PYPL/SQ:ペイパルとスクエアを比較

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【徹底比較】PayPal vs Block (SQ):決済の未来を握るのは?業績データと将来性から徹底分析

フィンテック業界を牽引する二つの巨人、PayPal (PYPL)Block (SQ)。安定した巨大プラットフォームを持つPayPalと、破壊的イノベーションで急成長を遂げるBlock。投資家にとって、どちらがより魅力的な投資先なのでしょうか。

本記事では、プロの投資家兼WEBライターの視点から、過去5年間の業績データを新たに追加し、両社の核心戦略である仮想通貨への取り組み、そして今後の将来性を徹底的に比較・分析します。

業績比較:安定のPayPal、成長のBlock

過去5年間の業績データは、両社の性格を如実に表しています。以下の表で主要な財務指標を直接比較してみましょう。

PayPal Holdings, Inc. (PYPL) 業績サマリー
会計年度 総売上高 営業利益 純利益 希薄化後EPS
2023 $29.77 B $5.03 B $4.34 B $3.84
2022 $27.52 B $3.85 B $2.42 B $2.09
2021 $25.37 B $4.17 B $4.20 B $3.54
2020 $21.45 B $3.28 B $4.20 B $3.55
2019 $17.77 B $2.78 B $2.46 B $2.07

※単位: B = 10億ドル。数値は各年度の年次報告書に基づき、分かりやすく丸めています。

Block, Inc. (SQ) 業績サマリー
会計年度 総売上高 営業利益 (損失) 純利益 (損失) 希薄化後EPS
2023 $21.92 B ($0.24 B) $0.01 B $0.02
2022 $17.53 B ($0.64 B) ($0.54 B) ($0.93)
2021 $17.66 B ($0.16 B) ($0.16 B) ($0.33)
2020 $9.50 B ($0.24 B) $0.21 B $0.47
2019 $4.71 B ($0.04 B) $0.38 B $0.84

※単位: B = 10億ドル。Blockの売上高には、利益率の低いビットコイン売買収益が大きく含まれます。2023年のビットコイン売上を除いた売上高は約120億ドルです。数値は各年度の年次報告書に基づき、分かりやすく丸めています。

データの分析

  • PayPal: 売上高、営業利益ともに着実に成長しており、一貫して高い利益を生み出しています。EPSも安定しており、成熟企業としての財務基盤の強さが際立ちます。
  • Block: 売上高は、特に2020年から2021年にかけてビットコイン価格の上昇と共に爆発的に増加しました。しかし、営業利益は投資先行のため損失を計上する年が多く、安定性には欠けます。2023年には純利益が黒字化し、収益改善の兆しが見られます。

結論として、業績データは「安定と成熟のPayPal」「高成長と将来性のBlock」という明確なコントラストを裏付けています。

仮想通貨への取り組み:思想の違いが戦略を分ける

両社は仮想通貨、特にビットコインを事業に取り込んでいますが、そのアプローチは大きく異なります。

PayPal:既存金融への「橋渡し」

PayPalの仮想通貨戦略は、あくまで既存の金融システムと仮想通貨の世界を繋ぐ「橋渡し役」に徹しています。ユーザーはPayPalアプリ内でビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などを売買・保有でき、オンライン決済にも利用できます。

  • 目的: ユーザーエンゲージメントの向上。仮想通貨に興味を持つユーザーをプラットフォームに留め、利用頻度を高めることが主眼です。
  • 特徴: 比較的慎重なアプローチ。外部ウォレットへの送金機能の追加など、段階的にサービスを拡充していますが、自社のバランスシートで大量のビットコインを保有するようなことはしていません。

Block:Bitcoin中心の未来を創造

Blockの創業者であるジャック・ドーシー氏は、ビットコインがインターネットの「ネイティブ通貨」になるという強い信念を持っています。その思想は、同社の戦略に色濃く反映されています。

  • 目的: ビットコインを中心とした分散型金融エコシステムの構築。
  • 特徴: Cash Appでは早くからビットコインの売買機能を提供し、主要な収益源の一つとなっています。Block自身も企業の準備資産としてビットコインを保有しており、その価格変動が直接、同社の財政状態に影響を与えます。

このアプローチの違いは、投資家にとって重要な示唆を与えます。PayPalは仮想通貨のリスクを限定的に留めているのに対し、Blockはビットコインの将来性に社運の一部を賭けており、ハイリスク・ハイリターンな戦略と言えるでしょう。

今後の将来性:それぞれの成長ドライバーとリスク

今後の成長を見通す上で、両社の強みと課題を整理します。

PayPalの将来性

  • 成長ドライバー: 4億を超える巨大なネットワーク効果、ブランド力、BraintreeやVenmoといった強力なサブブランド。
  • リスクと課題: 巨大企業ゆえの成長の鈍化、Apple Payなど巨大テック企業やフィンテック企業との競争激化。

Blockの将来性

  • 成長ドライバー: 事業者向けのSquareと個人向けのCash Appが織りなす強力なエコシステム、創業者ジャック・ドーシー氏のリーダーシップとイノベーション力。
  • リスクと課題: 景気変動への敏感さ、ビットコイン価格への高い依存度、持続的な黒字化の確立。

結論:あなたの投資戦略に合うのはどちらか?

ここまで分析してきた内容を基に、投資家への最終的な提言をまとめます。

  • 安定志向で、バリュー株投資を好む投資家にはPayPal(PYPL)が適しているかもしれません。
    巨大な顧客基盤と安定したキャッシュフローは、大きな価格下落リスクを抑えつつ、市場平均を上回るリターンを狙える可能性があります。
  • 高い成長性を求め、リスク許容度の高いグロース株投資家にはBlock(SQ)が魅力的に映るでしょう。
    2つのエコシステムの破壊力とビットコインに賭ける未来像に共感できるのであれば、将来的に大きなキャピタルゲインを得られる可能性があります。

最終的には、ご自身の投資哲学、リスク許容度、そして「決済の未来」をどう描くかによって、選択は変わってくるはずです。本記事が、その判断の一助となれば幸いです。

Posted by 南 一矢