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米国大統領経済報告(2018年版)の要点

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米国大統領経済報告(2018年版)は、経済情勢に関する大統領の判断を示す報告書です。

大統領府からは「一般教書」と「予算教書」とあわせて、「大統領経済報告」が年に一回ほど連邦議会に提出されます(例年では2月頃)。

前掲の三種の文書が「三大教書」と呼ばれており、米国政治の動向を判断する上で、非常に重要な文書とみなされています。

2018年には、2月21日にトランプ政権初の「米国大統領経済報告(2018)」が公表されました。

この記事では、その要点を整理してみます。

米国経済の見通し:2027年まで

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大統領経済報告(2018年版)は17年を振り返り、減税や規制緩和等の「成長に向けた政策課題(pro-growth policy agenda)」が「経済への大きな信頼と楽観主義をもたらした」と総括しました。

そして、今後も3%超の成長が続くと見ています。

【米国経済の今後の見通し】

(単位は%、実質成長率=実質GDP成長率、物価上昇率=消費者物価上昇率。実質成長率と物価上昇率は第4四半期と前年第4四半期との比較を%で表示)

実質成長率 物価上昇率 失業率
2016 1.8 1.8 4.9
2017 2.5 2.1 4.4
2018 3.1 1.9 3.9
2019 3.2 2 3.7
2020 3.1 2.3 3.8
2021 3 2.3 3.9
2022 3 2.3 4
2023 3 2.3 4.2
2024 3 2.3 4.3
2025 2.9 2.3 4.5
2026 2.8 2.3 4.7
2027 2.8 2.3 4.8

これは最終章の図表ですが、分かりやすさを考え、冒頭に配置しました。

第1章 租税と成長

  • トランプ政権の税制改革(減税)は米国の労働者と企業に利益をもたらし、大きな繁栄への道を拓くものだ。
  • この減税は、今後3年間でGDPを1.3~1.6%引き上げる。
  • 所得税減税は中間層の負担を減らし、経済成長にもプラスになる。
  • 法人税減税は諸外国と比べた時、米国企業にとって競争上、不利な条件を是正する。
  • 大統領経済諮問委員会(CEA)は法人税減税によって米国労働者の年間賃金が4000ドル押し上げられると予測。
  • 税制改革の影響を受けて、現在(18年1月)までに370社以上の企業が投資、昇給、賞与その他の給付を発表した。これは410万人の労働者が対象となる。
  • CEAは18年1月までに減税法案に関連した新たな投資プロジェクトの金額が190億ドルにのぼることを確認した。
  • 法人税の実効税率を35%から21%に引下げ、設備投資の即時償却を導入することで、長期的にGDPを2~4%ほど押し上げる

【法人税率:OECD諸国と米国の比較】

【法人税実効税率:OECD諸国と米国の比較】

第2章 経済の自由化を進める規制緩和

  • オバマ政権の過度の規制は、過去8年間の経済成長率の低迷に影響を与えた可能性が高い。
  • 過度の政府規制がアメリカ経済に影響を与え、生産性を低下させ、起業家精神を鈍らせている。
  • トランプ政権下で3件の規制が新設され、67件の規制が緩和された。
  • 「新規制1件に対し2件の既存規制緩和」(two-for-one)という目標を上回り、米国経済の自由化が進んだ。
  • これは81億ドル以上のコスト節約につながった。

【OECD諸国:市場への規制の多い国のランキング】

【米国の規制の数の推移】

第3章 中産階級を維持する労働市場政策

  • 労働参加率は62.8%(2017年)であり、これは1990年以降低下を続ける中で最も低い水準だ。
  • 特にプライム・エイジ(25~54歳)の労働参加率は低い状態(81.9%)が続いている。

【年齢別に見た米国の労働参加率】

  • 今後の課題は、リーマンショックの後、続いている中間層の所得回復の停滞だ。
  • 現在の米国では、一人当たり実質GDP成長率の伸びが第2次大戦後の経済サイクルの中でも最も遅い

【米国の経済成長率の推移】

  • 中間層の所得水準はリーマンショックが始まる直前の水準を上回ったが、その回復速度が過去の景気サイクルと比べると極めて遅い
  • 労働参加率回復のための改善策は、1)養成型職業訓練の拡充等による労働者への技能付与、2)オピオイド供給の規制、3)社会保障障害保険(SSDI)等の公的セーフティネットの適正化等
  • 今後、政権は議会と協働し、育児休業給付等の有給創設を含む働く家庭の支援に取り組む。

第4章 生産性を高めるインフラ投資

  • トランプ大統領は、州や地方自治体、民間部門と協力して新たな投資を促進し、国のインフラを再建したいと考えている。
  • 大統領が提案した1兆5000億ドルのインフラ投資は、今後10年間、経済成長率を約0.1〜0.2%ポイントほど上増しする可能性がある。
  • インフラ投資の財源策としては、インフラ利用料徴収の適正化が考えられる。
  • 適正な利用料徴収が効率的なインフラ供給を可能にする。
  • 公共インフラの利用料が低く抑えられ過ぎていることは、需給をアンバランスにし、渋滞等の非効率をもたらす。
  • 金融面では、州と地方自治体が連邦政府よりも重要な役割を果たすだろう。
  • 連邦政府の役割には、連邦補助金の交付に当たり効率的な資金調達を促すこと、税制を通じた地方債活用の促進、PPP等の革新的な金融手法を活用するための支援等が考えられる。
  • エネルギーや電気通信、内陸水運の分野などでは、特に規制や許認可プロセスの簡素化・適正化、費用対効果分析に基づく最適な事業選定(支出の優先順位付け)が重要だ。

【米国の生産性向上のうち公的資本のストックが占める割合】

【米国の輸送と水道に関するインフラ投資の推移】

第5章 世界経済の中での米国貿易の強化

  • トランプ大統領は、米国の労働者と企業のために規則を執行し、貿易協定が公平で相互的であることを保証する。
  • 米国の利益を最大化するために各国との通商関係を見直す。
  • 中国などは、世界市場の原則を侵害し,機能を歪曲している。
  • それが国際通商システムに負担をもたらしている。
  • 従来は自由貿易が米国の富を増やしてきたという考えが主流だったが、貿易を開放しすぎたことで米国社会の一部に歪みが生じた。
  • 公正で相互的な(fair and reciprocal)貿易は全体的に米国を良い方向に導く。
  • だが、その場合でも、貿易量の増大が米国の利益につながるとは限らない。
  • やはり、貿易協定の改善が必要である。
  • 通商問題における現政権の取組みは、あらゆるセクターでの利益を向上させる。
  • 特にエネルギーと農業では米国は比較優位を持っており、輸出増進の余地がある。
  • 各国との貿易赤字を減らし、通商関係を改善するためには相手国の貿易障壁、非関税障壁や関税障壁を撤廃する必要がある。
  • 米国には農業、革新的製品、エネルギー製品等で比較優位を持っているが、自動車等の製造業では非関税障壁により各国よりも劣勢だ。
  • 日本に対しては、自動車分野の非関税障壁があると指摘。「米国は日本の自動車市場が全体として閉鎖的であることに強い懸念を表明してきた」と批判。
  • 米国からの輸出を妨げる相手国の貿易障壁を取り除く決意を示した

【米国の実質成長率のうち輸出が占める割合】

【各国別に見た米国の貿易赤字】

【GDP比で見た貿易赤字・黒字の推移】

第6章 全ての米国民の健康を改善する革新的な政策

  • 前政権はオバマケアで健康保険加入者を増やし、医療費の削減を目指したが、人口の6%しか加入者が増えなかった。コスト管理にも失敗し、病院の統合や保険料高騰、非効率な医療費の増加につながった。
  • 医療保険の拡大が人々の健康改善につながるわけではない。
  • オバマケアによる健康保険の拡大政策は、米国民の健康状態を改善せず、コスト上昇や選択肢の減少を招いた。
  • 喫煙や食習慣などの生活習慣は健康に大きな影響を及ぼす。
  • オピオイド中毒、肥満につながる食生活、喫煙は大きな経済的損失をもたらす。
  • 消費者と医療機関を過度の政府規制から解放し、医療市場を通じて競争を促進することは、国民の生活の質を向上させる。それは価格を下げ、選択肢を増やす。
  • 医療のイノベーションは人々の健康を改善し、将来の費用を削減できるため、その促進が重要だ。特に高額な最新の医薬品の価格は下げる必要がある。
  • ジェネリック医薬品の使用を阻害するメディケアやメディケイドには改革が要る。後発品の参入を促進するための規制改革や流通システムにおける競争の促進も必要だ。
  • 外国が公定価格において低い薬価を設定することで、米国のイノベーションに「ただ乗り」していることへの対策が必要だ。OECD諸国の薬価を分析し、不公正な格差の把握すべきだ。USTRによる対応や米国の患者を優先させるための規制改革や法的整備が望まれる。

【オピオイドの過使用がもたらす死者推移】

第7章 成長する経済に対するサイバーセキュリティ上の脅威との戦い

  • 悪意あるサイバー活動が拡大している。その実行者は個人から国家にまで及ぶ
  • 正確な数字の測定は困難だが、2016年にサイバー攻撃及びデータ漏洩による米国経済へのコストは570億ドル~1090億ドルに及ぶと見積られる
  • 健全な経済にとってサイバーセキュリティは最重要案件である。
  • サイバーセキュリティには外部性があり、サイバー空間での犯罪等の本当の発生件数の把握は難しい。
  • サイバーセキュリティ対策に不備があれば、その不安のために研究開発投資が鈍ったり,最新のICTの採用が遅れたりする
  • 市場原理だけではサイバーセキュリティへの投資インセンティブが与えられないので、官民連携が重要だ
  • 大規模な被害を受ける可能性があるシナリオとしては、重要インフラへの攻撃が考えられる。全16分野のうち、特に金融と電力の分野には注意を要する。
  • 官においては基礎研究支援、基準の監督、教育や啓発の実施、重要なインフラセクターの保護、情報共有への障害除去、民間企業によるサイバーセキュリティ対策投資に対するインセンティブの付与が必要。
  • 民間においては技術に基づく解決策の考案、情報共有、非常時への対応準備、職員訓練などが要る。
  • 今後、量子コンピュータの性能が向上し、これが悪意ある者の手に渡ることになれば、現在広く用いられている暗号が通用しなくなり、脅威となる

米国の各産業で起きたサイバー盗難などの件数】

第8章 一年間の回顧と今後の見通し

  • 2017年には、実質成長率(第4四半期と前年第4四半期との比較)が2.5%。前年の1.8%よりも上昇した
  • 失業率が0.6%ポイント低下して4.1%と2000年以来の低水準となった
  • 雇用者数が220万人増加した
  • 課題は、近年の労働生産性の低迷と労働参加率の長期的な低下である。
  • 今後の見通しとして,税制改革の効果を除いたベースラインシナリオでは2028年までの年間平均成長率は2.2%とみられる。
  • その上で、トランプ政権の経済政策の効果を加味すると,同期間の年間平均成長率は3%となる。
  • 予測期間の後半は税制改革のうち2025年までの時限措置の効果がなくなるが、規制緩和とインフラ投資の効果で相殺される。
  • 経済面でのリスクには、地政学的ショック、サイバー攻撃、立法プロセスの予測困難性、公的・民間債務等があげられる。
  • 今後、国際資本移動の活性化、労働参加率の予想以上の上昇が経済成長を促進する可能性もある。

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