2019年の米国経済 指標は好調だが、バブル崩壊の恐怖は根強い

2019年10月4日

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米国の景気は2019年以降、どうなるのか。

今回は代表的な経済指標を用いて、19年の米国経済の現状を見える化してみます。

(本稿のグラフの出所は「econoday.com」もしくは「tradingeconomics.com」)

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米国経済を見る三つの主要指標

12月18日のFOMC議事録要旨によれば、FRBは、以下の3つの変数を重視して予測を出しています。

  • 実質国内総生産(GDP)
  • 失業率
  • PCE指数(個人消費支出価格指数)

FRBはこの三つが堅調であることから、好景気は根強いと見ています。

パウエル議長は18年12月に利上げを打ち止めにはしないと述べ、マスコミや市場関係者等がその反作用を恐れる中で、19年に2回程度の利上げの可能性を示唆していました。

しかし、19年に入ると、そのマイナス効果を反省したのか、パウエル議長は利上げ延期発言を繰り返し、米企業の株価指数は持ち直しました。

当面は持ち直していますが、不安要因が高まると、衝動的に株価が下がるご時世でもあるので、米国経済の今後を考える上では、指標の観測が大事です。

その際には、まず、GDPと雇用統計、個人消費の3点をウォッチする必要があります。

実質GDPの推移

米国の実質GDPは2009年から2019年までで、以下のように変動しています。

ざっくり見ると、サブプライムショックで奈落の底に沈み、2010年ぐらいから成長軌道に乗り、16年にやや低迷した後、トランプ政権発足頃から好景気に転じました。

18年12月までは良好な数字が続いています。

米国では格差が拡大しているとも言われますが、GDPは儲かっている層から貧困層までを平均した数字なので、貧困層の窮状とは関係なく、上がり調子になっているわけです。

雇用統計

非農業部門雇用者数

雇用を見ると、堅調に推移してきましたが、19年2月と5月の数値が極端に低くなっています。

ただ、失業率のほうは、予想と結果の差は1%程度に収まっています。

ここで、非農業部門雇用者数の予想と結果をグラフ化してみました(単位:万人)

期間 予想 結果 発表日
18/1 18 20 2/2
18/2 20.5 31.3 3/9
18/3 18.5 10.3 4/6
18/4 19.2 16.4 5/4
18/5 19 22.3 6/1
18/6 19.5 21.3 7/6
18/7 19.3 15.7 8/3
18/8 19 20.1 9/7
18/9 18.5 13.4 10/5
18/10 19 25 11/2
18/11 19 15.5 12/7
18/12 18.4 31.2 1/4
19/1 15.8 30.4 2/1
19/2 17.5 2 3/8
19/3 17 19.6 4/5
19/4 18 26.3 5/3
19/5 18.5 7.5 6/7
19/6 16 22.4 7/5
19/7 16.4 16.4 8/2
19/8 15.8 13 9/6
19/9 14.5 13.6 10/4

 

失業率(民間部門)

さらに、直近の失業率を見てみます。

2017年初め頃にも、米国経済は完全雇用に近い数字だと言われていましたが、その後の失業率はもっと低水準になりました。

(*2018年以降の失業率の予想と結果の推移)

期間 予想 結果 発表日
18/1 4.1% 4.1% 2/2
18/2 4% 4.1% 3/9
18/3 4% 4.1% 4/6
18/4 4% 3.9% 5/4
18/5 4% 3.8% 6/1
18/6 3.8% 4% 7/6
18/7 3.9% 3.9% 8/3
18/8 3.8% 3.9% 9/7
18/9 3.8% 3.7% 10/5
18/10 3.7% 3.7% 11/2
18/11 3.7% 3.7% 12/7
18/12 3.7% 3.9% 1/4
19/1 3.9% 4% 2/1
19/2 3.9% 3.8% 3/8
19/3 3.8% 3.8% 4/5
19/4 3.8% 3.6% 5/3
19/5 3.6% 3.6% 6/7
19/6 3.7% 3.6% 7/5
19/7 3.7% 3.7% 8/2
19/8 3.7% 3.7% 9/6
19/9 3.7% 3.5% 10/4

直近でみても失業率は低い水準になっています。

失業率は右肩下がり、給料は右肩上がりという図式なのですが、給料が高くなると、今後の雇用の伸びは減速していく可能性があります。

現在の米国経済は、減税の浮揚効果がいったん終わり、輸入関税の負のインパクトが反映されてきているからです。

 

米国の個人所得と個人消費

米国商務省は、米国の個人所得と個人消費についての調査を行い、毎月発表しています。

個人所得では、賃金給与と賃貸収入と利子配当等の累計から社会保険料を控除しますが、個人消費支出は、「耐久財」(自動車や家電等)と「非耐久財」(食品や衣料等)、「サービス支出」(旅行や外食、教育支出等)の三つから構成されています

まず、所得の推移を見てみます。

そして、気になるのは消費の勢いです。

個人消費支出は、PCE(Personal Consumption Expenditures)と略され、米国GDPに占める割合は6割以上を占めています。

これは景気に大きな影響を及ぼし、個人所得の拡大期は雇用市場も良好であることが多いので、重要な指標です。

個人所得・支出は米国時間で月末に公表され、両者の対前月比が注目されています。

所得の構成項目(賃金給与/賃貸収入/利子配当等)や可処分所得、貯蓄率なども発表されるのです。

ただ、これだけでは情勢を見誤りそうなので、消費者信頼感指数を見てみます。

コンファレンスボード消費者信頼感指数

米国の消費者マインドを図る指数としては「コンファレンスボード消費者信頼感指数」(Consumer Confidence)が有名です。これは民間調査機関のコンファレンスボードが行った消費者5000人へのアンケートを指数化した指標です(月末発表)。

この指数は上下しやすいので、1回の調査で高い数値が出ても、景気が改善されているとは限りません。

そのため、3か月程度の平均的な推移をみることが大事です。消費者信頼感指数が上がる時は、まず、生活必需品を扱う企業の株価が上がり、その後、ぜいたく品を扱う企業の株価が上がります。景気が後退する際は、ぜいたく品を売る企業の株価が先に下がり、その後、生活必需品関連の企業の株価が下がるのです。

12月と1月に下落し、そのあとは一進一退しています。

※コンファレンスボードには、自動車や大型家電等の高額商品の購入予定の情報、物価上昇予想に関するデータ、消贅者心理の年齢・収入別分析といった広範な情報が含まれている。資源価格の上下、生鮮食品の価格変動、テロ等の事件などの影響も受けるので、短期的な変化要因がノイズとなることがありうる。

ミシガン大消費者信頼感指数

ミシガン大学が500世帯へのアンケートで調べる消費者信頼感指数(University of Michigan Consumer Sentiment)も高めに推移してきました。

ミシガン大のデータには速報性があり、 全体的な状況を把握できるという利点があります。

19年1~2月の数字の低さが気になりますが、そのあとは盛り返し、また低水準になってきています。

ーーー

こうした三つの大きなポイントをふまえ、さらに個々の重要指標を見ていきます。

売上から景気を測る

小売売上高

消費者の懐の温度を探った後に、商品・サービスの売上を見てみます。

まずは、小売の売上高(Retail Sales)からです。

18年11月が異常に低いのですが、その後、通常の軌道に戻りました。

(*以下、最近のyearlyでの伸び率比較です)

これは百貨店等の小売、サービス業から約5000社の月間売上高を集計した指標です。

全米売上高の6割以上を小売売上高が占めているため、重要な指標です。

商務省による小売売上高の月次の速報値はインフレ影響の調整がされていませんが、実質米ドルベースのデータは追って発表されます。

米国の場合、景気後退まではなかなか支出を抑えたがらず、景気回復時には、消費支出は回復前に上向き始めることが多いので、消費支出は景気回復の先行指標とされています。

百貨店等、小売店で買い物をするのは中流層の消費者が中心です。

その数字を前年比で見ていくと、やや高めに推移してきましたが、2018年12月は大きく落ち込みました。

※小売売上高は、米国時間で毎月15日前後に公表されます

耐久財

耐久財の売上推移は前年度比で伸び続けてきましたが、その勢いが途切れてきています。

景気の先行きを知るための指標としては、 企業や家庭の大型商品の購入額である耐久財受注額が重要です。

個人にとっての耐久財は冷蔵庫や洗濯機等の大型家電や自動車であり、一度購入したら長く使う製品のことです。

企業にとっての耐久財は資本設備であり、そこには製造機械などが含まれます。

耐久財が売れる時は、個人に余裕があり、企業に設備強化のリスクを取る余力があることを意味しているので、耐久財受注は景気回復の先行指標となります。

ただ、耐久財受注データには、軍艦や戦闘機などの防衛装備品(売れ行きは景気ではなく防衛予算次第)や、受注に一貫性のない航空機が含まれるので、景気予測の際には、高額なこの二種を除いたデータが用いられます。

耐久財受注額は変動が大きいので、前月だけでなく、3か月や5か月といった長期間での平均値での比較が行われています。

米国内自動車販売高

高額商品の自動車の売上も重要です。

米国の自動車販売高(Domestic Motor Vehicle Sales)には上がり下がりがありますが、一定の水準で推移しています。

米国でも自動車産業は経済を支える柱であり、部品製造などの関連需要が大きいため、製造業においては大きな影響力を持ちます。

例を挙げてみます。

  • ボディ:鋼板、 塗料
  • 窓:ガラス
  • 電気配線:銅
  • タイヤ:ゴム
  • 内装:布や革

フォードやGM等の自動車の売れ行きがよい時には周辺産業も仕事が増えます。

自動車は高額商品なので、買う時にローンを組みますが、雇用が安定しないとローンは組めません。

そのため、自動車が堅調なのは、雇用が安定している時です。

雇用不安がある時は、労働者は車を買い控えるので、自動車販売台数は、景気後退を知るための先行指標にもなっています。

しかし、労働者は景気回復が確認できなければ、自動車購入を決断できないので、景気回復時には遅行指標となります。

自動車販売台数を見る際には、新車販売台数が特に重要です。新車が売れれば、部品や原料の会社にまで利益が及ぶからです(中古車には、それがない)。

また、景気が悪化しているかどうかを見る上では、自動車販売台数が持続的に減っているかどうかが大事です。

(ただ、景気後退時には金利が下がり、労働者がローンを組みやすくなり、一時的に自動車の販売台数が増えることもある。販売台数上昇=景気回復とは限らないことに注意が必要)

この指標は、米国運輸省運輸統計局のウェプサイトで毎月の最初の営業日に前月分データが発表されます

中古住宅販売件数

中古住宅販売件数(Existing Home Sales)は18年4月以降、下がり傾向になってきましたが、19年2月に盛り返しました。

FRBの利上げが住宅ローンの金利に直結していたと思われますが、利上げ停止に伴い、活気が戻ってきたようです。

なお、住宅関連の指標の意義は以下の通りです。

住宅を購入した場合、一緒に家具や家電などが買われるので、住宅販売は経済の多分野に波及します。

住宅は自動車と並んで、家計に大きなインパクトを与えるため、全米不動産業者協会(NAR)が発表する中古住宅販売件数が注目されています。

米国の住宅市場は新築件数より中古住宅の販売件数は新築よりも多くの割合を占めているからです。

住宅には価格の変動に伴う「資産効果」があります。住宅価格が上がれば消費者が多くのものを買うようになり、景況感が高まります。また、住宅価格が下がると、人々はものを買わなくなり、景況感が下がります。

その典型は2000年代の好景気とサブプライムショックでした。

歴史的には住宅販売が回復する際には、景気がよくなり、不況期には住宅ローンの利率を下げる効果を期待して、FRBは利下げを行ってきました。

中古住宅販売件数が回復しているかどうかを見る時には、 売出し中の在庫件数に注目し、今のペースで売れ続けた時に、 売出し中の住宅が何力月で全部、売り切れるかを見ます。

この数字が「住宅在庫供給月数」といわれ、供給月数が短い場合は住宅市場は上向き、 景気は良好、供給月数が長い場合には、住宅市場は下降し、 景気が悪化しつつあると判断するわけです。

中古住宅市場等の指標が好調である時には、景気との連動性が高い銘柄が好まれ、逆の場合は国債などの安全資産が選好されます。

※中古住宅販売件数は、米国時間で20日前後に公表

ケース・シラー米住宅価格指数

米国全土の住宅価格動向を測る重要指数です。

ファイサーブ社が算出しS&P社が発表しており、全米主要10都市の一戸建て住宅価格の再販価格の変化などが計られています。

10大都市圏指数では、ボストン、シカゴ、デンバー、ラスベガス、ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンディエゴ、サンフランシスコ、ワシントンの10大都市の住宅価格および先物価格を調査。

20大都市圏指数では、10大都市圏にアトランタ、シャーロット、クリーブランド、ダラス、デトロイト、ミネアポリス、フェニックス、ポートランド、シアトル、タンパを加えた調査で、こちらの全米住宅価格指数は四半期公表なので、こちらの指数も重視されています。

前年比の伸び率は+ですが、そもそも、伸び率そのものが減っているのが気になります。

新築住宅販売件数

新築住宅販売件数(New Home Sales)の売上高は上がり下がりが交互に来ています。

今後の展開には注視が必要です。

製造業の主要指数を概観

さらに、製造業の指数を見ていきます。

ISM製造業景況指数

まずは、米供給管理協会(ISM)が約350の製造業の仕入れ担当役員にアンケートを実施して発表する「ISM製造業景況指数」(ISM Manufacturing Index)です。

こちらは直近二ヶ月がともに50を割りました(50割れは景気減速を意味する)。

ISM製造業景況指数は全米の製造業の購買担当役員にアンケート調査を行い、そこから製造業の景況感を指数化した指標です。

購買担当役員は製品の原材料を仕入れ、彼らは常に今後、どれだけの原材料が必要かを考えています。

その担当者の景況感をアンケートを通して測り、業界の状況を知るための情報を集めるわけです。

米国供給管理協会(ISM)は主要製造業約400社を対象に新規受注・生産・扉用・入荷遅延の比率・在庫・仕入価格・受注残・輸入・輸出について購買担当役員に調査を行っています。

特に新規受注・生産・扉用・入荷遅延比率・在庫の5つはPMI(Purchasing Managers Index)と呼ばれています。

PMIが50を超えていれば製造業は順調に伸びており、50を下回れば製造業の業績は悪化しています。

新規受注指数の伸びは今後の経済活動の明暗を示し(50以上かどうか)、雇用指数の伸びは製造業の労働市場の明暗を示しています。

PMIと新規受注指数、雇用指数の3つが同時に上がっているかどうかをチェックすることが大事です。

ISM非製造業景況指数

サービス業の景況感を図る指標です。

ISM非製造業景況指数は全米のサービス業の購買担当役員にアンケート調査を行い、そこから非製造業の景況感を指数化した指標です。

その担当者の景況感をアンケートで測り、業界の情報を集めるわけです。

総合的な景況指数が企業活動指数として表され、それが50を超えていれば、サービス業は拡大局面にあり、50を下回れば後退局面にあります。

この指標の注意点は、米国のサービス業の購買担当役員は製造業に比べるとポジションの重要が低い、ということでしょう。

鉱工業生産指数

鉱工業生産指数(Index of Industrial Production)は、前年度比で見ると上がり調子でしたが、最近は下がってきています。

最近は下落基調に入りました。

工業の2大指標としては、鉱工業生産指数と設備稼働率が注目されています。

鉱工業生産指数は米国の鉱業と製造業(公益事業含む)における月々の生産量を測る指標です。

鉱工業生産物には携帯電話、テレビ、金塊や鋼等、様々な生産物が含まれ、景気動向と一致して動く指数と見なされています。

一方、設備稼働率は、最大生産能力(全企業が全工場をフル稼働させた場合の生産量)に対する実際の生産量の比率を示しています。

設備稼働率は最大100%で、高くなればなるほど、企業が機械などを無駄に寝かせず、有効活用していることを意味しているので、これが高ければ製造業は好調です。

設備稼働率が高ければ、企業が設備投資をしたり、新たに人を雇ったりする可能性が上がるので、景気の先行きを計る指標にもなっています。

設備稼働率が一定の高さになると、今度はコストが膨らむので、製造のための原料価格が上がり、メーカーの利益が減りますが、原料を提供する側の企業(素材やエネルギーセクター等)が儲かるようになります。

※2018年の工業生産指数と設備稼働率は、各月中旬に発表されます(米国時間)。

設備稼働率

やや下がっても、設備稼働率は77以上なので、こちらは高水準です。

製造業の指標はわりと良好な数字です。

2019年の米国経済は要注意

以上、あくまでもざっくりとしたグラフでの観測でした。

今までのFRBは強気でしたが、最近は懸念材料が増えてきています。

18年の終わり頃、FRBも2%程度にまでGDP成長率が下がると見ていました。

(出所:The Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes)

「強気のポジションをとりすぎて、すってんころりん」ということがないようにしたいものです