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税率と年収で見た所得税の負担率

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2018年度の税制改正では所得税控除が変わり、高収入のビジネスパーソンには増税となります。

従来の給与所得控除は最低額が65万円で、給与が増えるにつれて大きくなり、年収1000万円超の場合は220万円が上限となっていました。

しかし、改正案では一律10万円ずつ控除額が減り、年収850万円超の控除額は195万円が上限となります。

(※22歳以下の子供や特別障害者、要介護3以上の家族を扶養する場合は増税にはなりません)

これに対して、全納税者対象の基礎控除は38万円から48万円に増えますが、課税所得2400万円超になると、この基礎控除は圧縮され、2500万円超で控除ゼロになるのです。

結局、年収850万円以上が増税になり、年収1000万円の方は年4万5000円の増税となります。

2020年1月以降に施行される、この税制改革をどう評価すればよいのでしょうか。

2017年版の「厚生労働白書」を参考に考えてみます。

(この白書は1994年から2014年までの家計の世帯収入(年間)の動向を分析している(データの出元は厚労省の「国民生活基礎調査」等)。

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世帯収入の分布:現役層より高齢者層が豊か?

内容としては、40歳代の世帯で所得300万円未満の割合が増え、65歳以上の高齢者世帯で100万円未満が減り、中所得層(200~500万円)が増えたことが注目されました。

(※以下、収入階層:2014年度の%)

  • 65歳以上の200~500万円世帯:48.2%(約6%増)
  • 40歳代の300万円未満世帯:16.6%(約5%増)
  • 30歳代の300万円未満世帯:17.5%(約6%増)

★高齢者以外の世帯の所得動向1994年VS2014年

所得階層

なぜ40歳代世帯の所得が低下したのかというと、白書では未婚や離婚等によってシングル世帯や一人親家庭が増えているためだと分析しています。

★高齢者世帯の所得動向1994年VS2014年

そして、高齢者世帯の所得が増えた要因に関しては「年金制度の充実」を挙げています(公的年金や介護保険、公的医療保険等により、現役世代よりも高齢者が手厚く支えられる仕組みができているため)。

所得階層 (2)

これを踏まえて、白書は「あらゆる世代」が負担を分かち合う全世代型の社会保障が必要だと提言しました。

世帯収入別に見た所得税の負担率

結局、現役世代のほうが羽振りが悪いわけですが、消費税はこれから10%にまで上がります。その中で、毎月、給料から引かれている所得税について「高いな~」と思われている方も多いのではないでしょうか。

総収入に占める所得税の負担率は、平均年収420万円から1億円までは税負担率が右肩上がりになり、1億円以上の年収になると、所得税を払う割合が右肩下がりになっていきます。

年収1億円(27.5%)をピークにして下がり始め、年収5億円以上の人の税負担の割合は2割以下になり、次第に1割台になっていくのです。

この構図を、グラフで見てみましょう。

これは所得税をどの年収の層がいちばん多く負担しているのかを財務省が試算した図表です。

所得税負担

【出所:財務省「説明資料 所得税②」平成27年10月14日】

グラフがみづらいので、テキストにデータ化しておきます。

【収入階層:総所得に占める所得税負担率】

  • 250万円以下:2.8%
  • 250~300万円:3.1%
  • 300~400万円:3.7%
  • 400~500万円:4.9%
  • 500~600万円:6.4%
  • 600~700万円:7.9%
  • 700~800万円:9.2%
  • 800~1000万円:10.8%
  • 1000~1200万円:12.9%
  • 1200~1500万円:15.3%
  • 1500~2000万円:18.3%
  • 2000~3000万円:22.2%
  • 3000~5000万円:25.7%
  • 5000万~1億円:27.5%
  • 1~2億円:26.1%
  • 2~5億円:23.2%
  • 5~10億円:19.1%
  • 10~20億円:17.6%
  • 20~50億円:13.1%
  • 50~100億円:13.2%
  • 100億円~:11.1%

収入階層ごとに「総所得のなかでどれだけ所得税を払っているか」という割合をグラフ化すると、一番、税負担が大きいのは年収5000万円~1億円の方々で、この層は年収の27.5%の所得税を払っています。

年収が2000万円から5億円までの範囲の方々が年収の2割以上の所得税を支払っていると試算されているのです(年間所得から所得税を支払う割合は、年収2000~3000万で22%、3000~5000万円で25.7%)。

累進課税があるので、年収が大きければ大きいほど、税負担が大きくなると思われがちですが、トップレベルの富裕層は税金対策で負担を減らします。

その結果、いわゆる中金持ちの層の負担割合が大きくなるのです。

所得に対する累進課税には限界がある?

「えっ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、本当の大金持ちは結構、税負担率を減らしています。

(最近の例で言えば、2016年の大統領選でトランプ氏が倒産後の税処理で課税を減らしていたことが注目されています)

累進課税は意外と機能していないのですが、やみくもに強化すると、今度は徴税権力が肥大化し、国民の財産を脅かし始めます。そうなると国民の自由が脅かされる危険性があるので、この問題は非常にやっかいです。

イギリスでは、累進課税は「正直者には税金。嘘つきには賞金」というシステムだと揶揄されたこともありました。

いたずらにこれを強化すると、能力ある個人の逃亡が始まります。

サッチャー革命以前の英国ではbrain drain(頭脳流出) が国を弱体化させていました。

『税高くして国滅ぶ』(渡部昇一著)という書籍で「イギリスの最も優秀な若き科学者及び技術者の殆ど四分の一が、北アメリカの仕事に惹きつけられており、しかも10%の人間はそこに住みついている」と書いた1963年の雑誌記事が紹介されています。

当時のイギリスでは、お金持ちは海外に逃げたり、税理士を使ったりして税金対策を行なうが、そこまではできない勤勉な中流階級の人々が大打撃を受けました(中産階級の没落)。そして、働かない怠け者を、政府が勤勉な努力家から集めた税で養うという最悪の構図が展開していたそうなのです。

所得税のフラットタックス化=低所得者増税(実現困難)

そのため、課税の公平を図る策として「フラットタックス」という案を出す人もいます。一律10%数%にすれば、こういう不公平は整理できるという発想です(ロシアではプーチン政権が一律13%で導入した。東欧等にも導入例がある)。

累進課税にしても、どうせ、本物のお金持ちは節税の対策が可能なので、シンプルな税制にしたほうがよいというわけです。

ただ、これは低所得者層には増税になります。

前掲の日本の収入階層では800万円以下がみな増税になるので、民主主義の世相の中でこれを実現するのはかなり難しいでしょう。

この税制実現には、一政権が崩壊するぐらいの難度があります。

実際にやるとしたら、1)低中所得者向け税率と高所得者税率の二段階にする、2)一定の収入階層に控除を導入する、といった策が要るのかもしれません。

所得税のあり方は妙案が見えない

現在、日本の所得税の仕組みは以下のようになっています。

  • 課税所得金額の算定:全所得(1/1~12/31)-所得控除額
  • 所得控除は基礎控除38万円、配偶者控除、社会保険料控除等の全14種類。
  • 所得税額は課税所得額に所得税の税率を適用

例えば、課税所得額が650万円の場合、約87万程度の所得税となります。

  • 195万円×5%=9万7500円
  • 135万円×10%=13万5000円
  • 320万円×20%=64万円
  • 所得税額:9万7500円+13万5000円+64万円=87万2500円

こうした仕組みがあるわけですが、控除の考え方は他国でも様々です。

控除の仕組みについて、財務省は以下のように整理していました。

【ドイツ、フランス】

日本の「基礎控除」に当たる制度は存在しないが、『ゼ口税率」を適用し、一定額までの所得に対しては税負担を諜さない

【アメリカ、イギリス】

日本と同じような所得控除方式の控除があるが、所得が一定金額を超える場合、基礎控除の額が次第に減り、なくなる。日独等とは違い、一定水準以上の高所得者には所得に対して控除等を適用せず、直接、累進税率が適用される

・・・

フラットタックスと控除を組み合わせると、突然、税率が上がる時点が出現してしまい、労働参加の意欲を奪うことになるのかもしれません。

また、累進税率にした場合、中金持ち層に負担が重い構造が続きます。

どちらの税制も、とりたてて妙案というほどではなさそうです。

所得の問題は誰もが悩んでいますが、取り立てる国の側から見ても、払う側の国民から見ても、いま一つ、よい解決策が見えない状況にあります。

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