全投稿記事 海外情勢

中国と北朝鮮の関係を「毛沢東思想」で読み解く

更新日:

中国と北朝鮮との関係が「核開発」によって悪化しています。

習近平は国連総会にてプーチン大統領とともに北朝鮮への制裁に合意し、石油輸出を減らすことになりました。

金正恩は、本年に日米首脳会談や米韓首脳会談や、中国の大イベント(一帯一路サミット等)に合わせて弾道ミサイルを発射しています。

そのため、10月18日に始まる中国共産党大会に合わせてミサイル発射実験を行う可能性が警戒されています。

中国は制裁強化を決めましたが、金正恩は自国が世界の中心だと信じているせいか、まったく譲る気配は見られません。

なぜ、金正恩は中国にも譲らず、米国にも譲らず、核開発を続けるのか。

その謎を解くカギは「毛沢東思想」にあります。

北朝鮮は、貧困国でありながら核開発に成功し、その威力で独裁政権を守った「毛沢東時代の中国」をロールモデルとしている可能性が高いからです。

今回は、毛沢東時代の核開発の歴史を振り返り、今後の北朝鮮のありそうな動きについて考えてみます。

今の北朝鮮は毛沢東時代の中国に似ている

今の北朝鮮は、毛沢東政権の頃の中国と似ています。

  • 共産党支配だけでなく、個人崇拝的な独裁体制が敷かれている。
  • 国民は貧困ラインにあえいでいる(毛沢東政権も「大躍進」をうたった頃に2000万人以上の餓死者を出した)
  • 国民が飢えていても核開発だけに国力が投下されている
  • 通常戦力はボロいので、核戦力で米軍等から自国を守ろうとしている。
  • 核の威光で自国の国際的影響力を高めようとしている。

これが今、金正恩政権がやっていることですが、この内容は毛沢東政権の頃の中国にもあてはまります。

毛沢東は、当時、以下のような国家戦略を立てていました。

  • 通常戦力で競争しても米国やソ連に勝ち目はない。
  • 軍事力強化は、通常戦力よりも核兵器の確保を優先する。
  • 核開発が成功するまでは、中国内陸を攻める外国軍が来た時には「人民戦争」で迎え撃つ
  • 自給自足しながら戦える人民の兵士を大量に確保し、「人民の海」の中に敵を埋葬する。
  • 核開発成功後、その威力で中国共産党政権の正当性を各国に承認させる。
  • 中華民国を追い落とし、中華人民共和国が国連加盟国に成り代わる。

この項目を比べると、この二つの政権に共通点が多いことがよく分かります。

北朝鮮の「主体思想」(民族の自主性を維持するために人民は絶対的権威を持つ指導者に服従すべきだという考え方)は、金正恩の祖父である金日成から始まっています。

金日成は朝鮮戦争で毛沢東から絶大な支援を受けていました。

北朝鮮建国はスターリンと毛沢東の双方の支援があって成り立ったので、北朝鮮の個人崇拝型の体制が、毛沢東時代の中国とよく似ているのは当然です。

(毛沢東時代の中国では「毛沢東語録」をみなで読み、毛沢東を最大の偉人として祀る個人崇拝体制がつくられていました。今の習政権もこの路線に近づきつつあります)

中国は「毛沢東思想」で国際社会に台頭

中国は貧乏ながらも核開発に成功

毛沢東は1949年の建国の折に「中国人民は起ち上がった」と題して演説を行いました。

その演説では、1840年のアヘン戦争以来、帝国主義列強に侵略され、弱体化を続けた歴史を振り返り、「中国人民は二度と侮辱されることはない」と宣言し、失われた領土を取り戻す(台湾など)という国家目標を明かしています。

そして、「二度と侮られない国」になるために自国軍による防衛を訴え、毛沢東は核武装による強国化を目指します。

朝鮮戦争に参戦し、ソ連軍の支援を得たことで、中国軍と北朝鮮軍は一夜にして近代兵器を手に入れました。

その後、中国は核開発によってソ連の影響から離脱することを目指します。ソ連の支配下にあっては「二度と侮られない国」にはなれないからです。

当時、彭徳懐という将軍はソ連の援護を受けながら通常戦力を強化すべきだと訴えましたが、毛沢東はこれを容れず、核開発を優先させました。

この頃の毛沢東は「一皿のスープを皆で啜り合っても、ズボンをはかなくても、核開発をする」という恐ろしい発言をしています。

毛沢東政権が核開発を続けた1950年代末~60年代初期には、2000万人以上の餓死者が出ています(最近はもっと多く死者数を見積もる説が増えた)。

しかし、中国は1964年に核実験に成功し、初めての核ミサイル(東風2号A)を手に入れたのです。

当時は自給自足を目指して「人民公社」といわれる組織がつくられましたが、これができたのは、中国の限られた財源や資本、技術を核開発に集中投下するためです。

毛沢東は、この頃、米ソの核攻撃を受けた場合には、人民は農村につくった「人民公社」で生き延び、敵国と戦えと言っていました。

当時は軍事衛星で敵を見て、大陸間弾道弾を撃つ時代ではないため、核ミサイル等を破壊する際には、米国でも中国に地上部隊を送る必要があった時代だったのです。

そのため、毛沢東の「人民戦争」の構想は、米ソに対して、かつての日本軍のように中国大陸で泥沼の戦争に引きずり込まれる恐怖を抱かせることができました。

この構想は、当時は十分な抑止力がありました。

毛沢東は、結局、人民を満足に食べさせることよりも、核開発を優先したわけですが、歴史を振り返ると、毛沢東政権と金正恩政権があまりにもよく似ていることに驚かされます。

核ミサイル開発後に世界各国は態度を変えた

ここからが国際政治のややこしい部分ですが、中国の核開発の成功後、欧米諸国が態度を翻し始めます。

以下の年に中国との国交樹立がなされていきます。

  • 1964年:フランスと国交樹立
  • 1970年:イタリアと国交樹立
  • 1972年:オーストリア、ドイツと国交樹立。
  • 1972年:イギリスとの大使交換(英国とは54年に国交樹立済)

そして、1971年10月に中国は国連に加盟するだけでなく、中華民国の権利を受け継いだ常任理事国となりました(この時、中華民国側が怒り、国連から脱退)。

ベトナムで中国と間接的に戦い、手打ちを模索していた米国は、72年2月のニクソン訪中で事実上、中国を国家として承認し、日本も同年9月に承認。

1979年には正式に米中国交樹立となるわけです。

毛沢東は核の威力を実証。北朝鮮も同じ戦略を使う

核武装に成功したら、欧米諸国は態度を変える。

そして、核開発を放棄したら、リビアのように滅ぼされる。

北朝鮮の指導者たちは、こうした歴史を知っています。

核兵器を持った後の中国と欧米諸国は国交を結んでいます。

当時の中国とソ連は犬猿の仲なので、「敵の敵は味方」という論理で、ソ連と対抗するために中国の核が役に立つと見たためですが、これを独裁者から見れた時には「核のパワー」の前に跪いたという歪んだ解釈が成り立ちます。

中国の核開発成功⇒欧米の国家承認という歴史の過程を見てしまった北朝鮮が、核兵器を放棄することは考えにくいでしょう。

「核開発に成功したら、北朝鮮の世界での位置付けは変わるのだ」というのが歴代の金政権の指導者の考え方なので、発想は毛沢東によく似ています。

そのため、今後、中国が制裁を強化しても、北朝鮮は独自路線の外交は放棄しないでしょう。

そして、中国が核開発に成功後、ソ連の影響下から抜け出したように、北朝鮮もまた核武装に成功したら、中国の影響下から抜け出し、「主体」的な独自外交の実践を試みるものと推測できます。

人民の犠牲を顧みない北朝鮮の核は危険

毛沢東は核開発のために人民の犠牲を顧みませんでしたが、実際に核戦争を想定した場合でも、それは同じです。

毛沢東は核戦争で「半数の人が死んでもあと半数の人が生き残り、帝国主義は打倒される」と主張した人物です。

当時、ソ連のフルシチョフ書記長との間で以下のような会話が交わされたのです(平松茂雄著『中国、核ミサイルの標的』P65~68)。

 毛沢東は核兵器を『人類絶滅』と見るフルシチョフに対して、ソ連の核兵器で米国を挑発するという『瀬戸際政策』を採ることを主張したのだが、その文脈で、『中国は人口が6億人いるから、仮に原水爆によって半数が死んでも、三億人が生き残り、何年か経てばまた6億人になり、もっと多くなるだろう』と語ったことは、フルシチョフを強く刺激した。

『単なる聞きかじりだけで、核兵器のいかなるものかを知らない』人間の『非人間的な考え方』であり、『野獣の考え方』であると厳しく批判したといわれる。

要するに、全体主義国家の核兵器には、人民の犠牲を顧みずに発射ボタンを押せるという「強み」があるのです。

民主主義国の政治指導者は、たとえ戦争に勝っても、前述の決断をしたら、末代まで人道に反した犯罪者の烙印を押されかねません。そして、所属する政党は次の選挙で落選・解党の憂き目にあうというリスクがあります。

国民の票を集めて政治をする民主国の政治家は、そうやすやすと国民を犠牲にできないわけです。

その意味で、中国や北朝鮮のような一党独裁国が核兵器を持っているのは、恐ろしいことです。金正恩のように、個人崇拝型の指導者が核兵器を持っているのは、なおさら危険です。

今後、北朝鮮が続々と核戦力を強化した場合、「国民の支持を失ったら終わり」の韓国の大統領はそうやすやすと戦えないので、北朝鮮に対して劣勢になる恐れがあります。今は米韓同盟が地域のバランスを支えていますが、本年6月の米韓首脳会談で、有事の戦時作戦指揮権が韓国に返還されることが決まりました。

米軍は韓国軍の下には入らないので、これは有事の作戦指揮権は韓国に渡し、韓国軍主体で戦ってください、という意志表示です。

全体主義国の指導者が核武装することが危険だからこそ、トランプ政権の三軍人閣僚(※)らは憂慮を募らせ、軍事作戦の準備までし始めたとも言えます(※ケリー首席戦略官、マクマスター補佐官、マティス国防長官のこと)。

-全投稿記事, 海外情勢

Copyright© トランプ政権と米国株投資 , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.