よくわかる予算の話 ~特別会計と一般会計、合わせた歳入・歳出は何兆円?~

令和3年度予算案が12月21日に閣議決定されました。

一般会計の総額は106兆6097億円(前年度比3.8%増)。

8年連続で拡大を続ける予算の歳入・歳出の項目を見てみます(以下、四捨五入で表記)。

【歳入】

  • 租税+印紙収入:57.4兆円
  • 新規国債発行(国の借金):43.6兆円
  • その他収入:5.6兆円

【歳出】

  • 社会保障費:35.8兆円
  • 地方交付税交付金:15.9兆円
  • 公共事業:6.1兆円
  • 文教・科学:5.4兆円
  • 防衛費:5.3兆円
  • 国債費:23.8兆円

予算報道や、予算ができるまでの過程がわかりにくいので、この記事では、特別会計も含めた国の予算に関する解説に挑戦してみます。

令和3年度の一般会計はどうなっている?

まずは、閣議決定がなされた令和3年度予算案について情報を整理します。

ここ3年間の予算案の推移を見てみましょう(以下「令和2年度予算 (当初)⇒ 令和3年度予算」という形で数字を明記)

まずは、一般会計の歳入の内訳からです。

歳入の内訳

年度 令和1 令和2 令和3 伸び率
所得税 199340 195290 186670 -4.4%
法人税 128580 120650 89970 -25.4%
消費税 193920 217190 202840 -6.6%
その他税 103110 95000 102000 7.4%
赤字公債 257078 254462 372560 46.4%
建設公債 61701 71100 63410 -10.8%
租税+印紙 624950 635130 574480 -9.5%
公債金 318786 325562 435970 33.9%
その他収入 50556 65888 55647 -15.5%
歳入総額 994292 1026580 1066097 3.8%

 

歳出の内訳

年度 令和1 令和2 令和3 伸び率
国債費 235082 233515 237588 1.7%
一般歳出 619639 634972 634972 0%
社会保障 341306 357401 358421 0.3%
文教+科学 55884 55055 53969 -2.%
恩給関係 2097 1750 1451 -17.1%
防衛費 52574 53133 53235 0.2%
公共事業 69099 68571 60695 -11.5%
経済協力 5021 5116 5108 -0.2%
中小企業対策 1790 1753 1753 0%
エネルギー 9760 9495 8891 -6.4%
食料安定供給 9823 12870 12773 -0.8%
その他 67284 64828 57732 -10.9%
予備費 5000 5000 5000 0%
地方交付税交付金等 159850 158093 159489 0.9%
歳出総額 1014571 1026580 1066097 3.8%

この数字の出典は財務省HP「令和2年度一般会計歳入歳出概算」や「令和3年度一般会計歳入歳出概算」です。
一般歳出の半分以上が社会保障関係費に消え、国の根幹に関わる教育、防衛、公共事業には5~6兆円ぐらいのお金しか使えません。
しかし、少子高齢化の中で社会保障関係費に関しては、抑制しても増え続ける歴史が続いています。
国の予算は20年間で30兆円以上増えましたが、そのうち20兆円以上が社会保障費に使われ、残りの金額の多くは国債の利払い費等に消えているのです。



予算案の編成過程

財務省でつくられた予算案は、内閣から提出され、国会で審議されます。

これが予算編成の過程で、編成されている間に前年度の予算が執行され、前々年度に執行された予算が決算されています。

予算にまつわる三つの過程はどれも一年かかるので、一会計年度の中で、同時に処理されるわけです。

そのうち、分かりにくいのが「予算編成」の課程です。

ざっと言えば、ポイントは以下の3点になります。

  • 予算全体の規模を決め、税収を見積もり、公債発行の額などを決める
  • 各省庁からの概算要求を査定
  • 査定後の修正を踏まえ、財務省主計局が予算原案を策定

この過程は漢字だらけの専門用語が並ぶので、新聞で見ていると頭がこんがらがってきます。情報を整理するための用語解説を並べながら、その過程を追ってみましょう。

★5月ごろ

財務省のシーリング(基本的な方針)を踏まえ、各省庁が概算要求を作成開始。

★6月ごろ

経済財政諮問会議から出された「骨太の方針」(経済財政運営等に関する基本方針)に基づいて、「予算編成の基本方針」の原案ができる

※経済財政諮問会議というのは、経済や財政などに関する重要な問題を審議する機関(内閣府に設置)。

★8月末

それぞれの省庁が概算要求を財務省あてに提出。

★9月~

財務省主計局による概算要求の査定が行われる。

★12月

上旬に、予算編成の基本方針を閣議決定。中旬に、財務省原案の閣議報告。その後、各省庁が財務省に減額された予算要求やゼロ査定(予算拒絶)をめぐって交渉再開。もう一度要求を出すバトルが始まります。この復活折衝が、事務方同士、大臣同士で行われ、火花を散らします。この修正を経て、予算が閣議決定されれば、めでたく政府予算案が完成。

★1月以降

政府予算案が衆議院から順に国会で審議されます。財務大臣の財政演説があって、各党が代表質問し、予算委員会での審議が行われ、本会議で議決、というのが両議院の審議サイクルです。

概算要求と財務省の査定とのバトル

流れを追うと、大きなポイントは、各省庁の概算要求と、それを査定する財務省とのバトルです。

元海自幹部に聞いた話によれば、防衛省は出来る限り多くのミサイル等を確保したいのに、財務省の側は撃ったミサイルが「すべて当たる」と想定して数を決めてくるので、話がかみ合わないのだそうです。

「もっと多くの弾丸や砲弾、ミサイルがないと、戦えないんだ」と言っても予算を切りつめたい財務省は「全部当たるか、ほとんど当たる」ということにして、数を減らそうとします。

元海自幹部は、「これを説得できないと、自衛隊の装備を有効に動かせない。何を揃えても張子の虎になってしまう」と悔しがっていました。

筆者は「本末転倒だ。まじか」と思ったのですが、財務省は現場を無視した数字合わせをやることがあるようなのです。

これは極端な例なのかもしれませんが、予算折衝の大変さがよくわかる話です。

一般会計(歳入)の代表的な項目

予算(一般会計)を見ると、令和3年度の歳入見込みでは、所得税と法人税、消費税の額が大きく、これだけで全体の45%程度です。

  • 所得税 18兆6670億円(17.5%)
  • 法人税 8兆9970億円(8.4%)
  • 消費税 20兆2840億円(19%)

残りの税金や印紙収入で賄えるのが約6割。

公債金で4割程度を賄っているのが今の財政です。

※関連記事

一般会計(歳出)の代表的な項目

歳出のほうでは、社会保障費、地方交付税交付金等、国債費が7割。

  • 社会保障費      33兆8421億円(33.6%)
  • 地方交付税交付金等  15兆9489億円(15%)
  • 国債費         23兆7588億円(22.3%)

公共投資(約6兆円)文教及び科学振興(約5兆円)、防衛(約5兆円)を足しても全体の6分の1以下なので、規模としては比較になりません。

※関連記事

予算規模は毎年変わりますが、国の税収を支えているのは所得税、法人税、消費税で、歳出の大半が、社会保障費、地方交付税交付金等、国債費に費やされています。

少子高齢化が続いているので、今のままで行くと社会保障費の割合はどんどん大きくなります。また、地方が疲弊していけば「地方交付税交付金がもっと必要だ」と言う声が大きくなってくるでしょう。

一般会計の指標:プライマリーバランス(基礎的財政収支)

そして、一般会計を評価する際には、プライマリーバランス(PB)という指標が重視されています。基礎的財政収支とも言いますが、これは、公共投資や国防、教育と科学振興、社会保障など、政府の仕事にかかる費用を、借金をしないで、どれぐらい回していけるのかを計る指標です。その指標を見る手順は、以下の三つです。

  • 歳入から国債収入を引く
  • 歳出から過去の国債の元利払いを引く
  • 2を1でどれだけ賄えるかを計る

こうして、今の世代の支出を借金しないでどれだけ賄えているかを見るわけです。この数字がプラスマイナスゼロになり、国の成長率と国債の利子率が同じになると借金の伸びが止まります。

そのため、この指標が財政健全化を見る上で役に立つわけです。



特別会計とは?

でも、これだけでは、本当は、政府予算の中身は分かりません。政府の予算には、一般会計のほかにも特別会計があるからです。

これは、国の行う事業や資金の運用、一般会計とは別の経理などを含んだ会計です。

「何それ」と思われた方もいるかもしれませんが、政府に入るお金には、税収のほかに年金保険料や医療保険料などがあることを思い出してください。

給料から引かれる所得税は一般会計の歳入に入りますが、公的な保険料のほうは、特別会計に入っているからです。そして、高齢者がもらう年金には、一般会計で集めた税金も含まれているので、二つの会計は複雑にリンクしています。

財政法第13条第2項では、政府が「特定の事業を行う場合」「特定の資金を保有してその運用を行う場合」「その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」には特別会計を組むことを認めています。

そして、特別会計には、以下の項目があります(カッコ内は所管省庁)。

  • 交付税及び譲与税配付金特別会計 (内閣府、総務省及び財務省)
  • 地震再保険特別会計 (財務省)
  • 国債整理基金特別会計 (財務省)
  • 外国為替資金特別会計 (財務省)
  • 財政投融資特別会計 (財務省及び国土交通省)
  • エネルギー対策特別会計 (内閣府、文部科学省、経済産業省及び 環境省)
  • 労働保険特別会計(厚生労働省)
  • 年金特別会計(内閣府及び厚生労働省)
  • 食料安定供給特別会計 (農林水産省)
  • 国有林野事業債務管理特別会計 (農林水産省)
  • 貿易再保険特別会計 (経済産業省)
  • 特許特別会計 (経済産業省)
  • 自動車安全特別会計(国土交通省)
  • 東日本大震災復興特別会計 (内閣府ほか主要省庁)

特別会計は、所管省庁の利権確保の手段になったり、天下り先になったりする危険性が、たびたび指摘されています。

新聞報道では一般会計の話しか出ていませんが、国の予算は、この特別会計と一般会計を足した総額で見なければ実態はつかめません。

特別会計+一般会計で、約240兆円もの歳入・歳出になる

特別会計では恐ろしく大きなお金が動きます。財務省の特別会計ハンドブック(令和1年度版)によると、2019年度の特別会計の、実質ベースで見た歳出は、196.8兆円。

一般会計の2倍!!

初めてこの数字を見た時、私は目がテンになりましたが、国の予算は特別会計まで見ないと本当の動きが分からないようになっています(以下、本記事の特別会計の数字と下記図表は財務省HP上にある『特別会計ハンドブック 令和1年度版』が出典)。

特別会計の歳出をぜんぶ足すと391.8兆円になりますが、ここには一般会計とダブルカウントになる数字が入っています。その重複計上分を抜くと、196.8兆円です。これに一般会計101.5兆円から重複分を引いた金額(純計分46.2兆円)を足したものが、本当の政府の歳出(243.2兆円)になります。

歳入のほうを見ると、額面上は494.1兆円。こちらも重複分を抜いて二つの会計を足すと、本当の歳入額(244.5兆円)が出ます。

特別会計の歳入・歳出のポイント

(出所:『特別会計ハンドブック 令和1年度版』)

歳入の内訳を見ると、以下の三項目が目を引きます。

  • 租税及び印紙収入    66.5兆円(27.2%)
  • 保険料及び再保険料収入 46.4兆円(18.9%)
  • 公債金及び借入金    92.3兆円(38%)

税金と保険料を足した金額と、政府が借りたお金がだいたい、同じぐらいです。

この三つで歳入の8割ぐらいです。歳出のほうはどうなっているのでしょうか。

  • 国債費       87.4兆円(35.9%)
  • 社会保障関係費   91.9兆円(37.8%)
  • 地方交付税交付金等 19.2兆円(7.8%)
  • 財政投融資     12.5兆円(5.1%)

国債費と社会保障費だけで歳出の7割が費やされています。これに地方への交付金を足すと、8割ぐらいです。こうして見ると、政府予算の大部分は使い道が決まっており、なかなか、新しい政策的経費にお金を回せなくなってきていることが分かります。

なお、前掲の91.9兆円の社会保障関係費は社会保障に回されるお金の総額ではありません。これに地方政府負担分等を足して、社会保障給付費(※こちらが総額)が計算されます。2020年度の社会保障給付費は予算ベースで約120兆円が見込まれています。

その内訳は年金と医療が大半ですが、近年は介護の割合が拡大しています。

少子高齢化の中で社会保障給付費は例年、増加しているため、その抑制は今後も大きな政治課題であり続けるはずです。



特別会計の「剰余金」の累計は16~17兆円程度

前掲の『特別会計ハンドブック』を見ると、剰余金の存在も記されています。

各特別会計の歳入歳出の差額が剰余金として産出されているのです。

剰余金

16.7兆円。全部を足すと消費税の税収に匹敵する剰余金になります。

剰余金は機械的に翌年度に繰り入れされていますが、一つ一つがかなり巨額の規模です。

筆者が気になるのは、東日本大震災復興特別会計の1.4兆円です。

これは、用途が明確化できず、翌年繰り越しになったものでしょう。

緊急性のあるお金のはずなのに、どうして使い道がなかったのでしょうか。

外国為替資金特別会計の規模は大きすぎる?

外国為替資金特別会計では、円売り・外貨買い介入に伴って取得した外貨を「資産」とし、 円を調達するために発行した政府短期証券を「負債」としています。

日本の外貨準備は、通貨当局が為替介入で使う資金ですが、これは通貨危機等で他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった時に用いられる準備資産でもあります。

行き過ぎた円高や世界通貨危機等の非常時に備えて、財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有することになっているのです。

そして、前掲の『特別会計ハンドブック』を見ると、過去の介入の規模と資産・負債のバランスシートが出ていました。

外貨準備金

日本の外貨準備は130兆円規模で、過去、通貨介入を行った金額の規模は数兆円~30兆円程度です。

国際通貨基金(IMF)へ最大 1000 億ドル相当の貸付と 600 億ドルの追加資金を行うために活用されたこともありますが、この規模でも20兆円以下です。

そして、日本の120~130兆円の外貨準備は平時、どうなっているのでしょうか。

この外貨資産は約 8 割以上が債券で運用されています(債券 84.2%、預金 9.5%、 SDR1.4%、金 0.1%、その他 4.8%〔2016 年 3 月末時点〕)。そして、「債券は、国債約 8 割、政府機関債、国際機関債等約 2 割で運用」されているそうです(『特別会計ハンドブック』)。

前掲ハンドブックでは、外国為替資金特別会計の解説のくだりで、その貸借対照表も公開されていました。

外為特会-

有価証券(外貨建て債券。大半は米国債と思われる)は130兆円規模です。

結局、外国為替資金特別会計は130兆円もの資産をキープしているのですが、非常時の通貨介入等で用いたお金は、過去30兆円規模が最大ですから、日本の外貨準備は過大なのです。

原則的には、日本は変動相場制ですから、非常時以外には通貨介入を行わないことになっています。昨今は、介入をやりまくると、トランプ政権から「為替操作国」指定をされかねないご時世でもあります。

固定相場制の国は、1ドル360円(※戦後初期の日本)、1元あたりXドル(中国)といったレートを守るために、通貨変動に対して為替介入を行わないとレートを維持できません。中国が巨大な外貨準備を確保したがるのは、これが理由です。

しかし、今の日本は、変動相場制に移行したのに、実際の介入規模よりも過大な外貨準備を持っています。

米国債売却は、日米同盟を揺るがす外交問題になりかねない難しさを備えていますが、日本国民に消費税増税を強いながら外貨資産だけが膨張しているのもおかしな話です。

高橋洋一氏(嘉悦大教授)は、外国為替資金特別会計を財源として消費税を減税すべきだとも述べていました。

日本経済の再建のためにも、本当は、このあたりの適正規模をチェックしなければいけないのではないでしょうか。

名目GDPの中の民間部門と政府部門、輸出入の比率

では、政府でつくられる予算の数字を日本経済全体のGDPの中で見ていったら、どうなるのでしょうか。名目GDPに関して、その内訳は2019年度の「国民経済計算」に出ています。

  • 1:民間最終消費支出(民間消費の合計)299兆8126億円
  • 2:政府最終消費支出(政府消費の合計)110兆 851億円
  • 3:総資本形成(政府と民間の投資合計)138兆9630億円
  • 4:在庫変動 2110億円
  • 5:財貨・サービスの純輸出 1224億円

(1)財貨・サービスの輸出 102兆4117億円
(2)財貨・サービスの輸入 101兆1880億円

  • 国内総生産(支出側)(≒1+2+3+4+5) 552兆9305億円

2019年度の数字で見ると、552兆9305億円のGDPのうち、民間最終消費支出が299兆8126億円を占めています。民間消費が最大の部門で全体の54.2%に相当します。

しかし、近年、不況対策のために公的部門が使うお金が増えているので、政府の肥大化を警戒していく必要があります。