BA:ボーイングの業績

業績,資本財,軍事株

【2026年8月版】ボーイング(BA)徹底分析:危機からの再生―FY2019~FY2025財務データと2026年上期の最新動向

【2026年8月更新】
FY2025通期実績に加え、2026年Q2および上期実績、737-7のFAA型式証明取得を反映しました。2026年Q2は売上高245.60億ドル、民間航空機納入171機となり、営業キャッシュフローは13.64億ドル、フリーキャッシュフローは6.31億ドルのプラスに転じました。2026年上期では314機を納入し、全社受注残は2026年6月末に過去最高の7,152.61億ドルへ増加しています。[1][2]

はじめに
ボーイング(The Boeing Company)は、米国を代表する航空宇宙・防衛企業です。2018年以降、737 MAX墜落事故と運航停止、新型コロナウイルス禍、航空機の品質管理問題、2024年のIAMストライキなどが重なり、長期にわたる経営危機に直面しました。

FY2025は、民間航空機の納入回復、受注残の拡大、Digital Aviation Solutionsの売却益などにより、連結最終損益が黒字化しました。ただし、この黒字化には一時的な売却益の影響が大きく、主力の民間航空機部門(BCA)は依然として赤字でした。[3]

2026年に入ると、生産と納入の改善が続き、Q2にはフリーキャッシュフローが四半期ベースでプラスに転じました。737の生産は月産47機への移行を開始し、2026年8月3日には737-7が米連邦航空局(FAA)の型式証明を取得しています。一方、2026年上期の連結最終損益は4.35億ドルの赤字であり、BCAの赤字、防衛部門の固定価格契約損失、巨額の債務は引き続き課題です。[1][4]

【免責事項および出典について】

  • 本記事の財務情報および主要KPIは、ボーイングのForm 10-K、四半期決算資料、納入実績、FAAおよびエアバスの公式資料を中心に整理しています。FY2025通期と2026年Q2・上期までを反映しています。[1][3]
  • 利益率、自己資本比率などの一部は、公式開示値をもとに筆者が計算した概算です。
  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。
  • スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご確認ください。

会計年度について:ボーイングの会計年度は暦年と一致します。本記事のFY2025は、2025年1月1日から2025年12月31日までを指します。2026年上期は、2026年1月1日から6月30日までです。

1. ボーイングの業績:2026年Q2はFCF黒字、上期売上高は11%増

737 MAX問題、パンデミック、品質問題、IAMストライキを経て、ボーイングの業績はFY2020とFY2024に大きく悪化しました。FY2025は、民間航空機の納入増とDigital Aviation Solutions売却益により売上高・利益が大きく改善しましたが、フリーキャッシュフローは通期でマイナスでした。[3]

2026年Q2は、納入増加と運転資本の改善により、売上高が前年同期比8%増の245.60億ドルとなりました。営業利益は1.56億ドルの黒字に転じ、営業キャッシュフローは13.64億ドル、フリーキャッシュフローは6.31億ドルとなりました。一方、支払利息などの影響から、純損益は4.28億ドルの赤字でした。[1]

1.1 連結業績の推移(FY2019~FY2025)

会計年度 売上高
百万ドル
営業利益・損失
百万ドル
純利益・損失
百万ドル
営業CF
百万ドル
フリーCF
百万ドル
FY2019 76,559 (1,975) (636) (2,448) (4,296)
FY2020 58,158 (12,773) (11,941) (18,401) (19,732)
FY2021 62,286 (2,864) (4,290) (3,405) (4,414)
FY2022 66,608 (3,524) (5,053) 3,117 2,286
FY2023 77,794 (773) (2,222) 5,960 4,432
FY2024 66,517 (10,707) (11,829) (12,080) (14,310)
FY2025 89,463 4,281 2,238 1,065 (1,877)

注)純利益はNet earnings/loss。フリーCFは営業CFから有形固定資産投資を差し引いたNon-GAAP指標です。[3][5]

  • FY2024:売上高665.17億ドル、純損失118.29億ドル、フリーCFはマイナス143.10億ドルでした。IAMストライキ、737-9ドアプラグ事故後の生産制約、防衛部門の固定価格契約損失が重なりました。[6]
  • FY2025:売上高894.63億ドル、純利益22.38億ドル、民間航空機納入600機となりました。ただし、利益にはDigital Aviation Solutions売却に伴う約95.66億ドルの利益が含まれています。[3]
  • キャッシュフロー:FY2025の営業CFは10.65億ドルまで回復しましたが、フリーCFはマイナス18.77億ドルであり、通期のキャッシュ創出力はまだ完全には正常化していません。[3]

1.2 2026年Q2および上期実績

2026年Q2は、民間航空機を171機納入し、売上高は245.60億ドルとなりました。営業利益は1.56億ドル、営業利益率は0.6%でした。純損益は4.28億ドルの赤字でしたが、前年同期の6.12億ドルの赤字から改善しています。[1]

項目 Q2 2026 Q2 2025 前年比
売上高 24,560百万ドル 22,749百万ドル +8%
営業利益・損失 156百万ドル (176百万ドル) 黒字転換
純損失 (428百万ドル) (612百万ドル) 赤字縮小
希薄化後EPS (0.67ドル) (0.92ドル) 改善
営業CF 1,364百万ドル 227百万ドル +501%
設備投資 733百万ドル 427百万ドル 増加
フリーCF 631百万ドル (200百万ドル) 黒字転換
民間航空機納入 171機 150機 +14%
総受注残高 7,152.61億ドル 過去最高

出典:Boeing Q2 2026 Results。[1]

2026年上期では、売上高が前年同期比11%増の467.77億ドル、営業利益が6.04億ドルとなりました。営業CFは11.85億ドルのプラスでしたが、設備投資が20.08億ドルに達したため、上期フリーCFはマイナス8.23億ドルです。Q2単独では黒字化したものの、上期全体ではまだマイナスである点に注意が必要です。[1]

項目 2026年上期 2025年上期 前年比
売上高 46,777百万ドル 42,245百万ドル +11%
営業利益 604百万ドル 285百万ドル +112%
純損失 (435百万ドル) (643百万ドル) 赤字縮小
営業CF 1,185百万ドル (1,389百万ドル) 黒字転換
設備投資 2,008百万ドル 1,101百万ドル +82%
フリーCF (823百万ドル) (2,490百万ドル) 赤字縮小
民間航空機納入 314機 280機 +12%

ミニ解説:Q2がFCF黒字でも「完全回復」とは言えない理由
航空機メーカーのキャッシュフローは、納入時の顧客からの入金、受注時の前受金、在庫の増減によって四半期ごとの振れが大きくなります。2026年Q2のFCF黒字は重要な改善ですが、2026年上期ではまだマイナスです。再建を判断するには、複数四半期にわたって納入増とプラスFCFを維持できるかを見る必要があります。

2. セグメント別業績:BCAの赤字縮小、BDSはQ2に再び赤字

ボーイングは、民間航空機部門(BCA)、防衛・宇宙・セキュリティ部門(BDS)、グローバル・サービス部門(BGS)を主要3部門としています。FY2025の連結黒字化にはDigital Aviation Solutions売却益の影響が大きく、通常の事業収益力を見る際には、この一時利益を分けて考える必要があります。[3]

2.1 セグメント別業績(FY2025)

セグメント FY2025売上高
百万ドル
FY2024売上高
百万ドル
FY2025営業利益・損失
百万ドル
営業利益率
民間航空機部門(BCA) 41,494 22,861 (7,079) -17.1%
防衛・宇宙・セキュリティ(BDS) 27,234 23,918 (128) -0.5%
グローバル・サービス(BGS) 20,923 19,954 13,474 64.4%

注)BGSのFY2025営業利益にはDigital Aviation Solutions売却益95.66億ドルが含まれています。[3]

  • BCA:FY2025は納入増により売上高が大きく回復しましたが、777Xや767プログラムなどに関連する損失が重く、大幅な営業赤字が続きました。
  • BDS:FY2025は赤字幅が縮小しましたが、VC-25B、KC-46A、T-7Aなどの固定価格開発契約には追加損失リスクが残っています。
  • BGS:サービス事業そのものは安定した収益源ですが、FY2025の利益率は売却益によって大きく押し上げられました。

2.2 セグメント別業績(2026年Q2)

セグメント Q2 2026売上高
百万ドル
営業利益・損失
百万ドル
営業利益率 主なポイント
民間航空機部門(BCA) 11,751 (322) -2.7% 171機納入、前年同期から赤字縮小
防衛・宇宙・セキュリティ(BDS) 7,483 (15) -0.2% VC-25Bで2.80億ドルの損失
グローバル・サービス(BGS) 5,344 968 18.1% 高収益を維持

出典:Boeing Q2 2026 Results。[1]

  • BCA:2026年Q2の営業損失は3.22億ドルとなり、前年同期の5.57億ドルから縮小しました。納入増、機種構成、運航・生産面の改善が寄与しています。[1]
  • BDS:2026年Q1は営業黒字でしたが、Q2は1,500万ドルの赤字に戻りました。VC-25Bプログラムで、生産・認証要員への追加投資を主因とする2.80億ドルの損失を計上しています。[1]
  • BGS:2026年Q2の営業利益率は18.1%でした。Digital Aviation Solutions売却後も高い利益率を維持していますが、前年同期の19.9%からは低下しました。[1]

2.3 セグメント別業績(2026年上期)

セグメント 2026年上期売上高
百万ドル
2026年上期営業利益・損失
百万ドル
営業利益率
民間航空機部門(BCA) 20,954 (885) -4.2%
防衛・宇宙・セキュリティ(BDS) 15,082 218 1.4%
グローバル・サービス(BGS) 10,714 1,939 18.1%

2026年上期では、BCAの営業赤字が8.85億ドルまで縮小し、BDSは2.18億ドルの営業黒字を確保しました。BGSは19.39億ドルの営業利益を生み出しており、売却益を除いた後もグループの安定収益源として機能しています。[1]

3. 主要運航KPI:上期314機納入、受注残は7,153億ドル

ボーイングの再建度合いを見るうえでは、損益計算書だけでなく、航空機の生産レート、納入機数、受注残が重要です。FY2025の民間航空機納入は600機で、FY2024の348機から大きく回復しました。2026年上期は314機を納入し、前年同期の280機を12%上回りました。[2][7]

期間末 民間航空機納入機数 総受注残高
十億ドル
BCA受注残高
FY2019 380機 463 5,406機
FY2020 157機 363 4,031機
FY2021 340機 377 4,188機
FY2022 480機 404 4,578機
FY2023 528機 520 5,595機
FY2024 348機 521 約5,500機
FY2025 600機 682.2 6,100機超
2026年上期 314機 715.3 6,200機超

注)2026年上期の納入機数は2026年1~6月の合計です。受注残は2026年6月30日時点です。[1][2]

3.1 2026年上期の機種別納入

機種 Q1 2026 Q2 2026 2026年上期 2025年上期
737 114機 129機 243機 209機
767 6機 10機 16機 14機
777 8機 7機 15機 20機
787 15機 25機 40機 37機
合計 143機 171機 314機 280機

出典:Boeing Q1・Q2 2026 Deliveries。[2][8]

  • 737:2026年上期は243機を納入し、前年同期の209機を上回りました。主力機種の納入回復がBCAの売上増を支えています。
  • 787:2026年Q2は25機、上期では40機を納入しました。長距離国際線需要の回復に加え、チャールストン工場の生産増強が今後の焦点です。
  • 受注残:2026年6月末の全社受注残は7,152.61億ドルで、FY2025末の6,822.07億ドルから増加しました。BCAの受注残は5,967.24億ドル、6,200機超です。[1]

4. ボーイングの再生戦略:737増産、認証進展、Spirit統合

ボーイングの再生戦略では、単に納入機数を増やすのではなく、安全性と品質を維持しながら生産を安定させることが重要です。2026年Q2までに、生産レート、認証、サプライチェーン統合で複数の進展が見られました。

  • 737生産レート:737プログラムは2026年Q2に月産47機への移行を開始しました。2026年7月には、追加生産能力となる「737 North Line」で低率初期生産を開始しています。[1]
  • 737-7認証:FAAは2026年8月3日、737-7に対する修正型式証明を発行しました。これにより米国で商用運航が可能になり、ボーイングは初回納入に向けた準備を進めています。[4]
  • 737-10認証:2026年7月までに認証飛行試験を完了しました。2026年8月6日時点では型式証明は未取得であり、ボーイングは認証を2026年、初回納入を2027年と見込んでいます。[1]
  • 787:2026年Q1時点で月産8機での安定化を進め、787-9と787-10について最大離陸重量引き上げのFAA認証を取得しました。[8]
  • 777X:2026年Q2に777-9のType Inspection Authorization 4B段階の認証飛行試験開始についてFAA承認を得ました。初回納入は2027年を見込んでいます。[1]
  • Spirit AeroSystems統合:ボーイングは2025年12月8日、Spirit AeroSystemsの買収を完了しました。737胴体などの主要構造部品を担うサプライヤーを再びグループ内に取り込み、生産・品質管理の統制を強める狙いがあります。[9]

737-7の認証は、ボーイングの開発・認証計画にとって重要な節目です。ただし、認証取得は再建の終点ではありません。量産移行、顧客への納入、運航開始後の信頼性、737-10の認証完了までを継続的に確認する必要があります。

5. 財務の健全性:債務削減が進む一方、手元資金も減少

ボーイングはFY2019以降の巨額赤字によって長く株主資本がマイナスでしたが、2024年の大型増資とFY2025の黒字化を経て、FY2025末に株主資本が54.54億ドルのプラスへ戻りました。2026年6月末には61.00億ドルまで増加しています。[1][3]

一方、2026年6月末の連結債務は459億ドル、現金・有価証券は200億ドルでした。債務はFY2025末から82億ドル減少しましたが、債務返済に伴って手元資金も減っています。自己資本比率は約3.7%にとどまり、資本の厚みは依然として限定的です。[1]

5.1 資産・負債・資本の推移

期間末 総資産
百万ドル
総負債
百万ドル
有利子負債
百万ドル
株主資本
百万ドル
自己資本比率
FY2019 133,625 135,767 27,094 (2,142) -1.6%
FY2020 152,136 170,891 63,554 (18,755) -12.3%
FY2021 138,552 142,757 57,998 (4,205) -3.0%
FY2022 137,078 148,817 56,804 (11,739) -8.6%
FY2023 137,012 149,037 52,277 (12,025) -8.8%
FY2024 156,363 160,277 53,864 (3,908) -2.5%
FY2025 168,235 162,778 54,098 5,454 3.2%
2026年6月末 165,870 159,755 45,900 6,100 約3.7%

注)2026年6月末の有利子負債は、短期債務45.65億ドルと長期債務413.35億ドルの合計です。自己資本比率は株主資本÷総資産で概算しています。[1][5]

  • 株主資本:2026年6月末は61.00億ドルとなり、FY2025末の54.54億ドルから増加しました。ただし、総資産に対する比率は約3.7%であり、依然として低水準です。
  • 有利子負債:FY2025末の540.98億ドルから、2026年6月末には459億ドルへ減少しました。2026年上期には83.76億ドルの債務返済を実施しています。[1]
  • 現金・有価証券:FY2025末の294億ドルから、2026年6月末は200億ドルへ減少しました。未使用の信用枠は100億ドルです。[1]
  • 在庫:2026年6月末の棚卸資産は883.88億ドルとなり、FY2025末の846.79億ドルから増加しました。納入前航空機や仕掛品に資金が滞留するため、在庫管理はFCFを左右します。[1]

5.2 キャッシュフローの推移(FY2019~FY2025)

会計年度 営業CF
百万ドル
設備投資
百万ドル
フリーCF
百万ドル
投資CF
百万ドル
財務CF
百万ドル
FY2019 (2,448) 1,848 (4,296) (1,545) 4,585
FY2020 (18,401) 1,331 (19,732) (18,366) 34,955
FY2021 (3,405) 1,009 (4,414) (5,632) (9,697)
FY2022 3,117 831 2,286 (6,174) (4,439)
FY2023 5,960 1,528 4,432 (2,437) (5,487)
FY2024 (12,080) 2,230 (14,310) (11,973) 25,209
FY2025 1,065 2,942 (1,877) 499 (3,763)

注)設備投資はAdditions to property, plant and equipment。フリーCFは営業CF-設備投資です。[3][5]

5.3 2026年上期の財務状況

項目 2026年6月末 FY2025末 変化
現金・有価証券 200億ドル 294億ドル -94億ドル
連結債務 459億ドル 541億ドル 約-82億ドル
株主資本 61.00億ドル 54.54億ドル +6.46億ドル
棚卸資産 883.88億ドル 846.79億ドル +37.09億ドル
未使用信用枠 100億ドル 100億ドル 維持

出典:Boeing Q2 2026 Results。[1]

6. 市場環境と競合:上期納入はエアバスが37機上回る

大型民間航空機市場は、ボーイングとエアバスの複占が続いています。2026年上期はボーイングが314機、エアバスが351機を納入し、エアバスが37機上回りました。ただし、前年同期比ではボーイングが12%増、エアバスが15%増となり、両社とも納入を拡大しています。[2][10]

項目 ボーイング エアバス
2025年通期納入 600機 793機
2026年上期納入 314機 351機
2026年上期ネット受注 公表資料上のBCA純受注を四半期ごとに開示 821機
2026年6月末の民間機受注残 6,200機超 9,222機
2026年会社計画 通期納入目標の明示なし 約870機

出典:Boeing FY2025・Q2 2026、Airbus FY2025・H1 2026公式発表。[1][7][10][11]

  • 納入機数:2026年上期はエアバス351機、ボーイング314機で、エアバスが引き続き優位です。
  • 受注残:2026年6月末時点で、エアバスの民間航空機受注残は9,222機、ボーイングは6,200機超でした。両社とも長期にわたる生産分を確保しています。
  • 受注:エアバスは2026年上期に821機のネット受注を獲得しました。ボーイングも2026年Q2に246機のネット受注を獲得し、受注残を拡大しています。[1][10]
  • 供給能力:市場需要よりも、エンジン、機体構造、熟練人材、品質管理などの供給制約が納入ペースを左右する状況が続いています。

7. 今後の見通しと投資家が注目すべきリスク

7.1 今後のポイント

  • 737月産47機の定着:月産47機への移行後も、品質不良や手直しを増やさず、完成機の納入まで安定してつなげられるかが重要です。[1]
  • 737-7の初回納入:FAA型式証明は取得しましたが、顧客仕様への対応、機体引き渡し、航空会社での運航準備が残っています。[4]
  • 737-10認証:737-10は認証飛行試験を完了しましたが、2026年8月6日時点で型式証明は未取得です。追加審査や設計対応で日程が動く可能性があります。
  • 777X:初回納入は2027年を見込んでいます。認証の追加遅延や、プログラム損失の拡大がないかを確認する必要があります。
  • 787増産:需要は強いものの、チャールストン工場への投資拡大が短期的には設備投資とFCFを圧迫します。
  • FCFの通期黒字化:2026年Q2は6.31億ドルのプラスでしたが、上期はマイナス8.23億ドルでした。下期に納入と前受金が積み上がり、通期でプラスに転換できるかが焦点です。[1]
  • BDSの固定価格契約:2026年Q2にはVC-25Bで2.80億ドルの損失を計上しました。防衛部門の黒字定着には、固定価格開発案件のコスト管理が欠かせません。
  • Spirit統合:統合による品質管理強化が期待される一方、工場・人員・システム統合の費用や、生産移管に伴う混乱もリスクです。

7.2 投資家が注目すべきリスク

  • 品質・安全リスク:新たな重大品質問題が発生すれば、生産停止、納入遅延、規制強化、顧客からの信頼低下につながります。
  • 規制リスク:FAAはボーイングの生産施設に検査官を配置し、安全管理システムや安全文化を継続的に監視しています。増産や新型機認証は規制当局の判断に左右されます。[4]
  • 財務リスク:債務は減少しましたが、2026年6月末時点で459億ドルと大きく、支払利息も2026年上期に12.16億ドル発生しています。[1]
  • 在庫リスク:棚卸資産は2026年6月末に883.88億ドルまで増加しました。認証前機体や納入待ち機体が滞留すると、資金回収が遅れます。
  • プログラム損失リスク:777X、767、VC-25B、KC-46A、T-7Aなどで追加費用が発生する可能性があります。
  • 競争リスク:納入数と受注残ではエアバスが優位です。供給安定性や機種構成の差が航空会社の発注意思決定に影響します。
  • サプライチェーンリスク:Spirit統合後も、エンジン、鋳鍛造品、電子部品、熟練人材などの制約は残ります。
  • 景気・航空需要リスク:受注残は厚いものの、景気後退、燃料価格、地政学、航空会社の財務悪化によって、納入延期やキャンセルが増える可能性があります。

8. まとめ:ボーイングは再生できるのか?

ボーイングは、FY2025の納入回復に続き、2026年上期も改善を進めました。2026年上期の売上高は467.77億ドル、民間航空機納入は314機、営業CFは11.85億ドルのプラスでした。2026年Q2単独ではFCFが6.31億ドルの黒字となり、全社受注残は2026年6月末に過去最高の7,152.61億ドルへ増加しました。[1][2]

生産・認証面でも、737の月産47機への移行、737 North Lineの稼働、777X認証試験の進展、737-7のFAA型式証明取得など、具体的な前進が見られます。特に737-7の認証取得は、長期化していた派生型開発にとって重要な節目です。[4]

一方で、2026年上期の純損益は4.35億ドルの赤字、上期FCFはマイナス8.23億ドル、BCAの営業損失は8.85億ドルでした。BDSでもVC-25Bなどの固定価格契約損失が続いています。FY2025の黒字には大型売却益が含まれていたため、本業による安定黒字化を確認するには、まだ時間が必要です。

今後の評価軸は、「受注が十分にあるか」ではなく、「安全と品質を維持しながら生産を増やし、在庫を納入へ変え、継続的なフリーキャッシュフローを生み出せるか」です。2026年下期から2027年にかけて、737月産47機の定着、737-10と777Xの認証、BCAの黒字化、BDSの損失抑制、債務削減が同時に進めば、再生の確度は高まります。

本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。正確性・完全性には注意していますが、内容を保証するものではありません。最新の公式情報を必ずご確認ください。

最終更新日:2026年8月6日(FY2025 Form 10-K、2026年Q2・上期決算、2026年上期納入実績、737-7 FAA型式証明を反映)

【注】(出典リンク)

  1. Boeing 2026年Q2・上期決算 → Boeing IR「Boeing Reports Second Quarter Results」(確認日:2026-08-06)
  2. Boeing 2026年Q2納入実績 → Boeing IR「Boeing Announces Second Quarter Deliveries」(確認日:2026-08-06)
  3. Boeing FY2025通期決算・年次報告 → Boeing IR「Boeing Reports Fourth Quarter Results」Boeing FY2025 Form 10-K(SEC)(確認日:2026-08-06)
  4. 737-7のFAA型式証明 → FAA「Statement on Certification of the Boeing 737 MAX-7」Boeing IR「U.S. FAA certifies new Boeing 737-7 airplane」(確認日:2026-08-06)
  5. Boeing過年度財務データ → Boeing Annual ReportsBoeing Quarterly Results(確認日:2026-08-06)
  6. Boeing FY2024決算 → Boeing IR「Boeing Reports Fourth Quarter Results」(FY2024)(確認日:2026-08-06)
  7. Boeing FY2025納入実績 → Boeing IR「Boeing Announces Fourth Quarter Deliveries」(確認日:2026-08-06)
  8. Boeing 2026年Q1決算・納入実績 → Boeing IR「Boeing Reports First Quarter Results」Boeing IR「Boeing Announces First Quarter Deliveries」(確認日:2026-08-06)
  9. Spirit AeroSystems買収完了 → Spirit AeroSystems「Boeing Completes Acquisition of Spirit AeroSystems」(確認日:2026-08-06)
  10. Airbus 2026年上期実績 → Airbus「Airbus reports Half-Year (H1) 2026 results」Airbus Orders & Deliveries(確認日:2026-08-06)
  11. Airbus 2025年通期実績 → Airbus「Airbus reports Full-Year (FY) 2025 results」Airbus「793 commercial aircraft deliveries in 2025」(確認日:2026-08-06)

変更箇所(今回)

  • 記事タイトル:「2026年5月版・2026年Q1まで」→「2026年8月版・2026年Q2および上期まで」に更新しました。
  • 最新決算:2026年Q1中心の記述→2026年Q2および上期の売上高、営業利益、純損失、EPS、営業CF、設備投資、FCFを追加しました。
  • キャッシュフロー:Q1のFCFマイナス14.54億ドル→Q2はプラス6.31億ドル、上期ではマイナス8.23億ドルという最新状況に更新しました。
  • 納入実績:Q1の143機→Q2の171機、2026年上期の314機へ更新し、737・767・777・787の機種別内訳を追加しました。
  • 受注残:2026年Q1末の6,950億ドル→2026年6月末の過去最高7,152.61億ドルへ更新しました。
  • BCA:Q1の営業損失5.63億ドル→Q2の営業損失3.22億ドル、上期の営業損失8.85億ドルへ更新しました。
  • BDS:Q1の営業黒字だけを強調する構成→Q2はVC-25Bの2.80億ドル損失により営業赤字へ戻った点を追記しました。
  • BGS:FY2025の売却益中心の説明に加え、2026年Q2・上期も営業利益率18.1%を維持している点を追加しました。
  • 737生産:月産42機→月産47機への移行開始、および2026年7月の737 North Line低率初期生産開始へ更新しました。
  • 737-7:「2026年中の認証見込み」→2026年8月3日にFAA型式証明を取得済みへ更新しました。
  • 737-10:Type Inspection Authorization 2段階→認証飛行試験完了、型式証明は2026年8月6日時点で未取得という状態へ更新しました。
  • 777X:Type Inspection Authorization 4a→4B段階の認証飛行試験開始承認へ更新しました。
  • Spirit AeroSystems:買収完了時期を「2025年12月」から「2025年12月8日」と具体化しました。
  • 財務状況:2026年Q1末の現金・有価証券209億ドル、債務472億ドル→2026年6月末の200億ドル、459億ドルへ更新しました。
  • 株主資本:FY2025末54.54億ドル→2026年6月末61.00億ドルへ更新し、自己資本比率を約3.7%と再計算しました。
  • 在庫:2026年6月末の棚卸資産883.88億ドルを追加し、FCFとの関係を説明しました。
  • 競合比較:2025年通期比較だけでなく、2026年上期のボーイング314機対エアバス351機、受注残6,200機超対9,222機を追加しました。
  • 出典:確認日を2026年8月6日に統一し、Boeing Q2 2026、FAA、Airbus H1 2026、Spirit AeroSystems公式資料を追加しました。
  • CSS:記事末尾に分離されていたCSSを記事本文の前へ移動し、ミニ解説ブロックと変更箇所用の表示設定を追加しました。

Posted by 南 一矢