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トランプVS民主党 大統領罷免が難しい理由

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2017年10月24日には、ワシントンポスト紙の報道で、2016年にヒラリー陣営と民主党全国委員会(DNC)がトランプ陣営とロシアの関係を調べるために調査会社に資金提供をしたことが明らかになりました。

16年4月に民主党側に協力したマーク・エリアス弁護士は調査会社のフュージョンGPSにトランプ陣営とロシアの関係を調査することを依頼し、投票日の直前まで民主党が支払いを続けていたのです。

この会社は予備選中に共和党の別の候補者から類似の依頼を受けていました。

トランプ氏の政治、資金、性的な内容を含むロシア疑惑のネタ(ロシアで豪遊し、乱痴気騒ぎをした等)がねつ造である可能性が指摘され、10月29日には、米共和党のスーザン・コリンズ上院議員がCBSテレビにて、民主党に資金提供者を明かすべきだとも発言しました。

これに対する反撃なのか、今度はCNN(2017/11/24)がロシア疑惑に関して、「フリン前補佐官、トランプ氏弁護団との情報共有中止」と題したニュースを公開しています。

  • 「フリン前米大統領補佐官の弁護団がトランプ大統領などの法律チームに対し、これ以上情報を共有することはできないと伝えた」
  • 情報共有を中止したことについて、情報筋は「マラー特別検察官主導の捜査で有罪を認める用意がフリン氏の側にあることを示している可能性もあると指摘した」
  • CNNによれば、「マラー特別検察官の捜査で息子が法的に処分される可能性についてフリン氏が懸念している」という。

今回はこの経緯を踏まえて、トランプと民主党のバトルの行方について考えてみます。

ロシア疑惑の論点

ロシア疑惑では、幾つかの論点で真偽が問われています。

  • 大統領選中にトランプ陣営がロシアに「選挙干渉」を通して支援をもちかけ、その見返りに対露制裁緩和を裏で協議したのか。
  • ロシア関連で怪しいカネの流れがあったのか。
  • ロシアに機密情報を漏らしたのか。
  • 5月のFBI長官(コミー氏)解任は司法妨害ではないのか。

16年夏に民主党全国委員会へのサイバー攻撃で同委員会幹部らのメールが流出し、クリントン敗北後にオバマ氏がロシアはサイバー攻撃を行ったと断定したので(根拠は情報機関の調査)、これは、選挙で敗れた民主党とマスコミによる報復になってきています。

(「ロシアゲート」とも言われるのは、トランプ政権とロシアとの怪しい関係を1970年代にニクソン大統領が対立候補を盗聴して辞任した「ウォーターゲート事件」になぞらえるため)。

「ロシア疑惑」を作り出したのは民主党?

しかし、17年10月に、ロシア疑惑の発端とされる秘密文書が民主党側の委託で作成されたことが明らかになりました。

古森義久氏(産経新聞・ワシントン駐在客員特派員)は「ロシア疑惑の主犯は民主党だった」(『Voice』2018年2月号)にて、その経緯を報じています。

  • トランプがモスクワで乱痴気騒ぎをしたことをロシアの情報機関に記録され、脅されてクリントン打倒のためにロシアと共謀して選挙操作に関わったと書かれている「スティール文書」(元英諜報機関工作員のクリス・スティール氏が執筆)はワシントンの政治調査企業「フュージョンGPS」が同氏を雇って作成したもの。
  • ロシア疑惑を調査する下院情報委員会がGPS社代表のグレン・シンプソン氏に尋問し、同社の銀行口座を調べたら、スティール文書はGPS社が16年4月にクリントン選対と民主党全国委員会に雇われた法律事務所から委託され、作られたことが分かった。
  • その法律事務所に努めるマーク・エリアス弁護士はクリントン選対と民主党全国委員会の法律顧問であり、その報酬の一部をスティール文書作成費としてGPS社に払った。
  • この怪文書は大統領選の間、噂で流れ、大統領就任前に「バズフィード」やCNNテレビがまるで事実であるかのように報じていたが、その作成元は民主党に行き着いた。

要するに、単なる怪文書の類にすぎないものがまるで事実であるかのように扱われていたわけです。

さらに、その作成元が民主党に行き着いたわけですから、極めて悪質な話です。

ロシア疑惑に関しては幾つかの論点が挙げられていますが、このフュージョン文書に関わるものは、与太話と見たほうがよいでしょう。

トランプジュニアとクシュナー

そこで、他の論点を取り上げてみます。

17年7月には、大統領選の頃にトランプ・ジュニア氏がロシア政権の意向を受けた面々と接触し、選挙を歪める情報工作を行ったのではないか、という疑惑が浮上しました。

トランプ・ジュニア氏は7月11日に、クリントン元国務長官に不利な情報を提供すると称して接近してきたロシア人弁護士のナタリヤ・ベセルニツカヤ氏と16年6月に面会するまでの経緯を記したメールを公表。

そこでは、トランプ大統領の知人であるロブ・ゴールドストーン氏(音楽プロデューサー)がクリントン氏に不利な情報をロシア側が提供すると提案し、トランプジュニア氏が”I love it"と答えていました。

さらに、トランプタワー建設で提携しようとしたアラス・アガラロフ氏(ロシアの資産家)やその息子(エミン氏)もその試みに加わっていたのです。

この件は9月7日の上院司法委員会(非公開)で委員によって取り上げられました。

ナタリヤ氏はロシア政府に近く、大統領選干渉において、ロシア政府とトランプ陣営との「共謀」があったかどうかが疑われていたため、トランプジュニア氏の取り調べで真相が判明するのではないかと「期待」されていたわけです。

しかし、トランプジュニア氏は、この事情聴取で「ロシアとの共謀を否定」(時事ドットコム 2017.9.8)します。

「大統領候補の適性、性格、資質に関してはできる限り情報を聴取すべきだと考えた」が、「私はいかなる外国政府とも共謀しておらず、共謀した人物も知らない」と答えています。

この件では、ナタリア弁護士ら3名と、トランプ・ジュニア氏とクシュナー氏(トランプ氏娘婿)が面会していましたが、クシュナー氏は10分程度でそそくさと退席。

即座に退席したのは「ドラ息子のバカ騒ぎには付き合いきれぬ」と判断したからなのかもしれません。

その後、クシュナー氏もこの件の説明を求められ、7月24日に上院情報委員会で2時間半の証言を行っています。

ナタリア氏の件での潔白と、16年4月と11月の駐米ロシア大使(セルゲイ・キスリャク氏)との会合でも共謀した記憶はなく、電話記録もないことを主張。ロシア国営の開発対外経済銀行(VEB:米の対露制裁の対象)のトップ(セルゲイ・ゴルゴフ氏)との政策協議の存在を否定しました。

米大統領の司法妨害の有無

そのほか、ロシアゲートに関しては、モラー特別検察官が 、2017年5月にトランプ氏がロシア疑惑捜査を担当していたコミー前FBI長官を解任したことが疑惑捜査への「司法妨害」に当たるかに注目しています。

ロシア疑惑では、トランプ大統領がコミーFBI前長官に語ったとされる内容が問題視されているからです。

  • 1月27日:ディナーで大統領は「私には忠誠心が必要だ。忠誠心を期待している」と発言
  • 2月14日:オーバルオフィスミーティングでテロ対策のブリーフィング後に、大統領が「彼は良い男だ。多くの仕事をした」「見逃してやってくれ」等と発言。
  • 3月30日:電話で大統領はロシア疑惑が国のためのディール(取引)を妨害していることを強調。フリン氏が調査されないようにする手立てをコミー氏が見つけることを希望した。

(出所:Read: James Comey's prepared testimony before the Senate Intelligence Committee Thursday - Vox

ロシア疑惑でトランプ弾劾ができない理由

11月には、フリン氏の件が再浮上しました。

しかし、議会はトランプを弾劾することはできません。

なぜかというと、結局、トランプ氏を追い詰める決定的な材料が足りないからです。

ニクソン辞任の際には「録音テープ」という決定的な材料があったのですが、「ロシアゲート」ではそこまでの資料が出てきていません。

もろもろの話は「ロシア関係者と会った」「(うさんくさい話に)素晴らしいと言ってしまった」「圧力をかけられたと指摘する者がいる」等の確証のない話ばかりなので、共和党議員が民主党議員からの弾劾に同意することは考え難いとも言えます。

米議会での大統領弾劾の手続きは厳格です。

大統領や副大統領を含むすべての文官を弾劾する際には、下院と上院で出席議員の3分の2の賛成が必要となります。

今の下院の定数は435。議員数は共和党が240名、民主党が193名、欠員が2名なので、トランプ氏を弾劾しても過半数を取るのは困難です。

また、上院の定数は100.共和党が51名、民主党が47名、無所属が2名なので、こちらは下院以上にハードルが高くなっています。

米国建国以来、弾劾裁判が始まっても、たいていは下院で終わっていますが、トランプ弾劾は、下院さえ通らない可能性が濃厚なのです。

過去、クリントン大統領、ジョンソン大統領、チュース最高裁判官は下院で弾劾されたものの、上院で有罪にはなりませんでした。弾劾裁判で大統領をクビにするのは、それだけ難しいのです。

だからこそ、米マスコミも、安倍首相の粗探しに励む記者と同じく、必死にトランプ政権の失点を捜しているわけです。

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