日本の平均年収は436万円 トップ企業とワースト企業の年収格差はどのぐらい?

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給料日に明細を見て、年収に満足できる人は、今の日本にどれぐらいいるのでしょうか。

むろん、筆者は満足できるほどの金額ではなく、諸々のデータを見ているうちに平均値を下回っていることに気付いてしまいました。

今回は、様々な調査結果を並べ、暮らしに直結する給料の問題について考えてみます。

(※この記事は随時更新)

日本の平均給与は436万4千円(民間給与実態統計調査)

国税庁によれば、民間企業の会社員(パート含む)が2019年にもらった給料の平均値は440万7000円。

2015年は420万4000円だったので、4年間で16万円ほど伸びています。

この数字は民間給与実態統計調査(令和1年度)に書かれており、1年間勤務した給与所得者数は5255万人程度です。

2016 2017 2018 2019
男性 521.1 531.5 545 539.7
女性 279.7 287 293.1 295.5
全体 421.6 432.2 440.7 436.4

そして、過去の民間給与実態統計調査の統計を参照しながら、ここ10年間の平均給与の推移を見ていきます。

【出典(同調査):平成30年度平成29年度平成27年度平成26年度平成23年度平成21年度平成20年度

ここ10年間の平均給与は、以下の金額で推移しました。

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(※単位:万円)

男性 女性 全体
2007 542.2 271.2 437.2
2008 532.5 271 429.6
2009 499.7 263.1 405.9
2010 507.4 269.3 412
2011 503.8 267.9 409
2012 502 267.8 408
2013 511.3 271.5 413.6
2014 514.4 272.2 415
2015 520.5 276 420.4
2016 521.1 279.7 421.6
2017 531.5 287 432.2
2018 545 293.1 440.7
2019 539.7 295.5 436.4

この「男性」「女性」はどちらも「正規と非正規」の両方を足した平均値です。

重要なのは、アベノミクス後、給料の微増が続きましたが、いまだに名目値でサブプライムショック前の2007年の水準に戻っていないということです。

正社員の平均給与(男女別):2012~2019年

全体の給与平均は430万程度ですが、正規・非正規で男女別にみると、年収の違いがはっきりと出てきます。

正社員の給与の平均値(下記数値)は男女とも、毎年増え続けています。

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(※単位:万円)

男性 女性 正規平均
2012 520.5 349.6 467.6
2013 526.6 356.1 473
2014 532.3 359.3 477.7
2015 538.5 367.2 484.9
2016 539.7 373.3 486.9
2017 547.5 376.6 493.7
2018 559.9 386 503.5
2019 561.4 388.9 503.4

なお、民間給与実態統計調査で正規社員・非正規社員に分けた調査が始まったのは2012年以降なので、11年以前は不明です。


非正規社員の平均給与(男女別):2012~2019年

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しかし、非正規社員の給与平均(下記数値)はいま一つ伸びません。

男性 女性 非正規平均
2012 225.5 143.6 168
2013 224.5 143.3 167.8
2014 222 147.5 169.7
2015 225.8 147.2 170.5
2016 227.8 148.1 172.1
2017 229.4 150.8 175.1
2018 236 154.1 179
2019 225.6 152.2 174.6

12年から18年までを比べると、前掲の正社員の平均値が26万円以上も伸びているのに、非正規の伸び率は6万円程度です。

これで消費税が増税され、物価が上がれば、生活が苦しくなるのは避けられません。


日本の昇給の割合は低い?

2018年に英ヘイズ社(人材紹介大手)が出した「2018年ヘイズ給与ガイド」では、日本とアジアの昇給の割合を比較しています。

「前回の給与改定で、平均して何%昇給しましたか?」と聞かれた時の答えが集計されていました。

0 ~3% 3-6% 6-10% 10%~
中国 7 10 38 38 7
香港 11 19 50 14 6
日本 13 59 16 4 8
マレーシア 8 13 50 22 7
シンガポール 8 32 46 7 7

マレーシアと中国企業では8割以上が3%以上の昇給(香港では7割、シンガポールでは6割)を実現していますが、日本企業の6割は3%以下の昇給しかできていません。

日本では「人件費が増えると国際競争力が落ちる」(素材大手首脳)という考え方を採る企業も多かったのですが、中国のファーウェイ(華為技術)は日本での新卒採用で初任給40万円(日本の電機大手の2倍程度)を提示。海外との給料の差が目立ち、人材流出の恐れが出てきています(日経朝刊1面:2018/1/22)。

給料を惜しんでいると、日本企業は優秀な人材をアジアのライバル企業に取られかねません。

年齢と性別で見た平均給与一覧(2019年)

データを見ていると、女性の平均給与の低さが気になります。

「民間給与実態統計調査」(令和1年度)で年齢・性別で平均給与のマトリクスをつくると、男性は年齢ごとに昇給しますが、女性は伸びていません。

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(単位:万円)

年齢 全体
~19 160 111 135
20~24 278 248 264
25~29 403 328 369
30~34 470 321 410
35~39 529 313 445
40~44 582 318 476
45~49 629 324 499
50~54 679 320 525
55~59 686 301 518
60~64 522 254 411
65~69 406 211 324
70~ 343 205 282
平均 540 296 436

女性の平均給与が320万円で頭打ちになっているのが、非常に気になります。

そして、年功序列の企業が多いので、若い人の給料が安くなっています。


企業規模別に見た平均給与一覧(2019年)

令和1年度版の「民間給与実態統計調査」によれば、企業規模別に見た1人当たり平均給与は以下の通り(単位:万円)。

【従業員数別:左端欄の単位は人】

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従業員数 男性 女性 平均
1~4 365.9 215.2 291.6
5~9 421.5 235.8 337
10~29 446.3 247.5 361.2
30~99 423.5 252.6 353
100~499 429.8 263.7 362.5
500~999 462.7 279.8 386.8
1000~4999 490.9 266.5 400.9
5000~ 530 245.8 407.6
合計 459.7 260.7 377.9

 

【資本金別:資本金欄の単位は億円】

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資本金 男性 女性 平均
個人事業 286.3 203 230.1
~0.2 411.1 229.3 340.6
0.2~0.5 410.4 232.2 350.6
0.5~1 416.5 230 350.8
1~10 455.1 251.7 379.8
10~ 560.7 288.8 474.1
その他 443.6 274.8 350.6
合計 449.1 252.9 366.1

資本金10億円以上の企業と個人事業とでは、平均値で見た年収格差は300万円以上あります。


増え続ける公務員の平均給与

この記事は、主に民間の平均給与のデータを整理していますが、一応、公務員のほうもチェックしておきます。

2018年11月には、5年連続給与増とも報じられていたからです。

ここ数年の報道を整理してみましょう。

年度 平均 増額 伸び率 出所
2014 660.6 7.9 1.2% 日経
2015 666.5 5.9 0.9% 産経
2016 671.6 5.1 0.8% 日経
2017 675.9 4.3 0.6% 産経
2018 678.3 2.4 0.4% 産経
2019 680 1.7 0.25% 産経
2020 673.4 6.6 -0.97% 日経

好景気が続いてきたので、公務員も「民間並み」に給与を増やしたわけですが、この数字はかなり高いと思います。

東京商工リサーチの調査では、上場企業(1893社)の18年3月決算から試算した平均年間給与は620万8000円です。

前述の民間平均給与440万円の調査対象は約2割が非正規社員なので、公務員平均の678万円(2018年度)とは比較しにくいのですが、上場平均よりも高いことには、大きな疑問を感じます。


2020年:高年収の企業ランキング 1位~30位

そのほか、年収を巡る調査は様々な企業が行っているので、本記事では、東洋経済社の『会社四季報 業界地図 2020』のデータから高年収の企業ランキングを作成し、40歳時点での平均年収を比べてみます。

※会社四季報での上場企業の中間値は600万円台。

※1:19年は2021年四季報、18年は2020年四季報、17年は2019年四季報、16年は2018年四季報掲載の前年データ。[※]は四季報ではなく、東洋経済オンライン記事「40歳年収「全国トップ500社」ランキングを参照。

※2:以下は略記。P=パートナーズ、I=インベストメント、ドリームインキュ=ドリームインキュベータ、プロバティA=プロパティエージェント、H=ホールディング、M=マネジメント

社名 業界 19年 18年 17年 16年
M&AキャピタルP コンサル 3664 2920 3515 2271
キーエンス 電子部品 1968 2299 2227 2023
日本商業開発 投資事業 1875 1458 1331 ※956
ヒューリック 不動産 1762 1641 1534 1410
三菱商事 総合商社 1564 1533 1473 1314
伊藤忠 総合商社 1517 1471 1423 1339
日本M&Aセンター コンサル 1478 1535 1419 1537
ストライク コンサル 1464 1636 1937 1771
丸紅 総合商社 1404 1340 1289 1184
住友商事 総合商社 1380 1322 1248 1179
マーキュリアI 投資事業 1356 1125 1788 1059
三井物産 総合商社 1346 1372 1372 1152
ソレイジアファーマ バイオベンチャー 1293 1220 1320 ?
フロンティアM コンサル 1258 1429 ? ?
三井不動産 不動産 1258 1247 1098 1118
三菱地所 不動産 1251 1221 1215 1174
野村総研 ITサービス 1222 1212 1160 1152
ファナック 工作機械 1216 1340 1313 1262
シグマクシス コンサル 1203 1227 1210 1109
ジャストシステム ソフトウェア 1176 ? ? ?
ベイカレントコンサル コンサル 1173 1079 1035 1012
ケネディクス 投資事業 1139 1124 1088 1080
双日 総合商社 1122 1098 1070 1039
ドリームインキュ コンサル 1121 1199 1182 1197
レーザーテック 半導体 1106 1040 977 953
オプトラン 電子部品 1097 1065 1122 ?
東京エレクトロン 半導体 1090 1166 1000 ※879
エスリード 不動産 1063 1034 1012 1059
豊田通商 総合商社 1063 1057 1026 971
鹿島 建設 1055 1044 1012 ※885

 

 

他のデータを見ると、転職サイトのDODAは2017年の平均年収を418万円と試算。

東洋経済社は19年9月に『最新!全国「40歳年収が高い500社」ランキング』と題して、上場企業約3700社の平均年収を調査し、その平均は603万円、1000万円以上の企業は47社と発表しています。

40歳で月100万円以上もらえる人は稀少なので、月40万円前後の年収とボーナスをもらっている人あたりが平均に近いのかもしれません。

ちなみに、2018年に成立した税制改革では、年収1000万円超の高収入社員の方々は所得税増税の対象となってしまいました。

2019年:日本の高年収企業(700万円以上)

ここで、『会社四季報業界地図』の2017、18年版、19年版、20年版、21年版を用いて、40歳の年収が700万円をこえた業界をリストアップしてみました。

2019 2018 2017 2016 2015
コンサル 1359 1125 1316 1240 1263
総合商社 1290 1270 1232 1115 1135
海運 894 798 776 808 818
石油 828 778 784 731 737
不動産等 827 649 647 670 665
飲料・酒類 815 681 689 688 667
医薬品 814 738 731 718 727
建設 810 669 671 671 636
半導体製造 806 654 622
ゲーム 778 620 629 624 637
ITサービス 776 791 ? ? ?
携帯電話事業 774 817 839
映画・アニメ 768 701 695 695 696
プラントエンジニアリング 764 ? ? ? ?
化学 763 637 633 616 618
空運 739 ? ? ? ?
メガバンク 735 784 798 774 698
自動車 732 732 723 721 707
電子部品 731 614 608 593 595
専門商社 728 ? ? ? ?
ネット通販 722 596 600
クレジット/信販等 715 ? ? ? ?
テレビ/白物等 713 ? ? ? ?
ガラス/セメント 705 ? ? ? ?
複写機・プリンタ 702 704 702 701 707

このデータは『会社四季報業界地図』の発行年度の2年前の有価証券報告書を基に、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の5歳刻みの賃金額(給与+賞与)から計算しています(40歳年収は、各業種の賃金カーブを各社の平均年収・平均年齢にあてはめ、東洋経済社が推定。つまり、『会社四季報業界地図2020』に掲載されているのは2018年の給料試算値)