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ドッドフランク法改正 上院可決 次の審議は下院

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大規模な金融機関の破たんの再発を防ぐために制定された「ドッド・フランク法」の改正案が3月14日(米国時間)に上院で可決されました。

ドッド・フランク法というのは、リーマン・ショック後、2010年に民主党政権下で定められた金融機関への規制強化法のことです。

金融安定監視評議会(FSOC)の設置、金融機関の破綻処理のルール決めや銀行によるハイリスク取引の規制(ボルカー・ルール)、FRB(連邦準備制度理事会)での消費者金融保護局の設置等が主な内容になっています(名称は法案を出した議員の名にちなむ)。

その要点は以下の通りです。

  • 金融機関に説明責任を課し、透明性の向上を目指す。
  • 破たん後の影響が「大きくてつぶせない」金融機関の監視を強化し、リーマンショック後の救済措置の再発を防ぐ。
  • 総資産500億ドル以上の金融機関は資本と流動性の確保が義務付けられ、一年ごとのFRB(連邦準備制度理事会)によるストレステストを要請
  • ボルカー・ルール」によって、銀行や銀行持ち株会社が自社の資産運用のために、自社の資金でリスクを取って金融商品の購入や売却、取得や処分を行うことを禁止。
  • 米国の銀行がデリバティブ取引、商品先物取引、ヘッジファンドへの出資、未公開株ファンド等に出資することを制限(ただし、顧客のリスク回避が目的とした場合、ヘッジ取引や、値付け取引、国債、政府機関債、地方債等の取引は規制対象外となる)。
  • 包括的な監査は連邦金融監督者と州規制監督者、大統領が任命する保険専門家で構成されるFSOCが担う

この法律の見直しはトランプ大統領の公約の中でも重要な政策の一つです。

金融業界はドッド・フランク法によって貸出しが抑えられ、事業コストが跳ね上がったことを非難しており、米新政権は、この要望に応える規制改革を目指してきました。

トランプ大統領は2月3日にドッドフランク法を見直す大統領令に署名。

その後、ムニューチン財務相が上院で承認され、正式に就任。

17年6月に米下院でドッド・フランク法見直し法案がいったん可決されましたが、議会が閉会になったので、この時のプランは没となります。

そして、18年3月14日に米上院が別種のドッド・フランク法見直し法案を可決しました(賛成67、反対31)。

この法案は小規模の改革にとどまり、ボルカールールを担当する監督機関を現行5機関から1機関に集約するなどの、金融業界からの要望は盛り込まれていません。

ただ、システム上重要な金融機関として厳格な監督対象に指定される銀行の資産基準が500億ドルから2500億ドルに引上げられるので、これが実現すればアメックスやBB&T、キーコープなどの金融機関が、厳格な法令順守の規制コストから解放されます。

資産規模が100億ドル未満の銀行は自己勘定取引を禁じた「ボルカー・ルール」の適用除外となることも法案には盛り込まれました。

今後は下院審議で、より大きな規制改革を盛り込んで法案を可決できるかどうかが焦点になります。

銀行に恩恵をもたらした減税法案に続いて、ドッドフランク法改正が実現するかどうかが気になります。

※ブルームバーグの記事(「米税制改革法案:資産運用会社や銀行、テクノロジーが勝ち組か」2017/12/5)は、減税法案で恩恵が及ぶ企業として「資産運用会社、製薬会社、テクノロジー企業」を挙げました(以下、銀行についての記述)

  • 議会での税制改革法案進展の知らせが伝わるたびに、JPモルガン・チェースやシティグループなど銀行株は上昇してきた。
  • 「税制改革法案が成立すれば、銀行は最も明白に恩恵を受ける業界の1つだろう」(アイザック・ボルタンスキー氏)。

当ブログ関連記事:米税率は20%、日本は30%の時代が来る?

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ドッド・フランク法についてのトランプ政権の考え方

ETFの概要を見た上で、話題をドッドフランク法に戻します。

この法改正は、前掲の米国ETFと関連銘柄に大きな影響を与えるからです。

この法律に関しては、従来、以下の問題点が指摘されていました。

  • 規制が厳しすぎる
  • 監査等に対応するためのコストが高すぎる
  • 経営に負担がかかりすぎる
  • 政府機関の肥大化
  • 金融機関の貸し出しの低迷

トランプ政権はこの規制を緩和することで、金融の活性化が図れると考えています。

米国家経済会議(NEC)のゲーリー・コーン委員長は、この改革の方針をWSJ紙のインタビューで明かしています(WSJ日本語版「トランプ氏、ドッド・フランク法撤回の大統領令に署名へ」2017/2/3)

  • 毎年数千億ドルにわたる銀行の規制コストが軽減される
  • 銀行は消費者のために効率的・効果的な価格設定を行えるようになる
  • 今後、金融安定監視評議会(FSOC)や、銀行以外の大手金融機関への監視のあり方を変えていく

トランプ大統領が金融規制改革の大統領令に署名する前に説明を求めた部下(ワグナー氏)は「我々がやろうとしていることは、中・下流の所得の投資家、退職金を管理している退職者といった、アメリカの民衆のためになる行為です」とも述べていました。

(出所:Remarks by President Trump at Signing of Executive Order on Fiduciary Rule | whitehouse.gov

トランプ大統領自身も、以下のように述べています。

「我々はドッド・フランク法を断ち切ってしまいたい。率直に言えば、私の友人も含めて、あまりにも多くの人々が素晴らしいビジネスをしているのにお金を借りられなくなっているからだ。お金が得られないのは、銀行がお金を貸さないからで、その原因はドッド・フランク法のルールと規制にある」(2017/2/3)

(出所:Remarks by President Trump in Strategy and Policy Forum

ドッド・フランク法の厳格な規制のためにお金の流れが悪くなっている、というのがトランプ大統領の基本的な認識です。

しかし、金融規制改革法を成立させた民主党議員やリベラル色のマスコミは、規制緩和は、リーマンショックのようなリスク再来の可能性を高めると見て、改革に反対しています。

ドッドフランク法をどう変えるのか?

トランプ氏が出した2月の大統領令では、七つほどの中核原理を定め、それに合わない法令の改革を命じました。

    • 米国民が十分な情報を提供され、金融において独立した意思決定ができ、退職後の貯蓄を管理し、個人資産の形成ができるようにする。
    • 納税者負担での金融機関救済措置を避ける
    • 「市場の失敗」(情報の非対称性等)を解決する規制を導入し、活発な経済活動を促進する
    • 米企業の競争力向上(国内と海外市場)
    • 金融規制を交渉する国際的会合で米国の国益を追求
    • 金融規制を効率的で効果的なものに変える
    • 連邦の金融規制機関の信用回復。規制の枠組みを合理化

そして、下院を通過した法案には、以下の改革案が含まれています。

  • 連邦保険公社の「整然清算権限」を廃止。この権限は、破綻したら金融システムの安定を脅かすような機関が潰れた時、株主や債権者の負担での破綻処理と経営者の退陣を求める仕組みのこと。破綻した金融機関への公的資金注入を防ぎ、モラルハザードを避けることを目指す。
  • 「ボルカー・ルール」を廃止。銀行や銀行持ち株会社がリスク性のある金融商品を購入・売却したり、取得・処分したりできるようになる。
  • ダービン修正条項(デビットカード処理のために小売業者に請求される手数料の規制)を廃止。
  • 一定の要件を満たした金融機関に対して、自己資本比率規制などの適用免除を認める。
  • 金融機関の監査体制を緩和するために規制当局の機構を変革する

ただ、この法案はかなり強硬な内容なので、財務省が6月12日に公表した報告書では、もう一段、緩和した改革構想が描かれました。

ムニューチン財務長官はインタビューで100以上の項目のうち、8割は大統領令と規制当局で実現可能であり、残りの2割を議会の法制定で実施したいとも述べています。

各紙報道では以下のような改革項目が挙げられています。

  • 消費者金融保護局(CFPB)の権限縮小(要法案制定)
  • 資産が100億ドル未満の小規模銀行はボルカー・ルールから適用除外(要法案制定)
  • ストレステスト(健全性審査)の負担軽減
  • 金融安定監督評議会(FSOC :議長はムニューシン氏)の権限拡大
  • 銀行の国際資本基準の見直し

それでも主要項目に関しては議会を通す必要性が残るようです。

その後、12月5日に上院銀行委員会で法案の修正案が可決。

ブルームバーグは12月6日に「米上院銀行委:ドッド・フランク法見直し可決」と題した記事を公開していました。そこでは、以下の項目が主な改正のポイントになっています。

  • 中規模銀行を最も厳しい監督の対象から外し、コミュニティーバンクの法令順守のコストを減らす
  • 金融システムを守る上で、重要な金融機関として連邦準備制度が厳格な監督を行う対象となる基準を資産規模2500億ドル(約28兆円)とする(現行の500億ドルから引き上げる)
  • 地方債の区分方法の変更なども一部盛り込む。

しかし、下院の法案は、消費者金融保護局(CFPB)を骨抜きにする内容も含まれているので、今後、上院で順調に可決されるかどうかまでは分かりません。

そのほか、米国の金融監督の人事案が出されました。

トランプ政権時代の金融監督体制

11月下旬には日経電子版にて、トランプ政権の金融監督体制についての解説記事が出ていました(米金融監督「トランプ色」に トップ人事、オバマ時代から交代進む 2017/11/28)

オバマ前政権が金融規制を強化した頃に配置した人材を11月末に一掃し、規制緩和派の人材に交代させようとしているわけです。

その人事案の概要は以下の通りです。

★米連邦準備理事会(FRB)

金融規制担当の副議長に緩和派の元財務次官のクオールズ氏が就任。規制強化を指揮したタルーロ担当理事は辞任。規制緩和に慎重だったフィッシャー副議長も辞任。パウエル次期議長も見直しに前向き。

★米通貨監督庁(OCC)

規模の大きい商業銀行の監督権限を持つ米通貨監督庁新長官には銀行界出身のオッティング氏が上院で承認された。オッティング氏は金融規制緩和を進めるムニューシン財務長官の元側近。

★米証券取引委員会(SEC)/米商品先物取引委員会(CFTC)

証券会社や先物業界などを監督する委員会の長官もウォール街寄りの人材に変更。

★米消費者金融保護局(CFPB)

オバマ政権が金融規制強化のためにつくったCFPBのコードレイ局長は住宅ローンの審査強化や銀行経営者の責任追及等を進めてきました。コードレイ氏は任期切れ前の辞任の意向を表明し、局長代行としてイングリッシュ副局長を指名したものの、トランプ氏はマルバニー米行政管理予算局(OMB)局長をこのポストに指名。

ドッドフランク法改正のための大統領令

最後に大統領令と下院の法案を見てみます。

2月3日に署名された大統領令「米国の金融制度を規制する中心原理に関する大統領令」(Presidential Executive Order on Core Principles for Regulating the United States Financial System)の主な内容は以下の通りです。

ーーーー

(略)

私の政権において、アメリカの金融制度への規制は、以下の中核原理に従うべきだ。

  • アメリカ人の金融における意思決定の独立を助ける。各人が退職後に資産を形成するために、市場における選択に必要な情報が知らされるべきだ。
  • 納税者の資金での金融機関の救済を阻止する
  • システミックリスクと「市場の失敗」(モラルハザードと情報の非対称性等によってもたらされる)を分析する厳格な規制を通して活発な金融市場での経済成長を促す。
  • アメリカ企業が米国内と海外の市場で外国企業との競争を可能にする
  • 金融規制における国際的な交渉や国際的な会合でアメリカの国益を促進する。
  • 連邦の金融規制に関わる省庁の公的な説明責任を再確立する。連邦の金融規制の仕組みを理に適ったものにする。

2節:財務長官からの指示

(以下略)⇒120日以内に規制緩和のための報告書提出を財務長官に命じる

3節:一般的な条文

(以下略)

(c) この条例は、潜在的にも、手続き的にも、法執行上の強制力においても、いかなる特権や便益を創造しない。アメリカ合衆国の省庁、機関、高官、公務員などに対して、どの党派も平等に扱われるべきだ。

ーーーーーーー

この大統領令は前掲の中核原理に合わない法令や規制を見直しを命じています。

参考:ドッドフランク法の改革法案(2017)の内容

2017年に下院を通過した2017年金融選択法案(Financial CHOICE Act of 2017)の要旨は以下の通り。

とにかく専門用語が多くて難しいのですが、ボルカー規則の制限撤廃、金融機関の倒産処理のルール変更、金融安定監視評議会の権限廃止、金融機関の監視体制の改革などが主な内容になっています。

ーーーー

この法案はドッドフランク法(ウォールストリート改革と消費者保護のための法律)と他の法律を改正する。

銀行による特定の投機的投資に関するボルカー規則の制限を撤廃する。

倒産銀行に関しては、連邦預金保険公社の整然清算権限を廃止し、金融機関の破産に関する新規定を設ける。

そしてダービン修正条項を廃止(※ダービン修正条項はデビットカード処理のために小売業者に請求される手数料の規制のこと)

特定の銀行は総資産に対する一定の資本比率を維持し、ある要件を満たす場合は銀行への特定基準を免除できる。

(※一定の要件を満たした場合は自己資本比率規制などの適用免除が認められるようにする)

この法案は、非銀行金融機関や公的な金融機関を「システム的に重要」(大きすぎてつぶせないケース)と指定する金融安定監視評議会の権限を廃止する。

現行の法律では、そのように指定された機関は追加の規制を適用される。

以前の指定は遡及的に廃止される。

法案はまた、2010年の消費者金融保護法を以下のように改正する

  • 金融消費者保護局を消費者法執行庁に変更する(※これで長官の解任がしやすくなる)
  • その機関に議会の歳出プロセス、拡大された司法監査、議会の追加監視を依頼する。
  • 金融機関に対する監督権限を廃止する。
  • そして、その機関が企業に対して乱用されて発動する監督権限を制限する。
  • さらに、証券取引委員会の管理構造と執行機関に関する規定を変更する。
  • 財務省の財務調査室を廃止する。
  • そして、資本形成、保険規制、証券法違反への民事罰、地域金融機関への規定を改正する。

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