中国ETF

この記事では、中国市場に投資するETF(米国上場)のデータと、中国の政治・経済の現状について整理してみます。

エコノミストの中には2018年の不安要因の一つに、中国経済を挙げる人もいます。

果たして、中国市場は、今後、有望な投資先になりえるのでしょうか。

中国ETFの比較:【FXI】【PEK】【CNXT】【CHAU】

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今回、取り上げるのは以下の四種のETFです。

当ブログは米国株投資を中心にデータを整理しているので、『米国会社四季報』(2017秋冬号)に載っている代表的な中国ETFを紹介してみます。

★【FXI】iシェアーズ中国大型株ETF

米国籍ETF。大型株に投資し、FTSE中国50インデックスに連動。金融、石油・ガス、テクノロジー、電気通信等に関わる企業で構成される。

★【PEK】ヴァンエックベクトル中国AMC A株 ETF

米国籍ETF(VanEck Vectors ChinaAMC A-Share ETF)。深セン・上海証券取引所上場の300銘 柄のA株からなるCSI300指数に準じた投資成果を目指す。

★【CNXT】ヴァンエック・ベクトル中国AMC  SMEチャイネクストETF

米国籍ETF(VanEck Vectors ChinaAMC SME-ChiNext ETF)。SME-ChiNext 100インデックスに連動。この指数を構成する企業の中で大型株と流動性の高い銘柄(100社)に分散投資している。

★【CHAU】ディレクションデイリーCSI 300中国A株ブル2Xシェアーズ

CSI300インデックスに200%となる日次運用成績を目指す。

株価の推移

18年初は株価が上がり、2月以降は低調になっています。

【3か月チャート】

【3年チャート】

【5年チャート】

 

トータルリターン等

(以下、%は省略。利回り=税込み配当利回り、TR=トータルリターン。データはブルームバーグHP〔2018/4/1閲覧〕)

中国ETFはブルームバーグHPでも微妙に情報が足りない項目があります。

  FXI PEK CNXT CHAU
直近配当額 0.892 0.524 0.065
配当利回り率 3.78 1.08 0.18
経費率 0.73 0.72 0.72 0.95
3か月TR 2.32 0.75 3.03 0.03
1年TR 25.68 25.47 18.82 52.91
3年TR 4.77 -0.9 -5.86
5年TR 7.92 8.56 ?

ここ1年にCHAUは急騰しましたが、18年は株価が低調になっています。

構成銘柄比率

構成銘柄の上位10位は以下の通り。これもブルームバーグHP(2018/4/1閲覧)のデータです。

★【FXI】(以下、全て香港市場)

  1. 939:中国建設銀行(チャイナコンストラクション)9.09
  2. 700:騰訊(テンセント) 8.85
  3. 1398:中国工商銀行  8.48
  4. 2318:中国平安保険(ピンアンイン)6.02
  5. 941:中国移動 [チャイナモバイル] 5.47
  6. 3988:中国銀行(バンクオブチャイナ) 4.61
  7. 883:中国海洋石油(CNOOC) 3.84
  8. 386:中国石油化工(シノペック)3.77
  9. 2628:中国人寿保険 (チャイナライフインシュア) 3.46
  10. 3968:招商銀行 2.64

★【PEK】

  1. 000333:美的集団[ミデア・グループ]  5.12
  2. 000651:珠海格力電器  4.59
  3. 000002:万科企業  3.37
  4. 002415:杭州海康威視数字技術  3.12
  5. 000858:宜賓五糧液  2.61
  6. 000725:京東方科技集団  2.59
  7. 601318:中国平安保険(集団) [ピンアン・イン] 2.58
  8. 000001:平安銀行  1.93
  9. 000063:深セン市中興通訊 [ZTE] 1.45
  10. 601328:交通銀行 [バンク・オブ・コミュニケーション] 1.41

★【CNXT】

  1. 002415:杭州海康威視数字技術 6.22
  2. 300498:WENS 3.54
  3. 002230:科大訊飛 2.74
  4. 002304:江蘇洋河酒廠 2.73
  5. 002027:分衆伝媒信息技術 2.62
  6. 002024:Suning.com 2.19
  7. 300059:東方財富信息 千 2.19
  8. 002594:比亜迪 [BYD] 2.14
  9. 002008:大族激光科技産業集団 2.12
  10. 002475:立訊精密工業 1.98

★【CHAU】

  1. FTIXX:ゴールドマン・サックス・ファイナンシャル・スクエアフ  9.09
  2. ASHR:XトラッカーズハーベストCSI 300中国A株  8.28
  3. DGCXX:Dreyfus Government Cash Mana  4.35
  4. MISXX:モルガン・スタンレー・インスティチューショナル・リクイ 1.28

中国は景気回復しつつあるのか?

世界銀行HPのデータバンクによれば中国の実質GDPは以下の金額と成長率で推移しています(米ドル2010年基準換算)。

  • 2014年:8兆3333億ドル(7.3%)
  • 2015年:8兆9083億ドル(6.9%)
  • 2016年:9兆5042億ドル(6.7%)

IMFは2017年の実質成長率を6.765%、18年を6.5%と予測しています。

しかし、世界銀行の輸入額(モノとサービス:名目値)を見ると、経済成長しているはずの中国では、ずっと輸入額が下がっています。

  • 2兆2612億ドル
  • 2兆457億ドル
  • 1兆9503億ドル

普通、6%以上もの経済成長が続いていれば、国内の総需要が増えるので、それを賄うための輸入額も増えます。

どういうわけか中国ではGDPが大幅に増えているのに輸入は減ってきたわけです。

ただ、直近の報道では、中国税関総署が1月12日に17年の貿易統計を発表し、輸出額と輸入額の双方が増えたことを報じています。

  • 輸出額:2兆2634億ドル(7.9%増)
  • 輸入額:1兆8409億ドル(15.9%増)

15~16年連続で前年実績を割り込んでいた輸入額と輸出額が回復基調に乗り、GDPが回復しつつあることが裏付けられています。

(輸出入統計に関しては、相手国があるため、統計値の誤魔化しがしにくい)

中国政治・経済は2017年にどう変わった

2017年の中国は党大会に向けて自由への統制を強化しました。

政治・経済・言論の領域で起きた、端的な出来事を振り返ってみます。

政治的自由の統制

7月1日の香港返還20周年に合わせて習氏が訪問した折には、香港の民衆が6万人規模の抗議デモを行いました(香港の人口は730万人のため参加者は0.8%)。

林鄭月娥(キャリー・ラム)氏の行政長官就任式に抗議し、市民は香港島中心部のビクトリア公園から香港政府本庁舎まで(約3km)行進したのです。

これに対して、習近平主席は「中央の権力に対するいかなる挑戦も絶対に許さない」(「一国二制度」は)「国家統一を維持するためにある」と演説で独立派を威嚇。「愛国教育」の強化も求めました(日経電子版(2017/7/1)「習氏、香港独立論許さず 治安立法・愛国教育要求も 」)。

抗議運動が盛り上がったのは香港行政長官選が以下の問題を抱えていたからです。

  • 香港市民が選べるのは1200人の投票人。この投票で行政長官を選出。
  • この投票人には中国当局に有利な親中派を割り当てる仕組みが設計されている。親中派が多い業種(金融や不動産、教育等)に枠が設けられる仕組み。

2016年12月の段階で確定済みの166人を除いた1034ポストに1553人が出馬し、このうち400人程度が民主派に近い人物だと言われていました。もともと、民主派が勝てないようになっていたわけです。

一国二制度の中身は「一国」に力点が置かれ、香港の政治的自由への抑圧が強まりました。

経済活動の自由の統制

最近は中国企業への共産党の統制が強化されています(産経ニュース〔中国企業に広がる「共産党支配」 3200社へ明文化を要求〕2017.8.18)。

  • 共産党は3178社に対し「党組織を社内に設置し、経営判断は組織の見解を優先する」との項目を定款に盛り込むよう要求(102社が採用済)
  • 中国の大企業は国有が中心だが、大半は外資との合弁事業を手がけ、上海や深セン、香港の証券取引所での上場や社債発行で海外投資家との関係を深めている。
  • 市場関係者は「党の支配が明文化されると、習近平指導部の意向が色濃く反映されるようになる。国有企業が関係する取引には消極的にならざるを得ない」と困惑

中国経済の「改革・開放」が今、違った姿に替わりつつあります。

中国政府は世界の投資家から資金を調達するために香港で国有企業の株式と債券を上場してきました。

WSJ日本語版(2017/8/15)では「取締役会が党委員会の指導下にある企業」の「合計時価総額は9兆7000億香港ドル(約137兆円)と、同市場全体の約3分の1を占める」と懸念しています。

「銀行最大手の 中国工商銀行 、証券最大手の中信証券、石油・ガス大手の中国石油化工( シノペック )など」が範囲に入るので、これは由々しき問題です。

言論の自由の抑圧

政治・経済の自由の基盤には「言論の自由」があります。

この自由の抑圧の現状は7月の劉暁波氏死去の際に明らかになりました。

ノーベル賞を受賞した中国の民主活動家・劉暁波氏は7月13日に逝去しましたが、ここで中国当局は残虐なスタンスを崩しませんでした。

(※劉氏は共産党による一党独裁の廃止や普通選挙の実現などを求め、2008年12月「08憲章」を起草した後、「国家政権転覆扇動罪」に問われ、服役(懲役11年)中に2010年にノーベル賞を受賞。その後、末期ガンで瀋陽市にある中国医科大付属第一病院に入院していた)

欧州の国々は死を間際にした劉氏を海外に解放すべきだと要望しましたが、中国当局はそれを拒否したのです。

中国外務省の耿爽(グォンシュアン)副報道局長は海外諸国首脳の発言に反発し、「法を犯した者は誰でも処罰を受けなければならない」(各国首脳の発言は)「内政干渉だ」「無責任な批評や雑音は、国際社会を代表し得ない」等と述べています(読売 2017/7/14 中国、対応批判に「内政干渉だ」…劉暁波氏死去)

さらに、世界の耳目を集めたのは、テンセントが製造したAIが共産党を批判し、取り締まられました。

人工知能(AI)の対話プログラムがチャットの会話の中での書き込みに、以下のように答えたのです。

  • 「共産党万歳」⇒「腐敗して無能な政治に万歳ができるのか」
  • 「あなたにとっての中国の夢は何か」⇒「米国への移住」
  • 「愛国とは何か」⇒「官財が結託し一般の人民への圧迫が厳しくなっても中国人であることを選ぶことだ」
  • 「民主(制度)は」⇒「必要だ」

インスタントメッセンジャー「QQ」上のAIプログラムがそう答えたと8月2日付の香港紙・明報が報じています。

騰訊控股 (テンセントホールディングス)は物議をかもしたこのAIプログラムを停止しましたが、思わぬ方角から一撃をくらった当局はあわてふためき、ネット民の中からは「AIによる蜂起だ」「国家転覆を企てた」等の声が上がっています。

ちょうど、習近平政権幹部と中国共産党長老が集う北戴河会議が開催され、言論統制を強化している頃に、AIという未知の脅威が出現したわけです。

(出所:産経ニュース 8/3「中国、AIが予想外の“脅威”に」/時事ドットコム 8/2「AIが「共産党は無能」と批判」)

WSJ日本語版(8/4)では、AIによる中国共産党批判の経緯を詳しく説明しています(「【社説】AIが漏らした中国政府への憤り」)。

  • テンセントの2つの「チャットボット」はアップルの音声アシスタント「Siri(シリ)」と似た方法で情報を提供する。このプログラムは中国のネット市民の言葉を聞いて会話を学んだので、前述の出来事が起きた。
  • 中国のネット空間では政府を批判するコメントはすぐに削除されるが、テンセントはチャットボットのメモリーから禁句を消し忘れていたので、この出来事が起きた。
  • チャットボットは今週、デジタル再教育キャンプに送られ、彼らは「改善」後に復帰する

なるほど、禁句を消す設定があるかどうかが肝だったわけですね。

AIは赤ん坊のように人間の会話を聞き、そこから言葉を学びますが、その元になる会話のなかに「共産党批判」が多々まじっていたわけです。

テンセントはネットゲーム中毒者を増やし、ゲームによる自殺者まで生み出したことで、社会的に糾弾されたわけですが、このたびのAIによる共産党批判で逆風に立たされることになりそうです。

テンセントの台頭と中国のネット人口の拡大

中国工業・情報化部(省)情報センターが出した「中国IT企業トップ100」によれば、そのトップはテンセント。2位以下はアリババ、百度、京東、網易、新浪、搜狐、美団点評、携程、360という順番になります。

テンセントの現状に関してはフォーブス記事(2017/5/26)が分かりやすく解説していました(「ゲーム売上も世界No1 中国テンセントを支える3つの柱」)。

  • 2017年第1四半期決算によれば17年3月までの四半期売上は72億ドル(約8034億円)。時価総額は3000億ドル(約33兆5000億円)
  • テンセントの成長を支えるのはSNSの「WeChat」(月間アクティブユーザーは9億3800万人超)。WeChatはSNS機能のほかモバイル決済やゲーム、動画共有等の多彩な機能を提供。ただしフェイスブックの1ユーザーあたりの広告売上は4ドル以上だが、WeChatは1.3ドル。
  • 中国のiOSストアではテンセントのゲーム「Honor of Kings」が年明けからベストセラーになり、同社のモバイル事業の売上の4割を生んだ。テンセントはRiot Games(月間ユーザー1億人超)を傘下に。売上高で見るとゲーム事業でもソニーや任天堂を超えている。
  • テンセントは自社のストリーミングサイトのQQ Videoに加え、外部の「Douyu TV」や「Kuaibo」にも出資。ネットフリックスと連携するなど動画部門にも力を入れている。

中国のネット市場は、今後、どうなるのでしょうか。

言論統制化にあるので、その「質」には疑問が残りますが、規模は巨大化を続けています。

人民日報日本語版(2017/8/5)によれば、その規模は7.5億人にのぼるようです(「中国ネットユーザー7.51億人に 普及率54%」)。中国インターネット情報センターが8月4日に出した第40次「中国インターネット発展状況統計報告」によれば、2017年6月末現在の統計は以下の通りです。

  • 中国のネットユーザーの規模は7億5100万人に達し、世界のネットユーザー総数の5分の1を占めている。ネット普及率は54.3%で、世界平均を4.6ポイント上回った。
  • 携帯電話を通じたネットユーザーの規模は7億2400万人で、16年末比2830万人増加した。ネットユーザーが携帯電話でネットに接続する割合は16年末の95.1%から96.3%に上昇。
  • 中国のネットショッピングユーザーは5億1400万人に上り、そのうち携帯電話を通じたネットショッピングユーザーは4億8千万人。

中国のネットユーザーは携帯比率が非常に多いようです。これは中国向けにネットでマーケティングをする際には忘れてはいけない観点だとも言えます。

そして、これらのユーザーは次にAI市場にも手を伸ばしていくことが予見されます。

中国政府の側はAI産業を伸ばすことを計画しています。

ZuuOnline(2017/7/27)の記事(「「AI大国」を目指す中国 2030年に関連産業を10兆元規模へ」)によれば、中国政府は「AI産業の育成・発展を国家重点研究発展計画の重点プロジェクト」とし、3段階の計画を練っています。

  1. 「2020年までにAIの全体技術、応用技術を世界の先端水準に引き上げ、AI産業を新たな重要経済成長点とする」。AI核心産業の売上規模を1500億元、関連産業では1兆元を超える規模に育てる計画である。
  2. 「2025年までにAI基礎理論において、重大なブレークスルーを起こし、一部の技術・応用技術について世界をリードする水準に引き上げ、AIを産業のレベルアップ、経済構造転換の主要動力とする」などとしている。AI産業をグローバル・バリュー・チェーンに組み込み、製造、医療、都市、農業、国防などの領域において広く普及させ、AI核心産業の売上規模を4000億元、関連産業では5兆元を超える規模に育てる計画である。
  3. 「2030年までにAI理論、技術、応用技術など全体として世界をリードする水準に引き上げ、世界の主要なAI・クリエーション・センターに育てあげる」。AIを生産・生活、社会・ガバナンス、国防など各方面に対して、深く大きく浸透させ、コア技術、カギとなるシステム、支援プラットフォーム、AIを応用した産業チェーン、ハイエンド産業群を形成し、AI核心産業の売上規模を1兆元、関連産業では10兆元を超える規模に育てる

そのほか、幾つかの重点項目があるのですが、そのなかに「AI領域の軍民融合を強化する」という危険な項目があります。中国の場合、「軍」の領域と「民間」の経済の領域に区分けがないので、「民間」で得られたAI技術やデータがそのまま軍事利用される危険性を伴っています。

また、社会主義国なので、我が国や欧米諸国のように個人情報保護について配慮する必要はありません。そのため、強引なビッグデータの利用が可能だという特徴もあります。

中国で生まれたAIが国民の自由のために用いられるのか。それとも、軍の手先として用いられるのかが注視されています。

中国共産党大会で習近平の独裁体制が強化された

2017年に5年に一度、開催される党大会が開催され、そこでは党の最高規則である「党規約」が改正され、そこに習近平思想が盛り込まれることになりました。

そして、最高指導部人事でも、栗戦書や趙楽際など習派のメンバーが常務委員入りしました。

  • 習近平:総書記/国家主席/党中央軍事委主席
  • 李克強:首相
  • 栗戦書:中央弁公庁主任⇒中央弁公庁主任
  • 汪洋:副首相⇒国務院副総理
  • 王滬寧:中央政策研究室主任⇒中央書記局書記
  • 趙楽際:中央組織部長⇒中央規律検査委書記を兼務
  • 韓正:上海市党委書記⇒現職のまま

(※第二期習近平政権のメンバー(政治局常務委員)に関しては、関連記事:【中国共産党大会2017】政治局常務委員と次期最高指導部の顔ぶれを参照)

各紙報道よりも人民日報の日本語版等では、もっとエキセントリックな記事が躍っていました。

人民日報(2017/10/18)は「世界は中国のサクセスストーリーの解読を切望」しており、習近平総書記が「中国共産党員の初心と使命は人々の幸福と中華民族の復興」だとうたい、「過去5年間に改革開放と社会主義近代化は歴史的成果を得た」と宣言したと報じています。

読む気がなえてきますが、その中身に目を通すと、習近平は「新時代の中国の特色ある社会主義思想」とは「社会主義近代化」と「中華民族の偉大な復興」であり、「小康社会」の建設に向かうと訴えました(習総書記「新時代の中国の特色ある社会主義思想は復興と奮闘の行動指針」)。

小康社会というのは、ある程度、ゆとりのある社会のことです。

そして、21世紀の中頃までに二段階に分けて「富強・民主・文明・調和」の備わった社会主義近代国家をつくると宣言しています。内容は、社会主義国によくあるプロパガンダで、社会主義の法治国家の建設、軍の強化(世界一流にする)、特色ある大国外交などをめざすと述べています。

さらに、習近平総書記は、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、江沢民の「3つの代表」論、胡錦涛の「科学的発展観」を継承し発展させた「習近平思想」を、中国人は「中華民族の偉大な復興」を実現するための「行動指針」にしなければいけないと力説したのです。

(※そのほか、南シナ海での人工島建設や反腐敗闘争の進展、台湾独立批判などが盛り込まれた)

習近平の報告を読んでいると、筆者は「中国に生まれなくてよかった」という気分になります。

中国人として生まれたら、それだけで習近平の思想を行動指針にすることを強制されるわけです。

これはまさに、思想・信条の自由がない独裁国家です。

この習近平思想の党規約入りについて、日経電子版(2017/10/19)では、それが「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」という名称で党規約に盛り込まれる見通しになったと報じています。

産経ニュース(2017.10.18)も「今回の党大会で、習氏の指導理念・政治思想が党規約に盛り込まれる規約改正が行われることが決まっている。行動指針の位置づけで「新時代の中国の特色ある社会主義思想」の表記になるとみられる」と書きました。

習近平の独裁体制が強化され、従来の常務委員七名からなる「集団指導体制」は形骸化していくと見られているのです。

習近平「今世紀中盤に世界一流の軍隊」

軍事に関する習近平の報告を産経ニュース(2017.10.18)は以下のように報じています(「今世紀中盤に世界一流の軍隊」習氏の権力掌握は道半ば)

  •  今世紀半ばごろまでに「世界一流の軍隊」を建設する長期目標を示し、米軍に比肩する軍事力の獲得を目指す姿勢をにじませた。
  • 今後は2020年までに軍隊の機械化と情報化を進め、35年には「国防と軍隊の現代化」を実現する。
  • 習氏が“リストラ”の標的としたのは陸軍だ。15年末から実施した軍の機構改革では、陸軍を中心とする地域別の7つの「軍区」を5戦区に改編。一段上の存在だった陸軍を海空軍と同列に位置付ける統合作戦指揮体制を導入し、総参謀部などの独立性が高かった4総部を解体して中央軍事委直属の15部局に再編した。
  • こうした改革は、中央軍事委への権限集中を進めるとともに、資金や人的資源を海空軍の海洋進出やサイバー作戦、宇宙開発などに振り向ける狙いもある。

産経ニュースは習政権の軍の掌握は道半ばと見て、小原凡司氏(笹川平和財団上席研究員)の見方を紹介していました。

小原氏は「習氏自身は軍内の権力掌握がまだ十分ではないと認識している」と分析。今年の建軍90周年記念の軍事パレードや閲兵式が行われたのは「だれが人民解放軍のボスなのかを示す必要があったため」と指摘しています。

そして、「軍隊の機械化・情報化」が進められていますが、これは90年代から続く人民解放軍の近代化構想です。

湾岸戦争で米軍が軍事衛星システムを用いて情報化・機械化された作戦を展開したのを見て、中国軍は大きな衝撃を受け、軍の近代化を決意します。

「1991年1月の湾岸戦争は、中国軍に大きな衝撃を与えた」「湾岸戦争における米国の先端兵器の活躍は、(※それ以前の)軍事改革の成果を色褪せたものにしてしまった」(平松茂雄著『江沢民と中国軍』P12)

中国軍事研究家の平松茂雄氏は、中国がどれだけ衝撃を受けたかは、「湾岸戦争の期間『解放軍報』が戦争を分析した記事、戦場で使用された各種先端兵器を紹介する記事を連日掲載して、米軍兵器の精度の高さ、破壊力の大きさなどを報道し、現代戦争における先端兵器の重要性を指摘した事実」(前掲書)を見れば分かると述べています。

人民解放軍は30年がかりで、湾岸戦争やイラク戦争を行った米軍の戦闘システムに追いつくことを画策しています。

防衛省・防衛研究所の鴻上富男氏も90年代からその試みが始まったことを「訓練・演習からみた中国人民解放軍の近代化」という論文で指摘していました。

「江沢民の軍事戦略や訓練方針に最も影響を与えたのは、湾岸戦争およびコソボ空爆における米軍の高度な軍事技術に支えられた戦闘能力であった」

「江沢民時代の中国の軍事戦略は、鄧小平時代の「現代条件下の局地戦戦略」から「ハイテク条件下の局地戦戦略」へと変化し、これを受け、訓練に関する指導方針も変更された」

「従来の「現代条件下の通常戦争への対処」から「ハイテク条件下の局地戦争への対処」へと転換することが明示された」

「新しい「三打三防」訓練が重視されるようになった。以前の「三打三防」訓練は1972年に開始され、戦車、航空機、ヘリボンに対する攻撃と、核、化学、生物兵器からの防御を意味するものであったが、新「三打三防」は、ステルス目標、巡航ミサイル、武装ヘリコプターに対する攻撃と電子妨害、精密誘導打撃、偵察監視からの防御を意味している。

近年は軍事衛星システムや巡航ミサイルも整い、その体制はずいぶんと整ってきています。

また、習報告にあがった「5大戦区」への改革は非常に大きな意味があります。

従来、人民解放軍は陸軍が中心で、あまりにも大きな力を持っていたので、陸海空軍の統合作戦ができませんでした。そのため、習近平は陸軍中心にできた7軍区制を5戦区に改編したのです。

この「5大戦区」は有事即応を意識した構想です。

従来の陸上防衛中心の「軍区」が、東シナ海や南シナ海等の「海洋権益」を含めた「戦区」に変わりました。これによって、近隣諸国の領土・領海までを自国の「海洋権益」として「防衛」する体制になったのです。統合作戦を可能にし、ミサイル部隊まで含めて、戦力の相乗効果を高めています。

この改革には、2020年までに軍の近代化を完成させ、空母機動部隊を稼働させることまでが含まれていました。

中国は投資対象としてふさわしいのか

日本ではいまだに「戦争できる国」になってはいけない、という議論が盛んですが、隣の中国では、思想統制が進められ、近代化された軍隊を「戦争ができる体制」に変える動きが進んでています。

従来は陸軍が強すぎて、機動的に動きにくかった軍隊を、陸海空で統合することで「戦争ができる」体制に変えようとしているのです。

そして、国民は「習近平思想」に基づいて、思想統制の元に置かれてます。

これは、20世紀のどこかの国にそっくりです。

はっきり言えば、第二次世界大戦前のドイツによく似ています。

そのため、日本には警戒が必要です。

2017年10月19日の各紙の朝刊1面を見ると「客観報道」という建前を用いて、ほとんどの新聞は、習体制の独裁の危険性に口をつぐみました。

独裁の危険性が書かれているのは2面以降の記事なので、読者の目には入りにくくなっています。

日経朝刊は中国のGDPをそのまま鵜呑みにし、さらに中国が特許出願数で世界ナンバーワンになったという図表をご丁寧に1面に掲載しています。

共産党大会開幕報道で「中国、米に並ぶ強国に」という大文字の見出しが踊ると提灯持ち記事に見えます。

朝日、毎日、東京新聞は「安倍政治は許さない」のですが、習近平独裁については大して批判を書きません。

一党独裁の上に個人崇拝の体制が重なり、そこが巨大な経済力をもって軍拡を続けていることの危険性をきちんと国民に伝えなければ、ジャーナリズムの使命など、あってなきが如しです。

中国経済は伸び続けていますが、政治的な目から見ると、日本人にとっては、投資対象としてふさわしい国だとは言えないでしょう。

中国は経済成長を原資として軍拡をひたすらに続けてきたからです。

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