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【北朝鮮ICBM】弾道ミサイルがEEZ内に 日本の対策とは

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北朝鮮が弾道ミサイルを28日の午後11時頃に発射しました。

約45分をかけて1000kmの距離を飛び、そのミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと見られています。

これに対して、安倍首相は厳重に抗議しました。

「国際社会の強い抗議、警告を無視して、北朝鮮がまたも弾道ミサイルの発射を強行し、わが国のEEZ内に着弾させた。先般の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の発射に続いて、わが国の安全に対する脅威が重大かつ現実のものとなったことを明確に示すものだ。
北朝鮮に対し厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する。北朝鮮がこのような挑発行動を続ける限り、米国、韓国をはじめ、中国、ロシアなど国際社会と緊密に連携し、さらに圧力を強化していくほかない」

(出所:時事ドットコム「安倍首相発言全文=北朝鮮ミサイル発射受け」7/29)

(※長距離弾道ミサイル=大陸間弾道弾〔ICBM〕:5500km以上の飛距離を持つミサイルがICBMとされる)

また、米国防総省のデービス報道官は「このミサイルは予想通り、大陸間弾道ミサイルだったと分析している」と述べました。舞坪里から発射され、1000キロ飛行した後に日本海に着水したとの見方を示しています。ロシア国防省は「中距離弾道ミサイルの特徴」が確認されたとし、高度681キロ、飛距離732キロとしています。

(出所:AFP通信「北朝鮮、ICBMを発射 飛距離1000キロ、米国防総省が発表」7/29)

今まで、北朝鮮にとって朝鮮戦争の”戦勝日”にあたる7月27日に長距離弾道ミサイル(大陸間弾道弾=ICBM)の発射実験をするのではないかと疑われていましたが、発表日は28日になりました。

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北「ICBM」について安倍首相が記者会見(追記)

安倍首相は29日の記者会見で日米韓の連携を訴え、北朝鮮に抗議しています。

総理は、北朝鮮による弾道ミサイル発射事案について次のように述べました(以下、要旨)。

  • 日米、日韓において外相レベルの電話会談を行い、NSC(国家安全保障局)の谷内局長と米国のマクマスター大統領補佐官とで電話会談を行った。
  • 今回のミサイル発射で日米双方にとって北朝鮮の脅威拡大が現実化した
  • 日米韓において国連安保理における対応も含めて圧力を強化し、中国に対する働き掛けを更に強めていくことが極めて重要であることを共有した。

そして、「先般のICBM級ミサイルの発射に続いて、我が国の安全に対する脅威が重大かつ現実のものとなったことを明確に示す」ものと位置づけ、「北朝鮮に対し厳重に抗議し、最も強い言葉で非難します」強固な日米同盟の下、高度の警戒態勢を維持し国民の安全確保に万全を期してまいります」と訴えました。

(出所:北朝鮮による弾道ミサイル発射事案についての会見【1】【2】

そして、31日に安倍総理はトランプ大統領との電話会談の内容を公表しています。

  •  日米の平和的解決に向けた努力を北朝鮮は踏みにじった
  • こうした厳然たる事実を中国、ロシア、国際社会は重く受け止め、圧力を高めていかなければならない
  • 私たちも更なる行動をとっていかなければならないとの認識でトランプ大統領と完全に一致した
  • 同盟国を守るため全ての必要な措置をとるとのトランプ大統領のコミットメントを高く評価する

(出所:トランプ米国大統領との電話会談についての会見(北朝鮮による弾道ミサイル発射事案)

いつもながらの対応ではありますが、これで金正恩を止められるのでしょうか。

北朝鮮のICBM開発は制裁強化だけで止められない

日本と各国は結局、制裁強化という落ちで終わりそうですが、過去、硬軟合わせた方策はいずれも成果なしで終わっています。

90年代の核開発に関して、我が国は1995年~2000年までに累計108万トンのコメ援助を行い、核開発停止を要求しましたが、その返答は1998年のテポドンミサイル発射実験でした。

2000年代の六カ国協議(03年~08年/日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、北朝鮮)が行われても、結局、2009年の北朝鮮核実験と長距離ミサイル発射実験によって裏切られました。

日本は14年に一時期、制裁緩和に踏み込みましたが、拉致問題への返答はなく、16年に核実験とミサイル実験という、いつもながらの「返答」で終わったのです。

制裁の中身は、北朝鮮国籍者の入国禁止、北朝鮮船の入港禁止、北朝鮮への輸出禁止、北朝鮮から輸入禁止などですが、この種の方策は核ミサイル開発の歯止めにならないことが実証されました。

今後の日程を見ると、7月から9月頃には軍にまつわる重要日程が並んでいるので、今後、北朝鮮は、さらに「もう一歩」を踏み込んで来そうです。

  • 8月15日:祖国解放記念日(韓国では光復節と呼ぶ。日本の朝鮮支配の終了日)
  • 8月25日:先軍節(金正日総書記が軍政を開始)
  • 9月9日:建国記念日
  • 10月10日:朝鮮労働党創立記念日
  • 12月27日:憲法記念日(国民の人権を守らない北朝鮮憲法の誕生日)

夏は国威発揚の季節なので、何もしなければ、今後もICBMの開発実験が続くでしょう。

北朝鮮はICBMではなく、ノドン等で日本を狙う

北朝鮮が2月に「北極星2型」を発射した時、韓国軍は「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を地上配備型ミサイルに改良したものだ」とみなし、固体燃料を用いたミサイルだと推定していました。

弾道ミサイルには液体燃料を用いる場合と固体燃料を用いる場合の二通りがありますが、液体燃料推進方式のミサイルは発射までに時間がかかるのに対して、固体燃料推進方式のミサイルは短期間で発射が可能です。

固体燃料を用いるミサイルは、液体を充填する時間だ要らないので、短時間で撃てるわけです。

今までの北朝鮮の弾道ミサイルは、みな液体燃料推進方式でしたが、もはや、最近では固体燃料推進方式のミサイル実験が増えています。それが移動式発射台から撃てるようになれば、米国軍や韓国軍が北朝鮮がミサイル発射前に先制攻撃でそれを抑止することが難しくなるのです。

その後、3月6日のミサイル発射では4発のうち3発が日本のEEZ内に落下し、もう一発も近くに落ちましたが、これに対して、元自衛官の佐藤正久参議院議員は「北朝鮮のミサイル技術と精度はかなり進展している」と評していました(『WILL 2017年6月号「照準は嘉手納、佐世保、岩国」』P52)。

そして、同氏は、三沢(青森県)、横須賀(神奈川県)、嘉手納(沖縄県)、東京、名古屋、大阪、各地の原発などに警戒を促しました。地下や洞窟に隠してどこからでも発射できる車載式のスカッド、ノドンを事前に先制攻撃で破壊するのは米軍でも難しいことや、迎撃ミサイル(SM-3とPAC)で落とせる数には限界があること、日本も「盾」だけでなく、敵を抑止する「矛」に相当する兵器を持たなければいけないこと等を主張しています(P53~55)

ミサイル開発を見るポイントとしては、推進方式(液体燃料or固体燃料)や発射台(固定式or移動式)、命中精度などが大事ですが、このいずれにおいても、最近の北朝鮮は顕著な進歩を見せています。

最近、高度の高いミサイル実験が延々と続いているのは、すでに日本を狙うミサイル開発は、ほぼ終わり、次の「標的」である米国に向けた実験へと移行したと見るべきなのかもしれません。

北朝鮮のミサイルは改良が続いている

北朝鮮のミサイルの精度は近年に急上昇しましたが、過去を振り返ると、2009年の頃でも「ミサイルの精度向上 7発中5発が同地点に落下」(毎日新聞 2009年7月5日)という報道が出ています。

8年前のミサイルでもかなり目標に当たっているので、近年の北朝鮮のミサイル技術をバカにすべきではありません。

「韓国の聯合ニュースは5日、北朝鮮が4日に東部の旗対嶺(キテリョン)付近から日本海へ発射したミサイル計7発のうち、5発が発射地点から約420キロ離れた同じ地点に落下したと報じた。北朝鮮がミサイルの性能を向上させ、目標への命中精度を高めているとみられる。政府消息筋の話として報じた。また、同筋によると、7発のうち最後の2発は、飛行速度が他のミサイルより速かったため、短距離弾道ミサイル「スカッド」の改良型か、射程を抑えた中距離弾道ミサイル「ノドン」の可能性があるという。ノドン(射程約1300キロ)は日本のほぼ全土を射程内に収めている」

2015年1月13日には「朝鮮日報」日本語版が、北朝鮮軍は液体燃料の改良に成功し、燃料を注入した後も、長期間、待機状態を維持できるようになったと報じています。弾道ミサイルに入れる液体燃料を改良し(揮発性の高い液体燃料の保存期間を延ばした)、他国に事前に探知されることなく、いつでも奇襲発射できるようになったというのです。

液体燃料のミサイルは発射までに時間がかかるので、偵察衛星などで探知される可能性が高いのですが、あらかじめ燃料を入れておくことで、発射時間を縮めることができます。

北朝鮮には、主に韓国を狙うスカッド、日本を狙うノドン、グアムを狙うムスダンなどのミサイルがありますが、これらの約1000発の弾道ミサイルの奇襲攻撃についての警戒が必要です。

北朝鮮のミサイルの命中精度

さて、このミサイルの精度と破壊力はどの程度なのでしょうか。

北朝鮮のミサイルに注意を喚起してきた北村淳氏(米海軍アドバイザー)は、北朝鮮のミサイルの性能を分析しています(『米軍が見た自衛隊の実力』)。

「ミサイルの命中精度はCEP(半数必中半径)という単位で示される。ある目標をミサイルで攻撃した場合、弾頭が実際に着弾する地点と攻撃目標の誤差を小さい順に並べて、誤差が少ないほうから半数の着弾地点の距離をこれで示すのだ。CEPの小さいものほど精確であるということになる。

CEP(半数必中半径=半数必中界)を見る場合は、ミサイルの目標を中心にした円を描き、ミサイルの半数が内部に落ちると想定できる範囲の半径が何kmになるかを計ります。だから、CEPが小さければ小さいほど、当たる可能性が高いわけです。

東風21型のCEPは400メートル程度、ノドンの場合は2キロメートル以上と見られている。つまり、国会議事堂を狙って10基の東風21型を発射した場合、国会議事堂の中心点から半径400メートル以内に、少なくとも5発の弾頭が着弾するということだ。これがノドンの場合は半径2キロメートル以上になるため、国会議事堂を狙ったといっても、どこに着弾するかわからない状況になってしまう(P99~100)」

東風21号は中国の準中距離弾道ミサイルであり、日本を攻撃する時に使われると見られています。

他の書籍を見ると、ノドンのCEPを「1.5km以上」と見ている人もいるようです。(『北朝鮮特殊部隊 白頭山3号作戦』高永喆著 P131)

1.5平方キロメートル、2平方キロメートルという数字だとイメージがわきにくいのですが、皇居の面積は1.42 ㎢(パナホームHP)とも言われています。

  • 半径564 mの円の面積が約1㎢、
  • 半径680mの円の面積=約1.45 ㎢
  • 半径2kmの円の面積=約12.56㎢

2009年時点で、ノドンの精度は、半径二キロメートルのどこかに当るぐらいのレベルでした。ざっくり言えば「東京等のビルが多い地域(丸の内等)に打ち込んだら、どこかのビルにあたる」というレベルかもしれません。

北朝鮮のミサイルがもし当たったら・・・

そのミサイルが不幸にも当たってしまったら、どうなるのでしょうか。

「CEPが2キロメートルとなれば、特定の建物に対する攻撃は不可能であり、都市部に対する無差別攻撃に用いられることになる。一方、CEPが400メートル程度である東風21型の場合、特定の建造物だけに限定することは困難だが、ある程度広い敷地を持った軍事基地、石油コンビナート、発電所のような施設や、破壊対象が集中している官庁街、工業地帯などを攻撃することは可能である」「1000ポンド爆弾や2000ポンド爆弾と同等の破壊力を持った東風21型やノドンの直撃を受けた現場には、人間の原型をとどめない死骸が累々と横たわり、建造物や車両の残骸が散乱する状況が現出することになる」

「東風21型のHE弾頭(通常弾頭)がコンクリートの路上に着弾した場合、半径10メートル程度のクレーターができ、半径25メートル程度の範囲内にいた人は間違いなく即死する」

「1000ポンド爆弾が直撃した場合、鉄筋コンクリートの建造物も大きく破損する。500ポンド爆弾でも、建造物の構造にもよるが、一般の鉄筋コンクリートビルの屋上に直撃した場合は、40メートル以上の下層階すら破壊してしまうこともある(前掲書P98 米軍関係者発言)」

北村淳氏は、09年、12年、14年に発刊された書籍において、再三、中国や北朝鮮のミサイルは日本の原発を狙っていることに注意を喚起しています。別に核攻撃をしなくても、原発攻撃に伴う放射能漏れが生み出すパニック効果を狙えるからです。

この問題に真正面に取組まなければ、日本の安全保障は、空理空論になってしまうので、もはや「仮定の話」という説明にエスケープすることはできません。

(防衛省の電話窓口等に安全保障について質問すると、「仮定の話には答えられません」と言われることが多い)

日本国民の生命と財産を守るためには、こうしたシリアスな想定にもとづいて、あるべき対策を考えなければならないでしょう。

ミサイル防衛システムだけで100発を超える大量のミサイルを落としきることはできないので、日本も抑止力の強化(敵基地攻撃能力の確保等)が必要です。

※関連記事:敵基地攻撃能力とトマホークミサイル導入論について

核シェルターの整備なども、今後、進めていかなければなりません。

在韓邦人に避難勧告を出すべき時節が来た?

そのほか、在韓邦人の保護という問題もあります。

日本の外務省は「海外安全ホームページ: スポット情報詳細」に以下のコメントを掲載しています。

現在,韓国については,直ちに邦人の皆様の安全に影響がある状況ではなく,危険情報は出ておりません。他方,北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返していることから,今回改めてお知らせを出させていただきました。朝鮮半島情勢に関する情報には,引き続き注意してください。

そして、韓国への滞在・渡航を予定する方や滞在者に最新情報への注意や連絡先の外務省への登録を呼びかけています(登録方法は二通りあり、韓国滞在が3ヶ月未満の場合は外務省海外旅行登録「たびレジ」を用い,3ヶ月以上の場合は「在留届」の提出となる)。

北朝鮮の動向に関する問い合わせが増えたため、外務省はスポット情報で北朝鮮の核とミサイル開発実験に注意を喚起しているわけです。

外務省はまだ、注意を喚起するぐらいのメッセージしか出していません。

しかし、この朝鮮有事の恐ろしさは、一度起きてしまったら後戻りがきかないことにあります。

北朝鮮もミサイルをもち、ソウルを火の海にすべく国境近辺に火砲部隊を並べているので、米軍が限定攻撃を仕掛けてもワンサイドゲームにはなりません。

北朝鮮が本格的な反撃を行い、短期間で地域紛争にまで戦火が広がる危険性があります。

(地域紛争となれば米韓連合軍の勝利が確実視されているが、朝鮮半島北部に展開した中国軍が南進を開始する危険性もある)

要するに、朝鮮有事が起きた場合、短期間で危機レベルが最高度にまで上がってしまうので、在韓邦人がその時に動き始めても、危機から逃れる手段が失われている可能性が高いのです。

空港や港から逃れようとしても、そうした要所には北朝鮮からミサイルが打ち込まれ、機能が停止しているかもしれません。

有事となれば、民間機や民間船での邦人救済は困難です(韓国にもシェルターはあるが、そこに日本人が入れる保障はない)。

しかし、自衛隊機や自衛隊の艦船で邦人救済を行う場合、韓国の領海・領空内に入る際に韓国政府の承認が必要になります。この場合、韓国政府に拒絶される可能性が高いでしょう。

『VOICE 2017年6月号』でも、野口裕之氏(産経新聞専門委員)が「韓国では自衛隊の入国を、反日的国民の顔色をうかがう韓国政府が拒否する恐れが高い」「自衛隊に代わり米軍が救出・誘導した邦人を日本に輸送すべく出動する空自機や海自機の着陸・接岸さえ許可せぬ懸念も残る」(P83)と指摘していました。

また、ソウルが火の海になった場合、大統領府の機能停止の可能性もあります。朝鮮戦争の頃、李承晩大統領が首都から遁走してしまった、という歴史の故事を忘れてはなりません。

そして、一番恐ろしいのは、北朝鮮がサリン弾等を用いた場合です。

これは、あまり新聞記事等では出てこない話ですが、北朝鮮軍がソウル総攻撃を決意した場合、撃ち込まれる砲弾に化学兵器が混ぜられる可能性があるのです。

北朝鮮は世界有数の化学兵器大国なので、軍近代化の遅れを「化学兵器」で埋めようとする可能性が懸念されています。

この場合、サリンなどに汚染された民間人を輸送できるかどうかという困難な問題が発生しますが、韓国で除染しながら万の単位の民間人を輸送することは困難の極みです(化学兵器による汚染が発生したことが判明すれば民間機や民間船での輸送はほぼ絶望的になる)。

自衛隊には除染部隊がいますが、万の単位の汚染にまではとても手が回らないでしょう。

今の輸送機や艦艇でも万の単位の輸送は困難なのに、その上に「除染」という難題が上乗せされた場合、朝鮮有事発生後の在韓邦人救済は絶望的な状況になりそうです。

・・・

そのため、筆者は、在韓邦人の安全のためには、早めに高いレベルのアラートを出すべきだと考えています。

「社会不安を煽るのはよくない」という考え方もありますが、今のレベルの注意勧告は不十分に見えて仕方がありません。事後的な救済は難しいからです。

「すぐに日本に帰れ」とまで言いにくいのは事実ですが、朝鮮有事が発生した際のリスクに関しては、もう一段、しっかりと在韓邦人に伝える必要があります。

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