LRCX(ラムリサーチ)配当・業績:3D半導体を支えるエッチングの巨人
【2026年8月版】Lam Research (LRCX) 徹底分析:3D半導体を支えるエッチングの巨人、その成長性と配当力
はじめに
Lam Research(ラムリサーチ)は、半導体製造装置業界の主要企業であり、特に「エッチング」と「成膜」という工程で世界トップクラスの競争力を持ちます。これらの技術は、半導体チップ上に微細な回路を形成するための「彫刻」と「コーティング」に相当し、チップの性能を決定づける重要な役割を担っています。
本記事では、Lam Researchが半導体の3D化、AI向け半導体、先端メモリ投資という技術トレンドの波に乗り、いかにして「高成長」を遂げ、同時に「配当と自社株買い」で株主に報いてきたのかを分析します。年次データはFY2026(2026年6月28日終了年度)まで、四半期データはFY2026 Q4(2026年6月28日終了四半期)まで反映しています。FY2026通期数値は、2026年7月29日公表の決算資料に掲載された監査済み財務諸表由来の数値を使用しています。[1][2]
【重要】株式分割について
Lam Researchは2024年10月3日に10対1の株式分割を実施しました。本記事の1株当たりデータ(EPS、配当など)は、すべて分割調整後の数値で統一しています。分割発表と同時に、同社は100億ドルの自社株買いプログラムも承認しました。[3]
最重要ポイント:なぜLam Researchは半導体の3D化とAIに不可欠なのか?
Lam Researchの強さを理解する鍵は、3D NANDフラッシュメモリ、HBMを含む先端メモリ、そしてAIチップ向けの最先端ロジック半導体にあります。半導体は、より多くのデータを記憶し、より速く処理するために、回路を平面的に広げるだけでなく、高層ビルのように縦方向へ積み上げる「3D化」が進んでいます。
- エッチング:回路の溝を深く、垂直に、正確に「彫る」技術です。
- 成膜(デポジション):彫った溝に絶縁膜や金属膜を均一に「盛る」技術です。
- 顧客サポート:既存装置の保守・アップグレード・部品供給を通じて、半導体メーカーの稼働率改善を支える事業です。
チップの積層数が増え、AIチップのように構造が複雑になるほど、この「彫る」「盛る」という工程の難易度と回数が増えます。そのため、Lam Researchの高度な装置とサポート事業への需要は、半導体の微細化・3D化・AI化とともに拡大しやすい構造にあります。
【免責事項および出典について】
- 本記事の財務データは、主にLam Research Corp.のForm 10-K、Form 10-Q、四半期決算発表、公式IR資料に基づいて作成しています。FY2026通期は、2026年7月29日公表資料の監査済み財務諸表由来の数値を反映しています。[1][2]
- Lam Researchの会計年度は6月締めです。FY2026は2025年6月30日から2026年6月28日までを指します。
- 記事内のCAGR、利益率、自己資本比率、ROE、FCF配当カバー率などは、公式数値をもとに筆者が算出した概算を含みます。
- 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
- スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
【2026年8月更新】
2026年7月29日発表のFY2026 Q4・通期決算を反映しました。FY2026 Q4は売上高67.22億ドル、GAAP粗利益率51.7%、GAAP営業利益率37.4%、GAAP希薄化後EPS1.81ドル、Non-GAAP希薄化後EPS1.82ドルでした。FY2026通期は売上高232.33億ドル、純利益72.65億ドル、GAAP希薄化後EPS5.76ドルとなり、売上高・営業利益・純利益・EPSはいずれもFY2025を上回りました。会社は6月四半期について、売上高、営業利益率、EPSが過去最高だったと説明しています。[2]
1. 業績分析:半導体サイクルを乗りこなす成長力
Lam Researchの業績は、特にメモリ市場の設備投資サイクルに強く影響されます。ただし、3D NAND、DRAM、HBM、先端ロジック、AI向け半導体の複雑化により、同社が得意とするエッチング・成膜工程の重要性は高まっています。FY2025は売上高が大きく回復し、FY2026はAI関連投資、先端メモリ、顧客サポート事業の伸長を背景に、通期売上高とEPSが過去最高を更新しました。[1][2]
1.1. 売上・利益・キャッシュフローの推移
| 会計年度 | 売上高 百万$ |
営業CF 百万$ |
純利益 百万$ |
EPS 分割調整後・希薄化後$ |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | 5,886 | 1,350 | 914 | 0.52 |
| 2017 | 8,014 | 2,029 | 1,698 | 0.96 |
| 2018 | 11,077 | 2,656 | 2,381 | 1.33 |
| 2019 | 9,654 | 3,176 | 2,191 | 1.26 |
| 2020 | 10,045 | 2,126 | 2,252 | 1.46 |
| 2021 | 14,626 | 3,588 | 3,908 | 2.54 |
| 2022 | 17,227 | 3,100 | 4,605 | 3.20 |
| 2023 | 17,429 | 5,179 | 4,511 | 3.22 |
| 2024 | 14,905 | 4,571 | 3,828 | 2.89 |
| 2025 | 18,436 | 6,173 | 5,358 | 4.15 |
| 2026 | 23,233 | 5,858 | 7,265 | 5.76 |
| CAGR(年平均成長率) | ||||
| 過去10年 FY2016→FY2026 |
約14.7% | 約15.8% | 約23.0% | 約27.2% |
| 過去5年 FY2021→FY2026 |
約9.7% | 約10.3% | 約13.2% | 約17.8% |
注)EPSは10対1株式分割後の基準に調整。FY2026通期数値は2026年7月29日公表資料、過年度はForm 10-K等に基づく。CAGRは筆者算出。[1][2][4]
- FY2026は過去最高:FY2026の売上高は232.33億ドルで前年比+26.0%、純利益は72.65億ドルで同+35.6%、希薄化後EPSは5.76ドルで同+38.8%となりました。AI向け半導体、先端メモリ、装置の高付加価値化、顧客サポート事業が成長を支えました。[2]
- 長期成長力:FY2016からFY2026まで、売上高は年率約14.7%、EPSは年率約27.2%で成長しました。EPSの伸びには、利益成長に加え、自社株買いによる株式数減少も寄与しています。
- 営業CFは高水準を維持:FY2026の営業CFは58.58億ドルで、FY2025の61.73億ドルを約5%下回りました。純利益は増えた一方、売掛金・在庫など運転資本の増加が営業CFを押し下げたため、利益とキャッシュフローの差も確認する必要があります。[2]
1.2. 直近の四半期業績(FY2026 Q1〜Q4)
FY2026は四半期を追うごとに成長が加速しました。2026年6月四半期(FY2026 Q4)は、売上高67.22億ドル、Non-GAAP希薄化後EPS1.82ドルとなり、前四半期比で売上高は15.1%、Non-GAAP EPSは23.8%増加しました。[2]
| 四半期 | 売上高 百万$ |
GAAP 粗利益率 |
GAAP 営業利益率 |
GAAP EPS 希薄化後$ |
Non-GAAP EPS 希薄化後$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2026 Q1 2025年9月四半期 |
5,324 | 50.4% | 34.8% | 1.24 | 1.26 |
| FY2026 Q2 2025年12月四半期 |
5,345 | 49.6% | 33.9% | 1.26 | 1.27 |
| FY2026 Q3 2026年3月四半期 |
5,841 | 49.8% | 35.0% | 1.45 | 1.47 |
| FY2026 Q4 2026年6月四半期 |
6,722 | 51.7% | 37.4% | 1.81 | 1.82 |
注)FY2026 Q4は2026年6月28日終了四半期。FY2026 Q1〜Q3は各四半期決算資料、FY2026 Q4は2026年7月29日決算発表に基づく。[2][5]
- FY2026 Q4は記録更新:2026年6月四半期の売上高は67.22億ドルで前四半期比+15.1%、GAAP EPSは1.81ドルで同+24.8%でした。会社は売上高、営業利益率、EPSが過去最高だったと説明しています。[2]
- 利益率が一段と改善:FY2026 Q4のNon-GAAP粗利益率は52.0%、Non-GAAP営業利益率は38.4%でした。売上拡大だけでなく、製品ミックスと事業効率の改善が利益成長につながっています。[2]
- 顧客サポート事業が拡大:FY2026 Q4の顧客サポート関連売上は24.72億ドルで、前年同期の17.34億ドルから約43%増加しました。設置済み装置の増加が、保守・部品・アップグレード収益の継続的な土台になっています。[2]
- FY2027 Q1ガイダンス:2026年9月四半期について、会社は売上高81.0億ドル(±4.0億ドル)、Non-GAAP希薄化後EPS2.15ドル(±0.15ドル)を見込んでいます。実績ではなく、2026年7月29日時点の会社予想です。[2]
2. 株主還元:成長とともに積み上がる配当
Lam Researchは2014年に配当を開始して以来、株主還元を着実に強化してきました。配当利回りだけを見ると高配当株ではありませんが、増配、自社株買い、フリーキャッシュフロー創出力を合わせて評価する必要があります。
2.1. 配当実績
FY2026 EPS基準
現行・年換算
- 11年連続の増配:Lam Researchは配当開始後、長期的に増配を続けています。2026年5月には四半期配当0.26ドルを発表し、2026年7月8日に支払われました。[6]
- 健全な配当性向:現行の年換算配当1.04ドルをFY2026の分割調整後EPS5.76ドルで割ると、配当性向は約18%です。利益のサイクル性はありますが、増配余力を残した水準です。[2]
- 株主還元方針:Lam Researchは、フリーキャッシュフローの75〜100%を配当と自社株買いで株主へ還元する方針を示しています。[3]
2.2. フリーキャッシュフローで見る配当の安全性
| 会計年度 | FCF 百万$ |
配当支払額 百万$ |
FCF配当 カバー率 |
|---|---|---|---|
| 2021 | 2,954 | 813 | 3.6倍 |
| 2022 | 2,110 | 938 | 2.2倍 |
| 2023 | 4,679 | 1,010 | 4.6倍 |
| 2024 | 4,256 | 1,038 | 4.1倍 |
| 2025 | 5,414 | 1,150 | 4.7倍 |
| 2026 | 4,891 | 1,271 | 3.9倍 |
注)FCFは営業CFから設備投資・無形資産取得を差し引いて筆者算出。FY2026は営業CF58.58億ドル−設備投資等9.66億ドル=約48.91億ドル。[1][2]
- 配当はFCFで十分にカバー:FY2026のFCFは約48.91億ドルで、配当支払額12.71億ドルの約3.9倍でした。FY2025の4.7倍から低下しましたが、配当単独の安全性はなお高い水準です。[2]
- 総還元はFCFをやや上回る:FY2026は配当12.71億ドル、自社株買い38.51億ドル、合計51.22億ドルを株主へ還元しました。これはFCF約48.91億ドルを約2.31億ドル上回るため、当年度の総還元はFCFだけで完全には賄われていません。ただし、FY2026末の現金・現金同等物は55.79億ドルあり、直ちに財務不安を示す規模ではありません。[2]
3. 財務分析:積極的な株主還元と財務安定性
Lam Researchは株主還元を重視する一方で、バランスシートも比較的健全に保っています。半導体装置産業は景気循環性が強いため、現金、債務、自己資本、キャッシュフローのバランスを確認することが重要です。
| 会計年度末 | 総資産 百万$ |
総負債 百万$ |
株主資本 百万$ |
自己資本比率 | ROE 概算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 15,892 | 9,865 | 6,027 | 37.9% | 64.8% |
| 2022 | 17,196 | 10,918 | 6,278 | 36.5% | 73.3% |
| 2023 | 18,782 | 10,572 | 8,210 | 43.7% | 54.9% |
| 2024 | 19,161 | 10,542 | 8,619 | 45.0% | 44.4% |
| 2025 | 21,345 | 11,484 | 9,862 | 46.2% | 54.3% |
| 2026 | 23,530 | 11,059 | 12,471 | 53.0% | 58.3% |
注)総負債は総資産から株主資本を差し引いて整理。自己資本比率は株主資本÷総資産、ROEは純利益÷期末株主資本で筆者算出。[1][2][4]
- 自己資本比率が改善:FY2026末の自己資本比率は約53.0%で、FY2025末の約46.2%から上昇しました。利益剰余の積み上がりにより、積極的な株主還元を続けながら自己資本が増加しています。[2]
- 高い資本効率:期末株主資本を分母にしたFY2026のROEは概算で58.3%です。ただし、自社株買いの影響で株主資本が圧縮されるため、ROEだけでなく利益率やFCFも併せて確認する必要があります。
- 現金水準:FY2026末の現金・現金同等物は55.79億ドル、現金・現金同等物・制限付き現金は約56.0億ドルでした。FY2026 Q3末の47.7億ドルから増加しています。[2]
- 利益率の上昇:FY2026通期のGAAP粗利益率は50.5%、GAAP営業利益率は35.3%でした。FY2025の48.7%、32.0%から改善し、FY2026 Q4はそれぞれ51.7%、37.4%まで上昇しました。[2]
ミニ解説:Lam Researchのような半導体製造装置企業は、業績が半導体メーカーの設備投資サイクルに左右されます。そのため、単年度の売上やEPSだけでなく、FCF、受注・顧客サポート事業、現金水準、株主還元方針をセットで見ると、投資判断が安定します。
4. 投資判断のヒント:Lam Researchの強みとリスク
Lam Researchへの投資を検討するうえでは、強力な競争優位性と、半導体装置業界特有のリスクの両面を理解することが重要です。
Lam Researchの強み
- エッチング市場でのリーダーシップ:半導体製造の重要工程であるエッチングで世界トップクラスの地位を持ちます。
- 構造的な追い風:3D NAND、DRAM、HBM、先端ロジック、AIチップの製造に不可欠な技術を提供しており、半導体構造の複雑化がそのまま需要増につながりやすい立場です。
- 顧客サポート事業の安定性:設置済み装置の増加により、保守、部品、アップグレード収益が積み上がります。FY2026 Q4の顧客サポート関連売上は24.72億ドルとなり、前年同期比で約43%増加しました。[2]
- 高い収益性とキャッシュ創出力:FY2026の営業CFは58.58億ドル、FCFは約48.91億ドルでした。配当を十分にカバーし、研究開発・設備投資・株主還元を並行できる財務力があります。[2]
- 株主還元への明確な姿勢:配当、自社株買い、株式分割を通じて、株主還元を継続的に強化しています。
注意すべきリスク要因
- メモリ市場への依存:Lam Researchはメモリ、特にNANDやDRAM投資の影響を受けやすい企業です。メモリ市況が悪化すれば、装置投資も急減しやすくなります。
- 景気循環性:半導体製造装置は設備投資サイクルに左右されるため、業績と株価の変動性が高くなりやすい分野です。
- 地政学・輸出規制:FY2026 Q4の中国向け売上比率は26%でした。米国の対中輸出規制、顧客構成の変化、地政学的緊張は、売上高や製品ミックスに影響し得ます。[2]
- 技術競争:Applied Materials、東京エレクトロン、KLAなどとの競争は激しく、顧客のロードマップに合わせた技術開発を継続する必要があります。
- 顧客の投資タイミング:AI需要が強くても、顧客の工場建設、クリーンルーム容量、資金調達、在庫状況によって、装置需要のタイミングは前後します。
- 高い市場期待:AI関連需要を背景に株価が高く評価されやすく、好決算でもガイダンスや受注見通しが期待に届かなければ株価が調整する可能性があります。
5. まとめ
Lam Researchは、半導体の3D化とAI化という大きな技術トレンドを捉える、半導体製造装置セクターの中核企業です。FY2026は売上高232.33億ドル、純利益72.65億ドル、希薄化後EPS5.76ドルを記録しました。FY2026 Q4も売上高67.22億ドル、GAAP EPS1.81ドル、Non-GAAP EPS1.82ドルと過去最高水準の業績を示しています。[2]
投資家目線では、Lam Researchは「AI・先端メモリ・3D半導体の設備投資拡大を取り込む成長企業」でありながら、「配当と自社株買いで株主還元を継続する高収益企業」でもあります。
一方で、同社は半導体装置企業である以上、メモリ市況、設備投資サイクル、中国向け規制、顧客の投資タイミングに左右されます。投資判断では、売上高やEPSだけでなく、粗利益率、顧客サポート事業、FCF、株主還元、中国向け比率、次世代メモリ・AI関連投資の持続性をセットで確認することが重要です。
【注】(出典リンク)
- Lam Research FY2025 Form 10-K・年次業績 → 一次情報:Lam Research Annual Reports and Proxy → SEC EDGAR Lam Research filings(確認日:2026-08-03) ↩
- Lam Research FY2026 Q4・通期業績・FY2027 Q1ガイダンス → 一次情報:Lam Research「Quarter Ended June 28, 2026」 → Lam Research Quarterly Results(確認日:2026-08-03) ↩
- 10対1株式分割・100億ドル自社株買い → 一次情報:Lam Research「Stock Split and Repurchase Authorization」 → Lam Research Stock Information(確認日:2026-08-03) ↩
- Lam Research過年度データ → 一次情報:Lam Research Annual Reports → Lam Research Financial Information(確認日:2026-08-03) ↩
- Lam Research FY2026 Q1〜Q3決算 → 一次情報:Lam Research Quarterly Results → Lam Research Newsroom(確認日:2026-08-03) ↩
- Lam Research四半期配当 → 一次情報:Lam Research Dividend History → Lam Research「Quarterly Dividend」(確認日:2026-08-03) ↩
本記事は公開情報に基づく筆者分析であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。正確性・完全性には注意していますが、内容を保証するものではありません。
最終更新日時:2026年8月3日(FY2026 Q4・通期決算反映)

