インフラ

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インフラ投資

トランプ大統領は2月12日にインフラ投資計画を発表しました。

今後、米国議会は、これをたたき台にして、インフラ投資法案の実現に取り組みます。

この記事では、大統領が19年度予算教書と共に議会に送った10年間で1.5兆ドルのプランの中身を紹介してみます。

(出所:Legislative Outline for Rebuilding Infrastructure in America

インフラ投資計画の経緯

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米国ではインフラの老朽化が深刻化しているため、インフラ投資の充実を求める声が上がっており、16年大統領選では、トランプ氏とヒラリー氏の双方が善処を公約していました。

2018年の2月に入ると、トランプ大統領は全体のインフラ投資目標を1.5兆ドルとし、そのうち2000億ドルを連邦政府から拠出する構想を訴えました。

残りの1兆3000億ドルは州や地方政府の予算、民間資金で賄う予定です。

米国のインフラの老朽化が問題視されているわけですが、これに関して、アメリカ土木学会(ASCE)は米国のインフラについて総合で「D+」という厳しい評価を下しています(infrastructure_report_card)。

ASCEの橋、道路、ダム、飲料水、港湾、空港、鉄道、学校の状態についての査定の経緯は以下の通りです。

2005200920132017
航空D+DDD
CCC+C+
ダムD+DDD
飲料水D-D-DD
エネルギーDD+D+D+
有害廃棄物DDDD+
内陸水路D-D-D-D
堤防D-D-D
CC+
公立公園などC-C-C-D+
レールC-C-C+B
道路DD-DD
学校DDDD+
固形廃棄物C+C+B-C+
トランジットD+DDD-
排水D-D-DD+
総合評価DDD+D+
補修費用$1.6T$2.2T$3.6T$4.59T

ASCEは米国がインフラをアップグレードするための費用として、10年間で4.59兆ドルという、とほうもない金額を挙げています。

トランプ政権のインフラ投資の概要

トランプ政権のインフラ投資の大枠は以下の通りですが、その詳細を整理してみます。

  • 投資規模の総額:10年間で1.5兆ドル
  • 州・地方政府と民間資金:10年間で1.3兆ドル
  • 連邦政府支出:10年間で2000億ドル

このうち、連邦政府支出の内訳は以下の通りです。

★州と地方、民間投資を促進するための連邦インセンティブプログラム:1000憶ドル(50%)

インフラ事業のプロジェクトスポンサーに、収益の創出、時間の短縮、業績向上を促すインセンティブを付与する。そのインセンティブの原資は、米国運輸省(DOT)、米国陸軍技術者協会(USACE)、環境保護局(EPA)を通じて管理される。この資金は政府の計画に沿って各州に提供される。

★農村インフラ計画:500億ドル(25%)

農村地域の交通、水資源、飲料水、排水、ブロードバンド、エネルギーインフラプロジェクトへの設備投資を助けるための連邦資金。

具体的には「交通手段」(道路、橋、公共交通機関、鉄道、空港、海上と内陸水路、港。ブロードバンドなど)や「水と廃棄物処理」(飲料水、排水、雨水、土地再生)、電力(政府の発電、送配電設備)、水資源、洪水リスク管理、水供給などが範囲に入る。

★変革プロジェクト:200億ドル(10%)

輸送インフラ、清潔な水の確保、商業スペースの確保、電気通信インフラ、エネルギーインフラ等に用いられる。デモンストレーション、プロジェクト計画、資本建設をサポートする。

★インフラ資金調達プログラム:200億ドル(10%)

既存の連邦与信プログラムを増やし、プライベート・アクティビティ・ボンド(PAB)の利用を拡大するのに60億ドルを投下。「PAB」は償還原資を特定の収入減に限定する債券(レベニュー債)の中で民間団体の資金支援のために発行される債券のこと(例:民間団体が運営する鉄道のためにレベニュー債を発行し、鉄道の収入で債務を償還するなど)。

残りの140憶ドルは、交通社会資本資金調達及び革新法(TIFIA)、鉄道の修繕と改善のための融資(RRIF)、水インフラファイナンスと革新法(WIFIA)、辺境農村サービス(RUS)などの既存の信用供与プログラムを拡大するために用いられる。

★連邦資本回転基金:100億ドル(5%)

連邦所有の民間の不動産の購入、建設または改築の資金を調達するためにリボルビング資金を確立する。長期で民間にリースされた資産を連邦政府が再購入する。民間に公的施設をリースする際のルールも変更。リースされた民間団体が免税を受けられるようにする

※そのほか、不要な国有資産の売却や、政府が現在の石油、ガス、石炭などの収入を財源としてインフラ投資に充当する「国有地インフラ基金」を国務省内に設立する

・・・

なかなか幅広い分野に向けて計画を練っています。

それを実現できるかどうかは別の問題ではありますが・・・。

インフラ投資の財源ねん出策とは?

トランプ政権は、インフラ投資の財源ねん出策も明かしています。

その中身は、意外と日本人にとっては「おなじみ」の手法でした。

  • 連邦の地上交通インフラに長期的で持続可能な資金提供を保証するために連邦自動車燃料税を引き上げる。
  • 補助金を支給する際に州や地方政府に歳入増を求める(不動産税やインフラ利用料の引上げ等)
  • インフラストラクチャー(高速道路など)の所有者と運営者が確実に料金を徴収する。

自動車燃料税とインフラ使用者への料金徴収。

米国では高速道路が「原則無料」となっているところが多いので、まだ料金聴取を強化できる余地が多分に残っています。

一応、米国の高速道路建設の歴史を振り返ると、以下の経緯となります(国土交通省「諸外国における高速道路料金の状況」)

  • 1956年:アイゼンハワー大統領が州際国防道路法(National Interstate and Defense Highways Act)に署名。税金で無料道路を整備。
  • 1991年:ISTEA法(92~97年)有料道路の支援を開始。
  • 1998年:TEA-21法(98~03年)条件付きで州際道路を有料道路にすることを認めた。
  • 2005年:SAFETEA-LU(04~09年)  条件つきで州際道路の新規路線の建設費の財源として通行料金徴収を認めた。
  • 2009年:全米陸上交通インフラ資金調達委員会は2020年までに連邦政府の陸上交通整備の財源として燃料税から対距離課金へ移行すべきと最終提言。
  • 2012年:MAP-21法(12~14年)により、新設の州際道路を有料道路として整備することが本格的に認められた。

トランプ政権の計画では、州間道路の通行料を柔軟にし、インフラの通行料収入を再投資します。

既存の州間高速道路の有料道路に柔軟性を持たせることで、州が地上交通インフラに投資するための追加収入が生まれるからです。

例えば、1987年の地上輸送と統一移転支援法(STURRA)に基づいて連邦政府の承認を受けた有料施設は、その建設、再建、運営、債務返済のためにのみ通行料収入を使用することができるのですが、これをもっと柔軟に料金を用い、その他の重要な高速道路プロジェクトを進めようとしています。

そのほか、インターステート・ハイウェイ(州際道路)の建設では、今までは連邦政府負担が8割、州政府負担が2割。鉄道は連邦と州が5割ずつ負担していましたが、トランプ政権は、連邦負担を2割に削減し、州と地方政府の負担は8割に増やす構想を明かしています。

米国にも歳入実績が当初予算を下回っている州は多いので、この負担案の変更は道路や鉄道建設に冷や水を浴びせる危険性もあり、前掲のインフラ投資拡大の案とは逆行しているようにも見えます。

許認可行政の短縮

トランプ政権の政策の中では規制緩和やお役所仕事の迅速化も大きな眼目になっています。

同政権は、平均10年かかっていたインフラ計画の許認可を2年に縮める方針を打ち出しました。

そのために環境規制を緩和したり、新たな政府機関が一括して申請に対処する構想を明かしています。

さらには、インフラ投資の増加から生じる需要の増加に対応するために、職業訓練プログラムの強化もうたわれました。

いろいろと盛りだくさんなのですが、このインフラ投資には「財源」という制約要因が大きく立ちはだかっています。

(減税法案の成立に伴い、連邦政府の債務残高(GDP比)は8割弱の水準から10割近くにまで増える(10年後)と見られている)

また、元々、財政赤字の拡大に抑制的な共和党と、財政出動の肯定的な民主党との溝は大きく、中間選挙を前に、両者が合意に至るのはなかなか困難です。

上院の議席構成は、共和党51人、民主党47人+無所属2人なので、2人以上の造反が出れば、共和党は政策実現ができなくなることもボトルネックとなるでしょう。

今後、インフラ投資を現実化する具体的なプランが議会で、どう議論されていくのかを注視したいものです。

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