アリゾナ

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ウーバー・テクノロジーズ社の問題点は何だろう

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ウーバー・テクノロジーズが試験運転中の自動運転車が2018年3月18日午後にアリゾナ州テンピで女性をはねる事故を起こしたことが世界に波紋を広げています。

(現在、ウーバーは、アリゾナ州、カリフォルニア州、オハイオ州の行動で実施してきた自動運転の走行テストを中止している)

被害者はすでに息を引取り、今後はウーバーの責任が問われるわけですが、この事故が今後の自動運転の技術開発に影響を与えるからです。

今回、試験運転用の車両をつくったのはボルボ・カーで、ウーバーは自動運転システムを搭載するために、17年11月にボルボのSUV(多目的スポーツ車)を24000台ほど購入することに合意していました。

また、トヨタ自動車や独ダイムラーも自動運転の開発でウーバーに協力していたので、影響は関連各社にも及びます。

さらには、この事故が起きたのは、ウーバーとウェイモ(グーグル系の自動運転開発企業)が16日に、自動運転車の規制見直しを数週間で承認するように求める書簡を上院議員に送った直後なので、極めて微妙なタイミングでした。

業界が安全に関する消費者や政府からの信頼を獲得し、規制緩和の実現を目指した矢先に自動運転車の事故が起きてしまったからです。

17年秋に、下院では、一部の州に自動運転業界を対象にした新しいルールを適用する法案を可決しました。そこには、該当州に連邦の安全基準の多くを無人運転車に適用せず、製造元の安全認証に委ねる内容が盛り込まれていたのですが、その実現が危ぶまれるようになったのです。

この事故を受けて、政治家や関係団体からは以下のようなコメントが出されています。

  • 「自動運転車に即した法律や政策の必要性が浮き彫りになった」(上院商業科学運輸委員会のジョン・スーン委員長(共和党)
  • 「厳しい対応が必要だ」(同委員会・エドワード・マーキー委員、リチャード・ブルーメンソル委員〔※どちらも民主党)
  • 「まだ確立していない技術を公道で試すことには大きなリスクがあるとはっきりした。歩行者とドライバーの安全がなによりも重要だ」(全米トラック運転手組合〔チームスターズ〕)
  • 事故は自動運転車業界と政府に対して安全を最優先にするよう警鐘を鳴らすものだ(フォックス元運輸長官)

今後、ウーバー社と自動運転はどうなっていくのでしょうか。

この記事では、ウーバー社の実像について整理してみます。

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ウーバーのほうがテスラの事故よりも責任が重い

16年テスラの事故と18年のウーバーの事故を比較してみます。

2016年5月に起きたテスラの事故

2016年には、レベル2の自動運転機能(手動が原則。自動運転は補助)を搭載したテスラ社の「モデルS」が フロリダ州のハイウェイを走行中に信号のない交差点を通過していたトレ ーラーに潜ってしまい、衝突事故で運転者が犠牲になったのです。

米国の国家運輸安全委員会 (NTSB)によれば、この事故では、14分間の走行時間中、73分間が自動運転モードとなりテスラのシステムは運転者に対して

「 ハンドルに手を添えてください 」という警告をダッシュボードに7回出しても、運転手はこの警告を無視し告げたです。

しかし、 運転者はこの警告を無視し続け、73分間中、52秒間しかハンドルを握っていませんでした(※ブレーキなども使っていない)。

日中に走行している際に、走路をさえぎる角度から入ってきた大型トレーラーの側面に太陽光が反射し、その影響でモデルSのカメラ認識が十分に働かなかった可能性が高いと見られているのですが、この事故では、システムを過信して、何もしなかった運転車の責任が重く見られたのです。

2018年3月に起きたウーバーの事故

しかし、今回のウーバーの事故は、自動運転に精通した者が運転席に常に着席し、ハンドルやアクセル・ブレーキが操作できる状況(州のガイドラインに沿っている)で歩行者をはねるという事態となりました。

夜間走行のためセンサーで十分に検知できず、歩行者が予期しない方向から現れた等と言い訳をしても、運転席にいたウーバー関係者が安全確保の義務を果たせなかったことが過失で問われる可能性が高いのです。

その結果、この事故で、自動運転の実用化の時期が遅れる可能性が高まり、安全基準が厳格化する可能性が高まってきました。

(※関連記事:自動運転車 18年に実用化?

そもそも、ウーバー・テクノロジーってどんな会社

カーシェアリングを営むウーバー社は革新的な企業ではありますが、たびたび、問題視される出来事が起きています。

例えば、2017年6月にはCEOのトラビス・カラニック氏が無期限休職の意向を明かし、その後、旅行サイト世界最大手のエクスペディアのCEO、ダラ・コスロシャヒに交代しています。

その後、残された14人の幹部と新CEOが舵取りを担ったのですが、カラニック氏の辞職の背景には、社内の不祥事や倫理違反行為などがありました。

(女性差別や嫌がらせ等の疑惑、ウェイモからの技術盗用等の疑惑が浮上したので、前司法長官エリック・ホルダー氏が同社に対して調査を行っていた)

ウーバー社にはコンプライアンス(法令順守)を軽視する傾向が強く、その経営のあり方が問題視されていました。

そのほか、ウーバー社は、カーシェアリングの普及に伴って職を脅かされるタクシードライバー等から世界各地で抗議運動を起こされています。

ウーバーのアプリは世界各地で用いられていますが、一部の都市では処罰の対象(罰金刑や幹部逮捕等)にもなるなど、諸々の物議をかもしたのです。

(※2009年にサンフランシスコで創業したウーバー社の正式名称は「Uber Technologies, Inc」。スマホアプリを用いてドライバーと乗客をつなぐ相乗りの配車サービスを行う企業で、日本語のWIKIでは、「顧客が運転手を評価すると同時に、運転手も顧客を評価する『相互評価』を実施している」という形で、同社が講じているサービスの質向上のための取り組みも記載されていました)。

ウーバーが抱える「倫理問題」

ウーバー社のソフトウエアエンジニアのスーザン・ファウラーリゲッティ氏が16年12月に退職後、17年2月に自身を含む女性従業員に対して上役からの人権侵害が行われていると訴えたのに、経営陣はそれを無視したとブログで告発。

これを契機に同社の「倫理問題」が注目されました。

以下、東洋経済のWEB版記事(2017/3/23)でその詳細を見てみます(ウーバー、「腐敗した企業文化」の行き着く先 シリコンバレー最悪倒産になりかねない理由」)

  • ブログ記事の公表後、初期に出資したロータス創業者ミッチ・ケイパー夫妻がこの件に幻滅し、ウーバー経営陣に公開書簡を送って経営改革を要望。
  • その後、トラニス・カラニックCEOがウーバーの運転手を罵倒するビデオがブルームバーグを通じて外部に流出。運賃下げに対して運転手が「あなたのせいで私は破産だ」と言われた際の対応のまずさが公になった(その後、HPにてCEOは謝罪)。

その後、カラニックCEOはこの告発を非難し、社内でも問題対処をはかり、エリック・ホルダー元司法長官に調査を依頼しました。

ウーバーの独自調査の中ではスーザン氏の件に対処しなかったのは、トゥアン・ファム最高技術責任者(CTO)だとされ、同CTOが厳しい批判の目にさらされています。

こレに関しては、河合薫氏が日経ビジネスオンラインで「あの『ウーバー』がセクハラを容認したワケ」と題した記事でその状況を説明しています。

 人事部も上層部も“競争に勝った優秀な社員”の愚行を隠蔽し、明らかに特別扱いをしていたのだ。さらに、社内には性差別も横行。社内を見渡してみれば、当初25人いた女性エンジニアが6人まで減少していた。

そこで彼女はセクハラや性差別の報告書をまとめ、人事部に提出。すると上司から「自分は何が違法で何が違法でないか熟知している。キミのことを切ろうと思えばいつでも簡単に切れる」と、脅された。その上司も「ハイパフォーマー」として評価されている人物だったのである。

「その1週間後、新しい就職先を見つけ、Uberを辞めました。最後の日、女性の割合を計算してみると、150人以上のエンジニアのうち女性はわずか3%でした。

ウーバーの失墜はシェアリングエコノミーの信用を脅かす?

この問題に関して、ブルームバーグ社(2017/6/14)は「ウーバーの企業文化に法人顧客がそっぽ-倫理面を懸念」と題した記事を公開しています。

前掲の倫理問題の結末(報告書とCEO休職)が出た後、シカゴに拠点を置くプロジェクトマネジメント会社がウーバーを用いた従業員に立て替えた経費を従業員に払い戻さないことを決めました。

そして、「会社負担で出張する旅客利用の伸び率」を見た時、「同業のリフトがウーバーを初めて抜いた」とし、「1-3月(第1四半期)にウーバーはこの分野で1%増にとどまり、過去最低の伸びを記録。一方、リフトは2%増加した」(サーティファイ社のリポート)ことを報じています。

このリポートでは「サービスは素晴らしく便利だが、ウーバーはひどいビジネス慣行を持っている」という顧客レビューが紹介されているそうです。

フォーブス(2017/6/16)は「 ウーバーの失墜、シェアリングエコノミー界の汚点に」と題した記事を公開し、同社の失墜が同業者の信用を脅かしていることを指摘しました。

英ブライトンを拠点とする世界のシェアリングエコノミー専門家、ベニータ・マトフスカ氏が「人と地球を事業の中心とし、コミュニティーの原則を基盤とするシェアリングエコノミー企業の真の価値を、ウーバーは体現していない」「性差別や搾取的行動への言い訳は決して通じない。カラニックの休職は、同社の抜本的改革の始まりに過ぎないことを願う」述べたことを紹介しています。

要するに、それがシェアリングエコノミーの「信用」を脅かしていることを問題視したわけです。

ただ、同記事ではウーバーが「イタリアやハンガリー、デンマークなどでは全面禁止」となったものの、ロンドンやパリ、モスクワでは人気を博していることを併記しています。

ウーバーVSウェイモの訴訟の顛末

そのほか、2017年に入り、ウェイモ社(グーグルの自動運転開発部門が独立した企業)が技術盗用でウーバー社を提訴しました(提訴は2月、3月に追加で運用差し止めを求めた)。

ウェイモ社の元幹部がウーバー社に自動運転の中核技術に関わる情報を流したとしてカリフォルニア地裁に訴状(損害賠償や特許侵害)が送られ、ウーバー社は競争妨害の一種だと反論しています。

毎日新聞の記事(2017/3/21)では、その内容が報じられていました。

  1. 問題となったのは、レーザー光を使って周囲の状況を把握するセンサーの一種(「ライダー」と呼ばれ、自動運転の必須技術の一つ)。
  2. 訴状では、グーグル元幹部は2015年末に14000件の秘密ファイルを入手し、退職後に自動運転技術を用いたベンチャー企業(※オットー社)を設立。この企業をウーバーが16年8月に6.8億ドルで買収したことで情報が流出。その幹部が在職中からウーバー社とコンタクトしていたと抗議。

その後、サンフランシスコ連邦地裁は17年5月18日にウーバーにウェイモへの機密ファイルの返還などを命じました。これに対してウーバーは控訴。

最終的には、ウーバーが2018年2月に2.45億ドル(約265億円)相当の自社株をウェイモに支払って和解が成立したのですが、解決の矢先に次の問題が浮上しています。

これは技術面での問題であると同時に倫理問題でもあります。このあたりは、同社のコンプライアンス体制のずさんさとも無関係ではないでしょう。

ウーバー社の「功績」は何だったのか

一応、一方的な批判にならないようにウーバー社の功績も振返ってみます。

肯定的に評価しているのはダイヤモンドオンライン(2017/3/15)で、ブロガーのちきりんさんとウーバー日本CEOの高橋正巳氏との対談記事が掲載されていました(「Uberは労働者の生産性も劇的に上げている」)。

ちきりんさんが、東京はタクシーが余っている。実車率は6割ぐらいでは?と問うた時の質疑が印象的です。

(※実車率は走行距離の中で旅客や貨物を載せていた距離の割合のこと)

高橋 (略)実車率は6割もなく、走行距離に対する実車率は5割以下で、実際の生産性を計る時間ベースで見た実車率は3割くらいと聞いています。要するに、ドライバーさんが1時間勤務するうえで、20分程度しかお客さんを乗せていないことになります

これに対して、Uberは需給をオンデマンドでマッチングさせることで高い実車率を実現しているとPRし、タクシー会社にも提携メリットがあることを強調。交通状況の悪い地域でも有効に配車できることを指摘しました。

タクシー業界の効率が上がれば料金が下がるので、これは消費者にとってはありがたい話です。

ウーバーの配車サービスは業界の反対もあって、日本ではまだまだブロックされているわけですが、同社が行っているような「カーシェアリング」の解禁がタクシー業界への「黒船」となる可能性が高いわけです。

さらに、ウーバー社は「空飛ぶ自動車」の実現に関しても斬新な構想を持っています。

同社は18年3月に屋上の発着用パッド(スカイポート)の間を人を乗せて飛ぶ空飛ぶタクシーの原型を発表。2020年にダラスとロサンゼルスでサービスを試験運用し、2023年には商用サービスを開始する計画を明かしました。2025年には1日18万人を輸送することを目指しているのです。

※関連記事:空飛ぶ自動車が2019年に販売開始?

ウーバーの限界:「攻め」だけあって「守り」なし

ウーバーは躍進したベンチャー企業ではあります。

その発展力は稀に見るものがありましたが、コンプライアンス(法令順守)といった「守り」の欠如が大きな問題を生んでいます。企業が小さい段階では不問に処されていたことが、次第次第に厳しい目で見られるようになるわけですが、その配慮が欠けていたわけです。

そして、もう一つの問題点は情報公開度の低さです。

ウーバーは未だに未公開企業なので、正確な情報が分かりにくいのです。

(※現在、19年をめどに上場を計画中)

ただ、ブルームバーグ社を通じて幾つかの経営情報が報じられています。

17年の終わりごろに「米ウーバーの7-9月損失は8億ドル超か、中国事業撤退でも-関係者」(2016/12/20)と題した記事が公開されていました。

この記事によれば、2016年1-9月期の損失は22億ドル(約2600億円)超。そのうち、中国市場撤退後の7-9月に8億余りの損失が出ているとされています。しかし、売り上げは拡大を続けており、同年1-9月の純売上高が約37億6000万ドル。16年全体で55億ドル強に上るとウーバー社の関係者が匿名で述べたことが報じられていましたす。

ウーバー社に関しては、世界展開する規模の大きさに比して、情報公開度が低いという不健全な状態が続いています。同社サイトを見ても、経営の実績が何も公開されていないのが現状です。

企業は大きくなると社会性を帯び、経営スタンスが公益に資するものであることを求められてきます。

その社会的責任を果たすうえで、法令順守や情報公開、従業員のリスク管理などが必要になるわけです。

ウーバー社で起きた一連の顛末は、企業が「大きくなった後」に取り組むべき課題をわかりやすく教えててくれる事例だとも言えます。

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