DGRS・DON・DLN・PFF(毎月配当の米株ETF)を比較する

高配当ETF

米国の毎月配当ETFのデータを比較し、情報を整理します。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を紹介してみましょう

【毎月配当ETF】DLN, PFF等の仕組みと注意点!本当におすすめか徹底解説

毎月、銀行口座に配当金が振り込まれる「毎月配当ETF」。まるで給料のように定額のキャッシュフローが得られるため、特にリタイア後の生活を考える方などから人気を集めています。

しかし、その魅力的な響きの裏には、長期的な資産形成の足かせになりかねない「税金面の非効率性」や「タコ足配当」といった重要な注意点も存在します。「毎月配当=優れたETF」とは言えません。

この記事では、まず「毎月配当」という戦略のメリットとデメリットを正しく理解した上で、代表的な毎月配当ETFの仕組みと特徴を解説します。

【重要】「毎月配当」のメリットとデメリット

投資を始める前に、この戦略の長所と短所を把握しておきましょう。

メリット

  • 定期的なキャッシュフロー: 毎月分配金が受け取れるため、生活費や趣味に充てるなど、計画的な資金繰りがしやすくなります。
  • 心理的な安心感: 定期的に収入があることで、精神的な安定につながる面があります。

デメリット(特に注意すべき点)

  1. 税金の非効率性と複利効果の減衰
    NISA口座以外では、分配金を受け取るたびに税金(米国と日本で二重課税)が源泉徴収されます。その税引き後の金額で再投資することになるため、分配頻度が少ないETFに比べて複利で資産が増えるスピードが鈍化する可能性があります。長期的な資産拡大を目指す上では、大きなデメリットになり得ます。
  2. 「タコ足配当」のリスク
    ETFが生み出した利益以上に分配金を支払っている場合、元本(投資家から集めたお金)を切り崩して配当を出している、いわゆる「タコ足配当」の可能性があります。これでは資産を増やしていることになりません。
  3. 分配金は約束されていない
    企業の業績が悪化すれば、ETF全体の分配金も減額される「減配」のリスクは常にあります。

これらの点を踏まえ、毎月配当ETFが自分の投資目的に合っているかを考える必要があります。


毎月配当ETF 比較一覧表

それでは、具体的なETFを見ていきましょう。投資対象や戦略が全く異なる点に注目です。

ティッカー 投資対象/戦略 配当利回り(目安) 経費率(年率)
DLN 米国大型株(配当加重) 約3.0% 0.28%
DON 米国中型株(配当加重) 約2.8% 0.38%
DGRS 米国小型株(配当加重) 約2.9% 0.38%
PFF 米国優先株式 約5.9% 0.45%

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。


各ETFの戦略と特徴

ウィズダムツリー社の「配当加重」ETF 3兄弟

DLN, DON, DGRSは、いずれもウィズダムツリー社が運用するETFで、独自の「配当加重」という仕組みを採用しています。これは、一般的な時価総額加重(会社の規模が大きいほど比率が高い)とは異なり、配当金の支払総額が大きい企業の構成比率が高くなるというユニークな戦略です。そのため、安定してキャッシュを生み出す成熟企業が多く含まれる傾向にあります。

  • 【DLN】米国大型株配当ファンド: 米国を代表する大型・成熟企業が中心。ポートフォリオの安定感を重視する場合の選択肢です。
    出典: WisdomTree
  • 【DON】米国中型株配当ファンド: 安定性と成長性のバランスが取れた中型株が中心です。
    出典: WisdomTree
  • 【DGRS】米国小型株配当ファンド: 将来の成長が期待される小型株が中心。3つの中では最もハイリスク・ハイリターンな選択肢です。
    出典: WisdomTree

【番外編】PFF – 債券に近い性質を持つ優先株式ETF

PFF (iシェアーズ 米国優先株式ETF) も毎月分配ですが、投資対象が「優先株式」であり、他の3つとは全く性質が異なるため注意が必要です。

  • 優先株式とは?: 議決権がない代わりに、普通株よりも配当を優先的にもらえる「株式と債券の中間」のような証券です。
  • 値動きの特徴: 企業の業績よりも、世の中の金利の動向に強く影響を受けます。一般的に、金利が上昇すると、より安全な債券の魅力が増すため、優先株式の価格は下落しやすくなります(債券のような値動き)。
  • 結論: 株価の値上がり益はほとんど期待できず、あくまで安定的なインカム収入を得ることを目的とした商品です。
  • 出典: BlackRock

結論:どのような人が検討すべきか?

「毎月配当」という言葉の魅力に惑わされず、投資目的に合っているかを冷静に判断する必要があります。

  • ウィズダムツリー3兄弟 (DLN, DON, DGRS): 独自の「配当加重」戦略に魅力を感じ、かつリタイア後などで定期的なキャッシュフローそのものを重視する投資家向けの選択肢です。
  • PFF (優先株式ETF): ポートフォリオの中で債券のような役割を担わせつつ、債券よりは高いインカムを狙いたい、金利動向も注視できる上級者向けの選択肢です。

一方で、資産をこれから増やしていく段階の若い投資家の方は、税金面での非効率性を考慮すると、必ずしも「毎月配当」にこだわる必要はありません。VYMやVTIといった、分配頻度が少なくても低コストでトータルリターンを追求できるETFの方が、長期的な資産形成には有利に働く可能性が高いでしょう。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算しているので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高く計上されています)

DGRSの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.23% 1.1 -5.2% 49.4 16.8%
2023 2.74% 1.16 3.6% 42.3 0.2%
2022 2.65% 1.12 -0.9% 42.2 -7.7%
2021 2.47% 1.13 28.4% 45.7 42.4%
2020 2.74% 0.88 1.1% 32.1 -9.1%
2019 2.46% 0.87 8.8% 35.3 -1.4%
2018 2.23% 0.8 23.1% 35.8 6.5%
2017 1.93% 0.65 10.2% 33.6 15.5%
2016 2.03% 0.59 -10.6% 29.1 2.1%
2015 2.32% 0.66 15.8% 28.5 1.8%
2014 2.04% 0.57 90% 28 5.7%
2013 1.13% 0.3 26.5

DONの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.39% 1.16 5.5% 48.6 16%
2023 2.63% 1.1 0.9% 41.9 -0.5%
2022 2.59% 1.09 -2.7% 42.1 1.4%
2021 2.7% 1.12 27.3% 41.5 35.2%
2020 2.87% 0.88 1.1% 30.7 -14.5%
2019 2.42% 0.87 16% 35.9 1.7%
2018 2.12% 0.75 0% 35.3 7.3%
2017 2.28% 0.75 2.7% 32.9 13.1%
2016 2.51% 0.73 4.3% 29.1 5.1%
2015 2.53% 0.7 6.1% 27.7 5.3%
2014 2.51% 0.66 -12% 26.3 16.9%
2013 3.33% 0.75 11.9% 22.5 21.6%
2012 3.62% 0.67 67.5% 18.5 6.9%
2011 2.31% 0.4 -13% 17.3 13.1%
2010 3.01% 0.46 24.3% 15.3 33%
2009 3.22% 0.37 -40.3% 11.5 -22.8%
2008 4.16% 0.62 14.9

DLNの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.11% 1.56 -3.7% 73.8 17.7%
2023 2.58% 1.62 5.9% 62.7 0.6%
2022 2.46% 1.53 -37.8% 62.3 4%
2021 4.11% 2.46 -13.1% 59.9 23.8%
2020 5.85% 2.83 8% 48.4 0.2%
2019 5.42% 2.62 8.7% 48.3 5.5%
2018 5.26% 2.41 13.7% 45.8 7.5%
2017 4.98% 2.12 2.9% 42.6 14.2%
2016 5.52% 2.06 5.1% 37.3 2.8%
2015 5.4% 1.96 14.6% 36.3 4.3%
2014 4.91% 1.71 -17.8% 34.8 14.5%
2013 6.84% 2.08 31.6% 30.4 15.6%
2012 6.01% 1.58 18.8% 26.3 11%
2011 5.61% 1.33 8.1% 23.7 12.3%
2010 5.83% 1.23 8.8% 21.1 18.5%
2009 6.35% 1.13 -20.4% 17.8 -25.8%
2008 5.92% 1.42 24

PFFの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 6.2% 1.99 -1.5% 32.1 4.2%
2023 6.56% 2.02 12.8% 30.8 -8.9%
2022 5.3% 1.79 135.5% 33.8 -12.7%
2021 1.96% 0.76 100% 38.7 8.1%
2020 1.06% 0.38 -80.4% 35.8 -2.7%
2019 5.27% 1.94 -7.6% 36.8 -0.3%
2018 5.69% 2.1 1% 36.9 -4.4%
2017 5.39% 2.08 -1.9% 38.6 -0.5%
2016 5.46% 2.12 -3.2% 38.8 -1.5%
2015 5.56% 2.19 -10.6% 39.4 0.5%
2014 6.25% 2.45 -13.1% 39.2 0.3%
2013 7.21% 2.82 22.1% 39.1 0%
2012 5.91% 2.31 -4.9% 39.1 2.6%
2011 6.38% 2.43 -12% 38.1 -1%
2010 7.17% 2.76 -2.5% 38.5 25.4%
2009 9.22% 2.83 183% 30.7 -18.1%
2008 2.67% 1 37.5

ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢