C:シティグループの配当推移

配当,金融

【2025年12月更新】シティグループ(C)配当の今後と将来性を徹底分析 | 事業再編の進捗と投資妙味(2025年Q3決算反映)

【2025年12月更新】シティグループ(C)配当の今後と将来性を徹底分析 | 事業再編の進捗と投資妙味(2025年Q3決算反映)

米国大手銀行の中で、最も大胆な事業再編を進めるCitigroup (C)。その配当は、変革の嵐の中で維持され、将来的に成長できるのか?本記事では、直近の2025年Q3(2025年9月期)決算を織り込みつつ、配当の持続性と将来性を整理します。[1]

はじめに:この記事でわかること

  • シティの稼ぐ力:事業再編は収益性改善につながっているか?
  • 株主還元:現在の配当は安全か?なぜ増配しないのか?
  • 財務体力:大規模なリストラを支える財務基盤は?
  • 競合比較:他行と比べて何が課題で、何が魅力か?
  • 現状評価:配当の安定性と、将来の成長シナリオは?

結論として、シティの配当は強固な資本基盤に支えられ持続可能ですが、将来の成長は事業再編の成功、すなわち収益性(ROTCE)の改善に懸かっていると評価します。


シティグループの現状(ざっくりまとめ)

  • 主なポイント:
    • 事業再編が最優先:組織の簡素化と効率化を継続し、費用構造の引き締めを進めています。
    • 配当は維持が軸:変革期は増配よりも、収益性の立て直しと資本の強化(規制対応・投資余力の確保)を優先しやすい局面です。
    • 鉄壁の自己資本:標準化CET1比率は2025年9月末で13.27%と、強いバッファーを維持しています。[2]
    • 収益性は改善途上:2025年Q3のRoTCEは7.8%(divestiture影響除き8.7%)で、改善の芽はある一方、まだ「競合並み」には距離があります。[3]
  • 現状分析: 配当の安全性は資本の厚みで支えられる一方、株価上昇と将来の配当成長は、事業再編の成果がROTCEの形で定着するかにかかっています。
免責事項: 本分析は情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

1. シティグループの「稼ぐ力」:PPNR(貸倒引当金控除前純営業収益)の重要性

シティの中核的な収益性は、リストラ費用などの一時的要因を除いた「本源的な稼ぐ力」で評価する必要があります。そのために重要なのがPPNR(貸倒引当金控除前純営業収益)です。

純利益・総収入・PPNR サマリー(単位:10億ドル)
年度 総収入 PPNR* 純利益 備考
2018 $72.9 $31.0 $18.0
2019 $74.3 $32.1 $19.4
2020 $74.3 $29.2 $11.0 コロナ禍影響
2021 $71.9 $27.6 $22.0 引当金戻入益
2022 $75.3 $27.9 $14.8
2023 $78.5 $25.3 $9.2 リストラ費用計上
2024 $80.0 $26.6 $8.2 リストラ費用継続

*PPNR = 総収入 – 非金利費用(貸倒引当金費用前)で計算した筆者算出値(通期)。通期データは2024年通期開示に基づく整理です。[4]
直近四半期(2025年Q3)のPPNR周辺指標(単位:10億ドル)
項目 2025年Q3 2024年Q3 前年差
総収入 $19.8 $19.6 +$0.2
営業費用(Total Operating Expenses) $13.2 $14.1 -$0.9
Pre-Provision Net Revenues(PPNR相当) $6.5 $5.4 +$1.1
純利益(Common株主帰属) $2.8 $2.7 +$0.1

2025年Q3は、費用の圧縮が効いてPPNR相当(Pre-Provision Net Revenues)が前年差で改善しています。ここが安定して積み上がるほど、配当の「守り」は厚くなり、将来の増配や還元の自由度にもつながります。[5]


2. 1株当たり利益と収益性指標(ROTCE)

シティの投資ストーリーの成否は、最重要指標であるROTCE(有形自己資本利益率)を改善できるかに集約されます。

1株当たりデータと収益性比率(2018-2024年)
年度 EPS ($) ROE (%) ROTCE (%)
2018 $7.19 9.4% 11.0%
2019 $8.21 10.3% 12.1%
2020 $4.87 5.7% 6.6%
2021 $10.38 11.5% 13.4%
2022 $7.00 7.7% 8.9%
2023 $4.23 4.3% 4.9%
2024 $3.88 4.0% 4.5%

最重要指標:ROTCE(有形自己資本利益率)

ROTCEは、銀行の「実質的な」資本効率を示す指標です。

ROTCE = 普通株主に帰属する純利益 ÷ 平均有形自己資本

直近の2025年Q3のRoTCEは7.8%(divestiture影響除き8.7%)で、改善の方向性は見えるものの、依然として「高収益体質」とは言い切れません。ここが上向いていくかが、株価の評価改善(バリュエーションの再評価)と将来の配当成長の鍵になります。[6]


3. 株主還元(配当と自社株買い)

シティは、事業再編を優先する局面では、配当を大きく伸ばすよりも「配当の維持」と「資本の最適化(自社株買い等)」を組み合わせやすい傾向があります。

配当履歴と配当性向 (2018年~2024年)
年度 EPS ($) 年間配当 ($) 配当性向 (%) 増配率 (%)
2018 $7.19 $1.64 22.8% +78.3%
2019 $8.21 $2.04 24.8% +24.4%
2020 $4.87 $2.04 41.9% 0.0%
2021 $10.38 $2.04 19.7% 0.0%
2022 $7.00 $2.08 29.7% +2.0%
2023 $4.23 $2.12 50.1% +1.9%
2024 $3.88 $2.12 54.6% 0.0%

EPSが弱い局面では配当性向が見かけ上上がりますが、事業再編に伴う一時費用が大きい時期ほど「EPSベース」だけで安全性を測るのは危険です。そこで、PPNR(本業の稼ぐ力)や資本比率の余裕を併せて確認するのが合理的です。[7]

総株主還元

現在の株主還元は、当局の枠組み(資本規制・ストレステスト等)を踏まえつつ、状況に応じて自社株買いを組み合わせる形になりやすいです。変革期は「増配」よりも「自己資本の厚みを崩さずに還元する」設計が優先されがちです。

総資本還元額(配当+自社株買い)(単位:10億ドル)
年度 純利益 配当総額 自社株買い 総還元額
2018 $18.0 $4.0 $13.9 $17.9
2019 $19.4 $4.8 $17.3 $22.1
2020 $11.0 $4.3 $2.7 $7.0
2021 $22.0 $4.2 $7.6 $11.8
2022 $14.8 $4.0 $3.3 $7.3
2023 $9.2 $4.1 $2.0 $6.1
2024 $8.2 $4.1 $2.0 $6.1

ポイントは、「配当の維持」が資本・流動性の厚みで支えられているか、そして還元の余地が出てきたときに「増配」か「自社株買い」かの選好がどう動くかです。前者は資本比率、後者は収益性(ROTCE)と経営の確度に強く依存します。


4. 財務体力:自己資本比率

指標 2023年末 2024年末 2025年Q3末 規制要求
標準化CET1比率 13.31% 13.47% 13.27% (年次で変動)
Tier1資本比率 15.02% 15.44% 15.06% (年次で変動)
総自己資本比率 17.59% 17.77% 17.49% (年次で変動)
SLR(補完的レバレッジ比率) 5.65% 5.86% 5.52% (規制最低水準あり)

自己資本比率の用語解説

CET1比率(普通株式等Tier1比率):銀行の財務健全性を示す最重要指標。質の高い自己資本が、リスクアセットに対してどの程度あるかを示します。

Tier1資本比率:CET1資本に加え、その他の適格なTier1資本(優先株など)を含めた比率。

総自己資本比率:Tier1資本にTier2資本(劣後債など)も加えた比率。

SLR(補完的レバレッジ比率):Tier1資本を総エクスポージャーで割った比率。

シティは標準化CET1比率で13%台を維持しており、変革期でも配当の維持に必要な「守りの厚み」を確保しています。ここが崩れない限り、配当の継続性は相対的に高いと見やすい局面です。[8]


5. 流動性と資金調達の安定性

銀行にとって、十分な現金と安定した資金調達へのアクセスを確保することは不可欠です。

指標 2023年末 2024年末 2025年Q3末 規制要求
LCR (流動性カバレッジ比率) 112% 112% 115% 100%
NSFR (安定調達比率) >100% >100% >100% 100%
HQLA (高品質流動資産) $832B $828B $825B

LCRは規制要件の100%を上回り、HQLAも高水準です。ここが安定しているほど、局面悪化時の資金繰り不安が抑えられ、配当の「守り」にもプラスに働きます。[9]


6. 信用リスクと金利感応度

信用リスク(貸出先のデフォルトの可能性)の管理は、銀行の根幹業務です。

指標 2022年 2023年 2024年
貸倒引当金費用 (10億ドル) $5.2 $9.2 $10.1
純貸倒損失 (10億ドル) $3.2 $5.5 $7.8
貸倒引当金/総貸付金比率 2.7% 2.75% 2.7%

貸倒関連のコストは景気や金利環境で変動し得ます。配当の安定性を評価するうえでは、信用コストが上振れしても「PPNRと資本」で吸収できる余力があるかを継続点検するのが要点です。


7. 投資家が注意すべきリスク

  • 戦略実行リスク:複数年にわたる変革戦略の成否が最大の変数です。
  • 経済感応度:グローバルバンクとして、世界景気・金利・市場ボラティリティの影響を受けやすいです。
  • 規制環境:自己資本要件などの変更は、資本還元計画(配当・自社株買い)に影響し得ます。
  • 競争激化:金融サービスの競争は激しく、収益性改善を阻害する可能性があります。
  • 地政学的リスク:グローバル展開ゆえに各種リスクが顕在化し得ます。

8. 競合他行との比較(視点の整理)

配当利回りやTTM指標は株価・決算で変動するため、ここでは「どの軸で比べるべきか」を中心に整理します。シティの特徴は、資本の厚みは強い一方、収益性(ROTCE)の見劣りが評価の重荷になりやすい点です。

銀行 配当利回り(傾向) 配当性向(傾向) 収益性(ROTCE) 自己資本(CET1)
C 高めになりやすい(割安評価の裏返し) 局面により振れやすい 改善途上(直近Qは7%台)[10] 13.27%(2025年Q3末)[11]
JPM 低~中 低め 高いことが多い 厚め
BAC 中~高(局面依存)
WFC 中(改善余地あり)

つまり、シティは「配当の安全性(資本)」は強みになりやすい一方、「配当の成長や株価の再評価(収益性)」が今後の焦点です。


9. 結論:投資判断と今後の見通し

シティグループの配当は、その強固な資本力と流動性を考慮すると、持続可能であると判断します。一方で、今後の大幅な配当成長と株価上昇の鍵は、事業再編を成功させ、収益性(ROTCE)を競合並みに引き上げられるかにかかっています。

投資判断の根拠

定量的要因:

  • 標準化CET1比率13%台という厚いバッファーが、配当の「守り」を支える。[12]
  • PPNR相当が改善方向にあり、貸倒・費用の変動を吸収し得る土台がある。[13]

定性的要因:

  • 組織の簡素化と費用構造改革が進めば、収益性改善の余地が残る。
  • ただし、成果がROTCEとして定着するには時間がかかり得る(実行リスクが大きい)。

現状データからの見通し:

  • 配当の安全性は高い: 資本・流動性の厚みが当面の支えになりやすい。
  • 配当成長は収益性次第: ROTCE改善が明確になってから、増配や還元強化が視野に入りやすい。
  • 投資妙味: 現状の「割安評価」は、変革の不確実性の織り込みでもある。再編が進み、収益性が改善すれば評価の戻り(再評価)余地が生まれる。

投資家への参考意見:
シティグループは、変革の進捗を追いながら中長期で付き合う前提の銘柄です。確認ポイントは、四半期ごとのRoTCEの改善、費用の引き締めが「一時的」ではなく「構造的」か、そしてCET1比率が厚いまま維持されているかです。[14]

免責事項

本レポートは、公開情報に基づく分析であり、投資助言を構成するものではありません。投資判断は投資家自身の責任において行ってください。

最終更新日: 2025年12月28日
次回更新予定: 2026年1月(2025年Q4決算発表後)

【注】(出典リンク)

  1. 2025年Q3決算(適用範囲の明示) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  2. 標準化CET1比率(2025年9月末 13.27%) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  3. RoTCE(2025年Q3 7.8%、divestiture影響除き8.7%) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  4. 通期(2018-2024)総収入・利益等の基礎 → Citigroup Inc. Form 10-K(FY2024, SEC)(確認日:2025-12-28)
  5. 2025年Q3の総収入・費用・PPNR相当・純利益(前年比較) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  6. RoTCEの直近水準と方向性(2025年Q3) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  7. 配当の安全性判断(PPNR・資本の併用) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  8. 自己資本比率(2023-2025年Q3) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  9. 流動性指標(LCR/HQLA等) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  10. 競合比較の視点(シティの収益性:直近RoTCE) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  11. 競合比較の視点(シティの資本:CET1) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  12. 結論:配当の「守り」を支える資本水準 → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  13. 結論:PPNR相当の改善(2025年Q3) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)
  14. 投資家が追うべきKPI(RoTCE・CET1等) → Citigroup 3Q25 Investor Presentation(PDF)(確認日:2025-12-28)

Posted by 南 一矢