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飲食と税金 軽減税率8%でどう変わる

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2017年の衆院選では消費税を10%に上げるかどうかが問われ、自公政権が勝利しました。

そのため、2019年には10%増税とともに「軽減税率」(8%)が導入されることになるでしょう。

言葉だけを見ると、飲食にかかる「軽減税率」というのは、何だかとてもありがたい制度のように見えます。

しかし、その内実はあまり知られていません。

「軽減税率」の導入を功績として宣伝するのは公明党ですが、果たして、この制度の実態とは、どういうものなのでしょうか。

 飲食にかかる軽減税率

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軽減税率というのは、パンやお米、野菜のように、みながよく買う飲食物等の消費税率を低くする制度です。

消費税が10%になっても、よく買う必需品の税率が8%だったら、負担は軽くなるという考え方です。

国税庁によれば、その税率と対象は以下の通りです。

【税率】

  • 消費税率等 標準税率は 10% (消費税率 7.8%、地方消費税率2.2%)
  • 軽減税率は8% (消費税率 6.24%、地方消費税率1.76%)

【対象品目】

  •  酒類・外食を除く飲食料品
  •  週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)

軽減税率の対象:その分類基準

問題は何を「飲食料品」とみなすかどうかですが、その解釈のラインが難しいようです。

それを「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」で見てみます。

(以下、出所は「制度概要編」と「個別事例編」)

「飲食料品」とは何ぞや

 「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除きます。)です。

ここでいう「食品」とは、人の飲用又は食用に供されるものをいいますので、例えば、工業用として販売される塩など、人の飲用又は食用以外の用途で販売されるものは該当しません。

同じ「塩」でも「飲用・食用」ならば軽減税率になりますが(8%)、工業用で売ったら10%の税率になるのです。

また、コンビニやスーパーで売っている「ミネラルウォーター」は税率8%ですが、家庭用の水道水は税率10%になります。飲食用の水は軽減税率の対象ですが、飲料と生活用水を兼ねた「水道の水」は対象外になるのです。

では、氷はどうか。

こちらは「かき氷」などの食用の氷は8%ですが、保冷用の氷は10%になります。

「酒類」と「医薬品等」

そして、酒でも酒税法でいう基準をクリアするか否かで境界線が引かれます。

たとえば、ノンアルコールビール(アルコール1%未満)なら8%、普通のビールなら10%の税率です。

「みりん」であれば、アルコール度1%未満の調味料は「飲食料品」なので8%。しかし、酒と認定されるものは10%になります。

さらに、添加物は軽減税率の対象。

医薬品等は軽減税率の対象になるかならないか、というバトルが始まります。

「食品」とは、全ての飲食物をいい、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する「医薬品」、「医薬部外品」及び「再生医療等製品」を除き、食品衛生法に規定する「添加物」を含むものとされています

栄養ドリンクだったら、その成分を調べて、これは「医薬品等」だから税率10%、これは「食品」だから8%という区分けをしなければいけません。これは栄養サプリメント等でも同じです。

要するに、リポビタンDの税率は8%か10%かという問題が浮上するわけです。どちらになるかで売り上げが変わるので、メーカーからすれば、大変な問題です。

サプリメントをたくさん売っているファンケルとかも大変なことになります。

「テイクアウト」が意味するものとは

これは品目別に見た話ですが、そのほかにも、飲食品をどこで出したら軽減税率がかかるのか、というやっかいな問題があります。ファストフードなどで、店内で食べるのか、テイクアウトかどうかは、という問題です。

軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」とは、飲食店営業等を営む者が飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいいますが、いわゆる「テイクアウト」など、「飲食料品を、持ち帰りのための容器に入れ、又は包装を施して行う譲渡」(以下「持ち帰り」といいます。)は、これに含まないものとされています

「おい、何だそれ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

店内で食べたら10%、家に持ち帰ったら8%になります。最近ではコンビニでも店内で食べられますから、食べ物を買うたびに、わざわざ、店内ですかお持ち帰りですか、と確認が必須になるのです。

昼休みのコンビニの待ち行列がますます長くなるのです。

そして、屋台の焼きそば等を簡易な設備で食べさせた場合は軽減税率には該当しなくなります。

立ち食いなら8%、屋台近辺のテーブルで食べたら10%です。

軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」とは、飲食設備がある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいい、「飲食設備」とは、テーブル、椅子、カウンター等飲食料品を飲食させるための設備をいいます。屋台のおでん屋やラーメン屋で、テーブル、椅子、カウンター等の飲食設備で飲食させている場合は、軽減税率の適用対象となりません

なんじゃそれ・・・。

お客様のために食べる場所を提供したら軽減税率が適用されなくなるのか・・・。

軽減税率がかからないと売上に響くので、売り手は意味不明なルールでも従わなければなりません。何から何までお役所の基準が商売にあてはめられる感が満載です。

そして、このあいまいな境界線の中、全ての物の売り買いで、いちいち、税率は8%か10%かとチェックをしなければいけなくなります。

「包装材料等」はどうなる

そのほか、ややこしいのは、飲食物の包装品も軽減税率に入れるかどうかという判断基準があります。

飲食料品の販売に際し使用される包装材料及び容器(以下「包装材料等」という。)が、その販売に付帯して通常必要なものとして使用されるものであるときは、当該包装材料等も含め軽減税率の適用対象となる「飲食料品の譲渡」に該当します。

ここでの通常必要なものとして使用される包装材料等とは、その飲食料品の販売に付帯するものであり、通常、飲食料品が費消され又はその飲食料品と分離された場合に不要となるようなものが該当します。

なお、贈答用の包装など、包装材料等につき別途対価を定めている場合のその包装材料等の譲渡は、「飲食料品の譲渡」には該当しません。

わかりにくい用語ですが、普通のビニールや紙等で包装している場合は軽減税率に該当します。

しかし、包装品自体が単独で商品価値を持つような場合は話が違ってくるようです。

軽減税率のメリット:1.3兆円の税負担が減る

試算の仕方にもよりますが、軽減税率で1兆円程度の税負担が減るとも言われています(出所:2015.11.24 混迷する軽減税率の制度設計 | 小黒一正 / 浦田秀次郎)。

 仮に「酒を除く飲食料品」を対象とすると,税収増は4.1兆円(=5.4兆円-1.3兆円)に減ってしまう。つまり,これは24%もの税収ロスであり,同じ5.4兆円の消費税収を得るためには,消費税率を10.6%(=8%+2%÷(1-0.24))まで引き上げる必要がある。

しかし、1.3兆円の税収減になるので、教育無償化等を大規模に行うと、その分、どこかで税率を上げなければいけなくなります。

軽減税率のデメリット:企業の事務負担の増加

軽減税率は買い手としてみたら、8%で助かる面はありますが、売り手の側に立つと、大変なことになります。

売る時に軽減税率かどうかの確認が面倒です。

さらに、課税が8%か10%かという事務負担が増えます。

多くの人は買い手であると同時に、企業では売り手になっています。

自分が売り手として働く時のことを考えると、軽減税率というのは、げんなりする仕組みです。

手間のかかりすぎるので、円滑な商売が難しくなります。

事務負担の費用が企業にかかり、軽減税率が認められる商品が有利になるので、どの業界も政府に軽減税率の適用を求めるようになります。

そして、役所がそれを認めるかで企業の存亡が左右されます。

その結果、役所の権限が大きくなります。

さらには、役所に口ぎきする政治家に企業が頭を下げなければいけなくなるかもしれません。

軽減税率には、企業の事務負担倍増という代価があることは見落とせません。

軽減税率は必ずしも格差是正につながらない

いちおう、この軽減税率は低所得者層対策という位置づけです。

しかし、そこには疑義も出されています。

その代表的な論者は法政大学の小黒一正教授です。

その試算を見てみます。

(出所:「混迷深める軽減税率、導入は絶対阻止するべし! 」:日経ビジネスオンライン)

総務省(2014)「家計調査」によると、2人以上世帯(勤労者世帯に限る)の年収別の消費支出は、年収436万円未満の世帯で月額25.1万円(うち食料6.1万円)、年収906万円以上の世帯で月額42.8万円(うち食料8.7万円)である。

2015年の記事なので、2017年4月の消費増税(8%→10%)の際に、食料に軽減税率(8%)がかかるケースを想定しています。その試算を見ると、以下の減税規模になりました。

  • 年収436万円未満の世帯:1.46万円(=6.1万円×2%×12か月)
  • 年収906万円以上の世帯:2.08万円(=8.7万円×2%×12か月)

要するに、高所得世帯は高くていいものを買うので、その分だけ減税幅が大きくなるわけです。

必ずしも格差是正につながるわけではありません。

軽減税率と大判振る舞いのマニフェストは矛盾する

この軽減税率を強調しているのは公明党です。

しかし、公明党の政策を見ると、お金がかかるものが並んでいます。

  • 0歳から5歳までの幼児教育無償化の実現。
  • 年収590万円未満の私立高校授業料の実質無償化。
  • 所得の少ない低年金者を対象に、最大月額5000円(年6万円)を恒久的に支給
  • 介護保険料の軽減
  • 保育の受け皿を約32万人分拡大。

公明党がいう幼児教育無償化は、保育所と幼稚園の違いを無視し、その全部を無料化します。

この通りに全部を無償化すれば、保育園や幼稚園を利用したい人が増えます。

しかし、現状では保育所が足りないので、自民党と公明党は、さらに政府がお金を出して保育施設を拡大すると言っています。

これはさらに国のお金が必要になるプランです。

自民党の場合、生活に困っている人に対して0~2歳児の保育園や幼稚園の費用を無償化すると言っていますが、公明党の場合は、そうした制約はありません。

結局、自民党以上に増税が必要になってしまいます。

しかし、公明党が訴えるのは軽減税率の実現です。

その結果、どこかの時点で「さらなる増税をお願いします」という話になるのではないでしょうか。

軽減税率の結論:フリーランチはない

こうしてみると、あまり負担が「軽減」されない気がしてきます。

税率軽減のはずが企業の事務負担の倍増。

買い手が楽になっても売り手の負担が増すわけです。

そして、同じ人がある局面では買い手、別の局面では売り手になるのでプラスマイナスはゼロかもしれません。

格差是正効果はない。

そして、税収減は未来の増税を招く可能性が高い。

要するに、飲食物2%分が何の負担もなく安くなるという、フリーランチは存在しないわけです。

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