模で言えば、中国がダントツです。

人民網日本語版(2017/4/8)では、「中米首脳会談 積極的シグナルを発信」と題して今回の会談の「成果」を報じていました。

前掲の四分野での会合創設のほか、以下の3点が特に強調されていました。

  • 両首脳が交流強化で合意(トランプ氏の訪中決定)
  • インフラ建設やエネルギー部門での実務協力を模索
  • 台湾や朝鮮半島、南シナ海等、立場が異なる外交課題でも協議を行う

人民日報は米中関係の重要性がトランプ政権でも承認され、中国側が今までに感じていたトランプ政権の外交方針への不透明感が払拭されたことを評価しています。

米国の対中制裁はどうなった

2017年6月には、トランプ政権が中国の不公正貿易をWTO(世界貿易機関)に提訴する意向だと米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が6月に上院の財政委員会で明かしました。

8月にはNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉を行うとも述べたことも各紙で報じられています。

産経BIZ(6/22)によれば、ライトハイザー氏は中国政府が農産物の輸出を増やすために不公正な補助金を出していることを問題視し、「国際的な貿易ルールを破る国には厳しい姿勢で臨む」と強調しました。NAFTA再交渉に関しては議会との事前協議が8月16日に期限を迎えることを指摘し、再交渉を急ぐことを明かしています(「米、中国をWTO提訴へ 通商代表、不公正貿易で」)

このUSTR代表の発言は、トランプ大統領が6月12日に中国を始めとした鉄鋼やアルミ製品のダンピング(不当廉売)輸出への対抗措置をとる方針を表明したことにも符号しています。

7月中には米中首脳会談から100日が経過しましたが、大した成果がありませんでした。

5月25日には中国商務省は米中貿易不均衡の是正のために米国から大豆、綿花、原油、液化天然ガス(LNG)、航空機、ICチップなどの輸入を増やし、合意済みの牛肉輸入を再開する手続きを進めることや、生保市場の規制緩和を行うこと等を表明しましたが、北朝鮮問題は特に解決の兆しが見えていません。

その後、7月19日には閣僚間の米中経済対話が行われましたが、両国の主張は一致せず、終了後には記者会見も行われませんでした。4月の米中首脳会談後、両国間に続いていた蜜月関係が終わったわけです。

米国側はロス商務長官、ムニューシン財務長官、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長、中国側は汪洋副首相などが出席し、経済人の間では、ジャック・マー氏(アリババ・グループ・ホールディング会長)やシュワルツマン氏(ブラックストーン・グループ会長)も意見交換がなされました。

経緯を振り返ると、もともと、トランプ氏は大統領選中に「中国を為替操作国に指定する。中国製品には45%の報復関税をかける」等と主張しましたが、米中両国は5月11日に経済協力で合意。

中国側が農業や金融で米国に市場を開放し、米国側が中国の「一帯一路」に協力する意向を表明。この時、中国側はBSE(牛海綿状脳症)問題で止まった米国産牛肉の輸入再開や格付け業務や債券引受業務等の解禁を明らかにし、米国側は中国のLNG(液化天然ガス)調達を支援することが決まりました。

米国側は牛肉とLNG対中輸出だけでは年3000億ドル超の対中貿易赤字はたいして減らせないので、中国製鉄鋼の不当廉売対策などを盛り込むべく、追加協議が行われたわけです。

全体的に見ると、中国は多少の市場開放(米国産牛肉の輸入を解禁。米金融機関に絡む規制緩和等)を行いましたが、対米黒字は5月に220億ドル(約2.5兆円)へと拡大し、中国が行った北朝鮮への制裁(石炭輸入禁止等)も大した効果を生んでいません。

その「成果」の内容を WSJ日本語版(2017/7/18)を参考に振り返ると、特筆されているのは電子決済サービスの規制緩和と市場の一部開放等です(米中「100日計画」、成果はうわべだけ)。

金融面では電子決済サービスの規制緩和などが注目されました。

  • 中国は電子決済サービスの免許申請(ビザやマスターカードに影響)を認めることに合意。
  • しかし、外国のクレジットカード会社が免許を申請できるようになったが、中国市場で事業を始められるわけではない
  • 中国の銀行がビザやマスターカードのネットワークで決済できるクレジットカードを広く発行するまでにはまだ何年もかかる可能性が高い
  • 新規則には、中国でのデータセンター設置義務など、外国企業の参入を阻む障壁が幾つも盛り込まれている
  • 格付け業務もさほど開放はされていない
  • ムーディーズやS&Pグローバル、フィッチ・レーティングスが得た「勝利も部分的なものにとどまった」。
  • 5月に100%外資が中国で信用格付けサービスを行うことを認めた中国政府は7月に同サービスの外資規制を撤廃。だが、格付け発行に必要な認可を得るプロセスや時期ははっきりしない。

そして、中国の牛肉市場の開放に関しても、同紙は悲観的です。

  • ただ、米国で一般的な成長促進ホルモンの投与を禁止するなど、中国の安全食品基準は厳しいため、米国の牛肉業界にとって中国は当面、ニッチ市場にとどまる可能性が高い。
  • 米牛肉生産第3位の穀物メジャー、カーギルのマーセル・スミッツ最高財務責任者(CFO)は「条件を満たす米国の牛の数は限られる。目先、目立った変化はないだろう」と語った。

さらに、トランプ大統領は中国に経済制裁を行うために、8月14日に通商法301条に基づいた調査を行いました。

米政権は中国が知的財産の侵害や外国企業に対する技術移転の強要を行っていないかどうかを調べます。通商法301条では他国の不公正な取引慣行に対する制裁が定められているので、米国は交渉しても不正が続く場合は、関税の引上げ等を行うことができます。産経ニュース(2017/8/2)は、11日の政治専門サイト「ポリティコ」がトランプ政権高官がそう述べたことを紹介しました(米、対中制裁みすえ通商法301条調査へ 14日発表と報道 知財侵害など問題視

米通商法301条は、90年代半ばに日米貿易交渉で発動されかけたこともあります。米国の貿易上の最大のライバルが日本から中国に移行していることが伺えるニュースです。

国連安全保障理事会は8月5日に北朝鮮制裁決議を採択しました。

その内容には、北朝鮮との石炭貿易禁止や北朝鮮労働者の雇用禁止、北朝鮮との合弁会社設立を禁止等が含まれ、米側は、この制裁で北朝鮮の外貨収入の3分の1(10億ドル)程度を削減できると見なしています。

しかし、ここではは「北朝鮮への石油の禁輸」が決議に盛り込まれず、中国の北朝鮮貿易は今年上半期に10.5%増加していました。

そこで、ホワイトハウスは中国に厳しい措置に踏み込み始めました。

  • 北朝鮮の金融取引を助ける中国の銀行と2人の個人に経済制裁
  • 人身売買に関して中国を最も悪質な違反国のカテゴリーに分類
  • 台湾に14億ドル規模の武器を売却
  • 香港の自由拡大を認めるよう求めた
  • 南シナ海の南沙諸島付近で「航行の自由」作戦を実行
  • 米国は国家安全保障上の理由で鉄鋼輸入への新たな関税を検討

特に注目を浴びたのは、中国だけでなく、幅広い国に影響が及ぶ鉄鋼製品の輸入抑制措置です。中国製鉄鋼は第三国を経由して米国に入ってきているからです。

産経BIZ(2017.7.20)では「世界貿易紛争の危険性も 米の鉄鋼制裁を示唆、日本にも火の粉」と題した記事を公開していました。

  • トランプ政権は鉄鋼の大量輸入で米鉄鋼メーカーの生産力が奪われることで、戦闘機や軍艦などの製造にも支障が出る恐れがある
  • 輸入製品が安全保障上の脅威になる場合、大統領が是正策を取れると定めた米通商拡大法232条に基づき高関税と輸入割り当ての同時適用を検討する。
  • 米国の鉄鋼製品の輸入量に占める中国製の割合は、オバマ政権時代から続く反ダンピング(不当廉売)税などの影響で3%未満まで落ち込んでいる。
  • トランプ政権は、課税を避けるため中国製品がアジアなど第三国市場を経由して流入しているとみており、日本を含む中国以外の国も制裁対象になる恐れがある。
  • 政府はトランプ政権に対し、中国製鉄鋼が日本を経由して米国に輸出されることはないと理解を求めているが、免れる保証はない。

欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は、米国が制裁を発動した場合、「わずかな日数で対抗措置を取る」と警告。各国がWTO提訴等の措置に踏み込めば、世界的な貿易上のバトルが始まる可能性が高いわけです。

この制裁措置の根拠は、50年以上前に成立した米通商拡大法の232条です。この法律では、米商務省が安全保障に悪影響を及ぼすと判断した時に、大統領が輸入を制限できることになっています。

そして、具体的なデータとしては、「米国の鉄鋼消費に占める輸入の比率は3割程度にとどまる。主要な調達先もカナダ、韓国、メキシコなど友好国が大宗を占める。国防上必要な鉄鋼が供給できなくなる事態は中期的に見ても想定できない」等と指摘されています(日経電子版「安保を理由に鉄鋼輸入を抑えれば問題だ」2017/6/18)。

この記事では「反ダンピング関税に加えて、安保を理由に鉄鋼輸入が制限されるようなことになれば、海外の輸出メーカーが大きな損害をこうむるのはもちろんだが、鉄鋼を使って製品をつくっている米国内の企業や消費者にも悪影響が及ぶ」との懸念が表明されていました。

その後、中国は北朝鮮からの石炭輸入を禁止したものの、それ以上の措置には踏み込ませんでした。

8月29日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した後、日本政府は米国、韓国とともに国連安保理で石油禁輸を含めた追加制裁の実現を目指す方針を明かしました。

まず、国連安保理は全会一致で5年ぶりに29日に議長声明(北朝鮮非難/ミサイル発射の即時停止を要求)を採択。日米韓は北朝鮮産品の輸出禁止(石炭、鉄鉱石、鉛、海産物等)や新たな北朝鮮労働者の国外受入れ禁止を含む決議の完全順守を各国に求め、次の段階で石油の禁輸措置の実現を求めました。

この措置は北朝鮮のミサイル開発の資金源を断つのが狙いです。また、石油供給を断つことには、北朝鮮軍の戦意を断つ狙いも含まれています。

最終的には、中国やロシアも合意する形で、9月には国連で北朝鮮制裁が決まり、中国から北朝鮮に輸出する石油が削減されたのです。

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トランプはアジア歴訪で北朝鮮に「最後通告」

トランプ大統領は11月にアジア歴訪を開始し、訪日後の11月8日に韓国の国会で演説し、北朝鮮に警告しています。

  • 北朝鮮での生活は恐怖に満ちている。
  • 市民は、奴隷として海外に送られるために役人に賄賂を払うほどだ。逃亡を図れば死をもって罰せられる。
  • 朝鮮半島は分断され、一方では国民が国を動かし、自由と正義がある将来を選んだ。もう一方では、指導者が専制と全体主義と抑圧の旗の下に国民を縛り付けている。
  • 朝鮮戦争が始まった時、南北朝鮮では国民1人当たりの国内総生産(GDP)はほぼ同じだった。
  • 今では、韓国の富は北朝鮮を大幅にしのいでいる。北朝鮮の政権は市民が外の世界と接触することをほぼ完全に禁止している。
  • 私の演説はもとより、韓国での暮らしに関わるごく日常的な事柄でさえも、北朝鮮国民は知ることを禁じられている。
  • 北朝鮮はカルトに支配された国家だ。軍事カルトの中心にあるのは、指導者が保護者として朝鮮半島を支配するという錯乱した信念だ。

「アジアに疎い」ともいわれたトランプ氏は北朝鮮について勉強したのか、わりと正確な認識を語っています。

繁栄する韓国の存在こそ北朝鮮の独裁体制存続の脅威だ。韓国の成功は北朝鮮の政権に大きな不安をもたらしている。だからこそ、北朝鮮は失敗から目をそらすため海外で紛争を引き起こそうとしている。

北朝鮮の歴代指導者は、外敵をつくって国内をまとめるという、独裁者の常套手段を用いているわけです。

(北朝鮮は)「約束を全て破ってきた。94年にプルトニウム計画の凍結を約束した直後から、違法な核計画を進めた」

そして、「北朝鮮は米国の自制を弱さと解釈した。致命的な誤りだ。われわれの政権は過去の米政権とは全く違う」と述べ、北朝鮮に「われわれを甘く見るな。試そうとするな」と警告をました。

  • 米国は紛争や対決を求めないが、逃げもしない。
  • 米国や同盟国を脅迫したり、攻撃したりするのは許さない。
  • 言い訳する時は終わった。今は力を示す時だ。
  • 平和を欲するなら、常に断固とした態度を取らなければならない。
  • ならず者政権が核の破壊力で脅迫することを、世界は許さない。
  • 全ての責任ある国は、北朝鮮の野蛮な政権を孤立させるため力を結集しなければならない。
  • 中国やロシアを含めた全ての国に対し、国連安全保障理事会決議の全面履行、外交関係の縮小、貿易関係の停止を要求する。

(出所:トランプ米大統領 韓国国会の演説要旨詳報 毎日新聞 2017年11月8日)

内容としては、事実上の最後通告に見えます。

米空母と原潜が展開する間は北朝鮮も自重するでしょうが、金正恩の側も「ここまで言われて黙っておれるか」という意地があるので、トランプ氏のアジア歴訪後、11月末にミサイル実験を開始しました。

中国の北朝鮮制裁は、どこまで本気か

北朝鮮の輸出額のうち、9割以上は中国向けが占めており、その中でも石炭輸出は重要な外貨の獲得源となっているので、言葉通りに制裁が行われれば、この禁輸措置は同国にとって大打撃となるはずです。

しかし、2016年の貿易統計をみても、制裁後も石炭輸入は一割増。

日経電子版(2017/1/28)は、経済調査会社CEICの情報をもとにして「中国の北朝鮮産石炭輸入、国連制裁下でも1割増 16年」と題した記事を公開しています。

中国税関総署の統計から見ると、中国は16年4月から北朝鮮産石炭の輸入規制を行い、輸入金額が一時的に減ったものの、「8月以降は前年同月比で増加にに転じ」、「11~12月は前年同月比で2倍超に増えた」と報じています。中国が同年に北朝鮮から輸入した石炭の総額は11億8094万ドル(約1360億円。前年比12.5%増)となりました。

制裁は形骸化していたわけです(輸入量は2249万トン、前年比14.6%増)。

2017年の統計をみると、10月13日に中国税関総署が発表した9月の貿易統計では、輸出額は1982億ドル(約22.2兆円)で前年同月比8.1%増となり、3月から7カ月連続で前年同月を上回りました。

中国側は、北朝鮮向け輸出は9月に6.7%減少し、輸入が37.9%ほど下降したと主張していますが、結局は、今まで中国が北朝鮮を支えてきたわけです。

結局、16~17年の双方のデータから見ると、中国の「輸入禁止」というのは、あまりあてにはなりません。

日米とアジアの諸国がきちんと監視しなければ同じことの繰り返しになりそうです。

注目されているのは、中国が北朝鮮への石油輸出を禁止するのかどうかです。

軍隊があっても石油がなければ動けなくなるので、この措置が完全に実行された場合、北朝鮮は白旗を挙げるか、暴発するかのどちらかしかなくなります。

早稲田大学名誉教授の重村智計氏は日経ビジネスオンライン(2017/4/21)にて、重森氏は北朝鮮の年間の石油輸入量は「最大で年間70万トン程度」であり、ここ数年は50万トン前後でしかないと指摘しています。年間150万トンの石油を用いている自衛隊と比較しても、北朝鮮は戦える状態にないと見ているのです(「朝鮮半島で軍事衝突はない 混迷する朝鮮半島」)。

問題なのは、前節の石炭の事例と同じく、どこまで中国が本気なのかということです。中国が石油輸出をゼロにしたと称しても、実際の各国向けの輸出額を見ると、違った数字が出てくることがよくあるからです。

「北朝鮮の貿易額は、日本貿易振興機構(JETRO)や韓国の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が各国の貿易統計から『北朝鮮向け』となっている数字を集計して割り出してきた。中国の通関統計では2014年から北朝鮮への原油輸出がゼロになっているが、KOTRAは年間50万トン、金額で2億8000万ドルと推定して加味した。貿易総額は 2009年から増加基調にあったが、2015年は資源価格下落などで減少した。中国への石炭輸出は量では26.9%だったものの、金額では7.6%減となったという」(『新版 北朝鮮入門: 金正恩体制の政治・経済・社会・国際関係』礒崎敦仁/澤田克己著、P220)

北朝鮮への原油輸出がゼロになったとされた2014年以降、特に北朝鮮の石油融通の状況は変わっていないとも言われています。

 2014 年初頭から現在に到るまで、北朝鮮が著しい石油製品の供給不足に陥っているとの情報はない。例えば、韓国の情報によると、2014 年 8 月時点で平壌市の軽油価格は 2012 年とほぼ同じである。また、露朝間の石油製品供給量が急増したとの見方もあるが、ロシアの税関統計によると、2014 年 1~9 月のロシアの対北朝鮮石油製品輸出量は合計 1 万 8,349 万トンであり、2013 年同期の 2 万 309 トンと比べて 1,960 トン減少している。

(株式会社エイジアム研究所「中国の対北朝鮮原油輸出 未だ解けない中国と北朝鮮の謎」)

さらには、中国が北朝鮮への輸出を禁止する場合、旧型のパイプラインが詰まってしまい、石油輸出の再開に支障をきたす可能性があるともいわれています(※中国が2013年頃と同じ設備を今も使っていたと仮定した場合の話)。

 中朝パイプラインは極めて少量の送油である特殊性から、地面の温度変化などにより一定の時期に送油を停止する際や、定期検査や事故などで送油を停止する必要性がある場合の停止可能時間が季節によって厳しく定められている。

しかしこうした手順を経て、夏季の一定時間の送油停止と、蓄積したパラフィンの清掃を行って管理運営をしたとしても、年間の安全輸送量は52.5 万トン程度が最低限界という。

(略)
パイプラインが詰まらないように停止できる時間の限界は夏季でも12 時間しかない。

旧型のパイプラインであるため、一度、止めてしまうと、パイプがつまり、事故が発生してしまう。だから、半日しか止めることができない。そう指摘されていました。

あくまでもこれは2013年頃のデータを前提とした話ですが、この論文の筆者は「最低でも50 万トンは送り続けなければ詰まりが生じてしまうパイプラインは、段階的な輸送量の増減には機能的に対応していない」と述べていました。(出所:堀田幸裕「中国の対北朝鮮援助 中朝石油パイプラインを中心に」一般財団法人霞山会、愛知大学国際問題研究所)

2017年現在では、もしかしたら、中朝パイプラインは改良されているのかもしれませんが、このラインはあまり融通がきかないようなのです。

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