【VNM】ヴァンエックベクトルベトナムETFの株価は2018年にどうなる

米国上場ETFの一つであるVNM(ヴァンエックベクトル ベトナムETF)の可能性について考えてみます。

トランプ大統領訪問で注目されたベトナムの経済や政治のデータを踏まえ、今後の株価を考える材料を整理してみます。

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【VNM】ヴァンエックベクトルベトナムETFとは

まず、VNM(ヴァンエックベクトル ベトナムETF)の概要を『米国会社四季報 2017秋冬号』(東洋経済新報社)で見てみます。

  • 36のベトナム株から成るマーケットベクトルベトナム指数に連動
  • 金融、消費財、不動産比率高め(25%は他国企業)
  • 経費率は0.66%。1単位あたりの分配金は0.047~0.51ドル。

このETFに関しては、2017年8月下旬以降、株価上昇が続いていることが注目されます(ロイターHPから作成)。

vnm chart 2years_

縦線が入っているのは8月23日です。

わずか5か月でそれまでの株価下落分をほとんど取り戻してしまいました。

なかなかの急騰ぶりですが、長期で見ると、まだ2009年頃の株価水準にまでは戻っていません。

vnm chart long_

2011年の株価下落はなかなか激しかったことが分かります。

ヴァンエック社のファクトシート(2017/12/31のデータ)でVNMの国別の投資比率を見てみます。

  • ベトナム:72.35%
  • 韓国:10.36%
  • 日本:4.56%
  • 台湾:4.52%
  • 英国:4.05%
  • 中国: 3.97%

約72%がベトナムへの投資で、東アジアの四カ国が2割程度の投資先になっています。

そこに組み入れられた企業のセクター比率(%)を見てみます。

  • 生活必需品:19.1
  • 金融:17.2
  • 不動産:14.4
  • 工業:12.8
  • 一般消費財:12.5
  • 鉱業:7
  • 情報テクノロジー:6.3
  • ヘルスケア:4.6
  • エネルギー:4
  • 公共事業:1.7
  • その他:0.2

ETFの指標をブルームバーグのサイトで見てみます(12/10閲覧)。

  • 直近配当額 (12/27/2017):0.025
  • 直近配当利回り(税込):0.78%
  • 経費率:0.65%
  • 3ヶ月トータルリターン:25.85%
  • 1年トータルリターン:42.83%
  • 3年トータルリターン:3.75%
  • 5年トータルリターン:1.96%

5年トータルリターンが2%、1年トータルリターンが43%という、なかなかすごい数字が出ています。

急落や急上昇が繰り返されそうな銘柄ではありますが、ここ最近はすごい伸び率です。

あとはベトナム経済と南シナ海の政治リスク次第でしょうか。

ベトナム経済の現状

ベトナムは社会主義国でしたが、冷戦の終わり頃から中国と同じく経済面での開放政策(ドイモイ)を進めました。1986年の第6回党大会で市場経済システムの導入と対外開放からなるドイモイ(刷新)路線を続けています。

90年代には経済が好転し、1995~96年には9%台の経済成長率を記録しています。その後、アジア経済危機でダメージを受けたものの、2000年~2010年の平均経済成長率は7%台となり、高成長を続けました。

【経済指標】

  2014 2015 2016
名目GDP:億$ 1862 1932 2026
一人当りGDP:$ 2052 2109 2215
実質GDP成長率 6 6.7 6.82
失業率 3.4 3.4 3.3
物価上昇率 4.1 0.6 2.7

(出所:基礎的経済指標 | ベトナム(ジェトロ)

ベトナムは中所得国となり、2007年にはWTOに正式加盟し、TPP交渉にも参加しています。

ベトナムの国土面積は32万9241平方kmなので、大きさとしては日本(37万8000平方km)よりも少し小さいぐらいです。国連人口基金によれば人口は9340万人なので、それなりの規模がある国だと言えます。

日本は1992年から経済協力を再開し、ベトナムにとっての最大の援助国になっています。外務省HPに記載された円借款、無償資金協力、技術協力の値を足すと、2010年~14年で日本は以下の金額のODAをベトナムに供与しています。

  • 2011年:2860億円
  • 2012年:2131億円
  • 2013年:2117億円
  • 2014年:1215億円
  • 2015年:1928億円

(出所:ベトナム基礎データ | 外務省

最近のベトナム経済に関する報道では、経済成長に伴って農家の収入が増えたことが報じられています。

これは高度成長期の日本でもあった話なので、わりと当時の日本と似た情勢になっているのかもしれません。

ネットメディアのベトナムニュースは「年収480万円以上の農家、直近5年で5倍に」(2017/09/13)とベトナム農民協会中央委員会の記者会見の中身を報じています。

(2012~17年期における)「平均年収10億VND(約480万円)以上の農民世帯数が2万7000世帯となり、2007~2012年期の5倍に急増した」

「農家の数百万世帯は、平均年収が1億~10億VND(約48万~480万円)に達している」

「2012~2017年期に20万世帯以上の農家が貧困状態から脱出」

農家の所得分布は以下の通りです。

  • 1億~2億VND(約48万~96円)未満:220万世帯
  • 2億~3億VND(約96万~144万円)未満:77万5000世帯
  • 3億~5億VND(約144万~239万円)未満:34万世帯
  • 5億~10億VND(約239万~478万円)未満:16万5000世帯に上る。

そして、ベトナム国営企業の民営化が進められています。

(産経BiZ「ベトナム 国営406企業、20年までに民営化 持続的な経済成長へ経営効率化」2017.9.13 )

  • ベトナムは、国営企業の民営化を加速させる。
  • ブオン・ディン・フエ副首相は、政府による国営企業の株売却計画を8月に承認
  • 2020年までに国営企業406社について、政府が保有する株式を売却する
  • 17年は国営企業135社の政府保有株が売却される見通しだ。
  • 18年は181社、19年は62社、20年は28社。売却総額は64兆4600億ドン(約3094億円)
  • 国営ベトナム航空については19年までに政府保有株の86.2%のうち35.2%が売却される。
  • ベトナム空港公社(ACV)は20年に政府出資比率が65%となる
  • 国営ベトナム繊維・衣料グループ(ビナテックス)は、18年に政府が保有する株式53.5%を全額売却
  • ベトナム・エンジン農業機械総公社(VEAM)も政府は保有株式88.5%を完全放出

大規模な民営化を進め、経済の自由化に弾みをつけています。

次に政治面を見てみます。

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南シナ海リスクはトランプ訪問でやや軽減か

11月10日には、トランプ大統領がベトナム中部にあるダナンを訪れ、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に参加しました(トランプは11日に首都であるハノイへ入り、チャン・ダイ・クアン国家主席をはじめとしたベトナム最高指導部と会談している)。

トランプ氏のベトナムでの演説の要旨が毎日新聞に出ていました。

(出所:トランプ大統領 ベトナムでのアジア政策演説の詳報 2017年11月10日)

内容を見ると、貿易・通商に関わる議論が多いようです。

  • 米国が求める通商関係は公正と互恵が原則だ。米国はパートナーに対して今後、米国と同様、ルールに忠実に従うよう期待する。市場は双方にとって同程度に開かれていなくてはならない。
  • 米国はほとんど条件を付けることもなく経済を開放し、関税を撤廃し、外国からモノが自由に流入することを許してきた。だが、米国が貿易障壁を減らしても、他の国々は米国に市場を開放しなかった。

これはTPP脱退の理由の表明です。

  • 米国は知的財産を保護し、公正で平等な市場参入を保障するという点でWTOの原則を順守してきた。
  • しかし他の国々はダンピング(不当廉売)や補助金支給、為替操作、略奪的な産業政策に関わってきた。
  • ルールに従う人々よりも優位に立とうと、ルールを無視し、交易を計り知れないほどゆがませ、国際貿易の基盤を脅かした。
  • そんな慣行に米国は対処することができなかった。その結果、多くの人々が被害を受けている。

このあたりは主に中国や韓国への批判と読めます。

  • 公正で互恵的な貿易の原則を順守するなら、インド太平洋のどの国とも2国間の通商協定を結ぶつもりだ。
  • 米国が束縛されるような多国間協定には参加しない。
  • 「インド太平洋の夢」を実現するには、皆がルールを守らなければならない。今はルールが守られていない。

多国間協定はやらない。一国ずつFTAを結ぶと言っています。しかし、それって何年かかるんでしょうか。なかなか簡単には終わらなそうな話です。

  • 国家と関わりを持つ集団が経済的利益を得る目的で、米企業にサイバー攻撃を仕掛けるのを黙認しない。
  • 法の支配や個人の権利、航行の自由などの原則を守らなくてはならない

これも主にロシアや中国を対象にした批判です。

いろいろな要素がありますが、やはり、米国大統領が訪問する最大の理由はベトナムとの関係強化をPRし、南シナ海への中国の野心を抑止するところにあります。

ベトナムは南シナ海を巡って中国と係争

トランプ演説で「航行の自由」の話題が出てきましたが、ベトナムもまた、南シナ海における中国の海洋進出によって領土・領海を脅かされている国の一つです。

8月には中国船がベトナム漁船を襲撃した事件が報じられていました。

産経ニュース(8/24)ではベトナム漁業協会(VFA)が24日に「8月に入り、南シナ海で操業中の漁船4隻が中国から襲撃を受け、うち1隻が沈没したとして、非難する声明を発表した」ことを報じています。中国漁船による襲撃は、中国とベトナムが領有権を巡って対立を続けている南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島近海で行われました(「中国がベトナム漁船を相次ぎ襲撃、1隻は沈没 「魚を奪われ漁具壊された…」)。

VFAの報告によると、船体に「46102」と「56105」と記した2隻の中国船が18日午前、ベトナム漁船を襲撃。乗り込まれて魚を奪われ、漁具を壊され、船を沈没させられた。漁船の乗組員6人は、近くの僚船に救助され、20日に帰港したという。同様の襲撃が、4日、10日、13日にも相次いだとしている。

世界が北朝鮮の核ミサイル開発に目を奪われている間に火事場泥棒が続いているわけですが、これは東シナ海の問題を抱える日本にとっても他人事ではありません。

ベトナムは南シナ海の問題が深刻化したため、2017年に米国空母の寄港を受け入れることを決めました。

米艦隊は現在、シンガポール等に寄港していますが、かつての敵国であり、社会主義の国でもあるベトナムが、同じ扱いになるわけです。

近年は南シナ海問題をめぐって中国との対立が深まりましたが、ズン首相がいた頃の対立・緊張路線を弱め、最近は宥和路線を出してきています(フック首相は領土で妥協はしないとは言っていますが)。

1月12日にはグエン・フー・チョン書記長が訪中し、習近平主席と北京で会談しています(中国側は紛争棚上げと共同開発を訴え、中国側への取り込みを意図している)。

ベトナムは中国の軍事的な台頭に警戒を強めていますが、中国経済の影響も強いため、中国との経済的な利害関係も常に意識しています。同国としては日本からも中国からも経済的な利益を引き出したいはずです。

その一環として、本年1月には安倍首相が訪越し、両国のつながりが強化されています。1月16日にはベトナムで安倍首相と最高指導者であるグエン共産党書記長らとの首脳会談が開催されました。

安倍首相はこのたびの東南アジア歴訪では、トランプ政権の成立を視野に入れ「アジア太平洋の平和と安定」のために、各国を巡り、海洋における安保防衛協力の強化を訴えています。

17年1月16日の日越首脳会談ではTPP発効に向けた両国の連携や南シナ海の警備能力の強化に向けて合意がなされました(日経電子版「日越首脳、TPP発効へ連携 巡視船6隻供与 」2017/1/16)。

「【ハノイ=上林由宇太】安倍晋三首相は16日、ベトナムのハノイでグエン・スアン・フック首相と会談した。環太平洋経済連携協定(TPP)の早期発効で両国が連携し、自由貿易体制を維持する方針で一致。安倍首相は中国が進出を強める南シナ海の海上警備能力の強化に向け、新造巡視船6隻を供与する方針を表明した。インフラ整備など新たに約1200億円の円借款実施も伝えた。」

「日中韓やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の妥結に向けて連携を強化することも申し合わせた。」

11か国のTPPに関して、現在もベトナムと日本との間では話し合いが続いています。こちらもまた大きな争点です。

 ベトナムの指導部は3人体制(書記長、国家主席、首相)

最後に分かりにくいベトナムの最高指導部を見てみます。

ベトナムの指導部は最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長(73)、チャン・ダイ・クアン国家主席(61)、グエン・スアン・フック首相(63)の三名からなり、党内序列で言えば、国家主席が第二位、首相が第三位となります(主に国家主席は外交や安全保障を司り、首相は内政を担当)。

ベトナムの政治では、党書記長が一党独裁の共産党を仕切り、国家主席が軍事・外交を担い、首相は経済政策等の内政を担うことになっています。経済開放は進みましたが、一党独裁のままなので、ベトナム共産党の中央委員や政治局員にならないと政治的には出世ができません。

グエン・フー・チョン書記長

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チョン書記長はベトナムにおける長老的存在のように見えます。

現在73歳のグエン氏は1944年4月14日にハノイの貧しい農家に生まれます。

ベトナム戦争中に大学生活を過ごし、23歳の時(67年)にハノイ総合大を卒業しました。この年に共産党に入党し、党機関誌「共産雑誌」の編集局員を務めています。その後、29歳の時(73年)にグエン・アイ・クォック党高級学校政治経済学部大学院に入り、37歳でソ連に留学しました。

この人は結構、学究的な指導者です。

81~83年にソ連社会科学アカデミーに留学し、そこで助教授を務めた後、39歳の時に政治学の博士号を取得し、帰国しました。その後、91~96年まで「共産雑誌」の編集長を務め、48歳の時に党中央委員に就任しました。

50代になると、政治の仕事が増えてきます。

54歳の時(96年)にハノイ市党委員会副委員長に就任し、翌年にはハノイ市党委員会委員長になりました。

そして、55歳で党政治局員に昇格(党中央科学・教育委員会代表を務める)。

62歳の時(06年)に国会議長となり、11年以降(69歳)、現在まで党書記長を務めることになりました。チョン氏は94年、95年、03年、08年、15年に訪日しており、15年には訪米し、オバマ大統領との会談を実現させています。

人柄としては実直で誠実、調整型などとも評されていました。

就任前には当時、有望視されたズン首相の去就の問題がありました。ズン首相は経済面で実績を挙げ、中国とも対決したのですが、ベトナム共産党内に賛否両論があり、書記長にはなれるほどの支持を得られなかったのです。

チャン・ダイ・クアン国家主席

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チャン国家主席は軍人としての経歴を積み、現在は国家安全保障を担っています。

チャン氏は1956年10月12日にニンビン省に生まれました。

16歳の時(72年)に人民警察学院に入学し、その後、内務省文化外語学院に進学。そのまま内務省で仕事を続けていきます。

25歳から30歳頃(81~86年)に安全保障大学で学び、1987年(31歳)から参謀部長などを務めました。

90年以降、参謀安全保障局で要職をこなすかたわら、グエン・アイ・クオック学院やハノイ法律大学で学問を積んでいます。1996年に参謀安全保障局局長等の要職につきますが、この頃にもホーチミン国家政治学院で学問を並行しました。

00年(44歳)には公安省党委員会副書記、安全保障総局副総局長に任命されます。

06年(50歳)に少将となり、公安次官や党中央委員に就任し、翌年には中将に昇進しました。

そして、55歳の頃(11年)に政治の世界に参画します。まずは党政治局員となり、その後、ニンビン省から国会議員に当選しました(公安大臣に就任)。

56歳で大将になり(12年12月)、16年に国家主席となったのです。

97年と13年に訪日したこともあるようです。

経歴の中にある「政治局員」については説明が必要でしょう。

社会主義国家では軍隊は国の軍隊というよりは「党の軍隊」という位置づけになりますので、グアン国家主席も「政治局員」を経験しています。

共産党が軍を支配するために、一定の数の政治局員を軍に配置するシステムがあるわけです。

例えば、旧ソ連の原潜を舞台にした「レッドオクトーバーを追え」という小説(映画化もされている)では、潜水艦の艦長以下の軍人一同を監視する中央政府からのお目付け役として「政治局員」が描かれています(政治局員を暗殺し、潜水艦レッドオクトーバーが暴走するという筋書き)。

要するに、政治サイドから送られた軍のお目付け役だと考えれば分かりやすくなるのかもしれません。

グエン・スアン・フック首相

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グエン・スアン・フック氏は1954年7月20日にクアンナム省で生まれました。

73年(19歳)にハノイ国民経済大学に学び、78年(24歳)に卒業後、クアンナム=ダナン省経済管理委員会幹部を務めています。

80年(26歳)からクアンナム省人民委員会で仕事を始め、国家行政学院で行政学を学んでいます(ベトナム共産党に正式加入したのは1983年)。

90年代にはクアンナム省人民委員会、同省委員会の常務委員会等の要職を歴任し、1999年(45歳)にクアンナム省人民委員会主席となりました(04年まで)。

06年(52歳)で党中央委員となり、政府監察院副総裁に就任。

政府官房筆頭副長官(06年)から政府官房長官(07年)に昇格。

11年に党政治局員となり、クアンナム省から国会議員として選ばれました。同年に47歳で副首相となり、2016年に首相となります。

過去、四度も訪日しています(04年、11年、12年、14年)。トランプ政権成立後、17年5月に訪米し、首脳会談を行いました。

経済開放路線(ドイモイ)や親日外交等は今後も継続されるでしょう。

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