オーストラリア

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オーストラリアETF

米国上場ETFの中でオーストラリア市場に投資するETFを比較してみます。

オーストラリア市場の可能性を考えるために、同国の経済力と近年の外交等についても整理してみましょう。

【IHD】【EWA】【EPP】(オーストラリアETF)を比較する

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今回、比較を試みる三つのETFは以下の通りです。

豪州ETFの概要

【IHD】iシェアーズ S&P/ASX 高配当株式ETF

豪州籍ETF。S&P/ASX Dividend オポチュニティーズインデックスに連動する投資成果を目指し、高配当の豪州大企業50社への分散投資を行う

【EWA】iシェアーズMSCIオーストラリアETF

米国籍ETF。MSCIオーストラリア・インデックスに連動する投資を行う。豪州大型株を中心に分散投資。

【EPP】iシェアーズ MSCIパシフィック(除く日本)ETF

米国籍ETF。MSCIパシフィック(除く日本)インデックスに連動し、豪州、香港、ニュージーランド、シンガポールの上場銘柄に分散投資。アジア太平洋のうち豪州に6割を投資。

豪州ETFの株価チャート

それぞれの株価の推移を見てみます。

【3か月チャート】

【3年チャート】

 

【5年チャート】

この三種の中では、EPPの株価伸び率がよいようです。

トータルリターン等

(以下、%は省略。利回り=税込み配当利回り、TR=トータルリターン。データはブルームバーグHP〔2018/3/31閲覧〕)

  IHD EWA EPP
直近配当額 0.174 0.559 1.228
配当利回り率 7.01 5.08 5.29
経費率 0.3 0.48 0.49
3か月TR -6.04 -4.96 -2.8
1年TR -3.64 1.98 8.52
3年TR -0.69 3.41 5.2
5年TR 2.07 0.57 2.93

IHDは長期で見たTRが高めになっていますが、最近の伸びはEPPが勝っています。

IHDは高配当をうたうわりには、直近配当が低いようです。

構成銘柄比率

構成銘柄の上位10位は以下の通り。これもデータはブルームバーグHP〔2018/1/14閲覧〕)

金融分野の企業が多いので、金融系に関しては「※」を省きました。

【IHD】:iシェアーズ S&P/ASX 高配当株式 ETF

  1. RIO(リオ・ティント):9.65 ※素材
  2. WES(ウェスファーマーズ):9.85 ※生活必需品
  3. CBA(オーストラリア・コモンウェルス銀行):8.68
  4. WBC(ウェストパック銀行):7.52
  5. NAB(ナショナルオーストラリア銀行):6.65
  6. FMG(フォーテスキュー・メタルス・グループ):5.87 ※素材
  7. AHY(アサレオ・ケア):5.71
  8. TGR(タッサル・グループ):5.52
  9. TAH(タブコープ・ホールディングス):3.73 ※一般消費財
  10. AZJ(オーリゾン・ホールディングス):3.19 ※資本財

★【EWA】:iシェアーズMSCIオーストラリアETF

  1. CBA(オーストラリア・コモンウェルス銀行):9.78
  2. WBC(ウェストパック銀行):7.54
  3. BHP(BHPビリトン):7.15 ※素材
  4. ANZ(ANZ銀行グループ):6.18
  5. NAB(ナショナルオーストラリア銀行):5.92
  6. CSL(シーエスエル):5.52 ※ヘルスケア
  7. WES(ウェスファーマーズ):3.68 ※生活必需品
  8. WOW(ウールワース・グループ):2.69 ※小売大手
  9. RIO(リオ・ティント):2.35 ※素材
  10. MQG(マッコーリーグループ):2.58

★【EPP】:iシェアーズ MSCIパシフィック(除く日本)ETF

  1. CBA(オーストラリア・コモンウェルス銀行):5.56
  2. 友邦保険控股 [AIAグループ]:5.78
  3. WBC(ウェストパック銀行):4.28
  4. BHP(BHPビリトン):4.06 ※素材
  5. ANZ(ANZ銀行グループ):3.51
  6. NAB(ナショナルオーストラリア銀行):3.37
  7. CSL(シーエスエル):3.14  ※ヘルスケア
  8. 香港交易及結算所:2.2
  9. DBSグループ・ホールディングス:2.12
  10. WES(ウェスファーマーズ):2.09 ※生活必需品

・・・

今後、豪州ETFが伸びるかどうかの参考として、オーストラリアの経済力等を見てみます。

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オーストラリアの経済力

オーストラリアの国力に関しては、外務省HP(オーストラリア基礎データ )が情報を整理していました。

  • 面積:769万2024㎢(日本の約20倍、アラスカを除く米とほぼ同じ)
  • 人口:約2413万人(2016年6月)
  • 首都:キャンベラ(人口約39.6万人:2016年6月)
  • 民族:アングロサクソン等欧州系が中心
  • 宗教:キリスト教61%、無宗教22%(2011年国勢調査)
  • 上院(定員76):保守連合29,労働党26,緑の党9,ワン・ネーション4,ゼノフォン・チーム3,他4,欠員1
  • 下院(定員150):保守連合76,労働党69,グリーンズ1,ゼノフォン・チーム1,他3
  • 名目GDP:1兆2239億米ドル(2015年)
  • 一人当たり名目GDP:50962米ドル(2015年)
  • 主要産業:第一次産業2.2%、第二次産業26.9%、第三次産業70.9%
  • 貿易総額:6693億豪ドル〔中国23.2%/米国10.5%/日本9.7%〕
  • 輸出:3166億豪ドル〔中国28.8%/日本13.4%/米国7%〕
  • 輸入:3527億豪ドル〔中国18.2%/米国13.6%/日本6.4%〕
  • 輸出品目:鉄鉱石15.5%/石炭11.7%/個人旅行サービス5.9%
  • 輸入品目:個人旅行サービス7.6%/乗用車5.8%/精製油5.2%
  • 1豪州ドル=85.93円=0.7567米ドル(2017年1月末時点)
  • 軍事予算:約382億豪ドル(2016~17年度予算)
  • 兵員数:58021名(2015~16年度)

注目すべきは経済成長が続いていることです。

「豪州経済は、1991/92年度から25年連続して経済成長を実現。2008年の世界金融危機、2011年のクイーンズランド州洪水被害の影響などからマイナス成長を記録した四半期はあるものの、資源ブームにも支えられ、年度ベースでは一貫して、プラス成長を維持し景気後退を回避。近年では、鉄鉱石など資源価格の大幅な下落による交易条件の低下が続いているものの、堅調な住宅投資、輸出などに支えられ、2015/16年度も実質ベースで2.9%の成長を維持。2016/17年度予算によれば、2016/17年度のGDP成長率は2.5%となり、2018/19年度には3.0%まで回復する見通し」

実質GDPと失業率は以下の通り。

【実質GDP成長率/失業率】

  • 2009~10年度:2.0%/5.2%
  • 2010~11年度:2.3%/4.9%
  • 2011~12年度:3.7%/5.2%
  • 2012~13年度:2.5%/5.7%
  • 2013~14年度:2.5%/6.1%
  • 2014~15年度:2.3%/6.1%
  • 2015~16年度:2.9%/5.8%

経済発展が続いているので、豪州の成長には期待が集まっています。

右肩上がりの成長が続いているので、うらやましい話ではありますが、ターンブル政権に変わって以降、複雑な状況になってきています。

JBPESSがフィナンシャルタイムズ紙(2016/12/20)から転載した記事(「オーストラリア経済、25年の不況知らずも終わり? 成長鈍化で財政赤字拡大、トリプルA格付けを失う懸念」2016.12.22)では、成長鈍化のなかで格付け維持を図る首相の困惑ぶりが報じられています。

 19日に発表された年度半ばの財政アップデートは、賃金と企業収益の鈍い伸びが経済に重くのしかかり、2019/20年度までの累計赤字が5月の前回政府予想より104億豪ドル(75億米ドル)拡大すると予想した。

国内総生産(GDP)成長は今年2%になると予想し、従来予想の2.5%から引き下げられた。政府の報告書は、財政収支が2019/20年度に100億豪ドル、GDPの0.5%相当の赤字になると予想している。それでもオーストラリア政府は、2020/21年度までに財政均衡を図る目標へのコミットメントを繰り返した。

経済成長と税収見通しが下方修正され、資金調達に支障が出ないよう、豪政府はS&P等の格付け機関にAAAの維持を呼びかけました。

近隣諸国との関係を見ても、東チモール共和国との海底石油ガス協定が破棄されたり、インドネシア軍との協力が停止したりと、微妙ないざこざが起きているようです。

ターンブル首相はもともと中国寄りですが、南シナ海問題の本格化に伴い、米軍の「航行の自由」作戦に肯定的な態度を見せています。

オーストラリア首相:ターンブル氏とは?

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(ターンブル豪首相。出所はWIKI画像)

そもそも、ターンブル氏はどのような人物なのでしょうか。

オーストラリア自由党を党首として率いるマルコム・ターンブル豪首相は1954年にシドニーで生まれました(62歳、誕生日は10/24)。

シドニー大学では人文科学と法学を学び、その後、オックスフォード大学に留学(法学専攻)しています。

75~79年まではジャーナリストを務め、80年以降は弁護士として働きました(88年頃まで)。

企業経営にも携わり、ターンブル&パートナーズ社社長(87~97年)、オズeメール社会長(94~99年)、FTRホールディングス社取締役(95~04年)ゴールドマン・サックス・オーストラリア会長兼社長(97~01年)、ゴールドマン・サックス社パートナー(98~01年)と手広く活躍しています。

(※企業経営や投資等を通じて自力で1億3300万ドルの財産を築いたとも報じられている。東亜日報日本語版「豪新首相にターンブル氏、財産1569億ウォンの大富豪」2015/9/16)

政治家になる前は弁護士や投資に関わる企業経営をしていたわけです。

そして、04年の10月に、シドニー東部のウェントワース選挙区にて下院議員(オーストラリア自由党)に選ばれます(その後、07年、10年、13年の三回の選挙で再選)。

第4次ハワード内閣では環境・水資源を担当し、首相付政務次官(06年1月~)、環境・水資源大臣(07年1月~)を務めました。

自由党が下野した後、財務や通信・ブロードバンド等を担当し、08年~09年には党首を務めていました(09年にアボット前首相に党首選で敗北)。

現政権では通信大臣(13年~15年)を務め、15年にアボット首相の支持率が下がると、ターンブルはアボット首相に退陣を迫り、党首選挙の実施を要求しました。

15年には中国を震源とした世界的な不況により、資源を中国に輸出したオーストラリアは打撃を受け、アボット首相の支持率が低下し、ターンブル氏にとって替わられたのです。

16年9月の選挙では54対44で勝利し、自由党党首となり、同月15日に首相がターンブル氏に交代しました。これはアボット首相との信頼関係を深めてきた安倍首相にとってはショッキングな出来事でした。

保守政党の党首を率いながらも、ターンブル氏はリベラル派です。

アボット前首相が復活させた「ナイト」と「デイム」の称号を時代遅れと見なして授与廃止を表明。同性婚支持や、オーストラリアの英連邦脱退(女王のいない共和制への移行)等を主張しています。

オーストラリアのターンブル首相の親中外交

アボット政権からターンブル政権に替わり、親中路線が目立ってきています。

もともと中国との貿易が緊密なオーストラリアでは反中外交は取りにくいのですが、前任者のアボット首相は中国と自由貿易協定を結びながらも、南シナ海問題では日米と連携し、安倍首相と同じく「法の支配」を訴えていました。

一方、ターンブル氏は戦後70年の講演で、中国をオーストラリアと共に日本と戦った同盟者と位置づけ、日本からの潜水艦購入を見送る(フランスからの購入に決定)など、中国寄りの動きが見られます。

2016年4月14~15日には1000人の随行団を率いての大規模訪中も行われました。

(フォーサイト「初訪中に『1000人随行団』:豪ターンブル政権の危うい『親中』姿勢」村上政俊 2016年4月21日)

(ターンブル首相は)「G20サミットに出席見込みであるにもかかわらず、それから約5カ月前にわざわざ首相就任後初となる訪中を敢行。外交上、国際会議出席による相手国訪問と2国間訪問では、後者が格上とされることから、今回の訪中で中国重視を打ち出した。また、約1000人の企業関係者が随行し、同政権の経済重視の姿勢が示された格好だ」

オーストラリアではダーウィン港が中国企業に「租借」されることが決まり、日米の安全保障上の不安要因の一つになっています。

「2015年10月、北部準州(Northern Territory)政府は、商業用港湾施設の99年間の使用権を、山東省に本拠を置く「嵐橋集団」に約5億豪ドルで与えた。創業者である葉成は、兪正声(中国共産党序列4位)が主席を務める中国人民政治協商会議全国委員会の委員で、ダーウィンへの投資は、習近平が打ち出している「一帯一路」の一環であるとしている」

この契約は99年間で「嵐橋集団」は人民解放軍と関係が深いとも言われています(「産経正論」2016.5.26井上和彦氏)。

オーストラリアではハワード首相⇒ラッド首相、アボット首相⇒ターンブル首相と、日米寄りと親中派の首相がたびたび交替しています。

同国の主たる資源輸出先が中国なので、オーストラリアは親中派が根強く、日米寄りの外交が続かないようです(オーストラリアの輸出額のうち、対中依存度は3割程度)。

16年2月~3月の世論調査では、オーストラリア国民の親中度の高さが産経ニュースでも報じられていました(「アジアの親友は?」に中国トップ 2016.6.28)。ローウイ国際政策研究所によれば、その順位は以下の通り。

  1. 中国:30%
  2. 日本:25%
  3. インドネシア:15%
  4. シンガポール:12%
  5. インド:6%
  6. 韓国:4%

そして、国内の人口比率でも、中華系の比率が4%を超えたことが報じられていました(「人口の4%、高まる中華系の影響力」2016.7.1)

豪州は経済の中国依存に加え、国内の政治面でも中華系住民の影響力の拡大に直面している。中華系は2011年の推計で86万人(豪州生まれ含む)、人口の約4%を占め、現在は100万人を超すとの見方もある。

豪州の華人は必ずしも中国本土の共産党政権の政治路線を支持しているとは限りません。しかし、中国本土とのつながりは深いので、この人口要因は無視できないでしょう。

オーストラリアと日本、米国との関係

ターンブル首相と安倍首相は何度か首脳会談を行っていますが、ターンブル首相は就任した15年の終わり頃に訪日しました。

その内容が外務省HP記事(「日豪首脳会談」平成27年12月18日)に報じられています。

経済分野では日豪EPAやTPP等を踏まえた経済の絆を強化やイノベーション分野でも協力深化、安全保障分野での共通の価値観と利益に基づく日豪協力を強化がうたわれ、豪州潜水艦計画への日本の協力に関しても意見交換が行われたのです。

しかし、結局は日本からの潜水艦採用はなく、2016年には米国のTPP脱退も固まったので、この合意の目玉となる二つの項目は、事実上、消滅しています。

そして、2017年1月14日の日豪首脳会談では日米豪3カ国の連携の重要性が確認されたことが報じられています(産経朝刊3面:2017/1/15)。

  • 「トランプ米新政権を含む3ヶ国で強固に連携することで一致」
  • 「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の意義と価値を米国に粘り強く訴える。TPP早期発効を目指す方針を堅持」
  • 「南シナ海問題や北朝鮮の拉致・核・ミサイル問題で認識を共有し、連携を強化」
  • 「防衛協力の促進に向け物品役務相互提供協定(ACSA)改定に署名。共同演習の円滑化を図る協定を年内に結ぶ協議を進めると確認」

合意内容を見る限り、防衛協力は実現可能性がありそうですが、TPPはトランプ政権発足後、微妙な雲行きとなりました。

その後、トランプ大統領は就任後に1月28日にターンブル豪首相と電話会談を行いましたが、その際にはパプアニューギニアとナウルにある難民収容施設から1250人の移民を米国に受けいれるというオバマ大統領との合意をターンブル氏が確認したところ、トランプ氏が「史上最悪の合意だ」と一蹴し、オーストラリアは「次のボストンマラソン爆弾テロ犯」を輸出しようとしている激怒。電話会議はわずか25分で終わったと報じられていました。

ただ、豪州と米国との関係は、のちに訪問したペンス副大統領によって修復が図られたようです。

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