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日英同盟復活? メイー安倍会談の経緯

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安倍首相は2019年1月10日に訪英し、メイ首相と首脳会談を行いました。

そこでは、安全保障やインフラにおける連携強化で合意がなされ、今後、更なる日英関係の緊密化が見込まれています。

イギリスはEU離脱に伴い、米国やカナダ、豪州、日本、インド等の主要国との関係強化を進めていく方針なので、今後は、経済と安全保障の双方で、日英の交流は活発になっていくでしょう。

本記事では、19年1月の安倍訪英と、18年8月(8/30~9/1)のメイ首相訪日を取り上げ、今後の日英関係について考えてみます。

安倍首相の訪英(2019年1月)

1月10日(日本時間11日未明)に行われた日英首脳会談では、以下の合意がなされました。

  • 日本は「合意なきEU離脱」の回避を目指す英政府の離脱協定案を支持する。英EU離脱を機会に日英関係を深化させる
  • 米朝首脳の再会談に関しては、北朝鮮の核兵器ミサイルの「CVID」(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を求めていく
  • 「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために、防衛や経済(海外インフラ等)の両面で日英が「最も親密な友人・パートナー」として連携していく
  • サイバー対策や知的財産保護のために協力を強化
  • 英国のTPP参加を支援
  • 東シナ海や南シナ海における「現状を変更し、緊張を高める一方的な行動」に反対する(※中国を念頭に置いている)
  • 東京で今春、「2+2」(外務・防衛閣僚級協議)を開催。自衛隊と英軍の共同演習の増加
  • 英国が、海軍艦艇を日本に送り、北朝鮮が行う違法な物資の移し替え(瀬取り)等を監視する

会談後の記者会見では、安倍首相が「日英関係はかつてないほど進展し、日英同盟以来の親密な関係を構築している」と述べました。

メイ氏も「我々の視野が世界全体に広がっている今、日本との関係はいっそう重要になっている」と応じています。

なお、日本ーEU間では2月にEPA(経済連携協定)が発効し、英国はEU離脱後にここから外れるため、今後は日英間での経済関係強化の詰めが行われることでしょう。

メイ英首相の経歴

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そもそも、メイ首相は、どんな人なのでしょうか。

メイ首相の本名はテリーザ・メアリー・メイ(Theresa Mary May)。生まれは1956年なので、台湾の蔡英文総統と同じ世代です。

生地はイギリスの最南部にあるイーストボーン(イングランド南部)で、父はイングランド国教会の司祭でした。

12歳の時に政治家を志し、公立学校からオックスフォード大学(地理学専攻)へ進学。24歳の頃、夫のフィリップ氏と知り合うのですが、この出会いはのちにパキスタンの女性宰相となるブット氏(2007年に暗殺される)の紹介によるものでした。ブット氏は1953年に生まれているので、年代的にはメイ首相とは近いわけです。

若いころに父が交通事故で死に、母は病死しているので、メイ氏は夫を心の拠り所にしているともいわれています。

金融業界でキャリアを形成し、イングランド銀行で働いた後、銀行共同支払決済機構(APACS:Association for Payment Clearing Services)などで活躍しました。

その後、二回の落選の後、1997年に保守党の下院議員に初当選しました。2002年に保守党の幹事長となり、2003年には枢密顧問官となりました。

野党時代にはシャドーキャビネット(影の内閣)の「閣僚」を務め、2010年に保守党が政権復帰すると、内務大臣となります。このころは、増え続ける移民関連の行政を取り仕切り、出入国管理の厳格化などを行いました。

このころ、違法移民に向けて「帰国せよ。さもなくば逮捕だ」という宣伝文句をつけた車両を全国に走らせたなどの逸話が残っています。

メイ氏は自分の感情を露わにせず、政治家同士のなれあいをしないことから、メディアからは「氷の女王」とも呼ばれていました。

しかし、わりと厳格なキャラに見られがちですが、ヒョウ柄の靴をはいたりとお洒落な一面もあります。

メイ氏に党首になるチャンスが回ってきたのは2016年6月23日のEU離脱国民投票の頃です。

同氏はこの時、消極的ながらも残留派の側につき、離脱決定後のキャメロン首相辞任を経て、保守党党首選に立候補します。

この党首選は5人が立候補し、候補者の辞退続出となった結果、7月12日にメイが唯一の候補者となり、党首就任後に首相となったわけです。

EU離脱投票の時、メイ氏は消極的ながらもEU残留派でしたが、首相就任後は、国民投票の結果を受けて離脱のための手続きを一歩一歩と進めています。

主要国との関係を強化する英国

このEU離脱を控えた英国は、米国をはじめとする、世界の主要国との関係強化に努めています。

英国にとって米国は輸出入の1~2割を占めているので、トランプ政権が発足すると、メイ首相はまず、17年1月27日に米英首脳会談を行いました。

その頃、メイ氏は以下の祝辞をトランプ政権に送っています(BBC、Theresa May to meet Donald Trump on Friday - White House)。

「今までの対話を経て、私(メイ)は、我々の関与は英米の特別な関係を促進し、大西洋両岸の繁栄と人びとの安全のためにあることを認識している」

"From our conversations to date, I know we are both committed to advancing the special relationship between our two countries and working together for the prosperity and security of people on both sides of the Atlantic.

松村昌廣氏(桃山学院大教授)によれば、米国との同盟関係の中では、「米国ー英国」の同盟関係が最も緊密であり、それは基地施設、ミサイル供給、ミサイル発射場、兵器生産、兵器の共同研究・開発、軍事情報にわたる多数の協定で構成されています(『軍事情報戦略と日米同盟』)

「米国ー英国」「米国ーカナダ」「米国ー豪州」というアングロサクソン諸国との同盟がインナーサークルを形成し、フランスやドイツ、日本などはその外側に置かれているわけです。

そして、訪米したメイ首相は、EUと米国との間を取り持つバランサーとなることをPRし、米英首脳会談では、以下の合意を固めていました。

  • 米英の「特別な関係」を深化する
  • 今後、米英二国間通商協定の早期締結に向けた協議を行う
  • IS(イスラム国)の殲滅のために英米の軍事協力強化で合意
  • NATO(北大西洋条約機構)の重要性を確認
  • トランプ大統領が年内に英国を公式訪問
  • 対露関係改善に前向きなトランプ氏(制裁解除は時期尚早とも発言)、メイ氏は対露制裁の継続を主張

メイ英首相の訪日(17年8月)

こうした各国との関係強化の一環で、メイ氏は17年8月30日に日本へ公式訪問しました。

この目的は、EU離脱の懸念を払拭するためです。

日系企業はすでにイギリスで14万人もの人員を雇っているため(例えば、日産のサンダーランド工場などが有名)、EU離脱の影響を注視し続けているからです。

(〔メイ首相来日 「離脱」対応を英国に要請へ 日本企業、強まる警戒感〕産経BIZ)

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)はドイツのフランクフルトに新たに銀行と証券会社の現地法人を19年3月に設立する。EU全域で自由に営業できる「単一パスポート」をロンドンの拠点で取得していたが、英国以外のEU加盟国で営業ができなくなるため、改めて申請する必要があるためだ。証券大手各社も同様にドイツに新拠点を開設していく方針だ。

また、英国で鉄道車両工場を運営し、原子力発電所の建設も進める日立製作所が「今後の離脱交渉や、その他の経済協定の動向を注視し、慎重に対応する」姿勢を示す。日本企業のEU離脱への警戒感は強まっている。

 

日本はEUと17年7月に経済連携協定(EPA)で大枠合意し、8月末のメイ首相訪米を通して、日英関係の強化を目指しています。

そこでは、以下の二点が話し合われました。

  • 北朝鮮によるミサイル発射は「これまでにない深刻かつ重大な脅威」であり、「断じて容認できない」
  • 北朝鮮への圧力強化、中国に更なる役割を求めること、東シナ海や南シナ海で連携すること等でも一致

31日にメイ首相は東京・元赤坂の迎賓館で会談。そこで日英共同宣言を発表。

この「日英共同ビジョン声明」では、特に以下の三点が注目です。

  1. (日英が)インド太平洋地域において共有する課題に取り組む
  2. 日EU経済連携協定(EPA)の早期署名及び発効を引き続き支持する。英国のEU離脱に伴い,我々は,日EU・EPAの最終的な規定を踏まえ,日英間の新たな経済的パートナーシップの構築に速やかに取り組む。
  3. 我々は,2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議において採択された気候変動に関するパリ協定にコミットしている。

1はインドも含めて日英印でインド太平洋圏での協力を強化する方針です。

2は英EU離脱対策。3はトランプ政権とは違う路線を打ち出しました。

そのほか北朝鮮対策での連携や「安全保障協力に関する日英共同宣言」「繁栄協力に関する日英共同宣言」が打ち出されました。その中の各論の幾つかを紹介してみます。

  • 朝鮮半島の非核化と国連安保理決議の厳格で十分な実施に向け、友好国・同盟国と協働。
  • 英国空母の展開といった陸海空軍の派遣を通じたものを含む、アジア太平洋地域への英国の安全保障面での関与の強化を歓迎。
  • 日本は、共同演習のため、自衛隊の人員、航空機または艦艇を英国へ派遣する機会の可能性を検討。
  • 共同演習の実施を強化し、その定例化を探求。
  • 日本は五ヵ国防衛取極(FPDA)を通じたアジア太平洋地域の安全保障への英国のコミットメントを歓迎。
  • 最近締結された物品役務相互提供協定(ACSA)に基づき、後方支援、技術支援及び専門的な支援の相互提供に関する協力を強化。
  • 自衛隊・英国軍間の共同運用・演習促進。防衛装備・技術協力を強化
  • 英国は、日本の国連安保理常任理事国入りに対する強い支持を改めて表明。
  • 日本による英国への投資を歓迎。非関税措置を含む市場アクセスの向上のため協働。英国産の牛肉と羊肉の日本への輸出再開に向けた進展を維持。安全と証明された福島県産品を含む食料・飼料に対するEUによる輸入規制の撤廃を支持。
  • 英国は、WTOでの独立したコミットメント確立に対する日本の支援を歓迎。複数国間協定の進展のために協働することにコミット。
  • 高級実務者による新たな産業政策対話の開始を決定(宇宙、航空、エネルギー・気候変動、先端製造業及びバイオ経済など)。
  • 英国での新原発建設計画への日本の産業界の関与を歓迎する。

日英同盟が復活?

こうしてみると、ある意味では、日英同盟以来の協力関係が復活し始めているのかもしれません。

アジア太平洋に英国が返ってきつつあるとも言えそうです。

※在ロンドン国際ジャーナリストの木村正人氏は、このたびのメイ首相訪問の背景には英国と中国の関係の変化があり、それが日英関係強化のチャンスになったことを指摘しています(出所:アメリカの衰退見据え「日英同盟」の再構築を 英首相メイと安倍首相の握手 |  ニューズウィーク日本版

  • 「日本でG7(先進7カ国)首脳会議が開催されるか、中国との関係がまずくなっている時でない限り、イギリスの首相は日本にやって来ない」
  • メイは、「英中黄金時代」を仕掛けた前財務相ジョージ・オズボーンをパージし、原発発注に関して中国企業の持ち分が全体の50%を超えないようきつい縛りをかけたため、中国の国家主席、習近平から完全に睨まれた。7月末の訪中を予定していた中国からは待てど暮らせど、お呼びがかからない。

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