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【尖閣問題】中国船領海侵入への対策とは

2018年に入っても中国船が尖閣諸島近海への侵入を続けています。

17年10月18日の共産党大会の前には国威発揚が図られ、ネットメディアのレコードチャイナは「大きく前進する中国の特色ある大国外交」と題した記事を公開し、尖閣諸島について「国の主権を守り、核心的利益を維持」したと書いていました(17/10/13)。

同紙によれば、「釣魚島問題で原則を堅持し、国の領土主権を守る中国の政府及び国民の決意と意志を存分に示した」のだそうです。

18年に入っても朝鮮半島では南北会談等で北朝鮮問題が注目を集めています。

北朝鮮が注目されている時には、火事場泥棒風に尖閣諸島近辺での領海侵犯が増えるので、今回は、この問題を整理してみます。

中国船による領海侵犯の現状

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2012年9月11日の尖閣諸島国有化以降、日中がこの島と周辺海域をめぐって争う構図は全く変わっていません。

17年9月10日には中国海警局の4隻の船が尖閣諸島近辺の接続水域に入り、衆院解散前から10月5日まで(17日連続)中国船が尖閣近辺の海域に入ってきたことが確認されています。

中国船を映した動画では「CHINA CORST GUARD(中国海警)」と書かれ、その中には機関砲を備えた船も混じているので、要注意です(その後、10月10日にも尖閣付近の接続水域に中国船が侵入)。

10月2日には、アメリカのシンクタンク「CSIS」(戦略国際問題研究所)が東シナ海で中国が行っているガス田開発の分析結果を公表しました。

外務省は、日中中間線の中国側海域で16基の構造物を確認していますが、このシンクタンクは、さらに3個の採掘施設が増えたと指摘しています。衛星写真で19個の施設を確認し、「今年の7月から9月にかけて採掘施設の周辺で中国船の活動が活発化した」と述べています。

東シナ海では2008年に日中双方がガス田の共同開発に合意しましたが、その後、条約交渉が中断され、中国側が一方的に開発を続けています。日本政府の抗議を無視し、中国は東シナ海でガス田を開発し、尖閣諸島近辺に公船や漁船を送り続けているのです。

しかし、日本人の多くは、こういう出来事を「よくあることだ」と見るようになっています。

北朝鮮のミサイル発射実験と同じように、問題解決を先延ばしにすると、いつのまにか状況が取り返しのつかない事態にまで悪化する可能性が高いので、これは非常に危険な話です。

※領空侵犯も拡大中

13日には、防衛省統合幕僚監部が日本の領空に接近した外国軍用機に空自機が緊急発進(スクランブル)した回数を明かしました。

2017年度上半期(4~9月)で561回なので、前年度比で6%減ですが、2003年度以降でみるとナンバー2の回数なので、依然として高水準です。

緊急発進回数の対象国・地域別の割合は、中国機が51%、ロシア機が48%、その他が1%なので、ほとんどはこの二か国です。

防衛省が注目しているのは、H-6爆撃機が太平洋を北東進し紀伊半島沖まで飛行したことや、尖閣近辺の領海を侵犯した中国公船から、小型無人機らしき物体が領空侵犯した事案などです(詳細は「平成29年度上半期の緊急発進実施状況について」を参照)。

尖閣問題についての各党公約を比較

日本の領空と領海の双方が脅かされています。

そこで、各党は衆院選でどんなことを主張しているのでしょうか。

  • 自民党:領土・領海堅守に万全を期する。海上保安庁の海上法執行能力、海洋監視能力、海洋調査能力を強化
  • 公明党:多層防衛体制の着実な整備(公約に尖閣諸島についての記述は見られず)
  • 希望の党: 北方領土返還を目指し、尖閣諸島を守り、竹島も公正な解決を目指す。アジア太平洋地域における共生を重視する。
  • 維新の会:尖閣諸島、小笠原諸島等に対応する「国境警備法」を制定。領域における実効支配力を強化。尖閣諸島については中国に国際司法裁判所への提訴を促す。
  • 立憲民主党:領域警備法。憲法枠内で周辺事態への対抗強化
  • 共産党:領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ。

いちおう、各党がそれらしいことを言っていますが、大事なのは実行です。

今の安倍政権の姿勢は、海上保安庁が属する国土交通省に公明党の大臣を任命したことにも見てとれます。

公明党を率いる山口なつお代表は、2013年1月に訪中し、尖閣諸島をめぐる両者の争いについて、「将来の知恵に任せることは一つの賢明な判断だ」と述べました。

これは、「日本と中国が領土問題を棚上げにし、将来の世代に任せた」とする中国側におもねった発言です。山口代表は、尖閣を巡る領土問題も棚上げも認めない歴代政府の立場を無視したのです。

そうした代表を擁する公明党に国土交通省を委ねている安倍政権は、右派とみられながらも、本当は、尖閣で波風を立てたくないのでしょう。

そのせいか、自民党公約は、尖閣諸島の防衛に関してトーンダウンを続けています。

2012年には「尖閣諸島の実効支配を強化し、島と海を断固守ります」と公約しましたが、自民党は諦めたのか、今の公約には「実効支配の強化」という言葉が消えています。

「わが国の領土・領海の堅守に万全を期し」、「海上保安庁の海上法執行能力、海洋監視能力、海洋調査能力」を強化すると述べているだけなのです。

2012年に書かれた「『領海警備法』の検討を進めます」という言葉も見えません。2014年に「実効支配の強化」や「領海警備法」も消えたのですが、復活はならなかったようです。

※排他的経済水域(EEZ):漁業や天然ガスの採掘などに関して沿岸国の経済的な権利が及ぶ海域。政府は200カイリ(約370キロ)までをEEZと定めている。

※領海は沿岸から12カイリ(約22キロ)まで。接続水域は領海に接続する海域で、沿岸国が警察,関税,衛生などに関して一定の権限を行使できる

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地図出典:外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/

中国船は「サラミ戦術」で尖閣諸島を狙う

2016年の8月5日、中国海警の船が尖閣諸島近辺で領海を侵犯した時、接続水域に230隻あまりの中国漁船がいました(※領海は12カイリ内、接続水域は追加12カイリ内の海のことです)。

230隻もの漁船が迫ってきたので、かなりのインパクトがありましたが、その後は多少、尖閣から離れた場所で活動しているので、中国船は、近づいたり遠ざかったりしながら、自国の活動範囲を広げてきています。

中国船の活動には熱心に領土アピールをする時期と沈静化する時期があります。いつも多数の船を動員して相手の警戒心を高めるよりも、数に増減の波をつくり、数が減った時に相手を油断させながら、少しずつ、活動範囲を広げることを狙っています。

中国には陸の国境でも同じようなことがあるらしく、かつて中国兵は国境線の柵を一晩ごとに数mずつ移動させ、少しずつ国境を広げてきたという話を、筆者は元自衛官から聞いたことがあります。

これを海に展開したら、領海侵犯する船の数を増減させて、適度に油断させながら、勢力圏を少しずつ拡大させるという戦術になります。この、少しずつ切り取っていく手法は「サラミ戦術」と呼ばれているのです。

中国船の領海侵犯の記録を海上保安庁HPでは整理しています。

2012年から17年までのデータを見ると、領海侵入した船の数は同じぐらいの数ですが、接続水域に現れた船の数はかなり乱高下しています(以下、出所は海保HP「尖閣諸島周辺海域における中国公船等の動向と我が国の対処|海上保安庁」)。

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産経新聞(2017年9月9日)によれば、領海侵入は199日に及び、延べ633隻。海警は軍艦に準ずる重装備船(駆逐艦の主砲並みの76ミリ砲を搭載した船さえある)を含んだ200隻を保有。中国の党校機関紙「学習時報」では「(2013年秋に)東シナ海に防空識別圏を設定し、巡視船による航行を常態化させたことで日本による長年の『実効支配』を一挙に打破した」と自慢しているそうです。

これに対して、向田昌幸氏(日本水難救済会理事長)は「『警察権』に基づく外国公船への対処には限界があるし、法執行上の対処方針や法制面で課題がある。政治・外交的に有効な手立てがとられないまま時間が経過すれば、日本の有効支配がかすんでしまうだけだ」と警鐘を鳴らしています。

尖閣諸島近海の中国船は取り締まれない? そんな馬鹿な

しかし、「中国船を厳しく取り締まったら、戦争が起きたりしませんか」と怖がる方もいます。

そうした方のために外国の事例を紹介してみます。

韓国やインドネシアは中国の不法漁船を捕まえましたが、中国とは戦争になっていません。

韓国は2015年だけで、EEZ(排他的経済水域)に不法侵入した147隻の中国船を捕まえています。その内訳はEEZ規則違反が119隻、無許可操業が28籍です。

(※レコードチャイナ「黄海の韓国EEZ内で違法操業し拿捕された中国漁船、2015年は2割増」2016年1月14日)。

日本でも、法律でEEZの規則を定め、海上保安庁に権限を与えれば、中国の不法漁船を捕まえられるのです。

インドネシアは2014年10月から17年1月までに300隻以上の不法漁船を捕まえています。2016年に爆破処理した船の中に中国船(1隻)が入っていたことが注目されました。

(※インドネシアでは元実業家の女傑であるスシ水産海洋大臣が不法漁船の拿捕を押し進め、つかまえた船を爆破処理し、自国の海を守る姿勢を各国に知らしめている。日本のほうがよい装備を持っているのに、政治家の指導力不足で宝の持ち腐れになっている)

・・・

「国連海洋法は、どの国にも無害通航権を認めているから、中国公船を取締まれないはずだ」という疑問もあろうかと思います。

しかし、国連海洋法は「無害でない通航を防止するため、自国の領海内において、必要な措置を取ることができる」(第19条)とも定めています。

(※国連海洋法には「通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる」(第17条)という規定と有害行為を取り締まる規定の両方がある)

本当は、日本政府が「無害でない通航」の中身を法律で定めれば、領海侵犯した中国公船を取り締まることができるのです。

この「無害通航権」については、重大な誤解があります。

新聞やテレビ等では、中国の軍艦が日本の領海に入った時、「軍艦には領海での無害通航権が認められている」と説明することがあります。

しかし、これは「軍艦だから認められる」のではありません。日本が法律で「無害でない通航」の中身を明確にしていないから、中国軍艦の領海侵犯に対抗できず、放置しているだけなのです。

国連海洋法(19条)では、「沿岸国の防衛または安全を害する」ような「情報の収集を目的とする行為」は有害な行為とされています。

中国は軍艦を日本の領海に通航させ、将来の作戦のために海の情報を集めています。これは沿岸国の「安全を害する」行為です。

尖閣問題を解決するには防衛力全体の強化が必要

日本が中国の公船を取り締まれないのは、国連海洋法の「無害通航権」のせいではなく、本当は、日本の防衛力が軍拡の続く中国に劣勢になっているためです。

「中国海警局や人民解放軍の艦艇を取り締る」行為は、一触即発のリスクを伴います。そのため、有事に対応できる体制がなければ、取締りに弱腰になります。

そのため、領海侵犯を取り締りたいのならば、日本の防衛力全体を強化する必要がなります。

日米同盟を緊密化し、防衛費を倍増し、自衛隊に十分な能力(敵基地攻撃能力)を与えなければいけません。

その上で、日本政府が確固たる意志を示し、中国側に「数隻の公船のために日米と全面対決するのは損だ」と思わせなければいけないわけです。

「核武装していない日本が、核大国の中国に対抗できるわけがない。だから、中国公船の取締りも諦めたほうがよいのではないか」

そう思われる方もいるかもしれません。

しかし、冷戦期の歴史を見ると、核兵器を持たないスウェーデンがソ連の核搭載型の潜水艦を取り締った事例もあります

1981年にスウェーデン軍は、フィヨルド内に座礁したソ連の潜水艦を捕まえています。

ソ連は事故だと主張しましたが、スウェーデン軍はそれを認めず、ノルウェーやデンマークと連携し、以後、同じ行為があれば爆雷投下で全て撃沈することを通告の上、潜水艦を返還しました(カールスローナ事件)。

スウェーデンはNATO非加盟なので、日米同盟を持つ日本が中国軍艦を取り締まれず、放置し続けているのは、国内体制の不備と政治家のやる気のなさが原因なのではないでしょうか。

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