HPQとHPEを比較:分社後のヒューレットパッカード(事業の違いを解説)

銘柄比較

HPQとHPEを違いを踏まえて比較します。(2025年6月更新)

ヒューレットパッカード(Hewlett Packard/HP Inc.)とヒューレット・パッカード・エンタープライズ(Hewlett Packard Enterprise Company)は2015年にHPが分社したことで成立しました。
その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。
これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(IYW:iShares US Technology ETFを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。

決算(予想:結果)

【HP分割対決】HP Inc(HPQ) vs HPE!PCとプリンターか、サーバーとAIか?

シリコンバレーの源流とも言える伝説の企業、ヒューレット・パッカード。その遺伝子を受け継ぐ2つの会社が、HP Inc.(HPQ)ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)です。両社はともに「HP」の名を冠しますが、事業内容は全く異なり、高配当な「バリュー株」として投資家から注目されています。

本記事では、2015年の歴史的な会社分割によって生まれたこの2社の、ビジネスモデル、業績、そして株主還元を徹底的に比較・分析します。

最重要ポイント:2015年の会社分割

両社を理解する上で、旧ヒューレット・パッカードが2社に分割された経緯を知ることが不可欠です。

  • HP Inc. (HPQ) → PC・プリンター事業
    パソコンやプリンターといった、主に個人(コンシューマー)向けのハードウェア事業を継承しました。プリンターのインクやトナーで稼ぐ、安定したビジネスモデルが特徴です。
  • ヒューレット・パッカード・エンタープライズ (HPE) → 法人向け事業
    サーバー、ストレージ、ネットワーク機器といった、法人(エンタープライズ)向けのITインフラ事業を継承しました。企業のデータセンターやクラウド環境の構築を支援します。近年はAI向けの高性能サーバーにも注力しています。

比較サマリー:個人のHPQ、法人のHPE

項目 HP Inc. (HPQ) ヒューレット・パッカード・エンタープライズ (HPE)
主力事業 PC、プリンター、消耗品(インク等) サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、AIインフラ
主要顧客 個人消費者、一般企業 大企業、データセンター、政府機関
業績の特性 PCの販売サイクルに連動(景気敏感) 企業のIT投資動向に連動(景気敏感)
配当利回り(直近) 約3.0% 約2.6%
PER (株価収益率) 約9倍 約11倍

業績と成長性の詳細分析

両社とも成熟した市場で事業を展開しており、業績は景気サイクルに影響されます。HPQはコロナ禍のリモートワーク特需でPC販売が好調でしたが、その後反動で減少。一方、HPEは企業のIT投資やAIへの関心の高まりを受け、比較的安定しています。

HPQ 売上高 (前年比) HPE 売上高 (前年比)
2024 $53.72 B (-9.9%) $29.14 B (+1.9%)
2023 $59.60 B (-9.7%) $28.59 B (-8.6%)
2022 $66.01 B (+0.8%) $31.29 B (+3.2%)
2021 $65.48 B (+12.1%) $30.32 B (+3.1%)
2020 $58.42 B $29.40 B

※B=10億ドル。両社は決算月が異なるため、各社会計年度に基づき比較しています。

配当の詳細比較

両社とも株価が割安な水準にあるため、高い配当利回りを提供しています。また、利益の多くを配当と自社株買いで株主に還元する方針を明確にしています。

HPQ 年間配当 (増配率) HPE 年間配当 (増配率)
2024 $1.10 (+5.3%) $0.50 (+4.2%)
2023 $1.05 (+5.0%) $0.48 (+0.0%)
2022 $1.00 (+29.0%) $0.48 (+0.0%)
2021 $0.78 (+10.0%) $0.48 (+0.0%)
2020 $0.71 (+10.2%) $0.48

結論:あなたに合うのはどちら?

両社への投資は、どちらの市場の将来性を信じ、どのようなリターンを求めるかによって判断が分かれます。

「高い配当利回り」と「安定した消耗品ビジネス」を重視するなら → HP Inc. (HPQ)

PC市場は成熟していますが、世界で数億台のPCとプリンターが稼働しており、そこから生まれるインクやトナーといった消耗品ビジネスは、安定したキャッシュフローを生み出します。PERが10倍以下と極めて割安で、3%前後の高い配当利回りを狙うバリュー投資家・インカム投資家にとって魅力的な選択肢です。

「企業のAI投資」という大きなテーマに乗るなら → ヒューレット・パッカード・エンタープライズ (HPE)

すべての企業がAI活用を迫られる中で、その基盤となる高性能サーバーやストレージへの需要は今後も続くと考えられます。HPEは、特に企業の自社データセンターで使われるAIインフラの分野で強みを持ちます。クラウド一辺倒ではない、ハイブリッドなITインフラの将来性に賭けたい投資家向けの銘柄です。


※本ページの分析は2025年6月9日時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

Posted by 南 一矢