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トランプ政権のインフラ政策は2018年に実現するのか

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 トランプ政権が発足して10か月以上が経ちますが、大統領が自由に動かせない減税政策や大規模なインフラ投資、オバマケア改廃法案等はなかなか実現しません。

 減税の実現は2018年までずれ込みそうな雲行きなので、インフラ投資に関しては、具体化が翌年以降になることが確実視されています。

 しかし、その構想は大きいので、議会で法案が成立すれば、それなりのインパクトは出るでしょう。

  今回は、そのインフラ投資策の意義について考えてみます。

トランプ政権のインフラ投資計画

 トランプ政権は2017年5月19日にインフラ投資のプランを公表しました。

 各紙報道によれば米行政管理予算局(OMB)の高官が、23日に発表する予算教書では今後10年で2000億ドルを政府が支出。民間から8000億ドル規模のインフラ投資を促すことを明かしました。

 道路、橋、空港、配電網、水道等の近代化のために10年間で1兆ドルのインフラ投資を行うという公約の中身を詰め、市場の期待をつなぎとめたいと考えていると思われます。なお、この予算教書では、国防費増額や各省予算削減の詳細も明かされる見通しです。

 民間にインフラ投資をどう促すのか、という疑問は残りますが、選挙期間中の提言では、トランプ氏のブレーンであるピーター・ナヴァロ氏とウィルバー・ロス氏が、税額控除を利用した民間のインフラ投資の活性化を提案していました。

 1兆ドルのインフラ投資に関して民間企業に1370億ドルの税額控除を与え、その仕事を担ってもらい、その税額控除分をプロジェクトに携わる労働者や企業から得られる税収で回収しようと考えたのです。

 これに関しては、利益率の高い儲かるプロジェクトは前掲の官民パートナーシップでもやってくれるが、利益率の低い地方のインフラの修繕などはやってくれないはずだ、という異論も出ています。国土が広いアメリカでインフラの老朽化が進んでいるため、全土でそれを立直すには官民連携だけでは足りないはずだと批判している人もいるわけです。

 他のアイデアでは、大統領選本格化の前に、クリントン氏は法人税改革でねん出した財源を用いて5年間で公共事業に2750億ドルを投資するプランを出していました。2500億ドルが政府の直接投資となり、250億ドルがインフラ銀行設立のために使われます。この銀行から公共設備を改修する民間企業に融資を行うことを考えていたのです。

 気になるインフラ投資の方法に関しては、ブルームバーグ記事(2017/5/19)で説明が出ています(「米予算教書、インフラ支出10年間で2000億ドルを提案へ-関係者」)

  • 交通インフラ資金調達・革新法(TIFIA)の融資プログラム(各州や地方自治体のために連邦資金を活用)
  • 投資促進を目的に連邦補助金や融資の活用を検討
  • 資産リサイクリング:連邦政府が州や地方自治体に民間部門への公有資産リースを促すインセンティブを提供し、リースと引き換えに州などが受け取る前払い金を資金不足の他のプロジェクトに活用する

 これらの政策に関して、OMB高官は「米国内のインフラの大半は州や地方自治体、民間が所有するか、これらの管理下にある。トランプ大統領の計画には、州などが連邦政府に頼らずに自前で資金を確保するよう促す狙いがある」と述べたことが報じられています。

 現在、行政管理予算局(OMB)が米国政府が行うインフラ投資の規模の大枠を決めているわけですが、この金額に関しては4月20日にマルバニー局長が述べた数字と同じです(同日にマルバニー氏はこの計画が結実するのは今年の秋以降になるとも述べていた)。

トランプ政権のインフラ政策説明動画

 これに関しては、ホワイトハウスHPにその中身がよくわかる動画が公開されています(「アメリカのインフラを再建するトランプ大統領の計画」6/8)。

 その動画を埋め込み、訳文を掲載してみましょう。

(出所:President Trump’s Plan to Rebuild America’s Infrastructure | whitehouse.gov

「米国のインフラを再建するトランプ大統領の計画」

米国のインフラ再建は経済成長と雇用の創造を促進するトランプ大統領の主要政策の柱だ。
米国のインフラが世界(ランキングで)12位になったことは容認しがたい。

どの米国人も道路、鉄道、港、空港を頼りにしている。トランプ大統領は未来の世代に負担を押し付けることなく、この問題に取り組むことを公約した。

インフラ投資の期間短縮(10年⇒2年)

トランプ大統領の規制改革は成長と投資を促進する。

投資を一気に進めるために、大統領はこれらのインフラ計画を実行する期間を、許認可を得るための規制を削減することで10年から2年に大幅に縮める。 

我々の都市や州を再建するための民間資本を活かし、専門家を登用する。

大統領の計画は都市や州を再建するために民間資本と専門家を活用することでアメリカを活気づかせる。

地方インフラへの投資

大統領は我々の壊れた(インフラ)システムに1兆ドルの投資をすべく、2,000億ドルの予算をインフラ投資に計上した(※予算教書のこと)。

農村インフラへの投資は大統領の計画の主要部分だ。

変革的なプロジェクトでインフラ政策を見直す

大統領の計画は米国のインフラへの取り組みを変える大胆かつ斬新な変革的プロジェクトに投資する予定だ。

大統領の計画はスキルに基づいた見習い教育に焦点を当てた労働者への教育構想で未来のアメリカを準備する。

トランプ政権のインフラ投資の要点

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(出所:ホワイトハウスHP  President Trump’s Plan to Rebuild America’s Infrastructure | whitehouse.gov

  • インフラ資金:2000億ドル(22兆円程度)
  • 許認可を得る時間の削減:8年間
  • 地方インフラ投資:250億ドル
  • 地方インフラ投資への優先予算枠:1000億ドル
  • 変革プロジェクト(労働者教育):150億ドル
  • 2年間で教育実習を行う労働者の規模:100万人

トランプ大統領の計画はこれらの課題に直接的に取組み、米国インフラを世界一にするための新政策を実施する。

※トランプ政権は10年間で1兆ドル(110兆円規模)のインフラ投資を実現することを目指し、そのうち2000億ドル(22兆円)程度を政府予算で実現する予定。

インフラ投資のための諮問委員会を新設

 しかし、インフラ投資に関しては「言うは易く、行うは難し」という一面もあるようです。

 ニューズウィーク日本語版(2017/5/2)ではプロジェクトの中には「準備改良」とされても、すぐに開始できない案件が多いと書いています(2017/5/2「トランプ大統領のインフラ計画 「準備完了」でも未着工の理由」※出元はロイターの模様) 

北米建設労働組合(NABTU)は、1月23日にショーン・マクガービー会長がトランプ大統領に面会した後、同組合は橋梁、パイプライン、水道など計26件のプロジェクトのリストを提出。政権移行を支援したオハイオ州のデベロッパー、ダン・スレイン氏がまとめたもう1つのリストには、内陸水路や港湾からFBIの新本部に至るまで、あらゆる分野のプロジェクト51件が含まれている。

 米国は「合衆国」なので、大統領の裁量範囲だけではどうにもならず、インフラ事業には州の認可が必要になることが多いため、トランプ政権は実行速度を上げる道を模索しています。

「大統領のインフラ整備計画の大半は、規制や認可の合理化によって実行可能なすべてのプロジェクトを迅速に推進させることに重きを置いている」とホワイトハウスの報道官の1人は語る。

 ニューズウィーク誌が着目した事例はポセイドン・ウォーター社が提案した、カリフォルニア州ハンチントンビーチに海水脱塩プラントを建設する計画の遅延です。

 このプランが最初に提案されたのは1990年代末。認可取得へのプロセスが開始したのは2000年代初め。

 しかし、このプロジェクトを2006年に承認したハンチントンビーチ市は、複数の州機関から24もの許可を得る必要がありました(汚染物質排出防止システムに関するサンタアナ地域水質管理委員会の認可など。そのほか、州海岸管理委員会や州土地委員会、カリフォルニア海岸管理委員会からの認可も必要とされた)。 

 やはり、アメリカでも許認可行政があります。

  日本でも道路を開通しようとする時に、県が担当する領域と市が担当する領域の二つがあって両者の意向が合わないことがあります(片方がOKでも片方がダメだと道路が開通しなくなる)。

 米国は「合衆国」なので州にも大きな権限があります。米国憲法の判例でも、中央政府の権限と、州政府の権限をめぐって絶えず争いが繰り広げられてきました。

 こうした問題があるため、許認可行政の見直しが必要になります。

 6月10日のロイター記事(2017/6/10)は「トランプ氏、インフラ案件認可プロセス加速へ」と題した記事で、同政権の許認可行政見直しの取り組みを紹介していました。

 トランプ氏が「驚くほど緩慢かつコストや時間のかかる認可プロセスが、必要に迫られたインフラ刷新における最大の足かせのひとつになっている」と述べ、「ホワイトハウスが『大規模な認可プロセス改革』を進め、インフラ整備のプロジェクト担当者を支援する諮問委員会を新設する方針を明らかにした」と報じています。

 具体的には、認可の過程を確認できるデータベースをつくることで、許認可が進んだのかどうかを誰もがチェックできるようにします。そして、期限を守らず、計画を遅らせる「お役所仕事」をしている政府機関に厳罰を科す方針だとされています。

 やはり、アメリカでも許認可行政がインフラ投資の実現を阻む壁になっているわけです。 

米国のインフラ劣化に全米土木学会が警鐘

  トランプ政権の公共投資計画の背景には、米国のインフラが劣化しているという認識があります。2月にはオロビルダムが決壊しましたが、この種の問題は2013年の米国土木学会(ASCE)のレポートで取り上げられていました。

 アメリカの場合、インフラをつくった時期から数十年がたち、更新が必要な時期にさしかかっています。そこに、トランプ政権が出てきたわけです。

 前掲のレポートではインフラ劣化の状況や必要な投資額等が具体的に試算されています。

 こうした学会の試算がトランプ政権のインフラ投資に反映される可能性もあるので、それを抜粋して翻訳・紹介してみます(出所:ASCE | 2013 Report Card for America's Infrastructure)。

※このレポートではインフラの状況を通信簿にたとえA、B、C、D等の評価を行っています。だいたいDなので、これは、トランプ政権の「インフラはぼろぼろ」という認識と合致しています。

ダム:評価D

84000のダムの平均年齢は建築から52年だ。

・・・

高い危険性を抱えたダムは増え続け、2012年には14000に達した。欠陥のあるダムは今や4000以上だ。

国家ダム安全協会の高官は、これらの致命的で高度な危険性を持つダムの老朽化補修には210億ドルの投資が必要だと見積もっている。

飲料水:評価D

21世紀に入り、我々の飲料水に関わるインフラの多くは、その耐用年数の終わりにさしかかっている。

アメリカの中で、一年あたり24万の給水本管の破裂が見込まれている。

それぞれのパイプが補修に要するコストを想定すると、その額は1兆ドル以上になると見積もられている。これは米国水道協会の試算だ。

・・・

アメリカの飲料水の品質は世界的に見て高い。しかし、給水本管とパイプにはつくられてから100年以上のものがしばしばある。それらには補修や交換が必要だ

危険廃棄物:評価D

国が危険廃棄物と汚染による工場跡地の清掃に成功したことは否定しがたい。

しかしながら、工場跡地の浄化のための年間の資金融通において、5億ドルもの不足が見積もられている。というのは、国家の優先事項リストの中には1280の工場跡地が残されているからだ。ほかにもまだ知られていない跡地があることも認識されている。

40万以上の工場跡地に関して、浄化と再建設が必要とされている。

堤防:評価D-

全米50州とワシントンD.Cで100000マイルもの堤防があると見られている。

・・・

公共の安全はこれらの建築物の老朽化リスクにさらされている。その補修と堤防再建の費用はざっとみて1000億ドルだ。これは堤防の安全に関する国家の委員会の試算だ。

しかしながら、その投資の見返りも明らかになっている。堤防は、2011年に1410億ドルもの洪水の被害を防いでいるからだ。

固形廃棄物:評価B-

2010年にアメリカは2億5000トンものゴミを生み出した。

8500万トンのゴミはリサイクルや肥料になった。

再利用率は34%。1980年は14.5%だったから二倍以上になった。

廃水:評価D

国家の廃水と雨水処理のシステムのためには、今後20年間で累計2980億ドルの設備投資が必要だ。

航空:評価D

・・・

連邦航空局は2012年に、空港の混雑と遅延による損失を220億ドルと見積もった。

もし連邦がこの水準を維持するのなら、連邦航空局の試算によれば、混雑と遅延の損失は2020年に340億ドル、2040年には630億ドルに達する。

橋:評価C+

・・・

累計で9分の1の橋は構造的な欠陥を抱えている。我が国の607380の橋は平均で築42年になる。

連邦高速道路局は、2028年までに未処理の(欠陥)橋を取り除く費用に我々は年あたり205億ドルの投資を要すると試算したが、実際には年あたり128億ドルしか使われていない。

道路局は連邦と州、地方政府のために橋への投資を年あたり80億ドル増やそうと挑戦した。全米では欠陥のある橋のために760億ドルの投資が必要だと認知させようとした。

 しかしながら、いたるところに構造的に欠陥のある橋が下り坂に続いている。

内陸水路:評価D-

大部分、内陸水路のシステムは1950年代以来、更新されていない。その半分はつくられてから50年以上がたっている。

・・・

そのシステムでは、平均で1日あたり52のサービス障害が発生している。

鉄道:評価C+

2012年にアムトラックは、最も多い公共交通機関利用者数である3120万人を記録した。これは2000年の二倍だ。

・・・ 

2010年だけで、貨物鉄道は3100マイルの線路を更新する。その距離は太平洋沿岸から大西洋沿岸までの距離に匹敵する。

2009年以来、貨物と上客のための設備投資は750億ドルを上回った。実際に、投資は資源価格が下がり、鉄道が頻繁に走らなくなる不況の間も増え続けている。

道路:評価D

42%のアメリカの主要高速鉄道は渋滞している。時間の無駄と年間の燃料における経済的損失は1010億ドルと見積もられている。

近年、その状況は改善されたが、連邦と州は地方の公共投資を年間910億ドル増やした。しかし、その投資はまだ不十分で、長期的に見た成果と交通状況は悪くなっている。

現在、連邦の高速道路の当局は、条件を改善させ、成果を出すために1700億ドルの投資が必要だと見積もっている。

学校:評価D

アメリカの公立校の約半分はベビーブーマーの世代を教育するためにつくられた。その彼らは今や引退しつつある。

・・・

学校づくりのための国の予算は減少し、2012年には100億ドルになった。それは不況期以前の水準の半分だ。学校の機能に関してコミュニティは重大な懸念を抱えている。

専門家は近代化と施設維持のために我が国の学校には少なくとも2700億ドル以上の費用が必要だと見積もっている。

エネルギー:評価D+

アメリカは老朽化した電線とパイプラインのシステムに頼っている。そのなかには1880年代につくられたものも含まれている。

・・・

しかし、電気需要の水準は高いままだ。エネルギーの利用形態は電気、天然ガス、石油などだが、それらは2020年以降も人口増加のために巨額になるだろう。

・・・

米国だけではインフラ投資計画を完成不能?

 途方もない規模のインフラ投資が必要なようです。

 そのうえ、インフラ投資の中には米国企業に技術がない分野もあるため、トランプ政権のインフラ投資は、内容次第では、諸外国の大手インフラ企業にとってのビジネスチャンスにもなりうるわけです。

 エキサイトニュース(2017/2/10)で、この問題に関する米専門家の声が紹介されていました。

 米国土木学会(ASCE)の予測では、インフラ建設やリニューアルに必要な投資額は2020年までに3兆6000億ドル(約409兆円)に上る見通しだ。記事によると、亜洲時報はこの問題に関する米専門家のコメントを取り上げており、交通輸送コンサルタントのKevin Coates氏は「現在の米国に高速鉄道と関連インフラを建設できる企業は存在しない」と指摘。一部のアナリストからは「米国企業の作業効率はトランプ大統領の建設計画に追い付けない。先進的な建設経験を持つ企業のほとんどが日本、ドイツ、中国だ」などとして、これら3カ国の企業との協力を模索すべきとの声が出ているという。(by Yamaguchi)

(出所:トランプ大統領のインフラ投資計画、米専門家「日本や中国企業との協力必要」 - エキサイトニュース

  前掲のASCEの投資必要額を全部足すと2020年までで3.6兆ドルもの規模になります。

 この数字を仮に18年~20年までの3年間で割ると、1年あたり1.2兆ドル。トランプ氏がぶちあげた1兆ドルのインフの規模よりも2割も多い金額になります。

 2016年2月9日にオバマ大統領が出した2017年の予算教書での「歳出」を見ると、その規模は4兆890億ドル。非国防関係費の総額が5630億ドルなので、オバマ氏が注力した社会保障予算を削っても、1兆ドル以上のインフラ投資を行うのはかなり難しそうです。ASCEの言う巨額のインフラ投資の必要額は何割か薄めざるをえないでしょう。

(以下のデータと図表の出所は、2017年度予算教書 | 外務省

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 しかし、その規模は大きく、米国のインフラ老朽化も進んでいるので、トランプ政権は実現までの時間を短縮せざるをえません。

 議会を通して法案を成立できるかどうかで、政権の実力が問われているわけです。

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