GusbellSStudio / Pixabay

全投稿記事 日本政治経済 経済問題

東京五輪 経費1.6兆円の内訳判明 都と各県での負担案に知事困惑

更新日:

東京オリンピックとパラリンピックが1.6~1.8兆円規模で開催されることが固まり、その経費の内訳が明らかになりました。

国際オリンピック委員会(IOC)と東京都、大会組織委員会、政府の4者の会合が12月21日に都内で開催され、組織委は大会経費の総額が1兆6000億円から1兆8000億円になるとの予算を示したことが各紙で報じられています。そのうち、組織委が5000億円を負担。残りの金額を東京都、政府、他の自治体が負担するとされていました。

今回は五輪経費の負担問題について考えてみます。

東京五輪・パラリンピックの開催経費の内訳は?

スポンサーリンク

大会組織委員会のHP記事(「組織委員会およびその他の経費」2017/12/22)では新しい変更点が説明されていました。

  • 大会経費V2(バージョン2)では、収入は国内スポンサー収入増等の理由でV1よりも1000億円ほど増えた。
  • これに都と国が担う経費7500億円を足すと、累計で大会経費は1兆3500億円となる。
  • また、経費総額に関して、ハード面(会場整備)での競技会場の仮設整備費の削減、ソフト面(大会運営)における地方会場での放送用映像回線の地中化見直しや五輪に関わるファミリーホテルの客室の仕様見直し等の経費削減を行った結果、V1に比べると大会経費総額が1500億円削減となった。

五輪とパラリンピックに関わる収支の内訳は以下の通りです。

(全て、単位は億円)

【大会組織委員会の収入】

収入億円
IOC負担金850
TOPスポンサー560
国内スポンサー3100
ライセンシング140
チケット売上820
その他330
増収見込200
6000

【ハード/ソフトで見た支出内訳】(組織委+東京都+国)

項目組織委都+国
恒久施設 34503450
仮設等95022003150
エネルギーインフラ150300450
ハード(会場整備)小計110059507050
輸送250250500
セキュリティ2008001000
テクノロジー7003501050
オペレーション10001501150
管理・広報6000600
マーケティング125001250
その他9000900
ソフト(大会運営)小計490015506450
6000750013500

 

【会場関係費/大会関係費で見た支出内訳】(組織委+東京都+国)

項目組織委
恒久施設225012003450
仮設等95021002004650
エネルギーインフラ150250  
テクノロジー700300  
会場関係小計1800490014008100
パラリンピック経費(400)(200)(200)(800)
輸送2502501005400
セキュリティ200750  
オペレーション1000100  
管理・広報600   
マーケティング1250   
その他900   
大会関係小計420011001005400
パラリンピック経費(200)(100)(100)(400)
オリンピック経費累計60006000150013500
パラリンピック経費累計(600)(300)(300)(1200)

 ※総額1兆3500億円に1000~3000億円の予備費が加算されるため、総額は1.45~1.65兆円になります。

最終的に五輪経費の規模はどうなるのか

過去の五輪経費の試算を見ると、そもそも、当初の7340億円で開催可能とする見立ては、やや信じがたい話です。

当初の立候補ファイルでは7340億円の予算しか計上されていなかったのですが、12年のロンドン大会の費用(2.1兆円)等と比べると、「どこからそんな数字をひねり出したのか?」という疑問がわいてきます。

これは招致のためのPRだったのでしょうか。

結局、その後、費用試算に関しては、15年には森喜朗氏(組織委員会会長)が2兆円超をほのめかし、舛添知事が3兆円は要ると述べたりしています。

「予算膨張だ!」と批判する向きもありますが、ロンドン五輪は2.1兆円かかりました。

AFP通信の記事(2016.7.20)によればリオ五輪の費用は総額約120億ドル(約1兆3000億円)。

CNNの記事(2014.1.23)によれば、14年のソチ五輪が500億ドル(約5兆2300億円)、08年の北京五輪が400億ドル(約4兆1800億円)です。

過去の数字で見ると、森氏が言う2兆円超というのは、それなりに信憑性があります(人口を比べるとロンドン市は867万人、リオ市は632万人、東京は1362万人)。

本当に3兆円が必要なのかどうかは検討が要りますが、もともとの数字がいい加減だったことが混乱要因の一つになりました。

小池都知事が予算削減をPRしたのは前任者と森氏への対抗意識も含まれています。

結局、当初計画通りに戻さざるをえませんでしたが、ボート・カヌー会場や水泳会場、バレーボール会場の3施設の見直しにこだわった背景には、森氏が言う総予算よりも低コストで運営したいという考えもあったのでしょう。

(※なお、三会場は以下の通りです)

  • ボート・カヌー会場:「海の森水上競技場」(東京臨海部)
  • 水泳会場:「五輪水泳センター」(江東区)
  • バレーボール会場は当初の有明アリーナ(江東区)

意思決定を差し戻したことで決定が遅れましたが、一応、1.8兆円に収まったので、小池知事としては「予算縮減をしました」と言える状態になったわけです。

予算の効率化は期待したいのですが、経済的合理性ではなく、政争で予算額が変動するのは、あまり望ましい話ではありません。

内実を見ないで数字だけ予算を小さく見せると、あとあと予算膨張が起きる可能性もありますし、唐突に地方自治体に負担を求めても、各県の事情があるので、対応困難なケースが出てくる危険性があるからです。

2017年の五輪費用の議論

1月7日には安倍首相が五輪組織委の森会長と会談し、組織委と都、政府の三者協議の開始を歓迎しつつ、「開催都市の東京都がまず姿勢を示すことが大事だ」と述べたことが報じられています(ロイター「首相、五輪費用で森氏と会談」1/7)。そして、1月10日には安倍首相と小池知事の会談が開催され、その後、小池知事は記者団に以下のように述べました。

「安倍総理大臣とは実務的な話はしていないが、3者協議やその前のワーキングチームなどでいろいろ協議している最中なので、基本的な考え方としてオールジャパンで対応していくということを確認した。安倍総理大臣からは『国としても連携したい』といういい返事をもらった」

(NHKニュースWEB「東京五輪・パラ開催費用 安倍首相と小池知事が会談」2017/1/10)

さらに、13日に開かれた会議では、東京都と組織委員会、国の三者だけでなく、開催自治体の担当者が集まり、五輪競技施設の整備内容や経費等に関して、各自治体ごとに作業チームをつくり、具体的な検討を行うことが決まっています。

 

五輪の都外会場経費を各県で負担? 17年に起きた一騒動

東京五輪では東京都以外の10の自治体でセーリングやサッカーなどの競技が開催されます。

これに関連して、都外の7つの競技会場の整備費を都外の自治体で負担する案が突然に浮上し、他県の知事や市長などが当惑しているわけです。

2月17日と22日には、6道県にわたる都外11会場の総経費が1625億円(仮設整備費、警備費、輸送費等を含む)。都外会場の仮設整備費が438億円と見積もられたことが各紙で報じられました。その内訳は以下の通りです。

  • 北海道:119億円(仮設整備費27億円)※札幌ドーム(サッカー会場)
  • 宮城県:122億円(同上27億円)※ひとめぼれスタジアム宮城(サッカー会場)
  • 埼玉県①:146億円(同上29億円)※さいたまスーパーアリーナ(バスケ会場)
  • 埼玉県②:156億円(同上29億円)※埼玉スタジアム(サッカー会場)
  • 埼玉県③:178億円(同上89億円)※陸上自衛隊朝霞訓練場(射撃会場)
  • 埼玉県④:162億円(同上40億円)※霞ヶ関CC(ゴルフ会場)
  • 千葉県:218億円(同上73億円)※幕張メッセ(レスリング、フェンシング、テコンドー)
  • 神奈川県①:163億円(25億円)※日産スタジアム(サッカー)
  • 神奈川県②:122億円(29億円)※江の島ヨットハーバー(セーリング)
  • 静岡県:239億円(同上69億円)※伊豆ベロドローム+伊豆マウンテンバイクコース(自転車)

この費用分担に関して17年に一騒動が起きたのです。

各県知事は必ずしも協力を否定してはいませんが、費用分担に関しては「何も言ってきていない」(千葉県・森田健作知事)、「来年度に事業を始めないと間に合わない。早く財源の見通しを示してほしい」(宮城県・村井嘉浩知事)等と困惑の声を挙げました。

各県にも予算編成の日程があるので、突然に言われて困るのは当然です。

「いきなり言うな」と憤った10自治体は12月26日に、仮設施設の整備、大会運営を組織委員会が担うことを求める要望書を提出しました。

読売夕刊(12/26:1面)では小池知事が「年明けに関係自治体の協議会を開き、年度内の負担割合の『大枠』を決める方針を示した」ところ、知事から不安の声があがったことが報じられました。

  • 「約束は守ってもらいたい」(千葉県・森田健作知事)
  • 「原理原則は守るべきだ」(埼玉県・上田清司知事)
  • 「役割分担がまだ決定していないのは異常だ」(神奈川県・黒岩祐治知事)

各自治体に困惑が広がり、17年初には黒岩知事が1月5日の記者会見で「藤沢市の江の島周辺の仮設施設(※セーリング競技場)の整備費用について、『県は負担しないというのが原理原則であり、予算措置をする必要もないと考えている』と述べ、県の新年度予算案に費用を計上しない考え」を述べていました。

結局、しばし都と各県との暗闘が続きましたが、5月11日に、小池都知事と安倍首相が官邸で会談し、東京都が都外の仮設整備費を全額負担することになりました。

五輪開催までの日程

今後の工事日程と関連企業も踏まえたスケジュールはどうなるのでしょうか。

  • 2017年11月:有明体操競技場着工(施工:清水建設)
  • 2017年12月:大井ホッケー競技場着工(施工:未定)
  • 2018年:東京五輪のボランティア募集開始
  • 2018年2月:平昌冬季五輪開催(9日~25日)
  • 2018年春~秋:築地市場が豊洲市場に移転
  • 2018年9月:江の島でセーリングの五輪事前大会
  • 2019年:五輪チケットの販売開始(時期未定)
  • 2019年6月:大井ホッケー競技場竣工
  • 2019年7月:五輪のテストイベントを開催
  • 2019年夏:聖火リレーの経路決定
  • 2019年10月:有明体操競技場竣工
  • 2019年11月:新国立競技場竣工(施工:大成建設JV)
  • 2019年12月:有明アリーナ(施工:竹中工務店JV)
  • 2019年12月:オリンピックアリアティクスセンター(施工:大林組JV)
  • 2019年12月:海の森水上競技場(施工:大成建設JV)
  • 2019年12月:五輪選手村竣工
  • 2020年春:聖火リレーの開始
  • 2020年3月?:環状二号線の地上部道路が開通
  • 2020年夏:選手団が事前キャンプ開始
  • 2020年7月24日:東京五輪開始(~8月9日)
  • 2020年8月25日:東京パラリンピック(~9月6日)

五輪会場の工事進捗状況

2017年の報道では、五輪開催まで3年を切った7月25日に、日経電子版が各会場の工事進捗状況を報じていました(「インフラ整備 急ピッチ 東京五輪まで3年 使用日程や期間見通せず」。

その要旨で最近の工事状況を見てみます。

ーーー

★東京臨海部の中央防波堤

競技コースになる水路の水位を調節する水門工事の真っ最中。

★江の島周辺(神奈川県:セーリング会場)

6月下旬には島に渡る道路橋の拡幅工事に入り、小田急電鉄は片瀬江ノ島駅を改修する。ただ、「競技のコースが未確定で、漁業関係者との補償交渉もままならない」という。

★埼玉スタジアム2002(サッカー会場)/さいたまスーパーアリーナ(バスケ会場)

カフェテリアや洋式トイレなどを整備。県は2016年9月に組織委が示した11カ月間を8週間に短縮するよう要請するも返答なし。五輪の使用期間が長引けば顧客の興行主を失いかねない。

★幕張メッセ(千葉県:レスリング会場)

20年4~9月の使用を求める組織委などに「少し長すぎる」(森田健作知事)と短縮を求める。展示会やイベントは開催の2~3年前から打ち合わせが必要。県は「一日も早く回答が欲しい」(経済政策課)。

★釣ケ崎海岸(千葉県:サーフィン会場)

観客誘導ルートの確保が課題。町の玄関口であるJR上総一ノ宮駅は改札口が海岸と反対側の西側にしかなく、観客が押し寄せた場合の安全性を懸念する声が出ている。

ーーー

豊洲移転だけでなく、各地の会場の工事も予断を許さない状況が続いています。

五輪の懸念事項:豊洲移転の遅れ

ただ、オリンピックの懸念事項として、元来の予定では16年11月に終わるはずだった豊洲移転が約2年ほど遅れることです。

2017年11月9日には、豊洲市場の開場日が2018年10月11日にすることで業界側が合意に達したことが報じられました。

今後、小池都知事が豊洲市場の安全宣言をし、追加の土壌汚染対策工事を2018年夏頃までに終えることが必要になります。

本来、16年末に終わっていた話が、18年10月までずれ込むというのは、懸念すべき話です。

今後、豊洲市場開場の問題が円滑に進むかどうかを、しっかりとウォッチングしていく必要があります。

【スポンサーリンク】

-全投稿記事, 日本政治経済, 経済問題

Copyright© トランプ政権と米国株投資 , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.