インフラETF(IFRA/IGF)の株価と配当
インフラ関連のETFである、米国投資型の【IFRA】と世界投資型の【IGF】を比較してみます。
- IFRA: IシェアーズUSインフラETF
- IGF:iシェアーズ・グローバルインフラETF(投資比率の4割が米国)
ETFの概要と株価伸び率などを整理し、その後、主要指標やポートフォリオなどを見てみます。
米議会でのインフラ投資法案の審議は停止中・・・
米議会では、2017年以来、インフラ投資法案に関しては「期待倒れ」といった様相が続いています。
共和党と民主党の双方に公共投資のプランはあるのですが、政策の折り合いがつかず、政争の激化に伴い、成立のめどが立たなくなりました。
米議会で、インフラ投資法案のように多額の予算を要する政策を実現するためには、与党側が上院で60以上の議席を持たないと難しいからです。
上院には「原則として、議員の発言を強制的に止められない」というルールがあるので、議員はこれを用いた議事妨害(フィリバスター)によって、対立する政党の法案を葬ることができます(法案審議を時間切れにしてしまう)。これをやめさせる決議には6割の賛成が要るので、予算額の大きな政策は60人以上の議席(スーパーマジョリティ)がないと実現できないわけです。
つまり、現状の議席数では、共和党主導のインフラ投資法案が成立しなかったように、民主党が欲するグリーン系の投資法案も成立しない可能性が高いということです。
こうした事情を考えると、現在、グリーン銘柄が高騰しているのは、やや期待が先行しすぎているのかもしれません(2年後の中間選挙で議席数が変動すれば事情は変わるかもしれませんが…)。
そうした事情を踏まえ、共和党と民主党のプランの概要を見てみましょう。
共和党案の概要
共和党案は、道路、橋、空港、配電網、水道等の近代化のために10年間で1兆ドルのインフラ投資を行うというものです。
ブレーンであるピーター・ナヴァロ氏とウィルバー・ロス氏は、1兆ドルのインフラ投資に関して民間企業に1370億ドルの税額控除を与え、投資計画を担ってもらえば、その税額控除分がプロジェクトに携わる労働者や企業から得られる税収で回収できると考えました。
(※この場合、儲からない地方のインフラの修繕などは進まないため、2016年に民主党側は法人税増税でねん出した財源を用いて5年間で公共事業に2750億ドルを投資すべきだと提言していた。それは、2500億ドルを政府の直接投資とし、250億ドルをインフラ銀行設立のために使うプラン)
金額ベースでみると、以下の項目が並びます(ホワイトハウスHP「米国インフラを再建する大統領の計画」2017/6/8)。
- 官民の両者により10年間で1兆ドル(110兆円規模)のインフラ投資を実現する
- 政府のインフラ資金:2000億ドル(22兆円程度)
- インフラ投資の期間短縮(10年⇒2年。許認可行政の短縮)
- 地方インフラ投資:250億ドル
- 地方インフラ投資への優先予算枠:1000億ドル
- 変革プロジェクト(労働者教育):150億ドル
- 2年間で教育実習を行う労働者の規模:100万人
全体的には道路や空港などの交通インフラが多いのですが、水道や電気設備といった公益事業の領域も含まれています。
民主党案の概要
民主党案でも、道路、橋、空港、配電網、水道等等の近代化は含まれますが、大きな違いは、CO2削減に主眼が置かれていることです。
そのため、発電では風力や水力、太陽光といったグリーン系の投資が増えます。また、ガソリン車からEVへのシフトや、水素発電、燃料電池の活用等を促すための予算を組もうとしています。
バイデン氏のプランは、第1期の4年間に2兆ドル(約210兆円)相当の投資を行うというものです。
その投資対象は以下の通りです。
- インフラ再建+5G通信網の整備
- EVシフト+50万カ所の充電ステーション整備
- 温暖化ガスを出さない鉄道建設の促進
- 2035年までに電力部門のCO₂排出ゼロを実現(グリーン発電に税制優遇)
- エネルギー効率の高いビル更新や住宅改修の促進
- 蓄電池やカーボンニュートラルな建築資材、リニューアブル水素、先端原子炉等の活用
その中身については、民主党内の勢力の力関係によって、今後、力点の入れ具合が変わっていくと思われます。
こうした趨勢を踏まえて、インフラ投資ETFの中身を見てきます。
インフラETFを指標で比較
まず、それぞれのETFを指標で比較してみましょう(出所はグーグルファイナンス関数とWSJ。利回りと資産総額はWSJを参照。EPSとPERは想定値)。
IFRA | IGF | |
21/1/4株価 | 19.6 | 44.2 |
21/1/22株価 | 19.3 | 43.9 |
株価上昇率 | -1.12% | -0.66% |
52週高値 | 23.8 | 49.9 |
52週安値 | 14.3 | 28.2 |
EPS | – | – |
PER | – | – |
利回り | 1.8% | 2.32% |
経費率 | 0.4% | 0.46% |
【IFRA】IシェアーズUSインフラETF
★米国内のインフラ建設やメンテナンス等から利益を得る米国企業の株式で構成されるインデックスに連動している。
★セクター別保有業種を見ると、公益事業が4割、資本財が3割、素材が2割
★運用する資産総額は1億ドル程度(2020/12/20時点)。
【株価チャート】(赤線は200日移動平均線)
★1:各年の株価伸び率(※21年終値は1/22株価) | |||||||||||||||||
IFRA | 初値 | 終値 | 上昇率 | ||||||||||||||
2021 | 19.6 | 19.3 | -1% | ||||||||||||||
2020 | 22.1 | 19.6 | -11% | ||||||||||||||
2019 | 18.2 | 22.2 | 22% | ||||||||||||||
2018 | 19.6 | 18.6 | -5% | ||||||||||||||
2017 | 17.7 | 19.8 | 12% | ||||||||||||||
【IGF】iシェアーズ・グローバルインフラETF
★S&Pグローバル・インフラストラクチャー株指数に連動する投資成果を目指す。
★米国(4割)+カナダ(1割)、西欧、アジア太平洋の3地域を中心に、公益事業(4割)や資本財(4割)、エネルギー(2割)銘柄を保有。
★運用する資産総額は31億ドル程度(2020/12/20時点)。
【株価チャート】(赤線は200日移動平均線)
★1:各年の株価伸び率(※21年終値は1/22株価) | |||||||||||||||||
IGF | 初値 | 終値 | 上昇率 | ||||||||||||||
2021 | 44.2 | 43.9 | -1% | ||||||||||||||
2020 | 48.1 | 43.7 | -9% | ||||||||||||||
2019 | 38.9 | 47.9 | 23% | ||||||||||||||
2018 | 45.4 | 39.4 | -13% | ||||||||||||||
2017 | 39.2 | 45.2 | 15% | ||||||||||||||
2016 | 35.4 | 39 | 10% | ||||||||||||||
2015 | 42.3 | 35.9 | -15% | ||||||||||||||
2014 | 38.7 | 42.2 | 9% | ||||||||||||||
2013 | 36.2 | 38.9 | 8% | ||||||||||||||
2012 | 33.8 | 35.7 | 6% | ||||||||||||||
2011 | 35.2 | 33.2 | -6% | ||||||||||||||
2010 | 34.7 | 35.1 | 1% | ||||||||||||||
2009 | 30.3 | 34.1 | 12% | ||||||||||||||
2008 | 50.2 | 29.9 | -40% |
インフラETFの成長率を比較
これらのETFに関して、各年初から直近までの株価伸び率を比較してみます。
★2:各年初から21/1/22までの伸び率 | ||||
IFRA | IGF | |||
21年~ | -1% | -1% | ||
20年~ | -12% | -9% | ||
19年~ | 6% | 13% | ||
18年~ | -1% | -3% | ||
17年~ | 9% | 12% | ||
16年~ | 24% | |||
15年~ | 4% | |||
14年~ | 13% | |||
13年~ | 21% | |||
12年~ | 30% | |||
11年~ | 25% | |||
10年~ | 26% | |||
09年~ | 45% | |||
08年~ | -13% |
配当利回り
年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
IFRAの利回り
権利落ち日 | 配当 | 利回り | 株価 |
2020/12/31 | 0.06 | 1.33% | 19.6 |
2020/12/15 | 0.2 | 1.59% | 19.5 |
2020/9/24 | 0.12 | 1.16% | 18.4 |
2020/6/16 | 0.1 | 1.28% | 19.4 |
2020/3/26 | 0.15 | 1.8% | 16.6 |
2019/12/17 | 0.15 | 1.27% | 22 |
2019/9/25 | 0.13 | 1.06% | 22.1 |
2019/6/18 | 0.1 | 0.91% | 22 |
2019/3/21 | 0.1 | 2.16% | 21 |
– | – | – | – |
– | – | – | – |
– | – | – | – |
IGFの利回り
権利落ち日 | 配当 | 利回り | 株価 |
2020/12/15 | 0.58 | 2.33% | 43.7 |
2020/6/16 | 0.44 | 3.09% | 39.5 |
2019/12/17 | 0.78 | 3.29% | 47.6 |
2019/6/18 | 0.79 | 3.21% | 46 |
2018/12/19 | 0.69 | 3.49% | 39.7 |
2018/6/20 | 0.7 | 3.06% | 42.3 |
2017/12/22 | 0.6 | 2.97% | 45 |
2017/6/22 | 0.74 | 2.89% | 44 |
2016/12/27 | 0.53 | 2.97% | 39.2 |
2016/6/23 | 0.63 | 3.12% | 40.7 |
2015/12/23 | 0.64 | 3.21% | 36.4 |
2015/6/26 | 0.53 | 2.82% | 41.5 |
ポートフォリオの比較
次に、このETFの構成比率を見てみます。
投資先企業の規模別比率
(出所はfidelity.com。2021/1/17閲覧)
IFRA | IGF | |
大企業 | 8% | 65% |
中企業 | 34% | 32% |
小企業 | 37% | 3% |
零細企業 | 21% | 0% |
セクター別保有比率
IFRA | IGF | |
情報技術 | 0% | 0% |
通信 | 0% | 0% |
エネルギー | 5% | 18.4% |
資本財 | 33.2% | 43.1% |
消費財 | 1.5% | 0% |
素材 | 17.5% | 0% |
金融 | 0% | 0% |
不動産 | 0.8% | 0% |
ヘルスケア | 0% | 0% |
必需品 | 0% | 0% |
公益事業 | 42% | 38.5% |
組入れ上位10銘柄
ETFの構成銘柄のTOP10を見てみます(出所は英語版yahoo finance。2021/1/17閲覧)。
IFRA | IGF | ||
BMCH | 1% | AENA.BC | 5% |
BLDR | 1% | NEE | 5% |
CWT | 1% | ENB.TO | 5% |
CLF | 1% | TCL.AX | 5% |
NRG | 1% | ATL.MI | 4% |
AWR | 1% | IBE.BC | 3% |
GLDD | 1% | TRP.TO | 3% |
POOL | 1% | GET.PA | 3% |
AVA | 1% | ENEL.MI | 3% |
NEE | 1% | AIA.NZ | 3% |
TOP10 | 8% | TOP10 | 39% |