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米国 外交軍事

米国の外交安保政策の概要を整理してみます。

トランプ大統領は11月のアジア歴訪に先立って「インド太平洋」という標語を持ち出しました。

「インド太平洋の時代」が来る?

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WSJ日本語版の社説(11/4)では、この標語についてのティラーソン国務長官のコメントを紹介しています(「トランプ政権のアジア太平洋戦略」)。

  • (ティラーソン氏は)先月、アジア地域の民主主義国間のより強い協力によって守られた自由で開放的なインド太平洋が望ましいと述べ、トランプ政権のアジア戦略の概要を明かした。
  • 国務長官はまた、法に基づく国際秩序を台無しにし、近隣地域内で「搾取的な経済活動」をしているとして中国を非難した。
  • その目的は、これまで平和の保証人として米国政府だけを頼ってきた米国の友好国や同盟国の間で安全保障のネットワークを構築することにある。
  • 日本、オーストラリア、インドは米国を含めた日米豪印戦略対話の設置に向けて動いている。
  • この4カ国同盟は米国のインド太平洋構想の礎となる可能性がある。

なぜ、これが必要なのかというと、米国の国防費は抑制されているが「中国の国防費は経済成長を上回る速さで伸び続けている」からです。そのため、インド太平洋諸国が国防費を増やし、勢力均衡を図る必要があるというわけです。

現在は北朝鮮問題がクローズアップされていますが、長い目で見れば、実際は中国の軍拡のほうが大きな問題です。アジアで米国に対抗しえるのは、現実的には中国しかないからです。

日米豪印の四カ国での軍事協力、アジア諸国の連帯による中国抑止というのは、数年前だと軍事小説の中で書かれているだけの話でしたが、最近は「そうでもしないと東シナ海と南シナ海での中国の横暴を止められない」という認識が広がりつつあります。

もともと同盟をつくらないインドを入れるのは難儀なのですが、最近はインドも海洋面では自国にさほど強みがないと見たのか、海洋国家三カ国(米豪日)との連携を深めています(インドはもともと大陸国家)。

その後、訪日時の記者会見でも、安倍首相がインド太平洋の重要性を指摘していました(出所:産経ニュース2017.11.6【日米首脳共同会見・詳報】)。

「アジア太平洋からインド洋を経て、中東アフリカに至るインド太平洋地域は世界の人口の半分以上を擁する世界の成長先端です。自由で開かれた海洋秩序の維持、強化はこの地域の平和と繁栄にとって死活的に重要であり、日米で自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を強化することで一致しました。揺るぎない日米同盟の下、トランプ大統領とともに手を携えて、この地域の平和と繁栄に向けて主導的な役割を果たしてまいります」

トランプ大統領も訪日時の横田基地での演説で、ここを強調していました。

(出所:President Talks to Troops at Yokota Air Base By Terri Moon Cronk)

【邦訳】

  • 米国と日本の隊員が肩を並べて、横田基地を日本と世界で最も有能な拠点の一つにした
  • 横田基地は、日米司令官がミッションを計画する際の調整の重要な中心地となっている
  • ほぼ60​​年間、我々がこの基地で見ている軍事同盟は、国家、この地域、そして実際には世界全体の主権、安全保障、繁栄の礎石に耐えてきた
  • 今日、我々はその遺産に敬意を表する。あなたがたが保護し、毎日成長している遺産に。
  • 米国は最高の装備だけでなく、最高の人員に支えられ、空、海、陸、宇宙を支配している。
  • 米軍のメンバーは戦士の信条を体現し、その献身と誇り、プロ意識が世界史上、最強の戦闘力を構成している
  • 私が大統領である限り、国民を守る軍人の男女は、敵国に断固として迅速に対応するために必要な装備、資金を手にすることになる
  • 「戦う、圧倒する、いつも勝つ」。これは、アメリカ軍の遺産である。
  • これは、世界平和と正義に対する最大の力だ。
  • 自由貿易国は強固な国家でなければならない。
  • 米国は強力な軍事力で同盟国の平和への関与の更新を歓迎する。
  • われわれはこの地域の人々を含め、世界各国の平和と安定を求めている。
  • 前任者と同じように、今日の米軍のメンバーは、米国、日本、世界中の人々の夢への脅威に対する最後の砦となる勇敢な戦士たちだ。
  • 米軍は、自由と調和の中で生活したいと望む人々にとって最大の希望である。
  • 彼らは無実の人を狙う独裁者や独裁者にとって最大の脅威である。
  • 米国民が今月退役軍人の日を祝うように、我々は平和と安定のために献身した全ての人々を尊敬する。
  • 米軍は制服を着用し、国に奉仕した全ての誇り高いアメリカ人に敬意を表する。
  • 今日、インド洋と太平洋の多くの国々は、米軍のメンバーの奉仕、そして味方の犠牲に支えられて繁栄しているのだ。

※関連記事①:2017年の日米関係 主な出来事を一覧

※関連記事②:マティス国防長官 主な発言一覧(訪日、訪韓、アジア歴訪)

※関連記事③:国防総省アジア担当 ランドール・シュライバー次官補とは

・・・

その後、トランプ政権は12月18日(米国時間)に新しい国家安全保障戦略を公開します(マクマスター国家安全保障担当補佐官が起草を主導)。

2015年ぶりに更新された安保戦略では、中国やロシアが米国が守る秩序に挑戦する「現状変更勢力」として描かれ、北朝鮮やイランが「ならず者体制」とみなされました。

米国は中露が影響力を拡大する地域では「競争的関与」を進め、米国は脅威に対抗するために同盟国と連携し、同盟国にも一層の役割の拡大を求めることが決まりました。

この中身を踏まえ、トランプ政権の外交・安保政策を見てみましょう(出所:new-national-security-strategy)。

米国の新しい国家安全保障戦略【要旨】

  • ”我々の政府の最初の義務は、国民のニーズに応え、彼らの安全を確保し、権利を保護し、彼らの価値観を守ることだ”(※トランプの発言)
  • 新しい国家安全保障戦略は世界での米国の優位を取り戻し、わが国の偉大なる力を建設する。
  • 戦略は、4つの重要な国益(「4つの柱」)を次のように特定する。
    1:米国本土、米国民、米国の生活様式を守る。
    2:米国の繁栄を促進する。
    3:力を通して平和を保つ。
    4:米国の影響力を促進する。
  • この戦略は、世界での我々の立脚点に影響を及ぼす主な挑戦とトレンドを説明する(以下、脅威を列挙)
  • 中国やロシアのように、技術、プロパガンダ、強制力を用いて、我々の利益と価値に反した世界を形成する現状変革勢力
  • テロを広げ、隣人を脅かし、大量破壊兵器の獲得を求める地域の独裁者
  • 邪悪なイデオロギーの下に罪なき者への暴力を誘発する憎悪をまき散らすジハード主義のテロリスト。薬物や暴力を我々の共同体に流出させる超国家的な犯罪組織。
  • この戦略は、大統領の現実主義の概念を進化させる。
  • 現実主義こそが、国際政治における権力の中心的役割を認め、強い主権国家が平和な世界への最良の希望であることを主張し、国益を明確に定義しているからだ。それは、世界中の平和と繁栄を広げる米国の原則を広めることに基づくものだ。

米国本土を守る(PROTECT THE HOMELAND)

  • 大統領の基本的な責任は、米国民と本土、米国の生活様式を守ることだ。
  • 我々は米国本土と主権を守るために、国境の管理を強化し、移民制度を改革する。
  • 国境を越えた米本土への脅威は以下の通りだ。
  • ジハード主義のテロリストは、野蛮な残虐性をもって殺人と弾圧、隷属を強制し、仮想ネットワークで弱者を悪用し、刺激を与えて犯行を指示する。
  • 国境を越えた犯罪組織は薬物や暴力で共同体を破壊し、民主的機関を腐敗させて同盟国を弱らせる。
  • 米国はその脅威を標的にしている。我々は彼らが国境に到達したり、国民に害を与えたりする前に、脅威に直面している。
  • 新技術と新たな敵が新しい脆弱性を生み出すため、我々は重要なインフラストラクチャーとデジタルネットワークを守るための努力を倍増させる。
  • 我々は、ミサイル攻撃から米国を守るために、多段階のミサイル防衛システムを導入している

米国の繁栄を促進する(PROMOTE AMERICAN PROSPERITY)

  • 強い経済は米国民を守り、米国の生活様式を支え、米国の国力を支える。
  • 我々は米国の労働者と企業の利益のために米国経済を活性化させる。それが我々の国力を回復するために必要だからだ。
  • 米国はもはや慢性的な貿易上の不正行為を容認できない。自由で公平で相互的な経済関係を追求する。
  • この21世紀の地政学的競争に勝つためには、米国は研究、技術、イノベーションを指導しなければならない。
  • 我々は国家安全保障上のイノベーションの拠点を、我々の知的財産を盗み、自由社会の革新を不公正に悪用する人々から守る。
  • 米国は開放された国際市場と経済活動を促進するエネルギーアクセスの多様化、安全保障を守るために、エネルギー支配を利用する。

力によって平和を保つ(PRESERVE PEACE THROUGH STRENGTH)

  • 米国は強くなり、再生され、若返り、平和を保障し、敵意を抑止する。
  • 我々は米国の軍事力を再構築し、いかなる国にも引けを取らないようにする。
  • 米国は外交、情報、軍事、経済にわたる新時代の戦略的競争において、国益を守るためにあらゆる政治的手段を用いる。
  • 米国は宇宙やサイバー空間を含んだ数多くの分野でその能力を強化する。見落とされてきた能力を再活性化する。
  • 米国の同盟国と友好国は、我々の力を拡大し、我々の共通の利益を保護する。
  • 我々は彼らが共通の脅威に対処する責任をもっと担うことを期待する。
  • 我々は世界の中で米国の友邦が位置するインド太平洋、欧州、中東等の主要地域で勢力均衡を維持する

※関連記事:日系人初の米太平洋軍司令官 ハリス大将の素顔

米国の影響力を高める(ADVANCE AMERICAN INFLUENCE)

  • 歴史の中で善のための力として、米国は国益と人類への恵みのためにその影響力を駆使してきた。
  • 我々は米国民を守り、繁栄を促進するために、海外への影響力を強化し続けなければならない。
  • 米国の外交と開発のための努力は、二国間、多国間、情報等、あらゆる分野でより良い結果を求めて競争する。米国の利益を守り、米国民にとって新たな経済的機会を見つけ、我々の競争相手に挑戦する。
  • 我々は自由市場経済、民間セクターの成長、政治的安定、平和を促進するために、友好国との連携を模索する。
  • 我々は法の支配や個人の権利を含んだ我々の価値を擁護する。それは強く、安定し、繁栄した主権国家のためのものだ。
  • 我々の米国第一の外交政策は世界での米国の影響力を称賛する。それは平和、繁栄、発展し成功した社会の基本的な条件を形づくる積極的な力だ。

国家安全保障戦略(本文抄録)

中国、ロシア、イラン、北朝鮮への評価

  • 中国とロシアという現状変革勢力、イランと北朝鮮というならず者国家、ジハード主義テロリスト団体等の多国籍の脅威組織の3つが米国と同盟国、友好国の脅威となり、積極的に競争している。
  • 中国とロシアは米国の価値観や利益に反する世界をつくろうとしている。
  • 中国は、インド太平洋で米国に代わり、国家主導型の経済モデルの範囲を拡大し、地域を再編成しようとしている。
  • ロシアは大国としての地位を回復し、国境近辺で影響圏を確立しようとしている。
  • 今日、世界に惨劇をもたらしているのは、自由で文明化された国の原則に違反するならず者国家だ。
  • イランの政権は世界中のテロリズムを後援している。
  • より強力な弾道ミサイルを開発し、米国と同盟国を脅かしうる核開発を再開する可能性がある。
  • 北朝鮮は、人間の尊厳を無視した無慈悲な独裁政権が統治している
  • 25年以上、核兵器と弾道ミサイルを、あらゆる約束を違反して追求してきた。
  • 今日、これらのミサイルと武器が米国と同盟国を脅かしている。
  • われわれは、大量破壊兵器の増殖と開発を決定した国々からの脅威を無視し、そのような脅威がより深刻になるのを防ぎ、我が国の防衛策を減らすことができなくなる。

※関連記事:米韓同盟の攻撃計画 今後の北朝鮮のシナリオとは

米国の抑止力強化

  • 国家安全保障上の脅威が増えたにもかかわらず、米国は軍隊の規模を劇的に縮小した。その規模は1940年以来の最低水準だ。
  • 重要な能力を開発する代わりに、統合軍は新しい兵器システムの取得が厳しく制限された10年近くの「調達休暇」に入った。
  • 強制削減の継続的な決議に代表される、連邦政府の年次予算策定プロセスは、脅威が増大する時期に米国の軍事的支配力の侵食に寄与した。
  • 統合軍は、米国に対するあらゆる脅威を抑止し、撃退できなければならない。

米軍の核兵器を維持する

  • 米国は現在のニーズを満たし、予期せぬリスクに対処する核戦力の構造を維持する。
  • 我々は他国の核兵器と合わせる必要はないが、敵対者を抑えられる核備蓄を維持しなければならない。同盟国や友邦を守る。抑止が失敗した時に米国の目標を達成する。
  • 米国の原子力とインフラの近代化:我々は、効果的かつ安全な核トライアド(爆撃機、原潜、ICBM)を維持し、将来の国家安全保障上の脅威に対応するために必要な科学的、工学的、製造的能力を確保するために、原子力企業を近代化する。

安定した抑止力を維持する

  • 誤算を避けるために、米国は予測可能な関係を構築し、核のリスクを削減するために他の国と協議する。
  • 戦略的安定に寄与し、検証可能な場合には、新たな武器による支配を検討する。
  • 我々は、敵対者が核爆発や無責任な核の脅威を利用して米国、同盟国、友邦を脅すことは許さない
  • エスカレーションの恐れは、米国が我々の重大な利益や同盟国、友邦を守ることを妨げない
  • 米国は、宇宙におけるリーダーシップと行動の自由を維持しなければならない。
  • 通信と金融ネットワーク、軍事・インテリジェンスシステム、気象監視、ナビゲーション等には宇宙における設備が必要だ。
  • 米国の宇宙への依存度が高まるにつれ、他の勢力も宇宙に立脚したシステムや情報にアクセスしてきた。
  • 政府と民間企業は、従来より低コストで衛星を宇宙空間に打ち上げる能力を持っている。
  • 画像、通信、ジオロケーションサービスからのデータの融合により、以前に利用できなかった情報にアクセスできるようになった。
  • この「宇宙の民主化」は、米国の作戦能力に影響を与える。
  • 多くの国が、独自の戦略的軍事活動を支援するために衛星を購入している。
  • ある国は、宇宙資産で他国を打ち負かす能力が非対称的な優位性を生み出すと見て、一連の反衛星兵器(ASAT)の確保を追求している。
  • 米国は宇宙への自由なアクセスと活動が極めて重要だと考えている。
  • 宇宙での重要な設備に対する有害な干渉や攻撃はこの重要な米国の関心事に直接影響を及ぼす。これに対しては、我々が選んだ時間、場所、方法、領域で慎重に対応する。

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