cocoparisienne / Pixabay

全投稿記事 米国経済 米通商貿易

対中関税1300品目の内訳に迫る 知財侵害制裁で米中貿易戦争勃発 

投稿日:

トランプ大統領は、USTR(米通商代表部)の報告を受け、米国の知的財産権が中国に侵害されていると3月21日に断定。

通商法301条」を発動し、不公正な貿易慣行に大統領権限で制裁措置を課す方針を打ち出しました。

(※本稿は3月の投稿記事を加筆修正したものです)

USTRは中国の外資規制を問題視し、現地に進出した米企業が技術移転を強要された例をあげ、知財侵害の存在を認定することを記者団に明かしました。

米政府の措置は世界貿易機関(WTO)のルール違反だと批判されていますが、トランプ政権は、WTOの盲点を突いて知財侵害を重ねてきた中国には強硬策が必要だと考えています。

そして、USTRは4月3日に中国の知財侵害に対する制裁の原案を明らかにしました。

総額500憶ドルに相当する約1300品目に25%の関税を課し、パブリックコメント(企業などの意見を公募)を集めた上で実施を最終決定するのです。

その1300品目の内訳は金属加工機や射出成型機、金型といった生産機械、化学品や医薬品、自動車や航空宇宙産業の部品などが含まれています。

(当初は輸入額が大きいPCやスマホや、衣服や靴、玩具などの消費財が除かれた)

米国における中国からの輸入額は5100億ドル(2017年)なので、およそ1割の物品に関税が課されます。

米政府はこの関税案と同時に、中国企業による対米投資の制限策を作成し(財務省が担当)、知財侵害に関してはWTO提訴も行いました。

これに対して、中国は4月2日に米国からの輸入品(128品目、豚肉やワイン、果物などの農産品)に報復関税を発動。米国と同規模の報復措置を取ることを公表しています(中国政府は米国が「貿易保護主義」を取ったことを批判し、WTO提訴を行うことを表明)。

米中交渉がなされ、5月19日に米国の貿易赤字削減に関して両国は共同声明を出し、関税賦課を留保しましたが、これは5月29日に覆されます。

USTRが6月15日に通商法301条に基づき、関税賦課を行う品目のリストを公表したのです。

その後、米国は7月に2000億ドルの追加関税を指示。

この対中制裁は、500億ドルの関税(340億+160億)と2000億ドルの追加関税からなっています。

中国側も500億ドルの関税(340億+160億)と600億ドルの追加関税で応酬していますが、もともと輸入額の規模が5000億ドル(米国)と1500億ドル(中国)なので、制裁の規模は米国のほうが大きくなりました。

この関税賦課の応酬の経緯は以下の通りです。

  • 3/22 米国:知財侵害で中国製品に関税500億ドルを課す大統領令に署名
  • 4/4 中国:米製品に報復関税(500億ドル)を課す方針を発表
  • 4/5 米国:追加制裁1000億ドル規模の関税検討を発表
  • 6/15 米国:500億ドルの中国製品への関税案を公表(7/6発動 340億$/8/23発動 160億$)
  • 6/16 中国:500億ドルの米製品への関税案を公表(7/6発動 340億$/8/23発動160億$)
  • 6/18 米国:2000億ドル規模(6031品目)の中国製品に10%関税(追加制裁)検討を指示
  • 7/6 米国/中国:双方が340億ドル規模の関税を発動
  • 7/10 米国:2000億ドルの追加関税を適用する可能性を示唆
  • 8/1 米国:2000億ドル相当の追加関税の税率を25%に上げることを検討(発動は9月以降)
  • 8/1 中国:600億ドルの米製品への追加関税案を公表(LNGや航空機等5207品目、5~25%の関税)
  • 8/23 米国/中国:双方が160億ドルの追加関税を発動
  • 9/17 米国:2000億ドルの追加関税(当初10%、後に25%に引上げ)を24日に発動することを公表
  • 9/18  中国:600億ドルの対抗関税を24日に発動することを決定。米国をWTO提訴。

9月24日には、米国は2500億ドルの中国製品に2500億ドルの関税をかけ、中国は米国製品に1100億ドルの関税で報復することが見込まれています。

米国は中国から輸入した5056億ドルの製品の半分程度に関税をかけ、中国は米国から輸入した1500億ドルの7割近くに関税をかける予定なのです。

(※トランプ大統領は、さらに追加の関税案を示唆しており、全ての関税案が現実化すれば中国からの全輸入品に関税がかかる)

関税合戦により、米中貿易戦争の火蓋が切られました。

知的財産権侵害への制裁を契機に米中貿易戦争が勃発

スポンサーリンク

そもそも、なぜ、米国は中国に対して強硬策を取るようになったのでしょうか。

その経緯を振り返ってみます。

トランプ大統領は17年4月に米中首脳会談を行い、中国の協力を得ながら北朝鮮への制裁を強化しましたが、18年に大きな政策転換を行っています。

3月には鉄鋼とアルミへの関税賦課に反対したゲーリー・コーンNEC委員長が辞任しただけでなく、17年に中国との対話路線を引いたティラーソン国務長官を解任しました。

その結果、制裁強化を主導するウィルバー・ロス商務長官やピーター・ナバロ通商製造政策局長らの影響力が強まり、最近の強硬路線が打ち出されてきています。

また、国務長官の後任は元国連大使のボルトン氏に決まりました。

ボルトン氏は在沖縄米軍の一部台湾移転を唱えるなど、対中強硬派の一人として知られています。

FRBのパウエル議長は貿易戦争は世界の経済成長の最大の脅威だと警告しましたが、トランプ氏は全く動じるそぶりを見せていません。

記者会見したUSTR高官は「我々は中国から得た答えに満足していない」「一般的な問題として、米国企業から中国企業への技術移転を要求または圧迫するために、合弁事業の要件や外貨限度などの外国の所有制限を中国が使用しているという非常に強力な証拠がある」と述べています。

気になるのは、その事実関係ですが、トランプ政権が言っているのは根拠のない話ではありません。

ロイターは2017年11月9日に「米向け輸出品で1500件超の知財権侵害、中国当局が確認」と題した記事を公開しています。

この頃、中国の税関総署も、11月9日に17年に米国と実施した2回の合同調査の結果、米国向け輸出品に1560件以上の知的財産権侵害が見つかったと発表しているのです。

これは長年、日本や欧州諸国が懸念してきた問題でもあります。

しかし、オバマ政権の頃まで、十分な対策が講じられなかったのは、高関税を課した場合、中国が対抗関税で反撃し、貿易戦争となり、双方にとってパイの取り分が減ることを恐れていたからです。

中国商務省は3月22日に、トランプ政権の決定に対して「決して座視しない」と明言し、中国の権益を守ることを主張。「米国の保護主義」に反対の意を表明しました。

「あれ? 中国は自由貿易の国だったんだっけ?」

そんな疑問が湧いてきますが、今後は、ボーイングの航空機やアップルのiPhone、輸出された米国農作物などに対抗関税が課されることになるでしょう。

経済制裁の中身:関税、WTO提訴、投資制限

そこで、米国が決めた制裁の中身をUSTRの文書で見てみます。

日本語訳すると、以下の内容になります。

ーーーー
「トランプ大統領は中国の不公平な貿易に対処する強力な措置を発表」

(President Trump Announces Strong Actions to Address China’s Unfair Trade)

本日、トランプ大統領は、USTRが通商法301条に沿って、技術移転と知的財産、イノベーションに関する中国側の行為や政策、慣行についての調査を踏まえ、中国の不公平な貿易慣行に対する行政措置を発表した。

米USTR代表のロバート・ライトハイザーは、トランプ大統領の指示に沿って2017年の8月にこの調査を始めた。

大統領は、中国の有害な行為、政策、慣行への適切な対応に、3つの別々の行動を含めることを指示している。

関税:大統領は、本日の発表から15日以内に、提案された製品リストと関税引き上げを発表するよう、通商代表に指示した。通知とコメントの後、貿易担当者は最終製品リストと関税引き上げを発表する。

WTO提訴:大統領は、中国の差別的な技術ライセンスに関する慣行に対して、世界貿易機関(WTO)にて紛争を解決するように貿易担当者に指示した。

投資制限:大統領は、財務長官に対し、米国に重要だと認められる産業と技術において、中国が指揮・促進する米国への投資に対する懸念に対処するよう指示した。

「トランプ大統領は、中国との公正で相互的な貿易を主張し、不公正な貿易に対して法律を厳格に施行しなければならないことを明確にした。国家主導で力を求めて軍事を強化し、米国の技術と知的財産を盗もうとする中国に対して有効な措置を講ずる必要がある」とライトハイザー(USTR代表)は語った。

我々は中国とのこのような問題について何年も話し合っていない。

米国は、中国の市場を歪める不公正な行動に対応するために、利用可能な全ての手段を行使することに全力を傾けている。

中国の前例のない不公正な貿易慣行は、米国だけでなく、我々の同盟国と、世界におけるパートナーに対する挑戦である。

中国政府の技術移転と知的財産権に関する政策は、先進技術において経済的な主導権を握るための試みの一部である。

それは"Made in China 2025"(「中国製造業2025年」)のような産業計画に示されたものだ。

301条は、米国が米国の貿易相手国の様々な不公平な行為、政策、貿易慣行に対処するための重要な執行ツールだ。

技術移転と知的財産、技術革新に関する中国の行為、政策、取引慣行に対して、我々は四分野で対処する。

それは、米国企業から中国への不公正な技術と知的財産権の移転をもたらしているからだ。

これらの政策は、米国の企業や労働者を害し、米国の長期的な競争力を脅かしている。

USTRのスタッフは、行政当局から数十人の専門家の助けを借りて、詳細な調査結果を含む包括的な報告書を作成した。報告書はUSTRのウェブサイトで入手できる。

その報告書の結論は以下の通りだ。

中国は、米国企業に中国企業への技術移転を要求し、圧力をかけるために、合弁事業の要件、株式制限、その他の投資制限を含む外資規制を使用している。

中国はまた、特に米国の投資と技術の価値を損なう米国の企業の国際競争力を弱める技術移転を要求したり、圧力をかけたりするために行政審査とライセンス手続を利用している。

中国は、技術移転を要求し、圧力をかけるために行政審査やライセンスの手続きをも用いている。それは、とりわけ、米国の投資と技術の価値を損い、米国企業の国際競争力を弱めるものだ。

中国は、技術ライセンス条項の制限を含む実質的な規制を課し、米企業の投資と活動を妨げている。

これらの制限により、米国の技術所有者は、技術移転のために、市場価値に基づいた条件を交渉し、設定する能力を奪われている。

その結果、米国の企業は、不公正に中国の受益者に有利な条件で技術をライセンス供与している。

中国は、最先端の技術と知的財産を取得するために、中国企業による米国企業への体系的な投資や資産の取得を指示し、促進する。

中国政府の産業計画で重要と考えられる産業に大規模な技術移転を生み出すために。

中国は、米国企業のコンピュータネットワークへの不正侵入と盗難を実施し、援助している。

これらの措置により、中国政府は、技術データや交渉上の地位、社内秘の内部情報を含む、知的財産や交渉上の機密、秘密の企業情報等に不正にアクセスしている。それらは、中国の国家戦略における発展目標の達成(科学技術における軍事近代化と経済発展)を支えるものだ。

在中の欧州連合(EU)商工会議所も「中国製造業2025:市場の力に先んじた産業政策の立案」という報告書で結論した。

近年、「中国製造業2025年」に沿った業種の企業に対して、中国からの「前向きな外国向け投資の波」がある。これらの投資は、外国企業が中国に同等の投資を行うことができない分野に集中している。

USTRの報告書は「近年、グローバル経済が情報システムへの依存度を高めていることから、サイバー空間での盗難は、中国が好む方法の1つとなった。それは、商業上の情報収集と物流上の利点を備え、もっともらしく証拠を否定できるからだ」と述べている。

その報告書は「サイバー空間への中国の侵入や盗難は、利用可能な情報に基づいている。専門家は中国のサイバー空間への侵入とそこでの盗難は、その産業政策目標と一致すると述べた。

※投資制限に関しては、米議会が8月中旬に米企業への外国からの少額投資の規制を可能にする「外国投資リスク審査近代化法」を可決。有害な海外からの投資から米企業の知的財産権を守るというのが立法趣旨。

対中制裁:関税賦課までの経緯

さらに、4月3日に出されたUSTRの関税案の中身を見てみます。

その冒頭部分には、今回の関税案についての公聴会のお知らせと、関税が出された経緯が説明されていました。

長いので、要点を紹介します。

  • 技術移転、知的財産、技術革新に関する中国政府の慣行は米国の通商拡大を阻害している
  • そのため、USTRは企業などに5月11日までにパブリックコメントを求め、対中貿易についての公聴会を開催する。
  • そこで問題となるのは、米国の知的財産を侵害する中国の法律、政策、貿易慣行等である
  • 2017年8月18日以来、USTRは技術移転、知的財産、技術革新に関する中国政府の法律や慣行等を調査してきた。
  • 中国政府の裁量行政は不透明だ。合弁要件、外国資本制限、調達等の規制、中国企業への技術と知的財産移転を要求し、在中の米国企業の業務に介入している。
  • 多くの米国企業は、技術移転への圧力をかけるための中国の不透明な行政行為とローカルルールの存在を報告している。
  • それは、米国企業の技術に対する制御能力を弱体化させている(損失補償、ライセンスと技術契約で非市場条件を課す「技術輸出入管理条例」が問題視されている)
  • 中国政府は産業計画に基づいて、最先端技術や知的財産の取得、業界での大規模な技術移転が行われるように指示し、中国企業による米国企業への不当で体系的な投資を促進している。
  • 米国の商業コンピュータネットワークや機密情報、知的財産に対して、中国からサイバー領域での盗難や不正侵入が行われている。

スポンサーリンク

対中制裁:関税1300品目の中身

関税1300品目(正確には1333品目)を全列挙すると大変なことになるので、どんな品目が多いのかを見てみます。

品目のジャンル別に、列挙された品目の種類の数を並べてみます。

  • 無機化学品や貴金属、希土類金属・放射性元素の化合物:28
  • 有機化学品:29
  • 医療用品:30
  • 化学工業生産品:38
  • ゴム・ゴム製品:40
  • 鉄鋼:72
  • 鉄鋼製品:73
  • アルミ・アルミ製品:76
  • 卑金属製品:83
  • 原子炉、ボイラー、関連機械類:84
  • 電気機器:85
  • 鉄道車両・部品:86
  • 自動車・部品:87
  • 航空・宇宙機器:88
  • 船舶:89
  • 光学機器・検査機器:90
  • 時計:91
  • 家具:94
  • 兵器:93

最後には軍事用品のジャンルもあるのですが、米軍が中国製兵器を使うとは思えないので、これはやや非現実的です。

全分野を網羅するという意思表示のために入れられたものなのでしょう。

分野別にもっと、具体的な品目を例示していきます。

素材:化学品、ゴム、鉄、アルミなど

  • トリアム化合物、芳香族モノアミン、アミノアルコール類、アミノ化合物など
  • タイヤ原料、ゴム製品(コンベアベルト用、航空機用、キャップ製造用など)
  • 鉄鋼、非合金鋼、ステンレス鋼、合金鋼、合金工具鋼、合金シリコン電気鋼
  • 鉄パイプ、非合金鋼、シームレス管材、シームレスチューブ、耐熱合金鋼、アルミ、アルミ合金

医薬品、医療機器

  • 免疫用の製品、ワクチン、抗生物質を含む医薬品、小売用医薬品
  • 縫合材料、止血剤、歯科用セメント、歯科用充填材、骨再建用セメント、化学避妊薬
  • 電気心電図、医療用の診断装置、診断患者監視システム、紫外線・赤外線診断装置、X線用装置・部品
  • 注射器、カテーテル、歯科用装置、眼科器具、医療用ミラー、人工呼吸機、整形外科用機器、
  • 人工歯・人工関節、補聴器、ペースメーカー

動力機器・設備

  • 原子炉、原子炉部品、水管ボイラー、暖房ボイラー
  • 蒸気/油圧/ガスタービン、船舶/航空機用のエンジン類、ターボジェット、ターボプロペラ、水車、モーター、シリンダー
  • 空調機、冷凍設備、ターボチャージャー、ガスコンプレッサー、高炉、焼却炉、工業炉、実験炉、冷凍設備、
  • 風力発電機、発電装置、電気変圧器、電磁石

生産機械(産業用ロボット含む)

  • 水濾過・浄化装置、遠心分離機
  • 缶封機、(切断)包装機、コンベヤ、計量機器
  • クレーン、トラック、フォークリフト、空気圧エレベータ、コンベヤ
  • ブルドーザー、ショベルローダー、杭打機、除雪車
  • 鉱物発掘用機械、天然ガス・オイル掘削用機械、鉱石等の選別機/粉砕機/混合機/混練機
  • 草刈機、脱穀機、農作物の洗浄・選別用の機械、搾乳機、ワインやジュース等の製造機械、
  • マカロニ・スパゲッティ類の製造機械、菓子類の製造機械、砂糖製造機械、醸造機械、肉製造機械、果物・野菜類の食品製造機械
  • パルプ製造用機械、製紙機、製本機、紙袋の製造機、紙類の成形機、
  • 印刷機、写真複写装置、複写機、印刷補助用機械
  • 繊維紡績機械、織機、刺繍機、ミシン針・部品、皮革製造機、履物製造機
  • はんだごて、金型、ベアリング、鋳造機械、圧延機、せん断機、平面研削盤、プレス、型打ち機
  • 木材、コルク、骨、硬質ゴム・プラスチック等の材料製造用の機械
  • ランプや電球等の製造機、ガラス製品用の機械
  • 射出成形機
  • タバコ製造機械、ロープ・ケーブル製造機、ゴミ圧縮機

家庭用機器(電化製品等)

  • 家庭用食器洗機、容器洗浄・乾燥機、ガス給湯器、調理用ストーブ、レンジ&オーブン、
  • カセットプレーヤー、ポータブルカメラ、VCRやプレーヤー、ラジオ、テレビ
  • 磁気メディア、光ディスク、電池

電子機器

  • 光学スキャナ、磁気インク認識装置、転写機
  • 蓄音機、トランシーバ
  • フライトデータレコーダー、レーダー、無線航法援助装置、電気信号・交通制御機器用部品
  • 絶縁銅ワイヤ、光ファイバケーブル、コンデンサ、電圧用ヒューズ、自動回路ブレーカ、コネクタ
  • 電気端子、フィラメントランプ、光電陰極管、
  • サーモスタット、トランジスタ、サイリスタ、発光ダイオード、プリント基盤
  • 半導体デバイス、電気粒子加速器、電気信号発生器

輸送機械

  • 電車、客車、鉄道部品
  • バン、トラック、農業用トラクター
  • ヘリコプター、飛行機
  • 船舶(クルーズ船、遊覧船、貨物船、タンカー等)

※軍需品(ランチャー、ライフル、爆弾、手榴弾、魚雷、機雷、ミサイルなど)も含まれているが、米軍が中国製兵器を使うことは考えにくい

対中制裁は818品目と284品目の二段構え

スポンサーリンク

前掲の制裁は、まず、7月6日に818品目(輸入額340億ドル)に対して25%の関税をかけることから始まります。

そして、審査とパブリックコメント募集の後、残りの284品目(輸入額160億ドル)への関税賦課の方針を定めます。

なぜ、818品目になったのかというと、4月6日に公表した1333品目のリストから公聴会とパブリックコメントを経て515品目を除いたためです。

トランプ大統領は、この折に中国の知財侵害や米企業への技術移転強要を批判し、長い間、非常に不公正だった米中貿易の状況を維持できないと指摘しました。

その後、中国側が同じく500億ドル規模の報復関税を決断。

これに応じて、米国は残りの284品目(160億ドル)の制裁を追加する方針を明かしました。

そこには「中国製造2025」などの産業政策の対象品目が含まれる見通しです。

(具体的には、集積回路などの半導体関連や電子部品、プラスチック・ゴム製品、鉄道車両、通信部品、産業機械など)

追記:2000億ドルの対中関税の品目とは

7月10日にUSTRは6031の関税品目を公にしました(2000億ドル相当)。

関税はまず10%で始まり、2019年1月1日からは25%に引き上げられる予定です。

最終的な関税品目からはアップルウォッチ等のスマートウォッチやBluetooth関連製品、自転車用ヘルメット、チャイルドシート、ベッドシーツ等の家庭用品や衛生用品、三菱ケミカルの電解液原料、SUMKOのウェハー用資材、タングステンなどが除かれ、5745品目となりました。

日経朝刊(2018/9/19:3面)によれば、その総額1897億ドル分の製品の詳細は以下の通りです。

  • 機械類・電気機器:45%
  • 家具:15%
  • 金属:8%
  • 輸送関連機器:6%
  • 化学品:5%
  • プラスチック・ゴム類:5%
  • 皮革毛皮製品、旅行用具、ハンドバック:4%
  • セメント、ガラス、陶磁製品:3%
  • 繊維製品:2%
  • 木材製品:2%
  • 木材パルプ、紙製品等:2%
  • 加工食品、食品類:1%
  • その他:2%

中国の報復関税の概略

これに対応する中国の動きを時系列で見ていきます。

中国側は、まず4月1日に豚肉類7品目とアルミニウムのスクラップ製品(累計8品目)に25%、残りの120品目(ナッツ、ドライフルーツ、果物、ワイン、エタノール、シームレス鋼管など)に15%の関税をかける案を提示。

米国が制裁の旗を降ろさなかったため、4月4日には米国産大豆や自動車、航空機等の106品目(総額500億ドル)に25%の関税をかける方針を公表しました。

農産品が多いのは、共和党が勝ちを狙う州に農業州が多く、そこでは米農家が海外への輸出拡大を切望しているからです。

その後、米中の交渉期間には報復関税が停止されましたが、6月15日に米国が関税賦課を決断したのを見て、結局、中国側の報復関税案も以下の二段構えの内容となりました。

第一段階:545品目(7月6日に制裁発動)

340億ドル規模の制裁品目のうち、以下の品目に25%の関税がかかります。

  • 農産物:大豆など(※米国大豆の輸出先は中国が6割)
  • 畜産物:牛肉、豚肉、鶏肉など
  • 水産物:マグロ、エビ、カニ、フカヒレ、ホタテ等
  • 野菜類:ジャガイモ、玉ねぎ、キュウリ、ホウレンソウ等
  • 果物類:マンゴー、オレンジ、ブドウ、リンゴ等
  • 嗜好品:ウイスキー、タバコ等
  • 自動車(電気自動車含む)
  • 綿花:実綿、繰綿など

このうち、輸入額が大きい品目は大豆、乗用車、綿花などです。

中国側は、米国の対中関税は世界の貿易システムを脅かし、世界経済の回復の歩みを阻むとして米国をWTOに提訴しました。

第二段階:114品目⇒333品目(8月23日に制裁発動)

残りの114品目の内訳は以下の通りでしたが、その品目は333品目に拡充されました。

  • 化学工業品(エチレン等。触媒類は削除された)
  • 天然ガス、石炭(※原油は削除された)
  • 医療設備
  • 紙類(古紙、クラフト紙、板紙等)
  • 金属くず(銅、アルミ等)
  • ランプホルダー、プラグ、ソケット等

第三段階:5027品目(9月24日に発動。追加関税600億円)

その後、中国の国務院は米国からの輸入品5207品目に四段階の追加関税を賦課することを公表(600億ドル相当)。

8月3日時点では5~25%だった関税率は、9月18時点では5~10%になりました(米国の動向次第で最大25%に引上げ)

18日時点の関税率は以下の通りです。

  • 10%:2493品目(液化天然ガス、銅鉱など)⇒米国の中国市場への依存度が高い品目
  • 10%:1078品目(機械類、光学式機器など)
  • 5%:974品目(板ガラス、溝型ガラス、レーザー機器など)
  • 5%:662品目(化学木材パルプ、超音波診断装置など)⇒原材料品や一部ハイテク機器等

なお、中国側には、対抗関税以外にも、米国の製造業がサプライチェーンにおいて中国に依存する部品や中間財などに関して、対米輸出を制限する選択肢も残されています。

中国の輸出依存度の現状:関税の効果は昔ほどではない?

現在、中国では、17年の対米貿易黒字は2758億ドルに上っています。

中国側は、米国企業からの購入を控え、欧州企業などから代替品を購入することが可能です(例:ボーイングからの購入ではなく、欧州のエアバスから購入するなど)。

関税は中国にとって痛手にはなるでしょうが、近年は昔よりも輸出依存度が下がっていることにも注意が必要でしょう。

ここ2年の中国の実質GDP成長率を見ると、昔ほど輸出が占める割合は高くありません。

項目20162017
個人消費支出6.85.4
固定資産投資8.17.2
工業生産66.6
輸出-7.77.9

それは、各項目のGDP成長率への寄与度をみると、より鮮明になります。

項目20162017
実質GDP成長率6.76.9
最終消費4.34.1
総資本形成2.82.2
純輸出-0.40.6

本当かどうか分かりにくい中国のGDP統計をもとに数えると、中国の輸出依存度(輸出÷名目GDP)は2016年で17.5%程度。

・・・

一方、米国内でも関税賦課によって国内の原料品のコストも上がるので、様々な企業のコストアップになるという見方も根強くあります。

貿易戦争となれば、政治の動向で次々と関税の賦課が決まり、そのたびに直撃する企業の株価が下がることになりそうです。

特に米国株で影響が出るのは、資本財や自動車関連のメーカーです(ボーイング、キャタピラー、フォード、GM、ホメルフーズ〔HRL〕等)。

貿易戦争深化が本格化すれば、エネルギーセクターの業種にもダメージが及んでいくはずです。

極めてややこしい問題ですが、18年は米中の政治動向に要注目です。

【スポンサードリンク】

-全投稿記事, 米国経済, 米通商貿易

Copyright© トランプ政権と米国株投資 , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.