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安倍・トランプ会談から日米貿易協議へ やはり二国間交渉が始まる?

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日米通商問題に関しては、4月の首脳会談の後、8月に貿易協議が行われました。

そのオチは、日米FTAを着地点とする「二国間交渉」か、米国のTPP復帰を目指す「多国間交渉」なのかーー。

行き着く先が決まらないまま、8月には茂木敏充経済財政・再生相とライトハイザーUSTR代表が会談を行い、9月に決着は引き延ばされています。

日米貿易協議ー結論は9月に引き延ばし

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18年1月にトランプ大統領は「条件次第ではTPP復帰もありえる」と述べ、日本を交渉の土俵に引き込もうとしていましたが、本音は「日米FTAを目指した二国間交渉」のほうにあるので、そんな簡単に多国間交渉の場に戻れるわけではありません。

今回の協議の席で、茂木氏が「TPP復帰」を呼びかけても、ライトハイザー氏は「トランプ大統領の考えは知っての通りだ」と、つれない返答を返しました。

ライトハイザー氏も「日本は農産品の関税を引き下げるべきだ」と要請したのですが、茂木氏からは「TPPで引き下げる関税の水準が限度だ」という返答しか得られず、成果を得ることはできませんでした。

日本は今回、交渉の引き延ばし、「相互信頼」(mutual trust)の名目のもと、交渉中は、米国に輸入自動車関税を発動されないように話をつけています。

報道などを見る限り、成果と言えるのはこれぐらいで、協議は「貿易促進で合意」という、具体性のない結論で終わりました。

(日本側にはLNGや防衛装備品の輸入拡大で貿易赤字を減らす策はあったが、このカードは9月の会談まで温存する模様。なお、中国の知財侵害に対しては共闘で合意)

日本側の作戦は「議論を引き延ばしつつ、TPP11をまとめる」ところにあるようです。

豪州やNZ、カナダなど11カ国の間でTPPが発効してしまえば、米国は日本の農産品市場で不利になるので、自分から「TPPに復帰したい」と言ってくるはずだーー。

安倍政権も、農産品輸出拡大を望む農家の票が欲しい共和党の「弱点」を突くことを考えています。

ただ、あまり引き延ばしばかりしていると、トランプ大統領がキレるリスクが発生するため、交渉は綱渡りが続くことになるでしょう。

この記事では、8月の貿易協議の結果を踏まえて、その始まりとなった日米首脳会談の内容を振り返ってみます。

トランプ大統領と安倍晋三首相との首脳会談

日米首脳会談では、拉致問題の解決が米朝首脳会談で取り上げられることや、通商問題で日本と米国との間に見解の相違があることが明らかになりました。

日本は通商問題は米国との多国間交渉を最良としていますが、米国は日米間の二国間交渉を望んでいます。

ここは、今後の議論の争点として残されました。

この会談については、各紙がさまざまに報じられていますが、今回は、ホワイトハウスHP(2018/4/18)に掲示された記事(日米首脳会談)を翻訳し、米国側はどこを重視していたのかを確認してみます。

(原題:President Donald J. Trump’s Summit Meeting with Prime Minister Shinzo Abe:April 18, 2018)

北朝鮮問題

ドナルド・J・トランプ大統領と安倍晋三首相は、4月17日から18日に第3回目の日米首脳会談を行い、北朝鮮に対して日米同盟の能力を高める強い決意を表明した。日米同盟は、平和、安定、法の支配に基づく国際秩序への脅威に直面しているからだ。

On April 17-18 at Mar-a-Lago, President Donald J. Trump and Prime Minister Shinzo Abe held their sixth meeting, and third major summit, and affirmed their strong determination to strengthen our shared resolve on North Korea, and increase the capability of the U.S.-Japan Alliance to confront all emerging threats to peace, stability, and an international order based on the rule of law.

両首脳は、自由で開かれたインド太平洋と強化された日米経済関係に共同して関与することを明らかにした。

The two leaders expressed their joint commitment to a free and open Indo-Pacific and an enhanced U.S.-Japan economic relationship.

トランプ大統領と安倍総理は、北朝鮮の恒久的かつ検証可能な非核化を達成するという約束を確認した。

President Trump and Prime Minister Abe confirmed their commitment to achieving the permanent and verifiable denuclearization of North Korea.

彼らはまた、北朝鮮がすべての大量破壊兵器と弾道ミサイル計画を放棄する必要があることを再確認した。

They also reaffirmed that North Korea needs to abandon all weapons of mass destruction and ballistic missile programs.

トランプ大統領と安倍総理は、北朝鮮が非核化するまで国際的に最高の圧力をかけることを続けることを強調した。

President Trump and Prime Minister Abe underscored that the global maximum pressure campaign will continue until North Korea denuclearizes.

トランプ大統領と安倍総理は、北朝鮮の脅威に直面するなかで韓国を含めた三国間(日米韓)の協力関係を強化し、米朝首脳会談に先立って緊密に協調する強い決意を繰り返し表明した。

President Trump and Prime Minister Abe reiterated their strong commitment to boosting trilateral cooperation with the Republic of Korea in the face of the North Korean threat and coordinating closely in advance of U.S.-North Korea talks.

トランプ大統領は、国連安全保障理事会の決議に違反して北朝鮮が船から船に物資を移転する取引を防ぐ日本の努力を賞賛した。

President Trump commended Japan’s efforts to prevent North Korean ship-to-ship transfers that are in violation of UN Security Council resolutions.

両首脳は、船から船への移転を防ぐ努力が拡大されるべきだと強調した。

The two leaders underscored that efforts to prevent ship-to-ship transfers should be expanded.

トランプ大統領は、17年11月の訪日中に拉致被害者の家族に会った時の強い印象を思い出し、北朝鮮に対して、即時に日本国民の拉致問題を解決するよう促すことを断言した。

President Trump affirmed that he will urge North Korea to promptly resolve its abductions of Japanese citizens, recalling the strong impression he received when he met the families of the abductees during his visit to Japan last November.

日米通商問題

トランプ大統領は、対日貿易で赤字が恒常化していることを指摘し、二国間の経済、貿易、投資に関する(協議を)進展させることの重要性を確認した。(※傍線は翻訳者)

President Trump affirmed the importance of further progress in the area of bilateral economic, trade, and investment ties, noting the United States’ persistent trade deficit with Japan.

トランプ大統領は、経済成長と雇用創出を強化するために、世界経済のアクターとして日米間で貿易と投資を拡大する新たな措置を取ることを強調した。それは同盟国に対する期待でもある。

President Trump stressed his expectation that as allies and like-minded global economic players, Japan and the United States will take new steps to expand bilateral trade and investment in order to strengthen economic growth and job creation.

従って、両首脳は、日米経済対話の進展を踏まえて、貿易と投資の議論を強化することに合意した。

Accordingly, the two leaders agreed to intensify trade and investment discussions, building on progress achieved in the U.S.-Japan Economic Dialogue.

米国にとっては、ロバート・ライトハイザー(Robert Lighthizer)米USTR代表が、自由で公平かつ相互的な貿易と投資のための協議を行う。

For the United States, these consultations for free, fair, and reciprocal trade and investment will be led by U.S. Trade Representative Robert Lighthizer.

両首脳は、両国が21世紀の二国間貿易と国際貿易、そして投資を促進するモデルとして、いかに貢献するかについての議論を進めることを約束した。(※傍線は翻訳者)

The two leaders committed to advance discussions on how both countries can serve as a model for bilateral and global trade and investment promotion in the 21st century.

両首脳はまた、第三国による不公平な貿易慣行に対する措置を調整することを約束した。

The two leaders also committed to coordinate enforcement activities against unfair trade practices by third countries.

トランプ大統領と安倍首相は自由で開かれ、共通の規範と価値観の尊重に支えられたインド太平洋地域の重要性を確認した。それは地域の責任ある全国家の繁栄を可能にするものだ。

President Trump and Prime Minister Abe affirmed the importance of a free and open Indo-Pacific region underpinned by respect for the shared norms and values that enable every responsible nation in the region to prosper.

南シナ海問題とAIIB

トランプ大統領と安倍総理は、インド太平洋におけるインフラ整備は、市場の取引に支えられ、クリーンで透明性、責任のある資金調達が必要であり、開かれた公正なアクセス、社会と環境への配慮、よき経営の基準が必要だと断言した。(※傍線は翻訳者:これは中国のAIIBを暗に批判している)

President Trump and Prime Minister Abe affirmed that infrastructure projects in the Indo-Pacific should be market-based, clean and transparent, responsibly financed, and feature open and fair access, social and environmental considerations, and standards of good governance.

トランプ大統領と安倍総理は、合法的な商取引と、航行・越境の自由および合法的な使用を含んだ国際法の尊厳を守るために共同して関与することを強調した。(※「航行の自由」作戦が続くことを示唆)

President Trump and Prime Minister Abe underscored a joint commitment to safeguard unimpeded lawful commerce and respect for international law, including freedoms of navigation and overflight and other lawful uses of the sea.

安倍総理とトランプ大統領は、中国を含んだ南シナ海の領有権の主張者が、係争地の軍事化を止めるべきだという見解を共有した。

Prime Minister Abe and President Trump shared the view that South China Sea claimants, including China, should halt their militarization of disputed features.

安倍総理とトランプ大統領は、中国と他の主張者が、国連海洋法条約に基づいて平和的に紛争を管理し、解決すべきであるという見解を共有する。仲裁などの国際法と外交過程への完全な尊重、これらの原則をASEANが中国との効果的な交渉を行うための基準に組み込む。

Prime Minister Abe and President Trump also shared the view that China and other claimants should manage and resolve disputes peacefully and in accordance with the United Nations Convention on the Law of the Sea, to give full respect to legal and diplomatic processes, such as arbitration, and embed these principles in ongoing efforts by ASEAN to negotiate an effective code of conduct with China.

このような外交的努力は、紛争の非武装化と平和で開放的な南シナ海の維持につながるはずである。

Such diplomatic efforts should lead to demilitarization of disputed features and the maintenance of a peaceful and open South China Sea.

東シナ海と尖閣、沖縄の普天間基地移設について

両首脳はまた、日米相互保安条約第5条が東シナ海の尖閣諸島をカバーし、現状を変えようとする一方的な行動(※名指しはしていないが、尖閣に対する中国の活動を指している)に反対することを再確認した。

The two leaders also reaffirmed that Article V of the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security covers the Senkaku Islands in the East China Sea and that they oppose any unilateral action that seeks to change the status quo.

トランプ大統領は、全範囲の軍事能力を通じて日本を防衛する米国の関与はゆるぎないことを再確認した。

President Trump reaffirmed the United States’ unwavering commitment to Japan’s defense through the full range of U.S. military capabilities.

また、トランプ大統領は、弾道ミサイル防衛も含めて先進兵器を供する米国の約束を再確認した。それは自衛隊の即応能力を確保するためのものだ。

President Trump also reiterated the United States’ commitment to provide advanced weapons to Japan, including ballistic missile defense, and the continued provision of defense articles to ensure the readiness and effectiveness of the Japanese Self Defense Force.

トランプ大統領は、日本が同盟における役割を拡大し、その能力を強化するための努力を歓迎した。

President Trump welcomed Japan’s continued efforts to expand its role and augment its capabilities within the Alliance.

トランプ大統領と安倍総理は、米軍の地方共同体への影響を軽減しながら、その運用と抑止力を維持するための米軍再編の二国間計画への関与を再確認した。

President Trump and Prime Minister Abe reiterated their commitment to the bilateral plan for the realignment of the United States Forces, Japan to maintain their operational and deterrent capability while mitigating impact of the U.S. forces on local communities.

両首脳は、海兵隊が用いる普天間飛行場の固定化を避ける唯一の解決策は、それをキャンプ・シュワブ/辺野古に隣接する海域に移転することだと再確認した。

The leaders reconfirmed that the relocation of Marine Corps Air Station (MCAS) Futenma to the Camp Schwab/Henokosaki area and in adjacent waters is the only solution that avoids the continued use of Marine Corps Air Station Futenma.

彼らは、地域の平和と安全を提供する同盟の能力を確保するために、普天間代替施設(FRF)の建設計画の着実な実施を求めた。

As such, they called for the steady implementation of the construction plan for the Futenma Replacement Facility (FRF) to ensure the Alliance’s ability to provide for peace and security in the region.

日米通商問題は結局、「二国間交渉」になる?

ホワイトハウスの記事では、日米通商関係については「二国間交渉」が行われるとされています。

前掲記事は、これはすでに決まったシナリオであるかのような書きぶりです。

安倍首相は米国のTPP再復帰を望んでいるわけですが、北朝鮮問題を巡って米国に安全保障への尽力と拉致問題解決を要望したので、米側がその見返りを通商問題で求めてくるのは避けられないでしょう。

産経新聞などでは、安倍首相がトランプ大統領に拉致問題解決を求めたことを好意的に報じていますが、筆者は「自国民の解放を米国に要望しなければいけない日本は、非常に情けない」と思わずにはいられませんでした。

国際政治では、安全保障(軍事・外交関係)の上に通商・貿易関係が乗る二重構造になっているので、安全保障をなおざりにした国は、経済問題でその代価をどこかで払わなければいけなくなります。

その代価が今後、日米の通商問題のやりとりで請求されるのでしょう。

前掲記事では、米国からの装備購入の件も書かれていますが、本来、独立国家であれば、自国の装備は可能な限り、国産化しなければいけません。

例えば、スウェーデンは自国で国産戦闘機をつくっていますが、戦後日本では、そうした試みは不十分でした。

今後の日本の安全保障のためには、もう一段の防衛装備の国産化が必要なのですが、それはできないでいます。

防衛装備の輸入を増やすなら、防衛費をもっと増やさなければいけないのですが、今の自民党政権でそれがどこまで可能なのでしょうか。

非常に心もとない限りです。

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