TTD:トレードデスクの業績

業績,通信

【2026年9月版】The Trade Desk (TTD) 徹底分析:成長鈍化局面でKokai Zuma・CTV・AIは再加速を生めるか

はじめに
The Trade Desk(ザ・トレードデスク)は、広告主および広告代理店が、コネクテッドTV(CTV)、モバイル、ビデオ、オーディオ、ディスプレイ、ネイティブ広告などを横断してデジタル広告を購入・管理できる、独立系のデマンドサイドプラットフォーム(DSP)です。自社で広告在庫を販売する巨大プラットフォームとは異なり、オープンインターネット上の広告在庫を中立的に評価し、データドリブンな広告配信を支援する点が特徴です。

本記事では、The Trade DeskのFY2019からFY2025までの通期データを中心に、成長ドライバー、収益性、フリーキャッシュフロー、自社株買い、Kokai・Koa AI・UID2・OpenPathなどの技術戦略を投資家目線で整理します。年次データはFY2025(2025年12月31日終了年度)まで、最新四半期はFY2026 Q2(2026年6月30日終了四半期)まで反映しています。FY2026 Q1の売上高は6.89億ドル、前年同期比+12%、Q2は7.15億ドル、+3%でした。[1][2]

最重要ポイント:高収益性は維持する一方、2026年は売上成長の急減速が最大の論点

The Trade DeskはFY2025に売上高28.96億ドル、Gross Spend 133.95億ドル、調整後EBITDA11.96億ドル、営業CF9.93億ドルを記録しました。FY2026 Q1も売上高6.89億ドル、調整後EBITDA2.06億ドルと当初見通しを上回りました。[3][1]

一方、FY2026 Q2は売上高7.15億ドル(前年同期比+3%)、調整後EBITDA2.41億ドルとなり、Q1決算時に示したQ2ガイダンスの売上高7.50億ドル以上、調整後EBITDA約2.60億ドルを下回りました。会社自身も2026年8月6日のQ2決算発表で、Q2について「自社が設定する基準に届かなかった」と説明しています。Q3見通しは売上高6.50億ドル以上、調整後EBITDA約1.60億ドルで、成長率だけでなくKokaiの製品改善、営業執行、顧客消費の回復を確認する局面です。[1][2]

  • CTV:リニアTVから広告付きストリーミングへの移行が長期成長テーマです。
  • Kokai / Zuma:2026年8月27日のZumaリリースで、UI刷新、エージェント型AI、計測機能の簡素化・強化を進めています。[4]
  • UID2:サードパーティCookie後のIDソリューションとして、オープンインターネット側の標準化を目指します。
  • OpenPath・PubDesk:サプライチェーンの透明性と効率化を進める取り組みです。
  • 自社株買い:FY2025に約13.8億ドルを買い戻した後、FY2026上半期はキャッシュベースで約2.41億ドルを自社株買いに使用しました。2026年6月30日時点の承認残高は2.69億ドルです。[5]

【免責事項および出典について】

  • 本記事の財務データは、主にThe Trade Desk, Inc.のForm 10-K、決算発表、公式IR資料、SEC提出資料に基づいて作成しています。[6]
  • The Trade Deskの会計年度は毎年12月31日に終了します。本文中の「FY2025」は2025年1月1日から2025年12月31日までを指します。
  • 記事内のCAGR、利益率、自己資本比率、ROA、ROE、FCF、SPS、CFPSなどは、公式数値をもとに筆者が算出した概算を含みます。
  • Adjusted EBITDA、Non-GAAP net income、Non-GAAP EPS、Free Cash FlowなどはNon-GAAP指標です。GAAP指標と併せて確認する必要があります。
  • The Trade Deskは配当を支払っていません。株主還元は主に自社株買いで行われています。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

【2026年9月更新】
FY2026 Q1・Q2決算とQ2 Form 10-Q、2026年8~9月の製品・提携発表を反映しました。FY2026 Q1は売上高6.89億ドル(前年同期比+12%)、調整後EBITDA2.06億ドル、Q2は売上高7.15億ドル(+3%)、調整後EBITDA2.41億ドルでした。上半期売上高は14.04億ドル(+7%)、GAAP純利益1.04億ドル、調整後EBITDA4.47億ドルです。[1][2]

Q2ではNetflixがSellers and Publishers 500+に加わり、Samsung Ads、Databricks、Adobe、Dentsuなどとの連携も拡大しました。2026年8月27日にはKokaiの最新リリースZumaを発表し、エージェント型AI、UI、計測機能を強化。9月15日にはVeeva CrossixとIQVIA Digitalとのヘルスケア計測・最適化連携を拡張しました。[2][4][7]

1. The Trade Deskの長期的な業績:一貫した高成長と高収益性

The Trade Deskは、広告主・代理店向けの独立系DSPとして長期的に高成長を続けてきました。FY2025は売上高が前年比+18%で、調整後EBITDAマージンは41%を維持しました。一方、FY2026はQ1の売上成長率が+12%、Q2が+3%まで低下しており、長期成長ストーリーと短期の執行減速を分けて見る必要があります。[1][2]

1.1. 売上、調整後EBITDA、利益、キャッシュフローの推移

会計年度 Gross Spend
百万$
売上高
百万$
売上
成長率
調整後
EBITDA
百万$
調整後
EBITDA
マージン
営業CF
百万$
純利益
GAAP・百万$
FY2019 3,100 661 +38.7% 206 31.1% 161 108
FY2020 4,200 836 +26.5% 284 33.9% 245 242
FY2021 6,200 1,196 +43.0% 456 38.1% 285 138
FY2022 7,800 1,578 +32.0% 604 38.3% 499 53
FY2023 9,600 1,946 +23.4% 777 39.9% 598 179
FY2024 12,041 2,445 +25.6% 1,011 41.4% 739 393
FY2025 13,395 2,896 +18.5% 1,196 41.3% 993 443
CAGR(年平均成長率)
FY2019→FY2025 約27.6% 約28.0% — 約34.0% — 約35.5% 約26.5%
FY2020→FY2025 約26.1% 約28.2% — 約33.4% — 約32.3% 約12.9%

注)Gross Spendは会社が管理指標として用いる広告支出総額。FY2019〜FY2022のGross Spendは過年度資料の概数を含みます。CAGRは筆者算出。[3][6][8]

  • 売上高:FY2025の売上高は28.96億ドル、前年比+18%でした。FY2024の+26%からは減速しましたが、デジタル広告市場全体に比べればなお高成長です。[3]
  • Gross Spend:FY2025のGross Spendは133.95億ドル、前年比+11%でした。広告主の実際のプラットフォーム利用規模を見るうえで重要です。[6]
  • 調整後EBITDA:FY2025の調整後EBITDAは11.96億ドルで、マージンは約41%でした。高成長と高利益率の両立が続いています。
  • 営業CF:FY2025の営業CFは9.93億ドルで、前年比+34%でした。売上成長だけでなく、キャッシュ創出力も改善しています。[6]

1.2. FY2026 Q1~Q2:売上成長の急減速と利益率の変化

四半期 売上高
百万$
前年同期比 GAAP純利益
百万$
GAAP EPS 調整後EBITDA
百万$
同マージン Non-GAAP EPS
FY2026 Q1 689 +12% 40 0.08 206 30% 0.28
FY2026 Q2 715 +3% 64 0.14 241 34% 0.34
FY2026 H1 1,404 +7% 104 0.22 447 32% 0.62

注)Q1は2026年3月31日終了四半期、Q2は6月30日終了四半期。顧客維持率は両四半期とも95%超でした。[1][2]

  • Q1:売上高6.89億ドルは会社のQ1見通し6.78億ドル以上を上回りました。ただし前年同期比成長率は+12%まで低下しました。
  • Q2:売上高7.15億ドル、調整後EBITDA2.41億ドルとなり、Q1時点のQ2ガイダンス(売上高7.50億ドル以上、調整後EBITDA約2.60億ドル)を下回りました。[1][2]
  • 顧客維持率:Q2も95%超を維持しており、顧客離脱よりも既存顧客のGross Spend減少が成長鈍化の重要要因です。Q2 Form 10-Qでは、新規顧客のキャンペーン増加を既存顧客のGross Spend減少が一部相殺したと説明されています。[5]

1.3. 収益性:高い利益率とキャッシュ創出力

会計年度 GAAP
粗利率
GAAP
営業利益率
調整後
EBITDA
マージン
営業CF率 FCF率
FY2020 78.5% 20.6% 33.9% 29.4% 26.9%
FY2021 80.7% 14.8% 38.1% 23.8% 22.0%
FY2022 80.2% 8.5% 38.3% 31.6% 29.0%
FY2023 81.2% 10.3% 39.9% 30.7% 27.9%
FY2024 80.7% 17.5% 41.4% 30.2% 25.9%
FY2025 78.6% 20.3% 41.3% 34.3% 27.0%
FY2026 Q2
参考
約74.2% 約14.2% 33.7% 約21.5% 約19.0%

注)粗利率は売上高からPlatform operations費用を差し引いて筆者算出。FCFは営業CF−有形固定資産取得−資産化ソフトウェアで計算。FY2026 Q2の営業CF・FCFは上半期累計値からQ1値を差し引いて筆者算出。[6]

  • Q2のGAAP営業利益率は約14.2%:FY2025通期の20.3%から低下しました。売上成長鈍化とプラットフォーム運営費の増加を確認する必要があります。
  • 調整後EBITDAマージン:FY2026 Q1は30%、Q2は34%でした。絶対水準は高いものの、前年同期のQ2 39%からは低下しています。[2]
  • FCF率:FY2026上半期のFCFは概算4.12億ドル、FCFマージンは約29.3%でした。ただしQ2単独では概算1.36億ドル、約19.0%まで低下しており、四半期の回収・支払タイミングによる変動も考慮する必要があります。[5]

1.4. コスト構造:技術投資とG&A効率化

会計年度 プラットフォーム
運営費率
販売・
マーケ費率
技術開発
費率
一般管理
費率
株式報酬
百万$
FY2022 19.8% 22.8% 20.1% 27.1% 497
FY2023 18.8% 23.0% 21.2% 26.7% 492
FY2024 19.3% 22.4% 19.0% 21.9% 495
FY2025 21.4% 22.2% 18.1% 17.9% 491

注)各費用率はGAAP費用÷売上高で筆者算出。株式報酬はキャッシュフロー計算書上のStock-based compensation expense。[6]

  • G&A費率が改善:FY2025の一般管理費率は17.9%で、FY2023の26.7%から大きく低下しました。
  • 技術開発投資は継続:FY2025の技術開発費率は18.1%でした。Kokai、Koa AI、UID2、OpenPathなど、プラットフォームの競争力を維持するための投資は続いています。
  • 株式報酬は大きい:FY2025の株式報酬は4.91億ドル。FY2026上半期は2.19億ドル、Q2単独は1.10億ドルでした。Q2の希薄化後加重平均株式数は4.70億株で、前年同期の4.96億株から減少しており、自社株買いは株式数抑制に寄与しています。[2][5]

1.5. 投資家向け指標:1株当たり価値と顧客維持率

会計年度 SPS
1株当たり売上$
CFPS
1株当たり営業CF$
GAAP EPS
希薄化後$
Non-GAAP EPS
希薄化後$
顧客維持率
FY2021 2.46 0.59 0.28 0.92 95%超
FY2022 3.20 1.01 0.11 1.21 95%超
FY2023 3.89 1.20 0.36 1.53 95%超
FY2024 4.87 1.47 0.78 1.66 95%超
FY2025 5.87 2.01 0.90 1.77 95%超

注)SPSとCFPSは希薄化後加重平均株式数で筆者算出。顧客維持率は会社が公表する「over 95%」表記。[3][6]

2. ビジネスモデル:オープンインターネットを支える独立系DSP

The Trade Deskは、広告主・代理店がオープンインターネット上の広告在庫を横断的に買い付け、データを活用して広告効果を高めるためのセルフサービス型プラットフォームを提供しています。収益は主に、顧客が同社プラットフォーム上で支出する広告費に対するプラットフォーム手数料と、データ・付加価値サービスから生まれます。[6]

  • DSP・セルフサービス:広告主や代理店が、複数チャネルを横断して広告キャンペーンを設計、入札、最適化できます。
  • オープンインターネット重視:Google、Amazon、Metaのようなウォールドガーデン外の広告在庫に、中立的・透明なアクセスを提供します。
  • 収益モデル:広告主のGross Spendに連動するため、広告市場全体の成長と同社の利用シェア拡大が売上成長の源泉です。
  • CTV:広告付きストリーミングの拡大により、テレビ広告費のデジタル化を取り込む余地があります。
  • リテールメディア:小売・EC・決済データなどを活用し、広告効果の測定とターゲティングを改善します。
  • UID2・OpenPath:ポストCookie時代のIDとサプライ透明化を支える重要な取り組みです。

3. 財務の健全性:強力なキャッシュ創出力と自社株買い

The Trade Deskは、2026年6月30日時点で現金・現金同等物11.23億ドル、短期投資3.62億ドル、合計14.85億ドルを保有しています。総資産57.64億ドル、総負債31.90億ドル、株主資本25.74億ドルで、自己資本比率は約44.7%です。リボルビング信用枠には借入残高がなく、利用可能額は7.45億ドルでした。[5]

3.1. 資産・負債・資本の推移

会計年度末 総資産
百万$
総負債
百万$
株主資本
百万$
自己資本比率 現金・短期投資
百万$
FY2021 3,334 1,930 1,404 42.1% 920
FY2022 3,774 2,307 1,467 38.9% 1,121
FY2023 4,328 2,164 2,164 50.0% 1,440
FY2024 6,112 3,163 2,949 48.3% 1,921
FY2025 6,153 3,669 2,484 40.4% 1,303
FY2026 Q2末
参考
5,764 3,190 2,574 44.7% 1,485

注)自己資本比率は株主資本÷総資産で筆者算出。現金・短期投資は現金・現金同等物と短期投資の合計。[6][8]

  • 自己資本比率:FY2025末の約40.4%から、FY2026 Q2末は約44.7%へ回復しました。[5]
  • 現金・短期投資:FY2026 Q2末は14.85億ドルで、FY2025末の13.03億ドルから増加しました。[5]
  • 信用枠:FY2026 Q2末時点では借入残高はなく、リボルビング信用枠の利用可能額は7.45億ドルでした。[5]

3.2. キャッシュフロー分析:FCFは高水準だが、CapExも増加

フリーキャッシュフロー(FCF)= 営業CF − 有形固定資産取得 − 資産化ソフトウェア

会計年度 営業CF
百万$
CapEx等
百万$
FCF
百万$
FCF
マージン
自社株買い
百万$
FY2021 285 22 263 22.0% —
FY2022 499 42 458 29.0% —
FY2023 598 55 543 27.9% 647
FY2024 739 107 632 25.9% 235
FY2025 993 210 783 27.0% 1,380
FY2026 H1
参考
545 133 412 29.3% 241

注)CapEx等は有形固定資産取得と資産化ソフトウェアの合計。自社株買いはキャッシュフロー計算書上のRepurchases of Class A common stock。[6]

  • FCFは7.83億ドル:FY2025のFCFは概算7.83億ドルで、FY2024の6.32億ドルから増加しました。
  • CapEx等が増加:FY2025の有形固定資産取得と資産化ソフトウェアの合計は約2.10億ドルでした。プラットフォーム、データ、インフラへの投資が増えています。
  • FY2026上半期の自社株買い:キャッシュフロー計算書上の自社株買い支出は2.41億ドルでした。Q2決算発表ではQ2単独で約0.78億ドルの現金を使用したと説明し、Q2末の承認残高は2.69億ドルでした。[2][5]

4. 資本効率性と収益性:高利益率だが株式報酬と買い戻しに注意

The Trade Deskは高い営業利益率とFCFマージンを持ちます。一方で、株式報酬も大きく、FY2025にはFCFを上回る自社株買いを行ったため、利益、株式数、現金残高、株主資本の関係を合わせて見る必要があります。

会計年度 GAAP営業利益
百万$
GAAP営業利益率 GAAP純利益
百万$
ROA
期末総資産
ROE
期末株主資本
Rule of 40
売上成長+FCF率
FY2021 177 14.8% 138 4.1% 9.8% 65%
FY2022 134 8.5% 53 1.4% 3.6% 61%
FY2023 200 10.3% 179 4.1% 8.3% 51%
FY2024 427 17.5% 393 6.4% 13.3% 52%
FY2025 589 20.3% 443 7.2% 17.8% 45%

注)ROA、ROE、Rule of 40は筆者算出。Rule of 40は売上成長率とFCFマージンの合計。[6]

  • Rule of 40は高水準:FY2025は売上成長率18.5%+FCF率27.0%で約45%でした。FY2024の約52%からは低下しましたが、依然として質の高いSaaS/プラットフォーム企業の目安を上回ります。
  • ROEは改善:FY2025のROEは約17.8%でした。自社株買いで株主資本が減ったこともROEを押し上げています。
  • 株式報酬と希薄化:FY2025の株式報酬は4.91億ドルで、GAAP純利益4.43億ドルを上回ります。Non-GAAP EPSだけでなく、発行株式数と自社株買いも確認する必要があります。

5. AI戦略と技術的優位性:Kokai Zuma、Koa Agents、UID2、OpenPath

The Trade Deskの技術戦略は、広告主がより少ない無駄で、より高い広告効果を得るための意思決定基盤を作ることです。広告在庫、オーディエンスデータ、入札、測定、予算配分、クリエイティブ、サプライチェーンをAIで統合的に最適化する方向へ進んでいます。

  • Koa / Koa Agents:従来の入札・予測・最適化に加え、2026年には会話型・エージェント型のKoa Agentsへ拡張しています。2026年8月時点では一部機能がクローズドベータで、広告運用担当者が質問から次のアクションへ移る時間を短縮する狙いです。[4]
  • Kokai Zuma:2026年8月27日に発表された最新リリースです。刷新したUI、エージェント型AI、計測・レポーティングの簡素化を組み合わせ、キャンペーン変更の自動化と運用負荷の削減を狙います。[4]
  • UID2:サードパーティCookieに代わるIDソリューションとして、ユーザー制御とプライバシーを意識しながら、広告の関連性を維持しようとする取り組みです。[3]
  • OpenPath:広告主がパブリッシャー在庫へより直接的・透明にアクセスできるようにするサプライパス最適化の取り組みです。
  • PubDesk・Ventura・CTV:パブリッシャー向け透明化ダッシュボードPubDeskやVentura Ecosystemに加え、FY2026 Q2にはNetflixがSellers and Publishers 500+に参加し、Samsung Adsもプレミアムホーム画面在庫をプログラマティック購入へ開放しました。[2]
  • リテールデータ:小売・コマースデータを活用し、広告主の成果測定とターゲティング精度を高める領域です。
  • データ・計測連携:FY2026 Q2にはDentsu、Databricks、Adobe、旅行・モビリティ各社との連携を拡大しました。2026年9月15日にはVeeva CrossixとIQVIA Digitalとのヘルスケア計測・最適化連携を強化し、分析結果を広告判断へ近づけています。[2][7]

ミニ解説:The Trade Deskの競争力は「広告在庫を持たない中立性」と「広告在庫を効率よく買う技術力」の組み合わせです。ただし、AmazonやGoogleのような企業は広告在庫、購買データ、クラウド、DSPを一体で持つため、TTDの独立性が強みになる場面と、統合プラットフォームに押される場面の両方があります。

6. 市場での強みとライバル:オープンインターネットの旗手としての挑戦

The Trade Deskは、オープンインターネット広告の代表的な独立系DSPです。CTV、リテールメディア、ポストCookie ID、AIによる最適化という大きな成長テーマを持つ一方、競争環境は厳しくなっています。

The Trade Deskの強み

  • 独立性・中立性:自社で広告在庫を販売しないため、広告主側から見て利益相反が少ないという訴求ができます。
  • 高い顧客維持率:FY2025も顧客維持率は95%超で、12年連続で95%超を維持しています。[3]
  • CTVへの露出:広告付きストリーミング、スポーツ、ライブイベント、プレミアム動画在庫のプログラマティック化は長期成長テーマです。
  • UID2とデータ連携:Databricksなどとの連携を含め、データクリーンルームやファーストパーティデータ活用との相性があります。[3]
  • 高収益・高FCF:FY2025の調整後EBITDAマージンは41%、FCFマージンは約27%でした。
  • S&P 500採用:2025年7月18日からS&P 500構成銘柄となりました。流動性と市場での認知度という面では前向きです。[9]

注意すべきリスク要因

  1. 成長率鈍化:FY2026 Q1の売上成長率は+12%、Q2は+3%まで低下しました。Q2はQ1時点の会社ガイダンスを下回り、Q3見通しも売上高6.50億ドル以上にとどまります。高成長企業としての期待と実績のギャップが最大の短期リスクです。[1][2]
  2. Amazon・Googleとの競争:Amazon DSP、Google DV360、YouTube、Prime Video、リテールメディアなど、データ・在庫・購買接点を持つ大手との競争が強まっています。
  3. Kokai / Zumaの実行リスク:2026年8月にZumaを投入しましたが、機能改善が顧客のGross Spend拡大と売上成長の再加速へつながるかは未確認です。Koa Agentsの一部はクローズドベータ段階であり、製品発表と収益寄与を分けて見る必要があります。[4]
  4. マクロ広告予算:広告費は景気、金利、消費、企業業績に左右されます。特に消費財や自動車など大口カテゴリーの弱さは業績に影響します。
  5. プライバシー規制:Cookie規制、ID規制、各国のプライバシー法制は、ターゲティングと測定に影響します。
  6. 株式報酬と自社株買い:FY2026上半期の株式報酬は約2.19億ドル、自社株買いのキャッシュ支出は約2.41億ドルでした。希薄化後株式数は前年同期比で減少していますが、買い戻しの実効性と現金配分を継続して確認する必要があります。[2][5]

7. FY2026 Q3見通しと今後のポイント

FY2026 Q3ガイダンス(2026年8月6日発表時点)

  • 売上高:6.50億ドル以上。
  • 調整後EBITDA:約1.60億ドル。
  • 顧客維持率:Q2まで95%超を維持。

Q3ガイダンスはQ2実績の売上高7.15億ドル、調整後EBITDA2.41億ドルを下回ります。Q2の既存顧客Gross Spendの弱さが一時的か、Kokai Zuma・Koa Agents・CTV在庫拡大が広告支出の再加速へつながるかを確認する局面です。[2][4]

投資家が注目すべきポイント

  • 売上成長の底打ち:Q2の+3%成長から、Q3以降に再加速できるか。
  • 既存顧客Gross Spend:Q2 Form 10-Qでは既存顧客のGross Spend減少が新規顧客の伸びを一部相殺しました。この傾向が改善するかが重要です。[5]
  • Kokai Zuma:UI、エージェントAI、測定機能の改善が営業・運用摩擦を減らし、利用拡大につながるか。[4]
  • CTV:NetflixやSamsung Adsを含むプレミアム在庫へのアクセス拡大がGross Spend成長へ寄与するか。[2]
  • 利益率:Q2の調整後EBITDAマージンは34%。Q3ガイダンスの1.60億ドルは売上高6.50億ドルを基準にすると約25%の水準で、成長投資と利益率のバランスが焦点です。
  • キャッシュと買い戻し:Q2末の現金・短期投資14.85億ドル、買い戻し枠2.69億ドルをどう配分するか。[5]

8. まとめ:高収益DSPから「再加速を証明する局面」へ

The Trade Deskは、FY2025に売上高28.96億ドル、Gross Spend 133.95億ドル、調整後EBITDA11.96億ドル、営業CF9.93億ドルを記録し、高収益な独立系DSPとしての基盤を維持しました。しかしFY2026はQ1の売上成長率が+12%、Q2が+3%まで低下し、Q2実績は会社のQ2ガイダンスを下回りました。[3][1][2]

投資家目線では、「独立系DSP」「95%超の顧客維持率」「CTV・リテール/コマースデータへの露出」「UID2・OpenPath」「強いバランスシートとFCF」は引き続き重要な強みです。Netflix、Samsung Ads、Databricks、Adobeなどとの連携拡大もオープンインターネット側の選択肢を広げています。

一方、2026年の最大の課題は売上成長の急減速です。Kokai ZumaやKoa Agentsの製品改善が既存顧客のGross Spend回復へつながるか、Q3以降に成長率を戻せるかが焦点になります。投資判断では、売上高だけでなく、既存顧客Gross Spend、顧客維持率、Adjusted EBITDA、FCF、株式数、Kokai Zumaの定着、CTV在庫とデータ連携の利用拡大をセットで確認することが重要です。

【注】(出典リンク)

  1. FY2026 Q1決算・Q2ガイダンス → 一次情報:The Trade Desk Q1 2026 Results → 一次情報:SEC Form 10-Q(2026年3月31日)(確認日:2026-09-17) ↩
  2. FY2026 Q2決算・Q3ガイダンス・事業ハイライト → 一次情報:The Trade Desk Q2 2026 Results(確認日:2026-09-17) ↩
  3. The Trade Desk FY2025通期決算・FY2026 Q1見通し → The Trade Desk FY2025 Results → The Trade Desk Quarterly Results(確認日:2026-09-17) ↩
  4. Kokai Zuma・Koa Agents → 一次情報:The Trade Desk Kokai Zuma発表(2026年8月27日) → 一次情報:Koa Agents(2026年8月21日)(確認日:2026-09-17) ↩
  5. FY2026 Q2 Form 10-Q・BS・CF・自社株買い・Gross Spend分析 → 一次情報:SEC Form 10-Q(2026年6月30日) → 一次情報:The Trade Desk SEC Filings(確認日:2026-09-17) ↩
  6. The Trade Desk FY2025 Form 10-K → SEC EDGAR The Trade Desk Form 10-K(FY2025) → The Trade Desk IR SEC Filings(確認日:2026-09-17) ↩
  7. ヘルスケア計測・最適化連携 → 一次情報:Veeva Crossix / IQVIA Digital連携拡大(2026年9月15日)(確認日:2026-09-17) ↩
  8. The Trade Desk過年度データ → The Trade Desk Annual Reports → SEC EDGAR The Trade Desk filings(確認日:2026-09-17) ↩
  9. S&P 500採用 → The Trade Desk「to Join the S&P 500 Index」 → S&P Dow Jones Indices Press Release(確認日:2026-09-17) ↩

本記事は公開情報に基づく筆者分析であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。正確性・完全性には注意していますが、内容を保証するものではありません。

最終更新日時:2026年9月17日(FY2026 Q1・Q2決算/Q3ガイダンス/Q2 Form 10-Q/Kokai Zuma/最新CTV・データ連携を反映)

Posted by 南 一矢