ASMLの業績・配当:EUV技術による圧倒的な利益率と成長性

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ASMLの業績・配当:EUV技術による高収益と成長性(財務基盤データ復元版)

ASMLの業績・配当:EUV技術による高収益と成長性(財務基盤データ復元版)

はじめに
ASMLは、オランダに本社を置く半導体製造装置メーカーです。AI、データセンター、先端スマートフォン、自動車向け半導体まで、現代の先端半導体の多くは同社の装置抜きには語れません。最新の公式開示は2026年4月15日発表の2026年Q1決算で、売上高は€87.7億、純利益は€27.6億、売上総利益率は53.0%でした。[1]
今回は、前回出力で薄くなっていた財務基盤・キャッシュフロー・過去推移を戻しつつ、2026年Q1までの最新情報を反映しています。

【免責事項および出典について】

  • 最新の四半期データは、2026年Q1決算(2026年4月15日発表)の公式資料に基づきます。[1]
  • 2025年通期・2025年Q4の確定値、受注残、自社株買い新枠などは、2026年1月28日開示の公式資料を基礎にしています。[3]
  • R&D、営業CF、フリーCF、サービス売上などの詳細は、ASML 2025年年次報告書の財務セクションを優先しています。[4]
  • 2020〜2024年の総資産・負債・株主資本・営業CF・FCFは、ASMLの2024年Q4投資家向け資料の年次サマリーに基づきます。[5]
  • 数値は原則ユーロ建てで、本文では「いつ時点の数字か」が分かるように表記しています。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任においてお願いします。

1. 業績分析:半導体サイクルの波を受けつつ、長期では高成長

ASMLの業績は半導体設備投資サイクルの影響を受けますが、長期では「微細化に不可欠な装置を握る企業」として大きく成長してきました。2025年通期の売上高は€326.7億、純利益は€96.1億で過去最高を更新し、最新の2026年Q1も前年同期比で増収増益を維持しています。[3][1]

1.1. 売上・利益・EPSの推移(年次)

会計年度
通期
売上高
百万€
純利益
百万€
EPS
€ / 基本
2015 6,287 1,387 3.22
2016 6,795 1,472 3.46
2017 9,053 2,119 4.93
2018 10,944 2,592 6.10
2019 11,820 2,592 6.16
2020 13,978 3,554 8.49
2021 18,611 5,883 14.36
2022 21,173 5,624 14.14
2023 27,559 7,839 19.91
2024 28,263 7,572 19.25
2025 32,667 9,609 24.73
CAGR(年平均成長率)
FY2015-2025 17.9% 21.4% 22.6%
FY2020-2025 18.5% 22.0% 23.8%

2015〜2024年は年次報告・提出書類、2025年は2025年通期公式決算を基礎に整理。[5][3]

  • 2025年通期は過去最高:売上高は前年比約16%増、純利益は前年比約27%増でした。[3]
  • 10年で大きく拡大:売上高のCAGRは17.9%、EPSのCAGRは22.6%です。
  • 短期はサイクルの影響を受ける:それでも、微細化が進むほどASMLの重要性が高まる構造は変わっていません。[2]

1.2. 四半期の推移(2025年Q1〜2026年Q1)

期間 売上高
十億€
売上総利益率 純利益
十億€
EPS
€ / 基本
ネット
ブッキング
十億€
2025年Q1 7.742 54.0% 2.355 6.00 3.94
2025年Q2 7.692 53.7% 2.290 5.90 5.54
2025年Q3 7.516 51.6% 2.125 5.49 2.63
2025年Q4 9.718 52.2% 2.840 7.35 13.09
2026年Q1 8.767 53.0% 2.757 7.15 3.94

2025年Q1〜Q3は公式四半期資料、2025年Q4と2026年Q1は各公式決算リリースに基づく。[6][3][1]

  • 2025年Q4の受注が転機:ネットブッキングは€130.9億まで跳ね、2025年末の受注残は€388.0億でした。[3]
  • 2026年Q1も高収益:売上総利益率53.0%、EPS €7.15と高い水準を維持しました。[1]
  • 受注は四半期でぶれる:そのため、短期の需給を見るときは1四半期の数字だけでなく、受注残や通期ガイダンスも一緒に確認したいところです。

1.3. 収益性:独占企業らしい高い利益率

ASMLの独占的な市場地位は利益率にも表れています。2025年通期の売上総利益率は52.8%、純利益率は29.4%でした。最新の2026年Q1も売上総利益率53.0%と高水準です。[4][1]

期間 売上総利益率 純利益率
2020(通期) 48.6% 25.4%
2021(通期) 52.7% 31.6%
2022(通期) 50.5% 26.6%
2023(通期) 51.3% 28.4%
2024(通期) 51.3% 26.8%
2025(通期) 52.8% 29.4%
2026年Q1 53.0% 31.4%

売上総利益率は公式開示、純利益率は同開示の売上高・純利益から算出。[4][1]

2. 成長の源泉:研究開発への巨額投資

ASMLの独占的地位は、偶然ではありません。長年にわたり巨額のR&Dを積み上げ、EUVだけでなくHigh-NA EUVまで先行している点が最大の参入障壁です。[2][4]

会計年度
通期
研究開発費
百万€
売上高比率
2020 2,201 15.7%
2021 2,547 13.7%
2022 3,254 15.4%
2023 3,981 14.4%
2024 4,304 15.2%
2025 4,699 14.4%

2020〜2024年は年次サマリー、2025年は2025年年次報告書の財務セクションを優先。[5][4]

  • 売上の14〜16%前後をR&Dへ:景気の波があっても、研究開発投資は高水準です。[4]
  • 2025年の重点:NXE:3800E/F、既存EUVの稼働率改善、計測・検査、計算リソグラフィなど幅広い領域に投資が続いています。[4]
  • High-NAの立ち上がり:2025年はEUV売上認識48台のうちEXEが4台で、次世代への移行が数字にも表れ始めました。[4]

3. 株主還元と財務健全性

ASMLは、成長投資を優先しつつも、配当と自社株買いの両輪で株主還元を続けています。同時に、削りたくない論点がもう一つあります。それが財務基盤と現金創出力です。ここが強いからこそ、R&Dと還元の両立が可能になります。[4][7]

3.1. 配当実績と総株主還元の推移

還元の軸
配当+自社株買い

2025年 年間配当
(提案)
€7.50 / 株

2025年 株主還元総額
€8.5bn

2026〜2028年
自社株買い枠
最大€12bn

2025年 自社株買い実績
€7.6bn

2026年Q1
買い戻し実績
約€1.1bn

年度 年間配当
€ / 株
配当性向
対EPS
2015 1.05 32.6%
2016 1.20 34.7%
2017 1.40 28.4%
2018 2.10 34.4%
2019 2.40 39.0%
2020 2.75 32.4%
2021 5.50 38.3%
2022 5.80 41.0%
2023 6.10 30.6%
2024 6.40 33.2%
2025(提案) 7.50 30.3%

2015〜2024年の配当推移はASMLの年次サマリー、2025年配当案と2025〜2028年の買い戻し方針は2026年開示に基づく。[5][7]

  • 配当は着実に増加:2015年の€1.05/株から、2025年は€7.50/株へ拡大しています。[5][7]
  • 2025年の総還元:ASMLは2025年に、配当と自社株買いを合わせて€8.5bnを株主に還元したと説明しています。[7]
  • 買い戻しも継続:2025年の旧プログラムは累計€7.6bnで終了し、2026年Q1には新プログラムの下で約€1.1bnを買い戻しました。[7]

3.2. 財務基盤の長期推移(復元)

ここが前回やや薄くなっていた部分です。ASMLの安全性を見るには、総資産だけでなく、流動負債・非流動負債・株主資本の並びで見るほうが実態をつかみやすいです。下表は、ASMLのUS GAAPベースの年末バランスシートを並べたものです。[5][1]

期末 総資産
百万€
流動負債
百万€
非流動負債
百万€
株主資本
百万€
自己資本
比率
ROE(参考)
純利益÷期末株主資本
2020年末 39,958 16,275 10,231 13,452 33.7% 26.4%
2021年末 39,043 15,049 10,200 13,794 35.3% 42.6%
2022年末 40,741 16,132 9,898 14,711 36.1% 38.2%
2023年末 41,766 16,026 9,589 16,151 38.7% 48.5%
2024年末 48,590 20,051 10,062 18,477 38.0% 41.0%
2025年末 50,567 24,264 6,691 19,612 38.8% 49.0%
2026年Q1末
参考
48,061 20,288 6,943 20,830 43.3%

2020〜2024年末は2024年Q4投資家向け資料、2025年末・2026年Q1末は2026年Q1投資家向け資料。ROEは参考値として本文側で算出。[5][1]

  • 資本の厚みは着実に拡大:株主資本は2020年末の€134.5億から2025年末は€196.1億へ増えています。[5][1]
  • 2025年は負債構成が改善:非流動負債は2024年末の€100.6億から2025年末は€66.9億へ低下しました。年次報告では、2025年に€10億の社債償還があったことも示されています。[4]
  • 2026年Q1末の自己資本比率は43.3%:四半期ベースでも資本バッファはむしろ厚くなっています。[1]

3.3. キャッシュ創出力の推移(復元)

ASMLの強さは、利益が大きいだけでなく、きちんと現金が残る点にもあります。営業CFとFCFを戻して見ると、設備投資と還元を同時に回せる体力が見えやすくなります。[5][4]

期末 営業CF
百万€
設備・無形投資
百万€
FCF
百万€
現金等+短期投資
百万€
2020 4,628 1,001 3,627 7,351
2021 10,847 940 9,906 7,590
2022 8,487 1,319 7,168 7,376
2023 5,443 2,196 3,247 7,010
2024 11,166 2,083 9,083 12,741
2025 12,659 1,631 11,027 13,322
2026年Q1
参考
-2,186 422 -2,608 8,376

2020〜2024年は2024年Q4投資家向け資料、2025年は2025年年次報告、2026年Q1は2026年Q1投資家向け資料。[5][4][1]

  • 2025年の営業CFは€126.6億、FCFは€110.3億:配当と自社株買いを進めても、なお大型の現金創出が続いています。[4]
  • 2024年も強い現金創出:2024年は営業CF€111.7億、FCF€90.8億でした。[5]
  • 2026年Q1のCFは弱いが四半期要因が強い:Q1は営業CF・FCFともにマイナスでしたが、ASMLはなお€83.8億の現金等・短期投資を持っています。四半期単体より通期で見るほうが実態に近いです。[1]

3.4. 追加で見ておきたい論点

  • サービス売上の拡大:2025年のNet service and field option salesは€81.9億で、2024年の€64.9億から26.2%増加しました。装置販売だけに依存しない収益基盤が広がっています。[4]
  • 会社自身も資本の厚さを強調:2025年年次報告では、2025年末の株主資本€196億、総資産€506億、営業CF€127億をもって「strong capital reserves」「robust balance sheet」と位置づけています。[8]
  • 受注残の厚み:2025年末の受注残約€388億は、売上とキャッシュ創出の先行指標として依然重要です。[3]

4. 投資判断のヒント:ASMLの強みとリスク

ASMLへの投資を考えるときは、「強すぎる競争優位」をどう評価するかと、「その強さがあるからこそ株価の期待も高くなりやすい」点を、両方見る必要があります。

ASMLの強み(事業の優位性)

  • 技術的独占:EUV露光装置を実質的に独占供給しており、次世代のHigh-NAでも先行しています。[2]
  • 極めて高い参入障壁:装置単体ではなく、光源、光学系、計測、顧客共同開発、サプライチェーンまで含めた総合力が必要です。
  • サービス収益の積み上がり:2025年のサービス売上は€81.9億まで拡大しています。[4]
  • AI需要の追い風:2025年Q4のネットブッキング急増は、AI関連投資の強さを映した動きとして重要です。[3]
  • 2030年の長期機会:ASMLは2030年の年間売上機会を約€440億〜€600億、売上総利益率を56%〜60%と見ています。[9]

注意すべきリスク要因

  1. 半導体設備投資サイクル:受注と売上のタイミング差が大きく、四半期業績は振れやすいです。[3]
  2. 地政学・輸出規制:中国向け売上は2025年に総売上の29.1%を占めました。一方、会社側は2026年の中国比率を受注残に沿った「約20%」とみていますが、規制の追加強化は依然リスクです。[10]
  3. 顧客集中:TSMC、Samsung、Intelなど主要顧客の投資判断の変化は、ASMLの受注と売上に直結します。
  4. 高い期待の織り込み:業績が良くても、ガイダンスや受注が市場期待に届かないと株価は大きく動きやすいです。
  5. 組織再編の実行リスク:ASMLは技術部門・IT部門の再編を進めており、最終的に約1,700人の純減につながる可能性があるとしています。長期では効率化でも、短期では摩擦要因になりえます。[11]

4.1. 2026年のガイダンス

2026年Q1決算時点で、ASMLは通期見通しを従来より引き上げています。ここは重要な更新点です。[1]

  • 2026年Q2見通し:売上高€84億〜€90億、売上総利益率51%〜52%。[1]
  • 2026年通期見通し:売上高€360億〜€400億、売上総利益率51%〜53%。[1]
  • 長期見通し:2030年の年間売上機会は約€440億〜€600億。単なる短期の景気回復ではなく、長期の微細化需要も見据えた数字です。[9]

5. まとめ

本記事では、ASMLの財務データと株主還元を、2026年Q1まで反映しつつ、削ってしまっていた財務基盤・キャッシュフローの推移も戻して整理しました。

ASMLは、「EUVとHigh-NA EUVの技術優位を軸に、高収益・高成長・高還元を同時に実現している企業」です。2025年通期は売上高€326.7億、純利益€96.1億と過去最高を更新し、最新の2026年Q1も売上高€87.7億、売上総利益率53.0%と高い水準を保ちました。[3][1]

また、2025年末の受注残約€388億、2025年の営業CF€126.6億、FCF€110.3億、年末の現金等・短期投資€133.2億は、同社が「強い事業」だけでなく「強い財務」を持っていることを示します。[3][4]

投資判断では、(1)受注と受注残、(2)粗利率の維持、(3)High-NAを含む中長期ロードマップ、(4)財務基盤とFCF、(5)株主還元の継続性の5点を並べて見ると、ASMLの強さとリスクを整理しやすくなります。

ミニ解説:財務基盤を見るときのコツ
ASMLのような企業は、単に売上やEPSが伸びているかだけでなく、株主資本が積み上がっているか、営業CFとFCFが安定しているか、手元資金が厚いかを一緒に見たほうが実態をつかみやすいです。今回戻した「3.2 財務基盤の長期推移」と「3.3 キャッシュ創出力の推移」は、その確認用の表です。[5][4]

【注】(出典リンク)

  1. 2026年Q1決算(主要数値・Q2見通し・通期ガイダンス・Q1末BS/CF) → ASML: Q1 2026 financial results(一次情報) → ASML: Presentation Investor Relations Q1 2026(一次情報) 確認日:2026-04-17
  2. EUV・High-NA技術の概要 → ASML Technology(一次情報) 確認日:2026-04-17
  3. 2025年Q4・通期決算(売上・利益・受注・受注残) → ASML: Q4 2025 financial results(一次情報) → ASML Investors: Q4 2025 and full-year financial results(一次情報) 確認日:2026-04-17
  4. 2025年年次報告・財務セクション(R&D・営業CF・FCF・サービス売上・社債償還) → ASML 2025 Annual Report – Financial performance section(一次情報) → ASML Investors: Annual report(一次情報) 確認日:2026-04-17
  5. 2020〜2024年の年次サマリー(売上・配当・営業CF・FCF・BS) → ASML: Presentation Investor Relations Q4 FY2024(一次情報) → ASML Investors: Annual report archive(一次情報) 確認日:2026-04-17
  6. 2025年Q1〜Q3決算 → ASML Investors: Financial results(一次情報) → ASML: Q3 2025 financial results(一次情報) 確認日:2026-04-17
  7. 配当・自社株買い(2025年配当案、2025年還元総額、2026〜2028年買い戻し枠、2026年Q1買い戻し) → ASML: Capital return and financing(一次情報) → ASML: Share buyback(一次情報) 確認日:2026-04-17
  8. 会社が説明する資本の厚さ・財務健全性 → ASML 2025 Annual Report – Strategic report section(一次情報) → ASML Investors: Annual report(一次情報) 確認日:2026-04-17
  9. 2030年の長期見通し → ASML: Financial strategy(一次情報) 確認日:2026-04-17
  10. 中国売上比率と2026年の中国比率見通し → ASML 2025 Annual Report – Strategic report section(一次情報) → ASML: Transcript investor call Q4 2025(一次情報) 確認日:2026-04-17
  11. 組織再編・人員純減見通し → ASML: Strengthening focus on engineering and innovation(一次情報) 確認日:2026-04-17

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Posted by 南 一矢