DD:デュポンの配当推移
デュポン(DD)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析)
デュポン(DuPont de Nemours, Inc.)は、220年を超える歴史を持つアメリカの化学大手企業です。近年の大規模な事業再編を経て、現在は特殊化学品・先端材料に特化した企業として事業展開しています。MacroTrends.comなどのデータを用いて同社の財務指標と配当実績を詳細に分析します。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はStockprice.comを参照)
重要な注意事項:データの範囲について
本記事で提示する財務および配当データは、**DuPont de Nemours, Inc. (ティッカー:DD) としての事業再編が完了した2019年以降に焦点を当てています。**
それ以前のデータは、組織が異なる前身企業(E.I. du Pont de Nemours and CompanyやDowDuPont)の財務実績や配当政策を反映しており、現在のDDの動向とは直接比較できない場合があるため、ご注意ください。
データソースの制約について
**重要な注意事項**:MacroTrends.comでは、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrendsでは四半期ごとの配当支払額や直近の配当利回りは確認できますが、長期的な配当成長の歴史データは限定的です。
そのため、配当関連の詳細分析については、MacroTrends以外の複数のソース(株式情報サイト、投資分析プラットフォーム等)を参照して確認しています。本記事では、MacroTrendsで確認可能な財務データ(EPS、売上、営業CF、バランスシート等)を中心に、配当支払能力の分析等を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrendsとそれ以外の信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年間配当 | |||
2024 | 2.69% | 5% | 92% | 1.55 | 67.91 | 1.67 |
2023 | 2.12% | 8% | 158% | 1.48 | 69.84 | 0.94 |
2022 | 1.85% | 4% | 12% | 1.37 | 74.12 | 11.75 |
2021 | 1.92% | 2% | 11% | 1.32 | 68.75 | 11.89 |
2020 | 2.15% | 2% | -45% | 1.30 | 60.45 | -2.89 |
2019 | 1.98% | 2% | 257% | 1.28 | 64.68 | 0.50 |
* 配当データは複数の投資情報サイトから統合
** EPSと平均株価はMacroTrends.comより
事業転換期における配当戦略
デュポン(DD)は、**4年連続で配当を増額**しており、2020年の大幅な事業再編以降、配当成長路線を維持しています。2019年から2024年にかけて、1株配当は1.28ドルから1.55ドルへと約21%増加し、年平均成長率は約3.7%を記録しています。
ただし、同社の配当戦略は、長期間の連続増配実績を持つ「配当貴族」とは異なる特徴を示しています。2024年の配当性向は92%と高水準にあり、これは**事業再編による一時的な収益変動**と**株主還元重視の経営方針**を反映しています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 12,386 | 2,140 | 17.3 | 703 |
2023 | 12,068 | 2,210 | 18.3 | 423 |
2022 | 13,017 | 1,960 | 15.1 | 5,868 |
2021 | 12,566 | 2,187 | 17.4 | 6,467 |
2020 | 11,128 | 3,934 | 35.3 | -2,951 |
2019 | 15,436 | -764 | -4.9 | 498 |
配当支払能力の分析
営業キャッシュフローによる配当カバー分析
デュポンの配当支払能力は安定していますが、注意すべき点があります。2024年の営業キャッシュフローは21億ドルで、配当支払額約6.5億ドルを3.3倍上回っています。これは**適切な配当カバー比率**を意味していますが、事業再編の影響により年度間の変動が大きいことに留意が必要です。
配当支払余力の推移(2019年以降)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 2,140 | 648 | 3.3 |
2023 | 2,210 | 618 | 3.6 |
2022 | 1,960 | 572 | 3.4 |
2021 | 2,187 | 551 | 4.0 |
2020 | 3,934 | 543 | 7.2 |
2019 | -764 | 534 | -1.4 |
配当支払余力の分析結果:
- **事業再編の影響**:2019-2020年は事業分離に伴う特殊要因により変動が大きい
- **安定化傾向**:2021年以降は3.3〜4.0倍の安定したカバー比率を維持
- **注意点**:2019年のマイナスCFは大規模な事業再編費用による一時的現象
- **持続可能性**:現在の配当水準は営業CFから十分に支払可能
事業ポートフォリオの変革と将来展望
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFをM$(百万ドル)単位、営業CF成長率を%単位で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 成長率 (%) | 投資CF (M$) | 財務CF (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 2,140 | -3.2 | -724 | -1,876 |
2023 | 2,210 | 12.8 | -573 | -2,134 |
2022 | 1,960 | -10.4 | -1,011 | -3,920 |
2021 | 2,187 | -44.4 | -1,385 | -2,935 |
2020 | 3,934 | 614.6 | -1,043 | -4,169 |
2019 | -764 | -177.4 | -1,256 | -987 |
キャッシュフロー分析のポイント
**営業キャッシュフロー**:
- **事業再編の影響**:2019-2020年は大規模な事業分離・統合により大幅な変動
- **安定化傾向**:2021年以降は20-22億ドル水準で安定
- **収益性の改善**:特殊化学品・先端材料への集中により効率向上
**投資キャッシュフロー**:
- **通常投資**:年間7-14億ドルの設備投資・R&D投資を継続
- **成長投資**:エレクトロニクス・ヘルスケア分野への重点投資
**財務キャッシュフロー**:
- **株主還元重視**:配当と自社株買いによる積極的な株主還元
- **債務削減**:事業再編後の財務健全性向上を推進
- **資本効率化**:最適な資本構造の追求
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 株主資本 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 38,456 | 26,789 | 11,667 | 30.3 | 6.0 | 230 |
2023 | 38,923 | 27,456 | 11,467 | 29.5 | 3.7 | 239 |
2022 | 40,187 | 26,723 | 13,464 | 33.5 | 43.6 | 198 |
2021 | 41,256 | 27,892 | 13,364 | 32.4 | 48.4 | 209 |
2020 | 43,789 | 31,234 | 12,555 | 28.7 | -23.5 | 249 |
2019 | 46,123 | 30,567 | 15,556 | 33.7 | 3.2 | 196 |
バランスシート分析の重要な観点
**自己資本率の推移と戦略的意味**:
- **健全な水準**:29-36%の範囲で推移し、化学業界では適正水準
- **事業再編の影響**:2020年に一時的に低下したが、その後回復傾向
- **安定性**:30%前後を維持し、財務安定性を確保
- **業界比較**:化学業界平均を上回る健全な自己資本率
**ROE(自己資本利益率)の特徴**:
- **変動要因**:事業再編による特殊損益の影響で年度間変動が大きい
- **2022年の高水準**:43.6%は事業売却益等による一時的要因
- **正常化水準**:特殊要因を除けば3-6%程度の水準
- **改善余地**:特殊化学品・先端材料への集中により今後の改善が期待
総合評価
デュポンの財務戦略は**「事業再編を通じた競争力強化」**と評価できます。自己資本率は健全な水準を維持し、営業CFも安定化しています。ROEは事業再編の影響で変動していますが、特殊化学品・先端材料への集中により、中長期的な収益性改善が期待されます。2025年11月予定のエレクトロニクス事業分離により、さらなる企業価値向上が見込まれます。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- **安定した配当方針**:4年連続増配の実績と適正な配当カバー比率
- **事業転換の完了**:大規模再編を経て、収益性の高い事業への集中が完了
- **技術優位性**:220年の歴史に裏打ちされた技術力と特許ポートフォリオ
- **成長分野への注力**:エレクトロニクス、ヘルスケア等の高成長分野への重点投資
配当投資戦略における位置づけ
成長性重視の配当銘柄として検討
- **ポートフォリオの成長枠**:技術革新による成長性を期待した投資対象
- **分散効果**:化学・材料セクターでの分散投資先として
- **中期保有適性**:事業転換完了後の成長を見据えた中期投資に適合
- **配当成長期待**:収益改善に伴う配当成長の可能性
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- **景気感応度**:化学業界特有の景気循環の影響
- **事業分離リスク**:2025年エレクトロニクス事業分離に伴う不透明性
- **原材料コスト変動**:石油化学原料価格の急激な変動
- **技術革新リスク**:急速な技術変化への対応遅れ
- **高い配当性向**:92%の配当性向は景気悪化時のリスク要因
リスク軽減策:
- **事業分離完了後の再評価**:2025年後半の事業分離完了後に投資戦略を見直し
- **技術動向の追跡**:同社の技術革新や特許取得状況を継続監視
- **景気サイクルの考慮**:化学業界の景気サイクルを踏まえた投資タイミング
- **配当性向の推移監視**:収益改善に伴う配当性向の正常化を確認
- **分散投資の徹底**:景気敏感株としてのリスクを分散投資で軽減
まとめ:配当投資家にとってのデュポン
デュポンは、**事業転換期を経て配当成長路線を歩む特殊化学品企業**として、配当重視投資家にとって検討価値のある投資対象です。
220年の歴史に裏打ちされた技術力、特殊化学品・先端材料への事業集中、成長分野への重点投資により、中長期的な配当成長の継続が期待できます。一方で、高い配当性向や事業分離に伴う不透明性など、投資家が注意すべきリスク要因も存在します。
投資判断のポイント
配当投資家にとって、デュポンは**「事業転換を完了した成長性重視の配当銘柄」**として、ポートフォリオの成長枠での投資を検討できる銘柄です。ただし、2025年のエレクトロニクス事業分離完了後の事業状況や配当方針を継続的にモニタリングしながら、適切なポジションサイズでの投資が推奨されます。
出典
**MacroTrends.com(主要財務データ):**
- DuPont EPS – Earnings per Share 2010-2024 (DD)
- DuPont Revenue 2010-2025 (DD)
- DuPont Net Income 2010-2025 (DD)
- DuPont Operating Cash Flow Per Share 2010-2024 (DD)
- DuPont Free Cash Flow Per Share 2010-2024 (DD)
- DuPont Debt to Equity Ratio 2010-2024 (DD)
- DuPont Cash on Hand 2010-2024 (DD)
- DuPont PE Ratio 2010-2024 (DD)
**配当データ(複数ソース統合):**
- Dividend.com – DuPont Dividend Analysis
- Koyfin – DuPont Dividend History & Safety
- Full Ratio – DD Dividend History & Payout Ratio
- NASDAQ – DuPont Dividend History
- TipRanks – DuPont Dividend Date & History
**企業情報・業界分析:**
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。