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ボルトン大統領補佐官は「一つの中国」再交渉を目指す

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米国では、安全保障を担当する大統領補佐官にジョン・ボルトン氏(元国連大使)が指名されました。

この記事では、ボルトン氏の経歴を紹介し、2018年の展開に影響を与えそうな過去の提言を日本語訳してみます。

ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)の経歴

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新たな大統領補佐官(安全保障担当)の指名を得たジョン・ロバート・ボルトン氏はメリーランド州ボルチモア出身です。

この人は、ブッシュ(Jr)政権の時代に国連大使を務めていました

その経歴を見てみます。

  • 48年:11月20日生(69歳)。
  • 70年:イェール大卒。
  • 74年:同大で法務博士となる。
  • 81~89年:国際開発庁や司法省で勤務
  • 89~93年:ブッシュ(父)政権で国務次官補
  • 94年:アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所副所長
  • 01~05年:国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)
  • 05~06年:国連大使

国連大使の時代に、ボルトンは06年の北朝鮮への制裁決議の採択や、同国の資金源を断つバンコ・デルタ・アジアの不正資金の凍結に尽力しました。

親台湾、親イスラエルの外交政策で、台湾に対しては国連再加盟、イラン核合意の見直しを提唱しています。

日本に対しても国連常任理事国入りを支持。

「国連などというものはない。あるのは国際社会だけであり、それは唯一の超大国である米国によって率いられる」

そう提唱しながら国連大使となった異例の人材でもあります。

この記事では、ボルトンの外交・安保政策のうち、特に日本に影響が大きい北朝鮮政策と台湾政策を紹介してみます。

ボルトンの北朝鮮政策:日韓核武装を否定せず

ボルトンは2013年2月19日に、米紙ウォールストリート・ジャーナルに「北朝鮮の脅威にどう応えるか」と題した論文を寄稿しています。

そこでは、オバマ政権が北朝鮮の核保有を半ば受入れ、抑止や封じ込めでよしとする動きがあるとしたのを「敗北主義」と断じ、北朝鮮を増長させていると批判しました。

北朝鮮の核を破壊するための軍事攻撃の犠牲が大きさを危険視し、北朝鮮にエネルギーの9割以上を供する中国に圧力をかけ、金正恩政権を崩壊させる圧力をかけるべきことを論じました。

その論文から、ボルトンの北朝鮮政策を見てみます。

(※前半のオバマ政権批判は割愛します)

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「北朝鮮の脅威にどう応えるか」(How to Answer the North Korean Threat)

(前略)

残念ながら、中国は独自の論理に従わず、北朝鮮の政策はずっと統合失調症であった。

中国は、北朝鮮の核開発計画を非難している。

しかし、特に北朝鮮のエネルギーの90%と相当量の食糧と人道的援助を供給しながらも、卓越した影響力を行使していない。

中国の真の恐れは、北朝鮮を圧迫し、政権が崩壊すれば、北朝鮮の貧しい亡命者の洪水が中国に押し寄せ、中国の鴨緑江境界線にある米軍の脅威という2つの脅威を引き起こされるということだ。

両方の恐怖は誇張されている。

まず、米韓日は、北朝鮮崩壊後の難民危機の予防や軽減のために可能な限り、すべての措置を取ることを明確にすべきである。

金政権が崩壊した後も北朝鮮の人口を安定させ、十分な援助を行う徹底した計画だ。それは人道的な理由だけでなされるものではない。

第二に、米国は軍隊を鴨緑江に沿って展開させる必要がないし、それを望んでいない。

何年もの間、ワシントンは米軍を非武装地帯から、アジア太平洋に展開可能な半島南端付近に移動してきた。

中国の指導者は、その展開を歓迎しないかもしれないが、それは鴨緑江沿いの米軍に直面するよりはましだと感じている。

北朝鮮は、日本の敗北後、モスクワとワシントンの「一時的な」協定の不自然な遺物だ。

北朝鮮には、独立国家としての歴史的な正統性(合法性)はない。

市民が自由意志で建国に同意したことがないからだ。

何年もの間、2300万人が飢餓に直面している。

我々は、北朝鮮が国を開こうとしていると繰り返し聞いたが、それはありえない。

北朝鮮の体制は、開放体制下で生き残ることはできない。

しかし、それは、ほぼ実用可能な核兵器を持っている。

(南北)統一を支持する中国の説得が最良の答えだ。

もし中国が反対するならば、中国の恐怖の中で最悪の順位がつけられている日本と韓国の核保有が現実化する可能性がある。

統一戦略は数十年前に打ち切られていたはずだが、全否定よりは、実現の遅れのほうがましである。

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前掲の「統一戦略」というのは、「中国に北朝鮮支援を打ち切らせ、韓国主導の朝鮮統一を実現し、米軍は朝鮮半島南端にまで引く」というプランです。

そして、それを認めない場合、北朝鮮抑止の具体策として、日本と韓国の核武装をも否定しない、と主張しています。

こうしたボルトンの考え方が、今後、2018年の北朝鮮対策に反映される可能性があるわけです。

ボルトンは「一つの中国」再交渉を提唱

次に、ボルトンの台湾政策を見てみます。

ボルトンは、17年1月に、沖縄米軍の一部を台湾に移転するプランをWSJ紙で提言し、「一つの中国」の見直しを提唱しています。

WSJ紙の記事が台北タイムズ(2017/1/20)に転載されていました。

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「一つの中国」の再交渉(Revisiting the ‘one China’ policy)

今月(17年1月)の初めに、中国は空母「遼寧」に台湾海峡を通過させた。

少なくとも、これは、蔡英文・台湾総統がトランプ氏(当時は就任前)に当選祝いの電話を入れたことへの対応の一部であった。

これが中国の手法だ。

(台湾総統が)中国にとって受け入れ難い電話をすれば、(台湾の)裏庭に空母を送る。

南シナ海が中国の1省であると宣言し、国際海域に軍事拠点をつくる。

東シナ海に挑発的な防空識別圏を設定する。

台湾での年次演習後に帰ろうとするシンガポール船が香港に寄港した際に軍事装備品を差し押さえたりもする。

上海コミュニケ発表から45年が過ぎた今、「一つの中国」政策を見直し、米国がその意義について、考え直す時が来ている。

トランプは、(「一つの中国」政策は)再交渉できると言っていた。

その交渉は、米国が中国に譲歩するものであってはならない。

我々は、1972年ではなく2017年(の情勢)を反映し、戦略的一貫性のある優先順位を決める必要がある。その優先順位には、貿易や通貨政策以上のもの、特に台湾政策が含まれるべきだ。

ますます激しくなる中国の反応がどうなるかを見てみたい。

持続的に唱えられる「一つの中国」政策は、中国が好む交渉政策だ。

響きのよいスローガンを選び、外国の対話者にそれを受け入れるように説得する。

その時、それを中国に都合よく再定義し、不本意な外国人にそれを強要する。

北京政府にとって「一つの中国」は、中華人民共和国のみ唯一の合法的な 「中国」であることを意味する。

「三つのNO」が「台湾独立」「二つの中国」「一つの中国と一つの台湾」の否定であるように。

米国は今まで、あまりにも長く、不本意にも、この言葉の遊びに付き合わされてきた。

しかし、上海コミュニケでさえ、米国は、全ての中国人が「中国は一つしかない」「中国は台湾の一部だ」と信じるという主張を「認識」(acknowledges)しただけだった。

台湾では、数十年を経て、世論調査で、自分を「中国人」だと考える人は次第に少なくなっている。

誰が、彼らに考えを変えることを許したのか。

米国は常に、中台の再統一は、平和的かつ双方の合意のもとでなされるべきだ主張している。

しかし、67年が過ぎても双方の合意は存在していない。

特に、中国が乱暴に再解釈した「一国二制度」を香港に強制している様を見れば、今後、双方の合意は実現しえないことが予見できる。

中国とその友邦は、台湾は崩壊すると予測したが、そうはならなかった。

蒋介石の1949年の退去は、最終的な降伏前の一休みではなかった。

上海コミュニケも、元大統領ジミー・カーターが台湾を穏やかに説得した中華民国の認知の削除(1978年)も、そうではなかった。

米国議会は1979年の台湾関係法を制定した。

次第に台湾は民主主義になる。

1996年の李登輝総統選、2000年の野党(民進党)への平和的で民主的な権力移譲、2008年と2016年の平和的な政権交代で民主化がなされた。

台湾には思想の自由を持つ人々がいる。

米国は今、何をなすべきか。

外交活動を加速させ、米国の利益に役立つ具体的な措置を取ることが可能だ。

そこには、中国の最近のシンガポールの軍事装備の没収によって引き起こされたものがある。

強奪者の警告:それは「北京は承認しない」という言葉だ。

米国は、台湾に対する武器の売却を増やし、有利な財政的条件を交渉して台湾に兵員と装備を再配備すれば、東アジアの軍事態勢を強化できる。

我々は、マッカーサーのように台湾を「不沈空母」と見なす必要はない。

米台相互防衛条約の再交渉も必要ない。

基地駐留の権利とそこに関わる活動は、完全な軍事同盟を意味しないからだ。

我々の活動は、シンガポールの手法とたいして変わらないが、それらはより広範囲に及ぶ可能性がある。

台湾関係法は幅広く作られており、すでにそうした関係を含んでいるため、新たな権限法は不必要だ。

確かに、米軍のプレゼンスは、上海コミュニケに対する違反だと主張する者もいるだろう。

しかし、その際には台湾関係法の文言が優先されるべきだ。

この地域の情勢は、中国が主張する1972年の状況とは根本的に違っている。

アジアの近隣諸国は、中国の軍事力と好戦性が大きく高まっていると見ている。

もっと重要なのは、中台関係に恒久的な変化が生まれ、上海コミュニケの大部分が時代遅れになっていることだ。

国際法における事情変更の原則に沿って現状を見れば、1972年と違った立場に立つことは正当化できる。

台湾の地理的位置は、沖縄やグアムよりも東アジアの大陸本土(※中国を意味する)や南シナ海に近く、有事に米軍が即応展開する際に広範な柔軟性を与える。

米国は、少なくとも、いくらかの米軍を沖縄から台湾に再配備することで、日本との緊張を緩和することも可能だ。

そのうえ、現在のフィリピン指導部を見るならば、予見できる未来に、米比の軍事協力を強化する機会はあまりなさそうだ。

(※訳者注:17年初の頃の米比関係は悪かったが、その後、トランプードゥテルテ間の米比関係は良好に展開した)

「航海の自由」の維持、軍事的な冒険主義の抑止、一方的な領土併合の阻止。それは、東アジアと東南アジアにおける核心的な米国の利益だ。

現在では、1972年とは逆に、台湾との軍事関係の緊密化が、これらの目的を達成するのに重要な一歩となるはずだ。

中国が異議を唱えるならば、むろん、話し合う余地はある。

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トランプ氏は、2016年に「日韓の核武装もありえる」「一つの中国の再交渉もありえる」と主張しましたが、このどちらも、ボルトン氏の見解とよく似ています。

17年にはティラーソン国務長官が「一つの中国」再交渉をやめ、「一つの中国」を認める既定の外交路線に戻し、米中対話の路線を敷きました。

しかし、ティラーソンは3月に解任され、トランプ氏は元の対中強硬策に舵を切りつつあります。

今後、親台湾の外交路線や「一つの中国」再交渉などが始まることが予想できます。

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