ISRG(インテューイティブサージカル)今後の見通し

ヘルスケア,医療機器,株価•決算

インテュイティヴ・サージカル(Intuitive Surgical, Inc./NASDAQ:ISRG)の今後の見通しを考えるために、まず金利と株価チャートの推移を確認し、次に直近の決算、手術件数、設置台数、継続収益、利益率、財務、da Vinci 5・Ion・AIなどの成長要因を整理します。

ISRGは「手術ロボット本体を販売する会社」というより、世界中に設置したシステムを基盤として、手術件数の増加に応じて器具・アクセサリー、サービス、リース収入が積み上がる企業です。このため、売上高やEPSだけでなく、da Vinci手術件数、Ion手技件数、設置台数、継続収益比率、粗利率、リース比率を見ることが重要です。

2026年8月8日時点のポイント
最新決算は2026年7月16日に発表された2026年第2四半期です。売上高は28.92億ドルで前年同期比19%増、GAAP希薄化後EPSは2.29ドル、Non-GAAP希薄化後EPSは2.80ドルでした。da Vinci手術件数は15%増、Ion手技件数は36%増です。一方、会社は2026年通期のda Vinci手術件数成長率を13.5~15.5%で据え置き、レンジの中間値付近を見込むとしています。[1]

金利と株価:過去~現在

※チャート左目盛り:青線は株価推移赤線は200日移動平均線

※チャート右目盛り:緑線は米10年国債利回り

※株価の成長率や前日比、52週高値/安値のほか、PER、時価総額、株式数、出来高などを更新しています。リアルタイムではありませんが、株価は最大20分程度のディレイでフォローします。

直近決算

Intuitive Surgicalは2026年7月16日午後4時5分(米東部時間)に2026年第2四半期決算を発表しました。米国株式市場の通常取引終了後の発表です。記事Aの「7月17日(米国時間)」は1日ずれていたため修正しています。[2]

2026年Q2:市場予想と結果

指標 市場予想 結果 評価
Non-GAAP EPS 2.51ドル 2.80ドル 0.29ドル上回る
売上高 28.2億ドル 28.92億ドル 予想を上回る

売上高・調整後EPSとも市場予想を上回りました。売上高の増加は、da Vinci・Ionの手技件数増加に加え、da Vinciのリース収入増加、設置基盤の拡大などが寄与しています。[1][2]

2026年Q2の主要実績

項目 2026年Q2 前年同期 前年比
売上高 28.923億$ 24.400億$ +19%
器具・アクセサリー売上 17.349億$ 14.741億$ +18%
システム売上 6.850億$ 5.747億$ +19%
サービス売上 4.724億$ 3.912億$ +21%
GAAP営業利益 9.719億$ 7.434億$ +31%
Non-GAAP営業利益 約12.18億$ 約9.47億$ +29%
GAAP純利益 8.181億$ 6.584億$ +24%
Non-GAAP純利益 約10.02億$ 約7.98億$ +26%
GAAP希薄化後EPS 2.29$ 1.81$ +27%
Non-GAAP希薄化後EPS 2.80$ 2.19$ +28%

2026年Q2には、過去に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて支払った関税の返金に伴い、税引後2,800万ドル、1株当たり0.08ドルのプラス効果が含まれています。このため、2.80ドルのNon-GAAP EPSを見る際にも、この一時的な押し上げ分は分けて考える必要があります。[1]

好決算でも株価が下落した理由

決算の売上高とEPSは市場予想を上回りましたが、翌2026年7月17日の株価は大幅に下落しました。主な背景は、da Vinci手術件数がQ1の16%増からQ2は15%増へ減速し、会社が通期手術件数成長率13.5~15.5%を引き上げず、さらに「中間値付近」と説明したことです。高い成長期待が株価に織り込まれている銘柄では、「好決算でもガイダンスが期待を超えない」と株価が下落することがあります。[3]

企業概要

インテュイティヴ・サージカル(Intuitive Surgical, Inc.)は、手術支援ロボットの分野で世界的な導入基盤を持つ医療機器企業です。主力のda Vinci Surgical Systemは、外科医がコンソールからロボットアームを操作し、低侵襲手術を支援するシステムです。

同社は1995年に設立され、2000年に初代da Vinciが米FDAの承認を取得しました。2025年7月1日にはDave Rosa氏がCEOへ就任し、長年CEOを務めたGary Guthart氏は取締役会エグゼクティブ・チェアへ移行しました。[4]

2025年通期の売上高は100.65億ドルで、2024年通期の83.52億ドルから20.5%増え、初めて100億ドルを突破しました。2025年のGAAP営業利益は29.46億ドル、Intuitive Surgical帰属純利益は28.56億ドルでした。[4]

主な製品・事業

da Vinci:マルチポートのda Vinci Xi/X、単孔式のda Vinci SP、第5世代のda Vinci 5などを展開しています。

Ion:肺末梢部の病変へ到達し、組織採取を支援するロボット支援気管支鏡システムです。

器具・アクセサリー:鉗子、ハサミ、持針器、ステープラー、エネルギーデバイスなど、手術ごとに使用される専用製品です。

サービス・デジタル:保守、リース、My Intuitive、SimNow、Intuitive Hub、遠隔協働、手術データ解析などを含みます。

記事AのR&D数値を修正

記事Aでは2025年通期の研究開発費を12.49億ドルとしていましたが、2025年Form 10-Kベースでは13.12億ドルです。2025年売上高100.65億ドルに対するR&D比率は約13.0%となります。2026年上半期のR&D費はさらに7.325億ドルへ増え、売上高の約13%を占めました。[4][5]

業績:2020年以降の持続的成長

会計年度 売上高
百万$
前年比 GAAP営業利益
百万$
GAAP純利益
百万$
営業CF
百万$
FY2020 4,358.4 -2.7% 1,049.8 1,060.6 1,484.8
FY2021 5,710.1 +31.0% 1,821.0 1,704.6 2,089.4
FY2022 6,222.2 +9.0% 1,577.1 1,322.3 1,490.8
FY2023 7,124.1 +14.5% 1,766.8 1,798.0 1,813.8
FY2024 8,352.1 +17.2% 2,348.9 2,322.6 2,415.0
FY2025 10,064.7 +20.5% 2,945.5 2,856.0 3,030.5

FY2020からFY2025までの売上高CAGRは約18.2%です。GAAP営業利益は年平均約22.9%、純利益も年平均約21.9%伸びており、売上の拡大以上に利益成長が進んできました。

2026年上半期

項目 2025年上半期 2026年上半期 前年比
売上高 46.934億$ 56.631億$ +21%
GAAP営業利益 13.215億$ 18.272億$ +38%
Intuitive帰属純利益 13.568億$ 16.396億$ +21%
R&D費 6.295億$ 7.325億$ +16%
営業CF 12.970億$ 19.729億$ +52%

記事Bでは、2026年7月16日の決算リリース段階で上半期営業キャッシュフローを「未開示」としていました。その後、2026年7月21日にForm 10-Qが提出され、2026年上半期の営業CFは19.729億ドルと確認できました。前年同期の12.970億ドルから約52%増えています。[5]

一方、2026年上半期には在庫増加で5.146億ドル、前払費用等の増加で1.790億ドルなどの運転資本流出も発生しています。成長に伴う在庫・リース機器への投資が必要なため、利益成長とキャッシュフローの両方を確認することが重要です。

主要KPI:手術件数と設置台数

da Vinci手術件数

期間 da Vinci手術件数 成長率 期末設置台数
FY2020 約124万件 約-1% 5,989台
FY2021 約159万件 約+28% 6,730台
FY2022 約188万件 約+18% 7,544台
FY2023 約229万件 約+22% 8,606台
FY2024 約268万件 約+17% 9,902台
FY2025 約315万件 約+18% 11,106台
2026年Q2 約88.9万件 +15% 11,710台

2026年Q2のda Vinci手術件数は前年同期比約15%増でした。米国は約12%増だった一方、米国外は約20%増で、海外市場が全体の成長率を押し上げています。[5]

米国では胆のう摘出、ヘルニア、虫垂切除、婦人科などが成長しました。一方、肥満症手術は2026年Q2に前年同期比で一桁台後半の減少となりました。会社は、拡充されたACA保険料補助の終了も米国の手術件数成長を若干押し下げたと説明しています。[5]

Q2のシステム配置

項目 2025年Q2 2026年Q2
da Vinci配置台数 395台 468台
うちda Vinci 5 180台 246台
da Vinci期末設置台数 10,488台 11,710台
Ion配置台数 54台 55台
Ion期末設置台数 905台 1,096台

2026年上半期では478台のda Vinci 5が配置されました。Q2だけでda Vinci 5が全da Vinci配置台数の約53%を占めており、Xiから第5世代機への移行が本格化しています。[1]

Ionは36%成長

2026年Q2のIon手技件数は約4万7,900件で、前年同期比36%増となりました。2026年上半期では約9万600件、Q2末設置台数は1,096台です。

Ionはda Vinciに比べればまだ小規模ですが、肺がん診断など外科手術とは異なる領域へIntuitiveのロボティクス基盤を広げる製品として重要です。

収益構造:売上の約85%が継続収益

Intuitiveの大きな強みは、da VinciやIonを設置した後に継続的な売上が発生する点です。

売上区分 FY2025売上 構成比
器具・アクセサリー 60.19億$ 約59.8%
システム 24.74億$ 約24.6%
サービス 15.72億$ 約15.6%
合計 100.65億$ 100%

会社が定義する継続収益には、器具・アクセサリー、サービス、オペレーティングリース収入などが含まれます。FY2025の継続収益は84.65億ドルで、売上高の約84%でした。

2026年Q2では継続収益が24.69億ドルとなり、売上高の約85%を占めました。2026年上半期でも48.39億ドル、約85%です。[1]

なぜ手術件数が重要なのか
病院にda Vinciを1台販売すると、その時点でシステム売上が発生します。しかし、その後何年間も手術が行われれば、専用器具・アクセサリーと保守サービスが継続的に売れます。このため設置台数と手術件数の複利的な増加が、Intuitiveの長期的な収益基盤を作っています。

リース比率が上昇

2026年Q2に配置したda Vinci 468台のうち、254台、約54%がオペレーティングリースでした。そのうち131台は手術件数など利用量に応じて支払い額が変動する使用量連動型リースです。[1]

2026年Q2のオペレーティングリース収入は2.62億ドルで、そのうち1.69億ドルが主として使用量連動型でした。リースは病院の初期投資負担を下げる一方、Intuitive側が機器資産と利用率リスクを持つ期間が長くなります。

現金販売などを対象とした2026年Q2のda Vinci平均販売価格は約159万ドルで、前年同期の約150万ドルを上回りました。da Vinci 5の製品ミックスが主な押し上げ要因です。[5]

収益性:売上成長を上回る利益成長

期間 GAAP粗利率 GAAP営業利益率 Non-GAAP営業利益率
FY2020 約65.6% 約24.1%
FY2021 約69.3% 約31.9%
FY2022 約67.4% 約25.3%
FY2023 約66.4% 約24.8%
FY2024 67.5% 28.1% 36.7%
FY2025 66.0% 29.3% 37.4%
2026年Q1 66.1% 30.9% 38.9%
2026年Q2 67.8% 33.6% 42.1%

2026年Q2は売上高が19%増えたのに対し、GAAP営業利益は31%増えました。da Vinci 5の普及、手術件数増加、継続収益の拡大などによって営業レバレッジが働いています。

Q2のNon-GAAP粗利率は約70.0%でした。ただし前述の関税返金による一時効果を含むほか、da Vinci 5の製造立ち上げ、リース比率、製品構成、関税などで粗利率は変動します。[1]

財務の健全性:厚い現金と高い自己資本比率

2026年Q2末のバランスシート

期末 現金・投資等
百万$
総資産
百万$
総負債
百万$
株主資本
百万$
自己資本率
FY2020 6,874 11,168.9 1,409.8 9,759.1 87.4%
FY2021 8,619 13,555.0 1,603.5 11,951.5 88.2%
FY2022 6,742 12,974.0 1,861.4 11,112.6 85.7%
FY2023 7,343 15,441.5 2,044.2 13,397.3 86.8%
FY2024 8,832 18,743.2 2,213.6 16,529.6 88.2%
FY2025 9,034 20,458.7 2,517.0 17,941.7 87.7%
2026年Q2 8,626 20,876.6 2,578.9 18,297.7 87.6%

2026年6月末の現金・現金同等物・投資は86.26億ドルで、総負債25.79億ドルを大きく上回っています。自己資本比率も約87.6%と高く、財務レバレッジへの依存は小さい企業です。[5]

2026年上半期のキャッシュフロー

項目 2026年上半期
営業CF 19.729億$
設備投資 2.159億$
南欧販売事業等の取得 約5.282億$
自社株買い
取得価額ベース
15.065億$
Q2末現金・投資等 86.26億$

営業CFは前年同期比で大きく改善しました。一方、自社株買い、南欧の販売代理店事業取得、製造・リース設備などにも積極的に資金を投入しています。

2026年4月には取締役会が自社株買い枠を拡大し、既存枠を含む利用可能枠を50億ドルとしました。2026年6月末時点では約47億ドルの買い戻し余力が残っています。[5]

Intuitiveは現在、普通配当を実施していません。したがって株主還元は主として自社株買いで行われ、キャッシュはR&D、製造能力、リース機器、M&Aにも配分されています。

da Vinci 5・Ion・AIの最新動向

da Vinci 5への世代交代

da Vinci 5は2024年に米FDAのクリアランスを取得した第5世代マルチポートシステムです。2025年には欧州CEマークと日本での規制クリアランスを取得し、2026年1月には米国で僧帽弁修復や内胸動脈採取など一部心臓手術へ適応が拡大しました。[6]

Force Feedback、画像処理、演算能力、デジタル連携などが強化されており、2026年5月には遠隔協働、Force Feedback対応器具、トレーニング、信頼性・セキュリティなど100件を超える機能改善が発表されています。

AIを「手術データ基盤」へ

Intuitiveは2026年7月23日、AIを活用した将来の手術医療に関する5層のAIフレームワークを公表しました。同社は世界で2,000万件を超えるda Vinci手術から得られた経験・データ基盤をAI開発の強みとして位置づけています。[7]

同時に、カリフォルニア州とジョージア州の間を接続したリアルタイムの遠隔手術協働デモも実施しました。現時点ではAIやテレサージェリーをすぐに大規模売上へ結びつける段階ではありませんが、da Vinci 5の演算能力、手術映像、Force Feedback、トレーニングデータを組み合わせられることは、中長期的な競争力につながる可能性があります。

IonのAI機能

Ionでは2025年10月に米FDAクリアランスを取得したソフトウェア更新で、ナビゲーションワークフロー全体へのAI導入と高度な画像機能が追加されています。肺生検領域はda Vinciとは異なる成長市場であり、Intuitiveが「治療」だけでなく「診断」に事業領域を広げる入口となっています。[5]

南欧を直接販売へ移行

Intuitiveは2026年3月、イタリア、スペイン、ポルトガルのda Vinci・Ion販売代理店事業を取得し、直接販売・サービス体制へ移行しました。2026年上半期のキャッシュフロー計算書では、この事業取得などに約5.28億ドルを使用しています。[8]

日本の診療報酬も追い風

日本では2026年4月、鼠径ヘルニア修復を含む7種類のda Vinci手術が新たに診療報酬対象となり、2026年6月から適用されました。一部の直腸ロボット手術には腹腔鏡手術を上回る報酬が設定され、年間200件を超える対象ロボット手術を行う医療機関への加算も導入されています。[5]

2026年通期ガイダンス

指標 2026年Q1決算時点 2026年Q2決算時点
da Vinci手術件数成長率 13.5~15.5% 13.5~15.5%
中間値付近を予想
Non-GAAP粗利率 67.5~68.5% 68~69%
Non-GAAP営業費用成長率 11~14% 11~13%
関税の想定影響 売上高の約1% 売上高の約1%

Q2決算では手術件数ガイダンスは据え置かれましたが、Non-GAAP粗利率見通しは67.5~68.5%から68~69%へ引き上げられ、営業費用成長率も11~14%から11~13%へ狭まりました。[1]

つまり、2026年下半期について会社は「手術件数の成長率を大幅に上方修正する」というよりも、製造効率やコスト管理を通じて利益率を維持するシナリオを示しています。

関税は引き続き重要

2026年通期のNon-GAAP粗利率68~69%には、関税による売上高の約1%相当の悪影響が織り込まれています。Intuitiveは器具・アクセサリーの大部分をメキシコで製造しており、多くはUSMCA原産要件を満たす一方、ドイツ製内視鏡や中国由来の一部原材料などは関税・貿易規制の影響を受けます。[5]

競争・中国・需要面のリスク

米国でも競争が本格化

手術支援ロボット市場では、Intuitiveの大規模な設置基盤が依然として大きな強みですが、競争環境は以前より明確に変化しています。

MedtronicのHugo RASは2025年12月に米FDAから泌尿器科手術向けのクリアランスを取得しました。さらに2026年6月には、米国で一般外科・婦人科へ適応を広げるための510(k)申請を進めています。[9]

Johnson & JohnsonのOTTAVAも2026年7月21日にFDAのDe Novo認可を取得し、胃切除、胆のう摘出、胃バイパス、小腸切除、虫垂切除など複数の上腹部一般外科手術で米国市場への参入が可能になりました。[9]

短期間でIntuitiveの既存設置基盤が置き換わる可能性は高くありませんが、病院の新規購入時の選択肢が増えれば、システム価格、リース条件、器具価格、保守契約などへの競争圧力は強まる可能性があります。

中国では国内メーカーとの競争

2026年Q2のForm 10-QでIntuitiveは、中国で国内の手術支援ロボットメーカーとの競争や政府の産業政策、医療分野のガバナンス強化などにより、da Vinciの配置台数が想定を下回ったと説明しています。[5]

また、中国ではロボット支援手術の価格に上限を設定する全国統一枠組みの導入も進んでいます。現時点で全社業績への影響は限定的とされていますが、今後の器具・アクセサリー価格や手術件数への影響は注意が必要です。

  • 手術件数の減速:da Vinci手術件数は2026年Q1の16%増からQ2は15%増となり、会社は通期レンジの中間値付近を想定。
  • 米国肥満症手術:2026年Q2は一桁台後半の減少。GLP-1薬など治療選択肢の変化も長期的な確認材料です。
  • 競争:Medtronic Hugo、J&J OTTAVA、中国メーカーなどの参入が進行。
  • 中国:国内競合、政府調達、価格規制、産業政策による不確実性。
  • 関税:2026年ガイダンスには約1%の売上影響を織り込んでいますが、追加関税は利益率を押し下げる可能性があります。
  • リース:使用量連動型リースが増えるほど、病院の導入障壁は下がる一方、Intuitive側の資本負担と利用率リスクは高まります。
  • 在庫:2026年Q2末の在庫は20.29億ドルまで増加。需要対応・供給網対策の面がある一方、製品移行時の在庫リスクがあります。
  • 株式報酬:Non-GAAP利益では株式報酬を除外しているため、GAAP利益との違いと自社株買いによる希薄化相殺を確認する必要があります。
  • バリュエーション:高成長への期待が大きいため、業績が市場予想を上回っても、ガイダンスが期待以下なら株価が大きく下落することがあります。

まとめ:高成長は続くが「手術件数の伸び率」が最重要

Intuitive Surgicalは、da Vinciの巨大な設置基盤と、手術件数に連動して積み上がる器具・アクセサリー、サービス、リース収入によって、高い継続性を持つビジネスモデルを構築しています。

2026年Q2も売上高19%増、GAAP営業利益31%増、Non-GAAP EPS28%増と、財務面では非常に強い成長が続きました。

  • 2026年Q2売上:28.92億ドル、前年同期比19%増。
  • Non-GAAP EPS:2.80ドル、市場予想2.51ドルを上回った。
  • da Vinci手術件数:15%増。
  • Ion手技件数:36%増。
  • da Vinci設置台数:11,710台。
  • Ion設置台数:1,096台。
  • 継続収益:Q2売上の約85%。
  • Q2 GAAP営業利益率:33.6%。
  • 2026年上半期営業CF:19.73億ドル。
  • Q2末現金・投資:86.26億ドル。
  • 通期手術件数ガイダンス:13.5~15.5%増、レンジ中間値付近。
  • Non-GAAP粗利率見通し:68~69%へ引き上げ。
  • 成長材料:da Vinci 5、Ion、海外市場、日本の診療報酬拡大、AI・データ活用。
  • リスク:成長率鈍化、Hugo・OTTAVAなど競合、中国市場、関税、リース資産負担、高い市場期待。

ミニ解説:今後は「何台売れたか」だけでは不十分
Intuitiveの長期的な価値を考える場合、システム販売台数だけを見るよりも、①既存システムで手術件数が増えているか、②継続収益比率が維持されているか、③da Vinci 5への移行で利用率と単価が上がるか、④Ionが新しい診断市場を開拓できるか、⑤競争激化の中でも粗利率を維持できるかを確認するほうが重要です。

2026年Q2の結果だけを見ると事業成長は堅調です。一方、決算後の株価下落が示すように、ISRGでは「成長しているか」だけではなく、市場が期待する速度以上に成長できるかが株価評価を左右します。長期投資では、手術件数の成長率と利益率、競争環境をセットで追う必要があります。

四半期決算(EPSと売上)の推移:予想と結果

最後に、四半期決算について市場予想と結果を確認します。

売上高とEPSについて、マーケットのアナリスト平均値と企業発表を比較します。

(単位はEPSがドル、売上高が100万ドル)。

予想値は市場コンセンサス、実績値はIntuitive Surgicalの四半期決算資料を基礎とします。

免責事項
本記事は公開されている財務データや会社開示資料を整理した情報提供を目的とするものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。手術件数、規制承認、診療報酬、関税、競争環境、病院の設備投資、会社ガイダンスなどによって将来の業績は変動する可能性があります。

最終更新:2026年8月8日

【注】(出典リンク)

  1. 2026年Q2決算・手術件数・設置台数・収益構成・利益率・通期ガイダンス → 一次情報:Intuitive「Second Quarter 2026 Earnings」一次情報:Q2 2026 Financial Data Tables(確認日:2026-08-08)
  2. Q2決算発表時間・市場予想 → 一次情報:Intuitive Q2 2026 Earnings二次情報:StreetInsider ISRG Earnings(確認日:2026-08-08)
  3. 2026年Q2決算後の株価反応・ガイダンス評価 → 二次情報:Investopedia「Intuitive Surgical Stock Plunges」(確認日:2026-08-08)
  4. 2025年通期業績・R&D・長期財務・手術件数・設置台数・経営体制 → 一次情報:Intuitive 2025 Annual Report一次情報:Intuitive Annual Reports(確認日:2026-08-08)
  5. 2026年Q2 Form 10-Q・営業CF・自社株買い・R&D・日本診療報酬・中国・関税・地域別手術件数 → 一次情報:SEC「Intuitive Surgical Form 10-Q for quarter ended June 30, 2026」(確認日:2026-08-08)
  6. da Vinci 5の心臓手術向けFDAクリアランス・2026年機能拡張 → 一次情報:Intuitive「Da Vinci 5 Cleared for Cardiac Procedures」一次情報:Intuitive「Innovations to Advance Quintuple Aim」(確認日:2026-08-08)
  7. AI戦略・5層AIフレームワーク・遠隔協働 → 一次情報:Intuitive「Shares Vision for an AI-Enabled Future of Healthcare」(2026-07-23)(確認日:2026-08-08)
  8. イタリア・スペイン・ポルトガルの直接販売体制への移行 → 一次情報:Intuitive「Expands Investment and Footprint in Europe」一次情報:2026年Q2 Form 10-Q(確認日:2026-08-08)
  9. 米国の手術支援ロボット競争・OTTAVA・Hugo → 一次情報:Johnson & Johnson「OTTAVA FDA Market Authorization」(2026-07-22)一次情報:Medtronic「Hugo FDA Clearance」(2025-12-03)(確認日:2026-08-08)

Posted by 南 一矢