平均年収は458万円 日本の給与・年収事情 2025年6月更新データ分析

政治経済

【2025年6月更新版】 国税庁・厚生労働省・連合などの最新統計を全面的に反映。歴史的な賃上げの動向と、依然として続く実質賃金マイナスの課題を、現時点で利用可能な最新データで解説します。

給料日に明細を見て、年収に満足できる人は、今の日本にどれぐらいいるのでしょうか。

コロナ禍を経て、日本の賃金環境は大きな転換期を迎えています。2024年の春闘では33年ぶりとなる高水準の賃上げが実現し、2025年もその勢いが続いています。しかし、止まらない物価高がその効果を相殺し、暮らしの実感を示す「実質賃金」は依然として厳しい状況です。今回は、最新の公的データを基に、日本の給与が直面するリアルな現状を多角的に分析します。

※データ時点について:この記事で用いる公的統計は、2025年6月時点で公表されている最新版です。大規模調査は集計・公表に時間がかかるため、調査年が1~2年前のものとなりますが、これが最も新しい正確な数値です。

日本の平均給与は458万円、中央値は420万円に上昇

国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によれば、2023年に1年間勤務した給与所得者の平均給与は458万円でした。これは正規・非正規を含む全体の平均値です。

一方で、より実態に近いとされる中央値は、厚生労働省の「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると420万円と推計されます。特筆すべきは、中央値が前年の396万円から大幅に上昇した点であり、賃上げの波が中間層にも及んでいることが示唆されます。

平均給与(年収) 中央値(年収) 出典
全体(2023年分) 458万円 420万円 国税庁 / 厚生労働省
正規職員 534万円 国税庁
非正規職員 208万円 国税庁

出典:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」、厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」より算出

ポイント:平均給与は横ばいでしたが、中央値が大きく伸びました。これは、高所得層の給与が伸び悩む一方、非正規や若年層の賃金が底上げされた結果と考えられます。それでも正規・非正規の格差は依然として大きいのが現状です。

歴史的賃上げは続くか? 2024年・2025年春闘の結果

2024年の春闘は、賃上げ率が5.28%(連合最終集計)と33年ぶりの高水準を記録し、大きな話題となりました。この勢いは2025年も継続しています。

連合の「2025年春季生活闘争 第5回回答集計」(2025年5月30日公表)によると、定昇込み加重平均の賃上げ率は現時点で5.20%に達しており、昨年を上回るペースで交渉が進んでいます。

年度 大企業賃上げ率 中小企業賃上げ率 全体平均(連合集計)
2023年 3.64% 3.00% 3.58%
2024年 5.32% 4.69% 5.28% (最終値)
2025年 5.23% 4.73% 5.20% (5月30日時点)

出典:連合「春季生活闘争に関するデータ」

大企業だけでなく中小企業でも4%台後半の高い賃上げが実現しつつあり、賃上げの裾野が広がっている点はポジティブな材料です。

公務員の平均給与:2024年最新データ

民間企業の賃上げ動向を受け、公務員の給与も引き上げられています。最新の公式データ(令和5年人事院勧告等)に基づくと、国家公務員の平均年収は約663万円、地方公務員は約659万円です。

職種 平均給与月額 推定年収 備考
国家公務員 404,015円 約663万円 令和5年人事院勧告より
地方公務員 399,637円 約659万円 全職種平均
民間企業 458万円 正規・非正規含む全体

出典:人事院「令和5年人事院勧告」 / 総務省「令和5年地方公務員給与の実態」

深刻な課題:物価上昇に追いつかない実質賃金

25ヶ月連続マイナス: 厚生労働省「毎月勤労統計調査(令和7年4月分速報)」によれば、実質賃金は前年同月比-0.7%となり、これで25ヶ月連続のマイナスとなりました。

「名目賃金」(額面の給与)は上昇しているものの、それを上回るペースで物価が上昇しているため、購買力を示す「実質賃金」は2年以上にわたってマイナスが続いています。歴史的な賃上げも、生活実感の改善にはまだ結びついていないのが実情です。

※実質賃金=名目賃金指数 ÷ 消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合)

この状況は、単に賃金の額面を見るだけでなく、物価動向と合わせた購買力の観点から暮らしを評価することの重要性を示しています。

2024年 高年収企業ランキング(2023年度決算ベース)

企業の業績を反映する年収ランキングでは、M&A関連や総合商社が依然として上位を占めています。以下のランキングは、2023年度の有価証券報告書に基づいています。

順位 企業名 業界 平均年収(万円)
1 M&Aキャピタルパートナーズ M&A仲介 2,478
2 キーエンス 電気機器 2,279
3 光通信 情報・通信 2,101
4 三菱商事 総合商社 1,939
5 三井物産 総合商社 1,783

出典:東洋経済オンライン「平均年収が高い会社ランキング全国トップ500」2024年版

好業績を背景に高水準の給与を維持していますが、一部企業では業績連動賞与の変動により前年より年収が減少するケースも見られます。

持続的な賃上げへの課題と今後の展望

2年連続の高い賃上げは日本経済にとって明るい兆しですが、課題も山積しています。

  • 中小企業の価格転嫁:原材料費やエネルギー価格の高騰分を製品・サービス価格に十分に転嫁できず、「賃上げ疲れ」や収益悪化に直面する中小企業も少なくありません。
  • 人手不足の深刻化:賃上げ原資の確保が難しい企業から人材が流出し、「人手不足倒産」も増加傾向にあります。
  • 生産性の向上:賃上げを持続可能なものにするためには、付け焼き刃の対応ではなく、DX(デジタル変革)や設備投資による生産性向上が不可欠です。

政府も「三位一体の労働市場改革」を掲げ、リスキリング(学び直し)による労働移動の円滑化や、構造的な賃上げを目指す政策を推進しています。

まとめ:歴史的転換点における日本の給与と個人の選択

2025年の日本は、「失われた30年」の停滞から脱却できるかの重要な岐路に立っています。歴史的な賃上げが実現する一方で、物価高による実質賃金の目減りや、企業規模・雇用形態による格差など、構造的な課題も浮き彫りになりました。

今後、日本経済が持続的な賃金上昇の好循環に入るためには、企業の生産性向上、適切な価格転嫁、そして政府による成長戦略が一体となって機能する必要があります。

私たち個人にとっても、こうしたマクロな変化を理解し、自身の専門性を高めるリスキリングや、成長分野へのキャリアチェンジなどを視野に入れることが、ますます重要になってくるでしょう。

Posted by 南 一矢